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韓国のお家騒動ではあるが、日本とも関連が深い部分なので、当ブログとしては騒動当初から割りと細かい部分まで翻訳して取り上げてきた。その中で私が感じた、今回の騒動によって変化した韓国国民の意識についてここに述べる。


慰安婦被害者の象徴的存在として日本でもよく知られるイ・ヨンス氏が、突如、正義記憶連帯(正義連・挺対協の前身)と同団体の元代表、尹美香(ユン・ミヒャン)氏を批判したことで韓国社会が大きく揺れている。

元慰安婦を助けるべき存在の支援団体が、老体の元慰安婦に物乞い行為(水曜集会など)をさせ、そこで集めた寄付金も、陣営の政治活動や個人の私腹を肥やすこと使われていたという疑惑が連日報道されている。疑いの目は、当初イ・ヨンス氏が批判した正義連と尹美香氏にとどまらず、元慰安婦の休息地であり、日本でもよく知られるナヌムの家でも寄付金流用疑惑が浮上、さらには挺対協と北朝鮮との関係をにおわせる証言もあり、慰安婦支援団体に対する韓国国民の不信感と怒りは頂点に達している。

ただ、今回の騒動を受けても、慰安婦は被害者であり、弱い存在、助けるべき存在という認識は変わっておらず、一部では、元慰安婦が中国から輸入された偽の慰安婦との報道もあるが、あくまで批判の矛先は、慰安婦支援団体に向けられている。

とは言え、一連の騒動によって、慰安婦支援団体のみならず、市民団体全体に対する韓国国民の認識に大きな変化をもたらしたことは事実だ。

「反日」の実態に疑いの目を向けだした韓国人

日本と関連が深い部分では、韓国における「反日」の実態に疑いの目が向けられたことだ。

韓国における反日(反日本帝国主義)は国民共通の認識であり、団結の象徴でもある。韓国ではしばしば「大きな支持を得たければ日本に対して強硬な姿勢を打ち出し、政敵に打撃を与えたければ相手を親日派に仕立て上げればいい」と言われている。これは日本的には疑いようもない既成事実であるが、韓国においては、右派勢力が左派勢力を非難する際に使う論法であり、単なる皮肉とする見方が多くを占める。それが今回の騒動によって、実はその認識が正しいのではないかという声が出始めているのだ。

要するに、正義連やそれと共通のアイデンティティを持つ共に民主党を批判すれば、理由を問わず親日派に追いやられるということだ。正義連はこれまで、日本に対して強硬な態度を貫き、慰安婦合意破棄推進を主導してきた。また、それに反対する声には「親日派」というレッテルを貼り、相手を黙らせてきた。最近でこそ、反日種族主義の著者のように、堂々と韓国の反日を批判する知識人も出てきたが、韓国社会における全体の風潮は、依然として、正義連を批判する者は親日派扱いされる状況だ。韓国において親日派とは売国奴を意味する。正義連などの慰安婦支援団体が聖域化した理由の一つでもある。

そして起きた今回の騒動。慰安婦を助けるべき存在の正義連が元慰安婦をいたわるどころか、元慰安婦のために集められた寄付金を元慰安婦の生活支援ではなく、別の用途に使用し、さらにその管理もずさんで不正まで疑われる状況であることが分かった。これにより、誰も手が出せない聖域であることを利用し、私腹を肥やしていたのではないかという疑念が生じたというわけだ。

今後の検察の捜査で、これが疑念ではなく確証に変われば、慰安婦を利用した反日活動は大きく後退するはずだ。水曜集会はもちろんのこと、現在、韓国に多数置かれている少女像も、今後は容易に設置できなくなる可能性もある。一方で、元慰安婦に対する同情心や、元慰安婦直接の声の影響力が今以上に増し、これまで正義連が陣取ってきた席に元慰安婦が座り、被害者中心主義の下、慰安婦問題の核心になる可能性が高い。ただ、元慰安婦は高齢であるため、実務的な活動を行うことはできない。重要なことは、次にどんな勢力が元慰安婦につくのかということだ。それによっては日韓慰安婦問題は前進も後退もする。

騒動がここまで大きくなった根底にあるもの

正義連の不正はさておき、騒動がここまで大きくなった根底には、元慰安婦であるイ・ヨンス氏が直接批判したこともあるが、そもそも韓国国民が考える慰安婦支援と、正義連が考える慰安婦支援に大きなギャップがあったことがあげられる。

韓国国民の多くは、悲痛な過去を経験したとされる元慰安婦に、生活面に苦労することなく幸せな余生を送ってもらおうと寄付していた側面が大きい。しかし、慰安婦支援団体を称する正義連は、「被害者支援事業は、後援金伝達だけでなく、人権・名誉回復活動支援なども含まれている」とし、単純に元慰安婦の生活を支援する奉仕団体ではないと言い切っている。

韓国国民としても、元慰安婦の人権・名誉回復活動に寄付金が使われることは理解しているが、その割合があまりにも多くを占め、「肝心」の慰安婦被害者の生活は苦しいままということに大きな背信感を感じたということだ。逆に正義連側からすれば支援金の大半を元慰安婦の生活支援に充てれば、「肝心」の人権・名誉回復活動が疎かになると考え、本末転倒とすら考えるはずだ。

このように「肝心」の部分で、国民と団体の間に大きな認識の違いがあり、そこに、不透明な寄付金使途や、ずさんな会計管理などが重なり、さらに大炎上したという構図だ。そして、韓国国民が受けたこの背信感は、市民活動全般に対する不信感となり、寄付文化そのものが後退し、ひいては他の聖域とされる市民運動にも飛び火する勢いだ。

アンタッチャブル、韓国3大聖域に向けられた疑念

現在、韓国社会における3大聖域は、5.18民主化運動、セウォル号、慰安婦だ。このすべてに、被害者やその遺族で構成された団体があり、その影響力は、大統領さらには法の上にすら君臨するとされる。今回、慰安婦寄付金流用疑惑が出たことで、慰安婦支援団体以外も、その強大な聖域力を隠れ蓑に、寄付金流用や政治活動をしているのではないかという疑念もあちらこちらで囁かれはじめている。

3大聖域と共存する現政権与党…うかつに手を出せない

韓国社会における政治理念は大きく2つに分けられる。「民主・市民・正義」を標榜する左派理念と、「自由」を標榜する右派理念だ。これは各政党の党名を見ても分かる。現政権与党で、韓国最大の左派勢力である共に民主党は、党名に「民主」という単語を入れ、「共に」という言葉で市民をカバーしている。一方、韓国最大の右派勢力にして野党一党の自由韓国党(現・未来統合党)は、「自由」という単語を入れていた。

これはそれぞれの政党のアイデンティティであり、存在価値でもある。現在の韓国は、4.15総選挙の結果を見ても分かる通り、前者の理念が優勢である。基本的に、韓国人は、「自由」という理念よりも、「民主・市民・正義」という理念を好む傾向にあり、独立運動を含む過去の歴史的な市民運動を肯定的にとらえ英雄視している。これは大韓民国憲法の前文を見ても裏付けられる。言うまでもないが、この理念は「反日」との相性が抜群だ。このような社会背景もあって、韓国では市民運動をする団体が多く、その影響力は日本のそれとは比較にならないほど大きい。

これら多くの市民団体は、現政権与党である共に民主党とアイデンティティを共にする大きな支持基盤であるため、その不正を追求するということは、政権の首を自ら締める格好にもなる。これについては、現在、共に民主党内部でも意見が分かれているが、概ね確定的な不正の根拠が出てくるまでは見守るというスタンスで維持している。しかし結果によっては、慰安婦団体にとどまらず、その他2つの聖域にも国民の疑念の目は向けられ、そこでも不正や外部政治勢力とのつながりが確認されれば、「民主・市民・正義」の理念は崩れ去り、直接関わっていないにしても、共に民主党のアイデンティティに大きな打撃を与えることは間違いないであろう。

検察による家宅捜索も行われ、明日25日には、イ・ヨンス氏の2度目の記者会見が行われる予定だ。関連の報道を見る限り、この会見で尹美香氏に免罪符が与えられることはなさそうで、新たな爆弾が投下される可能性もあるので注目だ。


カイカイ管理人


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