妖狐(5000)「こんなおばさんでいいのかえ…?」どたぷん
男「はい、油揚げ。みんなで食べてくれ」
妖狐「ほほほ、ありがたい手土産だのう。して、今宵はどの子と遊ぶのかえ?」
男「入りたての赤毛の……」
妖狐「ああ、鬼灯。まだ男慣れしとりゃせん、お手柔らかにの」
男「じゃ、よろしく」
妖狐「滝の間へ……」
妖狐「初々しかったろ?」
男「初々しいというより、まだ獣だ」
妖狐「竿を折られたかえ?」
男「だったらもう狐釣りは出来んな、はは」
妖狐「ほほほ。たまにはよかろ?」
男「ま、変わり種も悪くない。また来る」
妖狐「ご贔屓に……」
男「ほれ、寿司だ。奥の小狐に」
妖狐「ほほほ、今から餌まきとは手が早いの」
男「苦界の楽しみなんて飲み食いくらいだ、気まぐれの仏心よ」
妖狐「お心遣い痛み入りまして。して、今宵はどの子と?」
男「鈴蘭は空いてるか」
妖狐「寝とるのう」
男「病か?」
妖狐「いいえ。根っからの寝坊助での……今も火鉢の前で丸くなっとる」
男「まだ月も上り始めたばかりだぞ?」
妖狐「じきに遣るで、おまいさんは岩の間へ……」
妖狐「それはそれは、お楽しみだったかのう?」
男「ああ。あれはいい、男を惑わす香りがする」
妖狐「ほほほ。うちの子は皆々、狐故に」
男「化かし慣れてるか」
妖狐「ほほ」
男「また来る」
妖狐「またいらしゃんせ……」
男「間が悪いな。棚卸しか?」
妖狐「そんな所よ。む、それは?」
男「ああ、手土産をと思ってな」
妖狐「ほう」
男「水饅頭だが……置いて帰る、銀杏に食わせてやってくれ」
妖狐「ほほほ、あの子も喜ぶでな」
男「そうだ、一目挨拶くらいは良いだろう。呼んでくれ」
妖狐「……ほほほ、荒れた中を客人に見せる訳には行かぬ。お帰りを」
男「上げろとは言わん、この場で一言二言だ。構わんだろう?」
妖狐「お客人」
男「……」
妖狐「お帰りを」
男「銀杏だ」
妖狐「ほほほ、気が早いのう」
男「この前は空振りだったからな。で、銀杏は?」
妖狐「クニヘ」
男「なっ」
妖狐「故、今宵は他の子を……」
男「一言もなしにか? 手紙か何か、預かってないのか?」
妖狐「あたしらにもペコリお辞儀一つでの。今朝方、発ったばかりよ」
男「……そうか」
妖狐「ええ。して、今宵はどの子を?」
男「菖蒲だ。アイツは銀杏と親しかったな?」
妖狐「川の間へ……」
妖狐「はてな、京の鳥居の数をかえ?」
男「銀杏のことだ」
妖狐「……菖蒲だのう、あねさんあねさんと慕っておった」
男「本当に抜けたのか」
妖狐「抜けられやせん」
男「打ったのか」
妖狐「抜けようとしたでの」
男「今、何処にいる」
妖狐「河原かのう」
男「何処の河原だ!?」
妖狐「賽の、よ」
男「……」
妖狐「義理とは言えど、母を置いて行くなんぞ……抜けようなんぞ、阿呆なことを……!」
男「また、来る」
妖狐「く、うう……!」
菖蒲「あねさん……あねさん、ううっ」
妖狐「そんな顔でお客の前に出たのかえ?」
菖蒲「い、痛っ」
妖狐「しっかりおしよ、あたしらが見せていいのは一夜の夢だけ。涙なんぞ、朝露と消しな」
菖蒲「ご、ごめんなさいかか様……でも」
妖狐「でもは無しだ、いいね菖蒲」
菖蒲「……はい」
妖狐「……」
菖蒲「ねえかか様、これを」
妖狐「おまい、そんな櫛持ってたかえ?」
菖蒲「ううん。これはあの人が……あの人が、銀杏あねさんにって」
妖狐「……」
妖狐「畜生の念仏なんぞ、誰が聞くものか」
妖狐「……」
妖狐「銀杏、何故抜けようとした?」
妖狐「こうなることは分かっておったろ」
妖狐「なぁ、銀杏よ」
妖狐「銀杏……」
妖狐「櫛は、おまいの物だ」
妖狐「おまいの毛並は美しかったからのう、映えるよな黄金色で」
妖狐「銀杏、成仏しとくれ……」
男「ああ」
妖狐「あの子も、もう居らぬに、よう遊びに」
男「線香を」
妖狐「?」
男「線香を上げさせてくれ、今日は遊びじゃない」
妖狐「……」
男「……駄目か?」
妖狐「奥の間に……」
男「ドブロクだ、銀杏とよくやった。ほれ」
妖狐「……あたしにもくれるのかえ?」
男「かかさんが代わりに飲んでやってくれ」
妖狐「では有難く頂くかの……んっ」
男「いけるだろう?」
妖狐「粗野な味だのう」
男「ははは」
妖狐「土臭くて、泥臭くて、その癖、矢鱈に甘くてっ」
男「……」
妖狐「銀杏みたいな酒だのう……」
妖狐「あの子らしい」
男「俺はてっきり、割り切ってるんだと思ってたよ」
妖狐「初めて来た時に襖の隙間から見られてたんだよ、おまいさん」
男「ああ、聞いた時は驚いた」
妖狐「己の褥に来てくれるか心配で泣き腫らしておったのう、ほほほ」
男「純な女だったな……」
妖狐「本当に……故に、抜けようとしたんだろうがのう」
男「そこだ。その理由が、抜けようとした理由が俺には分からない」
妖狐「……ほ、ほほほ! 」
男「? な、なんだ?」
妖狐「おまいさん、おまいさんも相当に純というか、野暮というか!」
男「一体、どういう」
妖狐「逢いたかったのさ。一目だけでも、ね」
男「……」
妖狐「何処の誰とも言えぬ掟、抜け出た所でどうしようとしてたのか」
男「俺に」
妖狐「そ、おまいさんに逢いたい一心でのう」
男「俺は……俺も」
妖狐「この櫛、銀杏にくれたとか。娘に代わって礼を言わせとくれ」
男「……」
妖狐「本当に、有難う御座います」
男「なっ」
妖狐「あの子の代わりとは行くまいが、今宵、一夜の夢を……のう?」
男「ちゅ、はむ、ん」
妖狐「ん、はぁ……」
男「甘いな」
妖狐「ほほ、油揚げかのう」
男「ん、ちゅ、んっ」
妖狐「ぁむ……ん、んんっん!?」
男「ぷはぁ……ああ、油揚げだ」
妖狐「はぁ、はぁ……悪戯好きだの」
男「?」
妖狐「こんなおばさんでいいのかえ…?」どたぷん
男「……」
妖狐「……きゃあ!?」
男「く、ぅう」
妖狐「ア、おぉ…! ん、んぁ、ああ!」
男「一夜の、夢だ、かかさんも、夢と思って」
妖狐「んっ、んひ、ひゃ……あ、あっ、ん!」
男「楽しめば、いい……!」
妖狐「はぁー……はぁー……は、ぁあっ!」
妖狐「や、ぁあ! んぁ、あっ、んあ!」
男「う、ぉお!?」
妖狐「ふう、んっ……ほほほ、やられっぱなしは、性に合わんで、のうっ?」
男「くっ、う! あっ、くぅ……」
妖狐「ん、んん……粘っこいのう、ほほ。っ、あん」
男「はぁ、はぁー、はぁー、くそ」
妖狐「ひゃん!?」
男「はぁ、はぁ……よっ」
妖狐「んひぃ、ひゃ、ひゃめ、ああ!」
男「狐はみんな、ここが弱い……」
妖狐「あっあっあっあっ、あ、うぅ~……っ♡」
男「ぐうぅ、ぅ!」
妖狐「ひっ、んん……まだ……あっ」
男「はぁ、はぁ、はぁ……」
妖狐「はぁ、はぁ、ふぅー……満足かえ、おまいさん?」
男「……」
妖狐「ほほっ」
男「……まだまだっ」
妖狐「やん♡」
妖狐「ほほほ、楽しめたかの?」
男「ああ、良い夢だった」
妖狐「そうか。それは……良かったのう」
男「ああ、良かった」
妖狐「……」
男「……」
妖狐「また、来てくれるかえ?」
男「さてな」
妖狐「そうかえ」
男「ああ」
妖狐「また、ご贔屓に……」
妖狐「美味そうな匂いだの」
鬼灯「うまいぞ! かかさまも食うか!? 鬼灯が取ってあげる!」
妖狐「おおそうかそうか、ありがとうのう。では一つ頂くか」
菖蒲「美味しいでしょう、かか様? 菖蒲が味つけをしました!」
妖狐「おお、甘くてとろけて、これは美味いのう。何処でこんな?」
菖蒲「鈴蘭、ねえ鈴蘭」
鈴蘭「んー、美味……はむ」
菖蒲「じゃなくて、どこで見つけたのってかか様が」
鈴蘭「んー……? あー、かか様、おはよーございます」
妖狐「ああ、おはよう。鈴蘭が見つけたのかえ?」
鈴蘭「んー? うんー、山の滝口でー」
菖蒲「菖蒲が、味つけは菖蒲が!」
妖狐「おうおう、みな偉いのう。えらいえらい、いいこいいこ」
鬼灯「えへへへ!」
菖蒲「うふふふ」
鈴蘭「かか様ー、ここも煮えてるー」
妖狐「おお、鈴蘭が取り分けてくれるのか? ありが」
鈴蘭「入れてー」
妖狐「……はい、こんなもんかのう?」
鈴蘭「ありがとー」
菖蒲「ね、ヤニ臭くないしとっても美味しいです!」
鬼灯「鬼灯、カネくさくないの久しぶり!」
妖狐「本当に、今時珍しいくらい純な味じゃ」
鈴蘭「なんかねー、おちてたー」
妖狐「何だ、狩った訳ではないのか」
鈴蘭「んー……見つけた時はー、もー死んでたー」
鬼灯「鬼灯がはこんだ! おもかった!」
菖蒲「菖蒲が捌きました! 菖蒲が味つけをしました!」
妖狐「はい分かった分かった、いいこいいこ」
鬼灯「えへへへ!」
菖蒲「うふふふ」
鬼灯「えー……」
菖蒲「こら鬼灯。分かりました、かか様」
妖狐「ん、どうかしたかえ鈴蘭」
鈴蘭「取った服、かか様の部屋ー」
妖狐「ああ、運んで置いてくれたのかえ。それじゃあお休み」
鬼灯「お休みなさーい!」
菖蒲「お休みなさい」
鈴蘭「おやすみー」
妖狐「ふぅ」
妖狐「この服……矢張り、か」
妖狐「甘くって、とろけて、純な味で」
妖狐「狐を嫁になんて、本当に今時……」
妖狐「美味かった。馳走であった」
妖狐「……」
妖狐「畜生の念仏なんぞ、誰が聞くもんか」
妖狐「ん? お客人かね……ずっと銀杏の隣に居てやっておくれよ、おまいさん」
妖狐「よう来なすった。して、今宵はどの子と?」
おわり
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コメント一覧 (30)
-
- 2019年06月19日 12:52
- カイロスとベイは?
-
- 2019年06月19日 13:50
- どたぷんこ
-
- 2019年06月19日 13:58
- オキニの娘が辞めたからって「じゃあオバハン抱いたろ」とはならんだろ普通
そもそも半獣とヤる事自体が気持ち悪い
-
- 2019年06月20日 06:45
- >>3
ケモナーですが何か?
あと半獣より獣が好きです(きいてない)
-
- 2019年06月19日 14:08
- 画像は?
-
- 2019年06月19日 14:13
- >>4
辞めたんじゃなくて抜けようとして死んだんじゃろ
男は後追いしてるし
-
- 2019年06月19日 14:51
- ※3 じゃあなんでこのSS見に来てんだよ
見る前にタイトルで避けること事態出来ただろ無能
-
- 2019年06月19日 16:18
- 短いが味わい深い。
おれは好きだ。
物悲しいがな。
-
- 2019年06月19日 16:44
- あぶぶのババア好き
-
- 2019年06月19日 16:53
- 寿司とか水饅頭食うのに、普通に人間も食うのか…
-
- 2019年06月19日 16:56
- ※8
あの人のBBAは、ショタしか食わないから…
-
- 2019年06月19日 17:40
- 何故か、二ツ岩マミゾウで脳内再生された
あっちは狐じゃなくて狸なのに
-
- 2019年06月19日 20:05
- (おばさんって年じゃねーだろ…)
-
- 2019年06月19日 20:23
- 5000って、玉藻の前でもそこまで長生きはしてないんじゃ…
-
- 2019年06月19日 21:08
- 妲己ならあるいは…
-
- 2019年06月19日 21:34
- 妖狐(5000日)かもしれん
-
- 2019年06月19日 23:08
- 妖狐(ATK5000)だぞ
-
- 2019年06月20日 02:42
- >>16
アルティメットドラゴンより攻撃たけぇww
-
- 2019年06月20日 07:10
- 血肉になるのもまた愛のひとつ
-
- 2019年06月20日 08:44
- 人の姿をして言葉を喋って知恵もある、真似事もするし情もある
それでも所詮畜生にすぎないという残酷さがいいね
-
- 2019年06月20日 11:09
- ある意味で、純粋に身も心も愛してくれている
どうやってもどこかに打算の入る人間と違って、とっても情が深いのね
-
- 2019年06月20日 11:24
- 「狩った訳ではないのか」と言ってるあたり、普通に襲って取って食ってそうな雰囲気はあるが、一方で取った服をその辺に捨てずに持ち帰ってるあたり、想い人である娘の後を追ったであろう客の男を美味しく頂いたのは、彼女らなりの追悼のやり方だったのかもしれない
-
- 2019年06月20日 20:01
- ベ○マックスも常連なんだろ?
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- どたぷんですげえデブ想像しちまった
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- よさぬかベイマックス