ゾンビ娘の記憶
博士「俺が彼女に電撃を浴びせれば動き出す」
博士「そして再び電撃を浴びせれば止まる」
博士「さあ!蘇れ!」
博士は超高電圧のスタンガンを使用する
彼女の瞳は開き、蘇ったのだ
ゾンビ娘「うー...あー?」
博士「ありゃ、脳がイカれてる」
ゾンビ娘「うー...」
博士はまたスタンガンで彼女を止める
博士「脳ミソを修復しなければ、それこそ原典のゾンビだ」
博士「また不可能もない」
博士「針の穴に糸を通すように根気のいる作業だがな」
博士は彼女の頭部に視認に難い穴を開ける
そこからチューブを挿入し、それを用いて脳の修復を行うのだ
博士「脳の構造から回路を把握することにより修復ができる」
博士「こんな拘束される作業、助手にでも任せておけば良いのだが...」
博士「私のような人間に助手がいるわけがない」
博士「異常が起こらないよう監視していればよいのだし...」
博士「お茶ても飲んで待つとしよう」
博士「まだ少しずつだが...脳の修復が始まった」
博士「これが一段落すれば、言語野の復元ができるだろう」
博士「言語野に大した問題がなかったのは、実に幸運である」
博士「チョコレートでも食べながら待つとしよう」
博士「そして記憶も若干ながら戻ったようだぞ」
博士「蘇れ!」
博士はスタンガンで彼女を起こす
ゾンビ娘「ふぇっ」
博士「どんな気分だ?」
ゾンビ娘「うー...最悪ですよ...先輩」
ゾンビ娘「先輩、私のカメラ持ってますか?」
博士(先輩?俺を何か別の人間と勘違いしているのか?)
博士「いや、カメラは持っていない」
ゾンビ娘「...え...」
ゾンビ娘「秘密です!」
博士「そうか」
博士「もう一ついいか?」
ゾンビ娘「はい」
博士「俺のこと、どう思う?」
ゾンビ娘「な、なななななな、なんてこと聞くんですか/////」
博士「どうしたんだ、そんなに動揺して」
ゾンビ娘「昔から鈍感なんですよね...」
ゾンビ娘「私は...私は、先輩は大切な人だと思いますよ///」
博士「そ、そうですか」
博士「いつ?」
ゾンビ娘「今日ですよ!ほら、あの...ッ!!」
ゾンビ娘「ず、頭痛が...」
博士「...限界のようだ」
博士はスタンガンでゾンビ娘を気絶させる
博士「正体はハナから明かすつもりだったが...」
博士「この少女の『記憶』に興味が出た」
博士「あと五回程の処置で記憶が完全なものになる」
博士「正しく戻っていくまでの経過観察をしよう」
博士「新たな学会を立ち上げる事になるかもしれないな」
チャイムが鳴る
あまりに長い間聞いていない音だったので彼は驚いた
博士「訪問者?」
博士「こんなところに一体何の用があって来たんだ?」
博士「とにかく、出てやるとしよう」
???「ああ、どうもどうも」
妙な人物だった
笠を深く被り、輪郭を視認てきない
声も高くなく低くなく、性別は分からない
???「あっしは剣というものでごさいます」
剣「最近この辺りに妙な男が現れると聞いてやってきたんでさぁ」
剣「夜な夜な出歩いて『いない、いない、...』と言っているそうです」
剣「それに墓場に出没するらしいんですわ...気味が悪いもんだ」
博士「...そうですか」
剣「その様子じゃあ、何も知らなさそうだねぇ」
剣「じゃ、何か分かったら教えてくれよな。夜はパトロールすることにしてるんで」
博士「あ、はい」
博士「...」
博士(それ、俺じゃね...?)
博士(まあいいか、奴には悪いが、俺はもう出歩くことはない)
博士(しらを切る事としよう)
博士「機械を止めよう」
博士はスタンガンを彼女に当てる
彼女の体は脈打ち、蘇る
ゾンビ娘「あらあら、先輩ではありませんか」
ゾンビ娘「わたくしに何か用?」
博士「...ええ?」
博士「...いや、なんでも?」
博士「ああそうだ。花火を見に行くんだっけ?」
ゾンビ娘「花火?何の事ですの?まぁ、やってるなら見に行きたいですわ」
博士「すまん、今の無し」
ゾンビ娘「はぁ...?」
ゾンビ娘「今先輩はわたくしの前にいるのですわよ?」
ゾンビ娘「もっと気合い入れて喋りなさい」
博士「さーせん」
ゾンビ娘「偉そうな喋り方。それにあなた科学部でしたっけ?」
博士「そうだとも、そしてこれがジェットパック」
ゾンビ娘「ジェットパックというと、あの背中に着けて飛び回る奴ですわね」
博士「ご名答。それじゃあいくぜ!」
博士はジェットパックを装着する
起動したジェットパックは煙を巻き上げ、博士を浮遊させる
感心したのも束の間、けたたましい警報が鳴り響く
そう、彼は失念していたのだ
煙感知器を設置していたことを
博士「やっべぇ!!」
気が動転した博士は操縦を誤った
博士は壁に激突した
ゾンビ娘「ちょっ、うるさっ...」
非常用スプリンクラーが作動する
火のない所に煙が立ってしまったせいでまとめてずぶ濡れだ
ゾンビ娘「あっ!服が...」
博士「おーいていて」
スプリンクラーで濡れた彼女の服はあろうことか透けていた
掘り出して来る際に散々見たその裸体であるが
こうして見るとなかなか美しい
ゾンビ娘「見るんじゃないですわっ!?//////」
博士「べっ」
ゾンビ娘は鳩尾に蹴りをかました
思わず崩れ落ちる
博士「内臓吐き出すかと思ったぞ」
ゾンビ娘「お黙り」
博士「あー...腹減ったな」
ゾンビ娘「じゃあ奢ってあげますわ」
博士「何を奢ってくれるんだ」
ゾンビ娘「貴方、クレープ好きでしたわよね」
博士「クレープ?うーん」
ゾンビ娘「あれ、ステーキだったかしら...うぐぅぅっ!!」
博士「...ふむ」
博士はスタンガンで彼女を気絶させる
博士「何かの記憶が鍵になって頭痛の発作を起こしているということか?」
博士「それになんだあの性格」
博士「まるで多重人格者だ...」
博士「もしかしたら俺は、とんでもないやつを掘り出してしまったのかも知れない」
博士「怖じ気付いて途中で投げ出す訳にはいかないのだ」
博士「また機械に処置をさせておくことにしよう」
博士「ああ、腹が減った」
博士「ステーキだのクレープだのは別にどうでもいいんだ」
博士「ラーメンでも食べに行くかな...」
日の光には慣れない
どうにも引きこもってしまうからだ
先祖は吸血鬼か、はたまた...
博士「ゾンビを作り出しているから、俺は実質吸血鬼なのでは...?」
下らないこじつけをかましていると、どこからともなく聞き慣れたメロディーが聞こえてくる
町内放送という奴だ。しかし、こんな田舎で町内放送とは...
土地が安いから墓地だらけだというのに、よく自治する気になれるものだ
どうせ、老人が失踪しただの運動会だの俺には無縁な話だ
放送「お心当たりのある方は○○警察署までお知らせ下さい」
博士「...若っ」
博士「世も末だな」
博士「しかし今日はひでぇカンカン照りだな...行方不明の男も今頃ミイラじゃないか?」
博士「お、ラーメン屋が見えてきた」
店主「らっしゃい」
博士「おう、...元気が出る奴頼むわ」
店主「くたびれた顔してんねぇ...」
博士「ちょっと水浴びしてきたんだ」
店主「田んぼにでも飛び込んだんですかい」
博士「俺は蛙か。...ん?」
間違えるはずもない。笠を深く被った例の奴がいたのだ
剣「あなたは、あの時の」
博士「休憩か?観光か?」
剣「休憩でさぁ。昼は無縁塚の手入れやってんで」
奴は首をまるで動かした様子はなかったが、俺が居ることに気づいたらしい
侍みたいな奴だ
剣「せうゆラーメンでござんす」
博士「コメントに困る」
剣「そりゃあそうだ。食わなきゃあなんとも言い難いのが拉麺」
店主「へいおまち」
店主の持ってきたラーメンは驚くべきものだった
溢れんばかりの、というか溢れている具材が目を引く
そしてその香りからはニンニクを大量に入れたであろうと予想される
博士「wow...」
剣「こりゃあ、一本とられましたな」
店主「またのご来店お待ちしておりまっす!」
博士「おっす...」
帰りの足取りもその腹も重かったという
博士「処置ひとまず終わり」
博士「起きたまえ」
博士はスタンガンで彼女を起こす
ゾンビ娘「くっっっさ!!」
博士「!?」
ゾンビ娘「先輩!口めっちゃ臭いぜ!」
博士「...あぁ、すまん」
ゾンビ娘「うん、多少マシになったな!」
ゾンビ娘「ラーメン食った?」
博士「ああ」
ゾンビ娘「やっぱりな。夏のクソ暑いなかラーメン食ったせいでシンプルに汗臭くなってるぜ」
博士「すまないぜ!」
ゾンビ娘「口調パクんな」
博士「どうしろと」
ゾンビ娘「今度ラーメン奢れ」
博士「えー...」
ゾンビ娘「あ、そっか。先輩ステーキの方が好きだったよな」
博士「...」
ゾンビ娘「どうした?」
博士「何でもないぜ」
ゾンビ娘「え...?」
ゾンビ娘「先輩って一緒にラーメン食える友達いるのか...?」
博士「隣の席に知り合いがいたんだよ」
ゾンビ娘「あ、ああ、なんだそういうことか」
博士「...?」
博士「どうした」
ゾンビ娘「先輩にさぁ、好きな人が居るって噂聞いたんだけど...」
ゾンビ娘「それ、誰なんだ?」
博士「さあ、何のことやら」
ゾンビ娘「はぐらかすつもりか」
博士「ああそうだとも。...と言ったらどうする?」
ゾンビ娘「それはいただけないぜ」
博士「手厳しいぜ」
ゾンビ娘「...え、それは...まぁ、単純にめちゃくちゃ気になるだけだぜ」
博士「...なら勝負だ」
博士「俺の発明を見て、お前が楽しめたらその話はなし」
博士「楽しめなかったら、その質問に答えよう」
ゾンビ娘「勝負とあれば望む所!」
博士「その心意気、気に入ったぜ!」
博士「それではこちら」
ゾンビ娘(ごくり...)
博士「ピリ辛カップラーメンです」
ゾンビ娘「ふぅん」
博士「このカップラーメン、実は特殊なカップラーメンなんだ。どんなカップラーメンだと思う?」
ゾンビ娘「食べるとマウンテンゴリラになる」
博士「違います」
博士「おなかに優しい辛味成分を利用しているカップラーメンでした」
ゾンビ娘「っ...」
博士「だから、胃腸が弱い方や腸の異物を摘出したばかりの方でも食べられる」
博士「どうだ、すごいだろう」
ゾンビ娘「心底つまんねぇー...」
博士「えっ」
ゾンビ娘「やべっ、口に出ちまった」
博士「そんなもんですか」
博士「くすん」
ゾンビ娘「わ、わーっ!!待て待て!分かった!私が悪かった!」
ゾンビ娘「何かまだあるだろ!?別の発明品にしよう!な!?」
博士「...そうだな...」
博士「カモン!俺の発明品!」
博士はスタイリッシュなポーズで指パッチンをする
すると天井に穴が開き、棒状の物体が落ちてくる
ゾンビ娘「おお...っ」
ゾンビ娘「うあああっ!?ぐ...ううっ!!」
ゾンビ娘「頭痛ぁ...」
博士「え!?ここで!?」
博士はスタンガンでゾンビ娘を気絶させる
博士「どういう事なんだ一体」
博士「彼女は自己に問いかけをした訳でも、俺が質問をした訳でもない」
博士「ではなぜ?俺の仮説が間違っていたのか...?」
博士「難問だ...」
博士「処置はあと三回...」
博士「過程を蔑ろにしては結果は出ない」
博士「機械に処置をさせている間、何をしようか」
博士「まったく、こんな昼下がりでは気分も乗らない」
博士「日と共に気分も落ちていくようだ」
博士「買ったはいいが、ろくに読んでいない本が多くて困る」
博士「さて、読むか」
博士「...」
博士「むっずいな」
博士「思考が放棄され始めている」
博士「...」
博士「ん」
博士「プラシーボ効果...」
博士「あれだな。効かない薬でも効くと思い込めば効く」
博士「刷り込みってのは恐ろしいな」
博士「プラシーボがプラシーボを呼ぶ。プラシーボを知るものが最もプラシーボの恐怖に取りつかれる」
博士「恐れを恐れるということに近いな」
夕日があまりに眩しいので、日向で寝ていた彼も夕方には起きることになる
博士「うー...」
博士「観察の続きに取りかかるとしよう」
博士はスタンガンでゾンビ娘を起こす
ゾンビ娘「ふん」
博士「パンツ何色?」
ゾンビ娘「命が惜しくないらしいな」
博士「冗談だ」
ゾンビ娘「だ、だだが、どうしても聞きたいと言うのであれば...やぶさかではない」
博士(でも気絶させればいつでも見れるか)
博士「あ、いいっす」
ゾンビ娘「なっ...!」
ゾンビ娘「私のパンツには魅力がないのか...?」
博士「お前めんどくせぇな」
博士「知ったことか」
ゾンビ娘「いつか私の力の前にひれ伏す事となるぞ」
博士「そりゃ楽しみだ」
ゾンビ娘「ぐぬぬ...」
博士「...っと、もう夜か。部屋の電気を点けねば」
博士「はい」
ゾンビ娘「今日は、その、泊まっていって良いのか?」
博士「...あぁ...良いぞ」
ゾンビ娘「ま、当然と言ったところか」
博士「言っちまえばそりゃそうだ」
ゾンビ娘「ふんっ」
回転する椅子を使って回転している
それだけなら良いが、ギコギコとうるさい
ゾンビ娘「幼稚だな」
博士「なんとでも言え」
博士「だが確かにうるさいな...古くなってきたのか」
博士「買い換えの時期が来たのかもな」
ゾンビ娘「っ!」
博士「?」
口調と語気が明らかに弱まった
しかし頭痛の発作ではないようなので無視する
ゾンビ娘「私が古くなったら...その、私を捨てるのか?」
博士「捨てる、とは」
ゾンビ娘「私がもし年をとったり...あるいは先輩の期待に添えなかったら」
ゾンビ娘「私は要らないか?」
博士「...お前らしくもない。だがそう言ったらお前が可哀想なので一応回答する」
博士「そんなことはしないさ」
博士「大袈裟な」
ゾンビ娘「いやいや、大袈裟なんかじゃあないさ」
ゾンビ娘「これで私は先輩を殺さずに済むのだからな」
博士「...!?」
ゾンビ娘「どうかしたか?」
博士「いや、気のせいだ」
ゾンビ娘「そう...か」
ゾンビ娘「...む」
ゾンビ娘「私が料理してやろう。光栄に思うがいい」
博士「いいや、俺もやる」
ゾンビ娘「この私が信用できんと?」
博士「信用できねぇ奴と一緒に料理はしねーよ」
ゾンビ娘「そ、そうか...ふふ」
博士「包丁はお前の腰あたりの位置にある引き出しに入ってるぞ」
ゾンビ娘「いいだろう。我が包丁裁きに刮目せよ」
ゾンビ娘は引き出しを開ける
そして包丁を取り出す。しかし
ゾンビ娘「ぐぅぅっ!!ああ!!」
ゾンビ娘「うっ、おえっ...!」
ゾンビ娘「す、すまない...頭痛と吐き気が」
博士「なっ、おま人がガス使ってんのによ」
博士はスタンガンで彼女を気絶させる
何故かラーメンができた
博士「...やはり発作の原因は思考のみではなさそうだ」
博士「しかも今回は吐き気も伴っての頭痛」
博士「物騒な発言といい、発作の原因が包丁であることといい、嫌な想像が...」
博士「っべ、麺すすり過ぎで鼻水出てきた」
博士「あまり気は進まないが...」
博士「早いことに処置はもう終わってしまったらしい」
博士はスタンガンで彼女を起こす
ゾンビ娘「あっ、ご主人様!」
博士「...ふー...」
ゾンビ娘「どうしたんてすか?そんな肝を冷やしたような顔をして」
博士「いや、なんでもないさ」
博士「ん?今なんでも...」
博士「...じゃあ、君が無くしたカメラには何が納められていたんだ?」
ゾンビ娘「ご主人様の隠し撮り写真です」
博士「えぇ...」
博士「なんで?」
ゾンビ娘「ご主人様、学校では人気あるんですよ?」
ゾンビ娘「だから私がその写真を売って儲けてました」
ゾンビ娘「エッチぃのは全部私が保管しましたけどね」
博士「...もう何も言うまい」
博士「パンツ何色?」
ゾンビ娘「水色の縞パンです」
博士「...ほへー...」
ゾンビ娘「そんな目で見ないで下さい!」
博士「はは」
博士「おう」
ゾンビ娘「では、デザートのクレープを調理いたしますね」
博士「そりゃありがたいな」
ゾンビ娘「光栄でございます」
ゾンビ娘「では私にお任せ下さい」
博士「じゃあそうしようかな」
ゾンビ娘「本日は趣向を変えてバナナクレープなんて如何ですか」
博士「ふむ、いいじゃないか」
皿に盛られたバナナクレープが運ばれてくる
飲み物も届いたが、それはお茶とか水ではなく、ミルクティーだった
ゾンビ娘「バナナクレープにはミルクティーが合うと思うんですよ」
博士「...そうなのか?」
博士「ならば実食といこうか」
それを流し込むようにミルクティーを飲む
博士「...ゲロ甘だ」
博士「たまには悪くないな」
ゾンビ娘「そうでしょう!?」
博士「あ、ああ。お前相当な甘党だろ」
ゾンビ娘「確かに言われますね」
ゾンビ娘「『マグロの切り身にチョコレートかけて食いそう』って言われたこともあります」
博士「それは流石に品性に欠けるぞ」
ゾンビ娘「ちょっといいかもなって思いました」
博士「おい」
ゾンビ娘「そうでしょうそうでしょう」
ゾンビ娘「歯は良く磨いて下さいね」
博士「言われずとも」
ゾンビ娘は慣れた手つきで食卓の片付けに取りかかる
手際よく食卓を片付けていく彼女はその妙な口調と相まってメイドのようであった
そして最後に皿を運んでいく
が...
ゾンビ娘「うぉあっはあ!」
転倒。
誰か床にワックスでも塗ったんじゃないか?
彼女は尻餅をつき、床には皿の破片が散乱する
博士(とにかく彼女を安全な所へ移動させ、破片を片さねば)
博士「やっちまったみたいだな。そういう時は落ち着いて...」
ゾンビ娘「あっ...あ...あぁ...」
ゾンビ娘「こういう時はこういう時はぁっ...!」
ゾンビ娘「あっあっああああっ!?」
博士「どうした!?」
彼女は気絶してしまった
博士「...完全にオチてやがる」
博士「スタンガンは使ってないぞ...?」
博士「何か妙だな...」
博士「破片を掃除しながら考えるとしよう」
博士「しかしながら、トラウマのようなものは抱えつつも態度は軟化しているように感じる」
博士「そう恐れることもないのかもしれないな」
ゴミ箱に破片を捨てながら彼はそう思った
その時、またもや鳴りのいい音が鳴る
訪問者だ。チャイムの音がどうにも苦手らしい
時刻は午前1時45分を示していたので、訪問者が誰かはすぐに分かった
博士「無事というと、何かあったんですか」
剣「今夜、不審な男が徘徊しているらしいんでさぁ」
博士「そうですか」
剣「くれぐれも気をつけておくれ」
博士「そうだな...戸締まりは注意しときますよ」
剣「是非、そうなさって下さい」
博士「むしろ俺はあなたが心配ですよ」
剣「はは。行く家行く家で言われておってかなわん」
博士「...では、巡回を続けて下さい」
剣「そんじゃ、お気をつけて」
博士「ええ」
博士「俺以外に好き好んで墓に立ち入る奴など居ないだろうし」
博士「心配性のジジババが熊と人間を見間違えたに違いない」
博士「俺も観察が終わればこんなところとっとと引っ越したい」
博士「記憶処置は終わったようだ」
博士「...さあ、一体どうなんだ?」
ゾンビ娘「ご、ご主人様...?」
ゾンビ娘「先輩...?」
博士「?」
ゾンビ娘「ち、違う」
ゾンビ娘「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う」
ゾンビ娘「い、いやだ私は私なんだ助けて先輩」
博士「お、おいお前」
ゾンビ娘「うわあああああああっ!!!」
ゾンビ娘「あっ、あっああああっ!!」
博士「待てっ!!」
博士の静止も聞かず一心不乱に台所を漁る
終に彼女が手に取ったのは包丁だった
博士「おいバカ待て」
ゾンビ娘「絶対に許さない...絶対にっ!!」
ゾンビ娘「キェアアアアアッ!!」
包丁を持って突貫してくる
明らかに異常だ
スタンガンを構え、気絶を試みる
博士「今だっ!!」
ゾンビ娘「私は屈しない!」
だが彼女はそれをいとも簡単に避けて見せた
包丁は脅威として確実にこちらに向けられている
ゾンビ娘「死ねっ!!」
博士「軌道は直線即ち易し!!」
博士は彼女が冷静を欠いていることに気づいているため、単調な動きを読んだ
動かねば一突きで殺されている所をすんでで避けた
ゾンビ娘「ふざけるなぁっ!!」
接近されてしまったのが運の尽きであった
足払いで博士は転倒させられ、スタンガンを手放してしまった
彼女はすかさず馬乗りになる
ゾンビ娘「死ね死ね死ね死ね死ねっ!!!!」
博士(考えろ俺!どうにか打開出来ないのか)
博士(彼女の奇妙な点。トラウマの対象...)
ゾンビ娘「あんたは終わりだっ!!」
博士「聞けええええっ!!」
ぱちんっ
ゾンビ娘「う...うぐ...っ...があああっ...!」
博士「や...やった...」
博士「『指パッチン』だ!!」
博士「今しかない」
博士「スタンガンで動きを止めるんだ...!」
ゾンビ娘「あんたの好きにはさせないっ!!」
次の瞬間
彼女は自分自身の喉を包丁で突き刺していた
彼女は己が死した身であると気付かずに自殺を試みたのだ
博士「っ...」
博士「ど...どうしろと...言うんだ...」
博士「俺が彼女を掘り出した時も彼女は喉を貫かれていた」
博士「観察は成功したのかもしれない」
博士「だが...何とも空虚っ...」
博士「きっとどこかで期待していたんだ」
博士「不幸な結末を自分の力で変えられるんじゃないか」
博士「彼女をもしかしたら幸せに出来るんじゃないか、って期待していたんだ」
博士「彼女を墓に戻そう」
博士「俺は最低だ」
博士「俺は...っ」
博士「彼女はここに埋まっていた」
博士「墓石もないような隅っこだが、安らかに眠らせておいてやろう」
博士「丑三つ時の墓地というのは気味が悪いな。全く...」
「おい」
博士「!?」
男「なぜお前がその子を持っている」
博士「...研究の為だったさ。お前は誰だ」
男「俺はその子のご主人様だ」
博士は振り向き、男の方を見る
しかしその顔はあまりに醜悪で、目を背けてしまう
男「俺はお前を決して許さない。彼女は俺のモノだ。よくも盗みやがって」
博士「...なあ、お前が持っている『それ』...なんだ」
彼は楕円形の何かを持っていたのだ
男「ん?これか?」
男「これはお前と同じ許されざる者」
男「その子は先輩って呼んでたかなぁ。ほら、見せてやる」
彼は楕円形を投げつけてきた
それをあえて掴むことはしなかった
博士の嫌な予感は的中したのだ
____それは、眼球をくり貫かれた男の生首だった
博士「何だと?」
男「お前は今、指一本ですら動かせないはずだ」
博士「っ!?」
博士は金縛りにでもあったが如く、体が動かない
男「お前はちらとでも俺の顔を見ちまった」
男「俺は類い稀な催眠術の才能があってな。その程度呼吸をするようにできるんだぜ」
男「さて、目ん玉からいこうかなぁ」
博士「彼女も、そうやって催眠術で?」
男「ああそうとも。そそっかしい奴でよぉ。それもまた可愛いんだが」
男「よく皿割っちまうんだな。だからその度にカラダで奉仕させてたさ」
男「あと精神を平時と入れ換えたり催眠術の導入には指パッチンを使ってたなぁ」
男「面白いぐらい良く効いたぜ?くくく」
博士「このっ...ゲスが!」
男「てめぇ、今自分が置かれてる状況を分かってねぇようだなぁ!!」
博士「ぶっ!」
男「下半身の筋肉は固まってるから倒れることもできねぇはずだぜ」
男「さて、もう一発_____」
男「っ、ぐっ...あ...?」
彼のどてっ腹には刃が貫通していた
それは勢いよく引き抜かれ、彼は目を白黒させながら崩れ落ちる
剣「少し遅れてしまいました」
剣「申し訳ない」
博士「く...助かった」
剣「話は聞かせていただきやした」
剣「急ぎ元軍兵の農家から銃剣を借りてきた次第でさぁ」
剣「警察にも通報しておきやした」
剣「あとは弁護士雇ってカネで解決してくだせぇ」
博士「ああ、そうさせてもらおうか」
博士「どうかしたんですか」
剣「全く儲からない仕事をしてしまった、と思いやして」
剣「あっしはそこで生首になってる男に雇われたんでさぁ」
剣「ボディーガードかと思ったら夜に見回りをしろとだけ」
剣「結局死なれまして...あっしの本職は用心棒なんでござんす」
博士「...あの」
剣「はい」
博士「死体はあの男に投棄させたことにして、一緒の墓に彼女とその先輩を入れてあげませんか」
剣「...そりゃあいい」
剣「死体は結構重いんでさぁ」
剣は合掌し、黙祷する
博士「そこまでするなら、脱帽した方が良いのでは?」
すると剣は笠を外し、また合掌し、黙祷した
博士も続いて合掌し、黙祷した
笠で隠れていたが、彼女は凛とした銀髪セミロングの女性だった
剣「あまりまじまじと顔を見ないでくだせぇ」
剣「と、いっても雇い主に危険だから笠を被れと言われただけなんでもう外してもいいんですがね」
博士「すまない。見とれてしまった」
剣「なんかあんた、あっしの雇い主さんに似てますね」
剣「彼女が恋をするのも分からぁ」
剣「それじゃ、また何かの縁があれば会いましょう」
博士「そうだな」
博士「てな事があってさ」
店主「そりゃあいい経験になったね」
店主「ところで、なんで人間を蘇生出来るんだ?」
博士「ラーメンってさ、伸びるだろ?」
店主「...おう」
博士「それを元に戻す機構を作ってたらなんか細胞を原子レベルで再生する機械できちゃって」
店主「んーーーーー...流石『ラーメン博士』だな」
博士「どういうことだ?むしろ失敗だ」
店主「そういうとこさね」
元々安価スレの予定だったんですが【安価】ってつけ忘れてしまいまして
わざわざhtml化依頼するのも気が引けたんで最後までやりました
そういう訳で書き溜めとかなかったんで雑で適当なのは許して下さい
「SS」カテゴリのおすすめ
- モバP「ありふれた君の名前」
- 【ガルパン】西住みほ「あの……私、戦車道、やめます……」
- メガクチート「えへへ、お義兄ちゃんふいうち!」ドスッ ガブリアス「痛っ!?」
- ちぇいす「おれのなはちぇいす」 【ドライブSS】
- 梨花「……」ほむら「……」岡部「……」キョン「……」
- モバP「みんなのバストのポテンシャルを図ってみよう!」
- 娘「ぱぱお風呂入ろー」 ぱぱ「おっけー」 まま「あらあらw」
- 兄「こんな金髪ロリ可愛い妹がいたなんて」
- 響「貴音から嫌なにおいがする」 貴音「!!?」
- 南条光「えっ…………痴漢!?」
- 八幡「雪ノ下に罵倒されたら窓から飛び降りるフリをしてみる。」
- ティーダ「じゃあ学校行って来るッス!!」
- 勇太「それでなー六花のやつがなー」 樟葉「…………」
- 【モバマスss】植木ちゃんの見る風景
- 【ガルパン】まほ「みほが返信してくれない」
「ランダム」カテゴリのおすすめ
- 智絵里「も、持ち込み企画を…」瑞樹「あら」
- 勇者「ここが500年後の世界か……」
- 夏目漱石「吾隊は勢いがある」
- ぼのぼの「僕たちもいつか離ればなれになるのかな……?」
- 提督「無気力になった」
- ルルーシュ「765プロだと?」
- シェゾ「ぬ、抜けねぇ」アルル「あわわ……」
- 先輩「図書委員の女の子っていいよなー」後輩「なに言ってんですか?」
- 【モバマス】愛海「おっぱい柔らかいね……柔軟剤使ったでしょ?」
- 口裂け女「あたし綺麗?…ってそんなわけねーかwww」
- モバP「罰ゲーム!!!」ちひろ「イェーーーイ!!!」
- ロン「僕とハーマイオニーが落っこちそうだとするよ?」ハリー「…うん?」
- マリ「シンジくんの事、好きなんでしょ?お姫様」アスカ「なっ////」
- 卯月「凛ちゃん、踏んでください!」
- 岡部「最近ラボメン達が中途半端に前の世界線の記憶を思い出してる」
コメント一覧 (2)
-
- 2019年07月17日 08:57
- おはびこ~
-
- 2019年07月17日 22:38
- 何か色々くどい