男「新入社員が入ってきたから先輩風を吹かせてやる!」ビュゴォォォォォォォ 後輩女「すごい風だわっ!」
- 2018年04月19日 10:40
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男「え、ホントですか!?」
上司「ついに君も先輩になるということだな」
上司「教育は任せるから、よろしく頼む」
男「はいっ!」
男(入社三年目にして、やっと俺にも直属の後輩が……よーし、頑張るぞ!)
後輩女「よろしくお願いしますっ!」
男(おお、まさかの女の子とは)
男(だが、下心を出すつもりはない……俺はこの子を一人前の社会人に教育してやるんだ!)
男(――先輩として!)ビュオッ
男「それはもちろん、報告・連絡・相談だな」
後輩女「ホウレンソウですね!」
男「その通り!」
男「個人が好き勝手に動いたら、組織というものは成り立たなくなってしまうからな」
男「どんなに小さなことでも、必ず報・連・相を忘れるな。それが社会人ってもんだ」
後輩女「はいっ!」
男(やっべえ、先輩風吹かすの気持ちいい……)ビュオッ
後輩女「“そんなこといちいち報告するな!”って怒られちゃいそうで」
男「まあ、中にはそういう人もいるな。実際、俺もそんな風に怒られたことがある」
後輩女「やっぱり……」
男「だけど、社会人ってのはそういうのを乗り越えていかなきゃならない部分もあるし……」
男「それに、俺はどんな時でも必ず相談に乗ってやるから心配するな!」
後輩女「ありがとうございます!」
男(超気持ちいい~!)ビュオオッ
男「お、やってるな。大丈夫か?」
後輩女「は、はい! もうすぐ終わります!」
男「そうか……ほらっ、コーヒー」
後輩女「あ、いただきます!」
後輩女「……」ゴクゴク
後輩女「……おいしい」
男「仕事を頑張った後のコーヒーの味は格別だろ」
男(俺もよく、こうやって先輩からコーヒーをおごってもらったもんだ……)ビュオオオッ
後輩女「はいっ!」
男「駅前の路地に、安くてうまいいい店があるんだ」ビュオオオッ
上司「あいつ、先輩風吹かせまくってるな」
先輩「今までずっと下っ端でしたからね、嬉しいんでしょうよ」
先輩「あいつのいう“いい店”って、俺が教えた場所ですしね」
上司「ふふっ、そのことは後輩ちゃんには内緒だぞ」
男「どれ、手伝ってやるよ!」
後輩女「せ、先輩!?」
後輩女「でも、先輩も自分の仕事があるのに……」
男「なぁに、俺のは明日でも大丈夫なやつだしさ」
後輩女「ありがとうございます……」
男「気にするなって! キツイ時にはどんどん先輩に頼れ!」ビュオオオッ
後輩女「……ふう」
男「どうした?」
後輩女「あ、いえ……ちょっと疲れてしまって……」
男「そういう時はな、パーッと飲みに行こう! パーッと!」
男「今の若い人は酒離れしてるらしいけど、やっぱり酒があった方が腹を割って話せるしさ」
後輩女「は、はい!」
後輩女「仕事は面白いですし、先輩がたもいい人ですし、やりがいはあります」
後輩女「でも……」
男「でも?」
後輩女「このままずっと、この仕事を続けられるかって不安もあって……」
後輩女「先輩たちのやってる仕事が、私にも出来るようになるのかなって……」
男「……俺も、そうだったよ」
後輩女「先輩も?」
男「みんなそうだ。社会という荒波に船をこぎ出して、不安になるのは当たり前だ」
後輩女「!」
男「失敗したって、俺や先輩や、上司もいる!」
男「まだお前は新入社員なんだ。新人って免罪符があるんだ。いくらでもミスしたっていいんだ!」
男「いや、今のうちにどんどんミスするつもりで仕事しろ!」
男「いずれ、ミスを許されないポジションになった時のためにも、な……」
後輩女「先輩……!」
男(ああ……今の俺、最高にかっこいい!)ビュオオオオオッ
後輩女「は、はいっ!」
男「大丈夫だって! 最初はおつかいしか用がないような、小さなところだけ任せるから!」
男「それに何かトラブルがあったら、俺もちゃんとフォローするから!」ビュオッ
男「大船に乗ったつもりで、ついてこい!」ビュオオオオッ
後輩女「すごい風だわっ!」
バサバサッ バサバサッ
先輩「わわっ! あいつの先輩風がすごすぎて……!」
上司「書類が……! ああっ、窓の外に!」
バサバサッ バサバサッ バサササッ
後輩女「キャーッ!!!」
先輩「お、おい! どうなってんだ、まるで台風だ!」
上司「やめろ! 先輩風吹かすのを止めろォォォ!」
ビュゴォォォォォッ!!!
………………
…………
……
上司「申し訳ありません……!」
男「先輩風を吹かせすぎました……!」
後輩女「先輩は悪くありません! 私のせいです!」
後輩女「私の成長が遅いから、先輩は……」
男「いや、いいんだ」
社長「……君」
男「はい」
男(先輩風を吹かせすぎて、ついに俺もクビか……)
男「は……?」
社長「君には、風力発電を担当してもらおう」ニコッ
男「俺が……発電を!?」
社長「もちろん、給料はぐんと増額する! 会社のためにその風を吹かせてくれ!」
男「分かりました……頑張ります!」
後輩女「せんぱーいっ!」
男「おう!」ビュゴォォォォォォ
後輩女「今日も発電しまくってますねー!」
男「まぁなー!」ビュゴォォォォォ
男「今晩、電力おごってやるよ! スマホをあっという間に充電させてやる!」ビュゴォォォォォォッ
後輩女「ありがとうございまーす!」
勇者「失礼」ザッ…
後輩女「はい?」
後輩女(なんだろ、この人……剣を持って、鎧なんか身につけて……)
勇者「ここで、風力発電をしてる人にお会いしたいのだが」
後輩女「はい……分かりました。こちらへどうぞ」
勇者「行くぞ」ザッ
巫女「ええ」ザッ
豪傑「おう!」ザッ
勇者「時間がない。単刀直入にいおう」
勇者「我々は魔王を倒すために旅をしている。私は“炎の勇者”だ」
巫女「わたくしは“水の巫女”でございます……」
豪傑「オレ様は“土の豪傑”だ!」
男「は、はぁ……」
勇者「そして、君は魔王を倒すために必要な四戦士の一人――“風の戦士”なのだ!」
男「なんですって!?」
男(俺が……風の戦士!?)
勇者「君が会社員であることは重々承知だが、魔王討伐の旅に参加してもらえないだろうか」
男「……」
男「……分かりました!」
男「この世界の平和に俺の力が必要なら……行きます!」
勇者「……ありがとう」
後輩女(そんなっ、先輩っ……!)
上司「君の席は……残しておく。これは少しだが餞別だ」
先輩「くたばるんじゃないぞ!」
男「ありがとうございます、皆さん!」
後輩女「先輩……」
男「なぁに、泣きそうな顔してんだ! 大丈夫だ、俺は必ず戻ってくる!」
後輩女「待ってますからね……!」
…………
後輩女「あ、この新聞を見て下さい!」
後輩女「先輩たち、大活躍してるみたいですよ!」
『勇者パーティー快進撃! ついに魔王軍最高幹部を撃破!』
上司「ほぉ~、上司として誇らしいよ」
先輩「あと残る敵といえば魔王ぐらいだし、世界が平和になる日も近いな!」
後輩女(魔王なんか風でふっ飛ばしちゃって下さいね……先輩!)
魔王「フハハハハ……!」ゴゴゴゴゴ…
勇者「くっ……!」
巫女「これが……魔王!」
豪傑「今までの奴らとはケタ違いだぜ……!」
魔王「なかなか手こずらせてくれたが……これで終わりだ、勇者ども!」
男(三人はもう重傷だ……まともに戦えない! 俺がやらなきゃ!)
男(こうなったら全身全霊をかけて、最高の技を叩き込んでやる!)ビュゴォッ
勇者「よ、よせ! その技は危険すぎる!」
男「危険を恐れてたら、魔王を倒すことはできない!」ビュゴォォォォォ…
男「うおおおおおおおおおおおおっ! 俺の風パワーを凝縮させるッ!」ビュゴワッ
男「魔暴導風(アルティメット・ストーム)!!!」
ビュゴォォォォォォォッ!!!
魔王「ぐおあぁぁぁぁぁっ!?」メキメキメキッ…
魔王「ま、まさか、このワシがやられるとはぁ……ッ!」
男(や、やった……!)
魔王「風の戦士! 貴様も道連れにしてくれるわぁぁぁっ!」グワッ
男「うわっ!」
魔王「共に落ちようぞ! ……奈落へなァ!」
男「うわぁぁぁぁぁっ……!」
ヒュゥゥゥゥゥゥ…
勇者「二人とも、奈落の底に……!」
巫女「ああっ……なんてこと!」
豪傑「ちくしょう! これまでに奈落に落ちて戻ってこれた奴はいねえ!」
勇者「魔王は倒しましたが、彼は魔王もろとも奈落の底に……!」
上司「いえ、あなたに責任はありません……。しかし、残念です」
先輩「あいつ……くたばるんじゃねえっていったのに!」
後輩女「……」
上司「大丈夫かね? 君は特に彼と親しかったから……」
後輩女「大丈夫です!」
上司「!」
後輩女「先輩はきっと生きてます! ……いえ、絶対に!」ポロッ…
上司「そうだな……信じよう」
後輩女(私は働きながら先輩を待った……。だけど、先輩は戻ってこなかった……)
ビュゥゥゥゥゥ… ガタガタガタ…
上司「……風が強くなってきたな」
上司「今夜は台風が来るから、君は早めに帰宅しなさい」
後輩女「いえ……もう少しだけ残ります」
上司「仕事熱心なのはいいが、電車が止まらないうちに帰るんだぞ」
後輩女「はいっ!」
後輩女(この強風……先輩を思い出すわ)
上司「!? お、おい、こんな天気の時に、窓なんか開けたら……!」
後輩女「すみませんっ! 少しだけっ!」
ビュゥゥゥゥゥゥ… ビュゥゥゥゥゥゥ…
ビュゴォォォォォ…
後輩女(……あっ)
後輩女「台風の中に混じってる、この風は……!」
ビュゴォォォォォォッ!!!
男「……ただいま!」スタッ
男「ああ、奈落に落ちたくらいで死ぬもんかよ!」
後輩女「ですよね! 先輩は風で飛ぶことができますもんね!」
男「とはいえ、うまく上昇気流に乗れなきゃ、お陀仏だったけどな」
男「今晩はたっぷり土産話を聞かせてやる! 俺はお前の先輩だからな!」ビュゴォォォォォッ
後輩女「もう、相変わらずの先輩風なんだから!」
おわり
元スレ
男「新入社員が入ってきたから先輩風を吹かせてやる!」ビュゴォォォォォォォ 後輩女「すごい風だわっ!」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1524079641/
男「新入社員が入ってきたから先輩風を吹かせてやる!」ビュゴォォォォォォォ 後輩女「すごい風だわっ!」
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コメント一覧 (16)
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- 2018年04月19日 10:43
- 途中で風向きが変わったな
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- 2018年04月19日 11:34
- ※1 すこすこのすこ
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- 2018年04月19日 13:08
- 普通にいい先輩だと思った
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- 2018年04月19日 13:18
- ※1
最初から能力者風やなかったやろか
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- 2018年04月19日 13:40
- 風通しのいい会社だな
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- 2018年04月19日 14:20
- 上司や先輩たちの様子を見るに社風も良いようだ
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- 2018年04月19日 14:33
- でもこの風少し泣いています
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- 2018年04月19日 15:04
- こういう風に、面白いけどさらっと読めるのが良SSだよなぁ
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- 2018年04月19日 15:52
- 今日は…風が騒がしいな…
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- 2018年04月19日 17:14
- こんな先輩が居たら、どんな向かい風もへっちゃらだな
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- 2018年04月19日 17:21
- 青春兵器ナンバーワンネタw
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- 2018年04月19日 19:24
- 久々に良いSSを見た!
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- 2018年04月19日 22:11
- Twitter運営はアホ
改悪しすぎだしすぐアカウントロック凍結するし無能の集まり
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- 2018年04月19日 22:11
- 魔暴導風(麻婆豆腐)(ボソッ
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- 2018年04月20日 03:44
- 青春兵器やんけ、と思ったらRPG始まって草
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- 2018年04月20日 05:23
- 急ごう…風が止む前に…