ガール「この嘘が嘘じゃなくなりますように」
手紙の代筆代読はもちろん配送まで一人でやってるの
こっちでは字を読み書きできる人も少なくなったから
このお仕事をしていると色々な所にいけるし
どこにいっても歓迎してくれるし
手紙を受け取ってくれたほとんどの人達が大切な人からの
手紙を喜んでくれるし
あたしはこのお仕事が好きだと思う
羽虫も熊もすっかり姿を見せなくなったこの時期は
村の中で一番手紙がやりとりされる時期なんだ
その理由ってのは、あたしの村では
大昔の神様が生まれた日に
サンタって名前の赤い服を着たおじいさんが夜中に
子供達が寝ている間にこっそりプレゼントを贈るっていう
ちょっと変な言い伝えが残ってるの
そんなおじいさんなんて現実にはいないから
本当は誰もプレゼントはもらえないんはずなんだけど
大人たちは小さい子にサンタさんのふりをしてプレゼントをあげてるんだ
それと村の中で手紙がたくさんやりとりされるのと何が関係あるのかって?
それはね
「君は勇者の剣っと…あなたは決まった?」
「わたくしは…あたらしいお洋服…うーんくちべにも捨てがたいわ…」
小っちゃくても女の子だね、とつい口に出しそうになったけど
あたしも小さいころ、そういう風に茶化されるのが嫌だったのを思い出して飲み込む
「はーくきめろよー!うしろつっかえてんだぞー」
「はいはい、喧嘩しないの」
になると村中の子供たちが
まとめてサンタさんへのリクエストの手紙を書きにやってくるんだ
来年はもっと早めにバラバラで来ると並ばなくていいよ
去年も言ったし、一昨年も先代が言ってたし、あたしが子供の頃も
先代に同じことを言われた、だけど子供たちはまとめて一週間前にやってくるんだ
あたしも絶対に早めには行かなかったし、皆とプレゼントが被っちゃわないように
何をもらおうか話し合ってる時が
一番楽しかったような気がするから、強くも言えない
もちろんサンタさんはいないから、今言ったサンタさん達ってのは
あの子達のママやパパ
ふむふむ…木の剣にパチ○コ、手鏡にスカート、この子は去年もボールだったような気がするなあ
「あれ?一人足りない?」
見落としたのかと思い机を見渡しても何もなかった
だけど、入り口の方に小さな人影を見つけた
「うん、おじゃまします」
「来てたなら声かけてくれたらよかったのに」
「ごめんねぇ、おねえちゃん一人でおしゃべりしてたからぁ」
「…ごめん…いい訳になるんだけど、手紙屋さんやってると長旅とかで一人の時間が長いから
独り言が癖になったりするんだ…」
「ううん、いいのぉ」
「サンタさんにお願いするプレゼント決まってる?」
「うん、えっとねぇ・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
普段ならあたしもベッドに入ってる時間だけど
この時期だけはサンタ一味として夜勤もすこしだけやることになってるの
家のドアをノックする、普段なら迷惑で非常識な訪問時間だけどこの時期だけは
うーん…許される?まあ子供が寝てる時間かいない時間じゃないと
サンタさんへの手紙を届けられないからね
「シー…声が大きいですよ、彼起きちゃいますよ」
「あ!すまねえ…で坊主は何を欲しがってんだい?」
「勇者の剣だそうです」
「いつの時代もガキの欲しがるもんは変わらないな、俺も同じもん頼んで木刀もらったな!」
「だから声が大きい!!!注文は何かあります!!?」
「シー…俺も大工だし自分で作ってやるからいいです…ごめんなさい」
村の中からほとんどもう音のしない時間
子供達からの注文を伝える仕事もだいぶ終わったかな
この村で手に入るものならその子のパパママが自分で準備するんだけど
街に行かないと手に入らないものだとあたしが代表して買い出しに行くんだ
今年買ってくるものはボール、チョコレート、手鏡、可愛い洋服、白い子猫のお人形
紫の水玉の入った赤いワンピースを買って帰ったら、毒キノコみたいと
その子をガッカリさせちゃったから、今年は無難に
ショッキングピンクにトゲトゲの肩パッドのついたドレスを買ってみよう
逆に簡単なのは白い子猫のお人形とかみたいにくわしく書いてくれてる奴
間違いがないからね、去年も茶色いクマのお人形をもらった子はすっごく喜んでくれたし
どこに行くにもクマちゃんを連れて行っていて、あたしもなんだか嬉しかった
「あぁ…こんばんはぁ、夜分に働かせてごめんなさいねぇ」
「こんばんは、それがあたしのお仕事ですし、それに」
「それにぃ?」
「夜中に出歩いても見回りさんに怒られないのはこの時期だけだから」
「ふふ、そうねぇ…それでうちの子は何を欲しがったのぉ?」
言わなきゃ。できるだけ元気に言わなきゃ。一口分の空気をスッと吸い込んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「そっかぁ…隠し事って難しいわね」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「それじゃぁ、瓶に入ったお水ともう二つお願いしていいかしら?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
あたしは都の隅っこの方で細々と営業している小さなお茶屋さんで
注文された品に買い忘れが無いかチェックしていた
「隅っこの方で細々と営業している小さなお茶屋さんで悪かったね」
あたしと同い年くらいの女の人はあきらかに不機嫌そうに
頼んだイチゴミルクを机にドンと置いた
「ウソウソ気にしてないよ、へー手紙屋さんか、んじゃこれ読める」
「崩壊症の勢いは止まらず…南方は完全封鎖」
「すごーい!前の手紙屋も偽物じゃなかったんだ!」
「ええ…偽の手紙屋なんているんですか?」
「そうそう、あたしらが字を読めないことをいいことに適当ぶっこいて金もらったドロン」
「都って怖い」
「あ!さっきのしかえし?やっぱり怒ってたんじゃないですか」
「ウソウソ、それにしても政府はどうしてほとんどの人間が崩壊症になってて
号外なんて無駄なもんに税金使うのかねえ」
「ほとんどの人が文字を読めなくても
村に一人でも読める人がいたら一気に情報が広げられるからですよ」
「そんなもんかね、そうだ前の人には聞きそびれたんだけど
あんたらには文字ってのはどういう風に見えるの」
「どういう…そうですね、礼儀正しく並んで書いた人の言いたいことを伝えてくれる…?」
「あらすてきな詩みたいだね、頭の中でしゃべるみたいな感じ?」
「そうそう!そうなんです!こういう仕事だからあった事の無い人からの手紙は
少ないんですけど、あった事のない人の聞いた事のない声なのに聞こえるんです」
「そっか、文字が読めたらすてきだろうね、あたしゃ生まれる前から崩壊症がでてたから…
ほとんどのインク物がグルグル回っちゃうんだよ、まあ数字はまだ読めるけどね」
この日の朝は毎年毎年、いつもよりも騒がしい
去年も、今年と同じようにギリギリまで都に買い出しに行ってたから
ドロドロに疲れた状態でベッドの中にいたからうるさいとしか思えなかったけど
早起きした今日は全然聞こえ方が違う
子供達の喜ぶ声やサンタさんへのお礼が自分への感謝にも聞こえる、ちょっとうれしいな
ただ早起きの理由はこれを聞くためじゃないんだ
…お仕事の為なんだ
「うん、えっとねぇ…お母さんの病気が治るお薬が欲しいの」
「…お、お薬…だね、お母さん元気ないの?」
「うん…お母さん、病院に行ってもいっぱい寝ても元気にならないのぉ」
「そっか…うん!ちゃ、ちゃんとサンタさんにお願いしとくね!」
「うん!これあげるからはやいやつにして」
彼女は確か去年のクリスマスにもらってからずっと大切にしていた
茶色いクマのお人形をあたしに速達料金として支払って行った
「お…お母さんの病気が治る薬が…欲しいそうです」
「そっかぁ…隠し事って難しいわね」
「ごめんなさい…あたし気が付かなかった…から…その」
「うーん…足はまだなんとかなんだけど、もう左手がほとんどねぇ…」
「崩壊症の末期症状…ですよね」
「不治の病だから…もちろんどこのお医者様に行ってもダメ…もって一年って…」
「役に立つか…分からないけどあたし…何か」
「それじゃぁ、瓶に入ったお水ともう二つお願いしていいかしら?」
「何でも言って下さい!」
「…あの子に一通…手紙を書いてくださる?それと・・・」
「お母さん!お母さん!」
「どうしたのぉ?朝から騒いじゃって?」
「これ!これ飲んでよ!これでお母さんの病気よくなるんだよ!」
「…この瓶はなぁに?」
「うんとね!サンタさんがくれた!お母さんの病気がすごいよくなるの!」
「これでお母さん元気になるね!よかったねぇ!」
「うん…うん、ねえこっちに来て」
彼女は走り寄ってきた小さな娘に覆いかぶさるように抱き着いた
「どうしたの?お母さん?薬おいしくなかった?」
「薬の…副作用かな?お母さん…泣き虫になっちゃったみたい」
声を震わせ絞り出すように彼女は言った
「うーん、よしよし…涙よとまれぇ」
「ごめんねぇ、泣き虫なお母…さんでごめんねぇ」
「よしよしぃ、大丈夫だよぉ」
あたしからサンタさんへのお願いです
どうかこの手紙を届けなきゃいけない日を持ってこないで下さい
「この嘘が嘘じゃなくなりますように」
また独り言がでちゃったな
おわり
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コメント一覧 (4)
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- 2019年01月17日 19:36
- イカかと思って開いたらキモいポエムだった
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- 2019年01月18日 06:39
- なろうでやってろよ
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- 2019年01月18日 14:16
- 好きだけどSSでやることじゃないよね
場所選んで書いた方がいいよ
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- 2019年01月19日 08:33
- なんかノリが昔のSSっぽい。
こう言うの読んでSSにハマったもんだからなんか凄く懐かしく感じる。