【響け!】黄前ちゃんと高坂ちゃん以外で妄想SS【ユーフォニアム】
- 2017年09月24日 13:10
- SS、響け!ユーフォニアム
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緑輝「葉月ちゃん、葉月ちゃん」
葉月「ん? どうしたの、みどり」
葉月「確か名前呼ばれた子は残ってって言われてたよね」
緑輝「はい。でもその前に、葉月ちゃんに伝えておきたいことがあって」
葉月「ん? なに?」
緑輝「実は私……見ちゃったんです」
葉月「見た? なにを?」
緑輝「久美子ちゃんが、高坂さんとちゅーしてるとこ……です」
葉月「…………は?」
緑輝「見間違いじゃありません! オーディションの朝練の後、楽器片付けに行ったら見ちゃったんです!」
緑輝「こう、高坂さんが久美子ちゃんのほっぺた挟んで、それで久美子ちゃんも高坂さんに同じことしてて……」
葉月「……それだけで?」
緑輝「そりゃ、確かに高坂さんの背中越しですから、ちゃんとした瞬間を見たわけではないんですけど……」
緑輝「でも、顔の距離もとても近かったですし、もししてないにしても何かあったはずです! 間違いありません!」
葉月「……っていうか、それをなんで今このタイミングで私に言うの?」
緑輝「……本当は、葉月ちゃんに言うつもりはありませんでした」
葉月「いやでも、それを聞いて私はどうしたら……」
緑輝「それは……みどりにも分かりません」
葉月「おい」
緑輝「でも、何故か教えておくべきだと思ったんです」
緑輝「こういう時のみどりの勘って、意外に当たるんです!」
葉月「……そっか」
葉月「ま、じゃあ後で久美子に聞いてみよっか」
葉月「違うにしても、何かあるのは間違いないんだよね? だったら聞いてみようよ」
葉月「私も、気になるしさ」
緑輝「はいっ!」
葉月「んじゃ私、先に低音パートの教室行ってるね」
葉月「あ、夏紀先輩」
夏紀「ん……加藤ちゃん。お疲れ」
葉月「その……お疲れ様です」
夏紀「残念だったね、オーディション」
夏紀「加藤ちゃん、最近頑張ってたし、いけると思ったんだけどな」
葉月「いえ、そんな……私なんて、初めて間もないですし」
葉月「それに、落ちたことも遅れて気付いたぐらいですから」
葉月「それだけ思い入れがないんなら、仕方ないというか……」
夏紀「それでも、頑張ってたじゃん」
葉月「でもっ、それを言ったら、夏紀先輩の方が頑張ってました」
夏紀「私は……そうでもないよ」
夏紀「なんせ去年、サボってばっかだったからね」
葉月「先輩……」
夏紀「さあ……どうだろ」
夏紀「なんだろうね……やっぱり、去年のことがあるからかな」
夏紀「私の名前が呼ばれなくて、黄前ちゃんの名前が呼ばれた時……」
夏紀「ああ、やっぱりな、って思っちゃった」
葉月「……吹部、辞めないですよね?」
夏紀「え?」
葉月「なんだか夏紀先輩、初めの頃に戻ったみたいで……」
葉月「このまま、辞めちゃいそうで……」
葉月「だから! その……辞めないで欲しい、っていうか……」
夏紀「辞めないよ、私は」
夏紀「この低音パートなんて、特に」
夏紀「だから、低音パート皆で、一緒に吹きたかった」
夏紀「それが、私の実力不足で出来なくて……ちょっと、悲しいだけ」
葉月「夏紀先輩……」
夏紀「だから、来年」
葉月「えっ?」
夏紀「来年まで加藤ちゃんも一緒に頑張って、来年こそ一緒に吹きたい」
夏紀「だから、私は辞めない」
葉月「……そうですね」
葉月「私も来年こそ、夏紀先輩と一緒に吹きたいです」
夏紀「うん」
葉月「それは、ちょっと残念かもです」
夏紀「いいのよ、あすか先輩は」
葉月「え?」
夏紀「あの人には、OG席で聞いてもらえば良いんだから」
夏紀「今日ここで落ちた私達の成長ぶりをさ」
葉月「あ……はいっ。そうですね」
夏紀「じゃないと、すっげぇ怒ってくるよ。あの人」
夏紀「すごい冷めた目で『真面目に練習してこなかったからこうなったんだよ』って言ってくるよ」
葉月「うわ~……それはちょっと勘弁願いたいですね」
葉月「下手なお化け屋敷より怖いです」
夏紀「だよね。だから来年こそ、合格しよ?」
葉月「はい。来年こそ、ですね」
葉月「あ、はい。なんか久美子が高坂さんとキスしてるところを見たって」
夏紀「えっ!? 高坂さん、って、あのソロパートに選ばれてた子!?」
葉月「はい」
夏紀「それ……本当なの?」
葉月「いや~……たぶんみどりの見間違いだとは思うんですけどね~……」
夏紀「その、高坂って子と黄前ちゃんは、仲良いの?」
葉月「この前の県祭りは一緒に行ったみたいですけど」
葉月「あ、後同じ中学だったって」
葉月「あれ? でも確か最初はなんか久美子が気まずそうだったような……」
夏紀「なんで?」
葉月「なんか、中学の時に一言余計なことを言っちゃったみたいで……」
夏紀「あ~……黄前ちゃん、そういうのよくあるもんね」
葉月「つい口から出ちゃうみたいなんです」
葉月「まあそこが久美子の良いところだと思うんですけど」
夏紀「そう? 私たまに、余計なこと言ってるな、って思うことあるけど」
葉月「長い間一緒にいると、それに味を感じるようになるんです」
葉月「あ……そう言えばそうでしたね」
葉月「みどりの一件でつい忘れてましたけど……」
夏紀「……ってことは、案外的外れではないんじゃない?」
葉月「え、えぇ~?」
夏紀「お祭りで高坂ってこと何かあったから、調子が良くなった」
夏紀「で、その何かってのが……」
葉月「……ま、まさか……」ゴクリ
夏紀「そう……その、まさか……」
夏紀「つまり、付き合うように――」
あすか「たっだいま~!」
葉月・夏紀「「っ!!」」ビクッ!
あすか「なになに? 何か内緒話かな~?」
葉月「い、いや~……別に」
久美子「あ」
夏紀(あ)
夏紀「ちょっと、黄前ちゃんのこと話してて」
久美子「え?」
夏紀「黄前ちゃん、オーディションの日に誰かと愛を育んでいたらしくて」
久美子「えぇっ!?」
葉月「みどりが楽器片付けに行った時、高坂さんとキスしてるところ見たって」
久美子「き、キスっ!?」
あすか「おっ」
卓也・梨子「「えっ」」
久美子「あの時はその、励ましてもらっただけって言うか……」
あすか「励ましてもらうために、熱いベーゼを交わしたってのかい?」
久美子「だ、だからそれが間違いなんですって!」
久美子「ちょっとほっぺた挟まれただけで……!」
卓也「黄前……そうか……お前、そうだったのか」
久美子「ちょっと後藤先輩!?」
梨子「久美子ちゃん、愛の形は人それぞれだもんね」
久美子「梨子先輩ちょっとそういうの止めて下さい!」
夏紀(黄前ちゃんが何か謝りそうだったから誤魔化しに使っちゃったけど……今日はこれで良いかな)
夏紀(そういうのはまた、今度で)
夏紀「で、黄前ちゃん、実際はどうなの?」
久美子「だから夏紀先輩! さっきから言ってる通りですね――」
終わり
~~~オーディション結果発表から翌日~~~
校門前
「「あ」」
優子「……おはよ」
夏紀「おはよう」
優子「…………」
夏紀「…………」
優子「……あ、あんた、オーディション落ちたんだってねっ」
夏紀「うん」
優子「ふんっ、やっぱり去年サボってたのがダメだったのよ! これからはもっと真面目にやることね」
夏紀「そうだね」
優子「…………で、でも……ほら、あれよ」
夏紀「うん?」
夏紀「…………」
優子「な、なによその表情はっ」
夏紀「いや……まさか優子がそうやって励ましてくれるなんて思わなくて」
優子「は、はぁ!? 別に励ましたつもりはないんですけどっ!」
優子「ちょっと落ちて情けな~くなってるアンタをバカにしただけ!」
夏紀「どこがよ……全く」
夏紀「優子は合格、おめでとう」
夏紀「私の分まで頑張ってきて」
優子「あ、あんたこそいつもと違いすぎるわよ!」
優子「もっとこう……あるでしょ!?」
夏紀「なにが?」
優子「いつもの夏紀らしさがよっ!」
夏紀「何が忙しいのよ。まさか嫌がらせ?」
優子「そ、そんなことはしないわよ……」
優子「でもなんか、香織先輩に何かしてあげられることないかなとか、考えちゃったりとか……ともかく忙しいの!」
優子「じゃ、そういうわけで、合格した私は忙しいから!」
優子「落ちたアンタとは違うんだから!」
優子「もっと練習しておきなさいよ!」タッタッタッ…
夏紀「……ありがとう、優子」
夏紀「それと本当に、おめでとう」
終わり
そう言って出て行って、それでも私の苛立ちは消えなかった。
当然だ。
私は、私自身が何に苛立っているのか、分かっていない。
それがまた、私を苛立たせるのだ。
でも、それで怒っている訳ではない。
調子が良くないことなんてママある。
それが恋愛事だからといっておかしいなんて言うつもりはない。
むしろ普通だということも理解している。
だからこそ私は、それらを遠ざけ、そういったことで調子が狂わないようにしている。
それを相手に望むだなんて、そんな驕ったことを言うつもりもない。
それなのに……それらをこうして分かっているのに、私の心はこうして荒れている。
それが自分でも分からない。
パートでまとまれないのならもっと練習する。
まとまれない理由が練習不足でないのなら、個人練に切り替える。
今回の判断も何も間違えてはいない。
上と下が何か揉めている時だって、私はずっと真ん中に立って、ずっとそうしてきた。
それなのに、どうしてこんなにも私は……。
……やってしまったと、後悔しているのだろう。
香織の音かとも思ったが……違う。
香織では、こんな音は出せない。
こんな、先を見据えて、遠くの目標に向けて吹く、力強い音なんて……。
あすか「…………」
つい最近、どこかで聞いたような音の混じり。
気になってつい、そちらへと足を向けてしまっていた。
私では分からない領域での音の差しかない。
でももし、香織とこちらの音のどちらかしか取れないと言うのなら……。
あすか「……高坂ちゃん」
発信源は、やはりというかどういうべきか。
黒い髪を風に靡かせた、期待の一年生だった。
確認のための呟きすらも聞こえたのか。練習の手を止め反応してくれる。
あすか「ああ、ごめん。邪魔するつもりはなかったの」
麗奈「何か、楽器のことで用事が?」
あすか「ううん。そういうのでもないの。ただ良い音が聞こえたから足を運んだだけ」
麗奈「……そうですか」
少し間を取ってから、楽譜へと向き直る。もしかしたら照れてくれたのかもしれない。
やっぱり、心を惹きつける。
漠然とした目指す先を、必死に見据えようと明け暮れる、その音の旋律は。
ただそれでも、技術的には私の方が上だろう。
まあ、別楽器で比べること自体間違えているけれど。
でも……それなのに、惹きつけるのだ。
彼女の音は。
あすか「……あ」
ふと、分かった。
その音の中に、我が部の後輩に感じた成長と、同じものがあるということを。
オーディションのための課題範囲と、ソロパートの練習を終えるまでしっかりと聞いてから、私はようやく声をかけた。
あすか「なんで、トランペット吹いてるの?」
麗奈「吹きたいからです」
楽譜を捲る手を止めて、真っ直ぐにこちらを見据えるその瞳。
麗奈「先輩がユーフォを吹いてるのも、同じですよね?」
あすか「うん。私も同じ」
あすか「でもね、なにか違うの」
勝手なことを言う私に嫌な顔一つせず、彼女は少しだけ顎に手を当て考えてから、ある質問をぶつけてきた。
麗奈「なら先輩は、誰と吹くために練習しているんですか?」
答えようと吸って、言葉を乗せて吐こうとしたその息が、詰まってしまったから。
紡ごうとした言葉は、脳裏に浮かんだ香織と晴香の名前。
でも……その寸前で。
彼女たちと吹くために私はユーフォをやっている訳ではない、という言葉が過ぎってしまったのだ。
麗奈「なら、私と同じですね」
さっきと同じやり取り。
でも、ここからが違った。
麗奈「私も自分のために、その人と吹きたいからやってます」
あすか「え?」
麗奈「どうしても一緒に吹きたい人がいるんです。その人と少しでも長く、繋がっていたい。だから、吹いています」
あすか「ちょ、ちょっと待って。それのどこが私と一緒なの?」
麗奈「? その人と一緒に吹くのが自分のためになるから、自分のために練習してる、って言ったんですよね?」
あすか「違う違う。私の場合は、本当に誰もいないの。だから自分の為って言っただけ」
というか、自分のため、と聞いて、そういう意味に取るほうが難しいように思う。
あすか「そういうことかな~」
麗奈「それは……」
あすか「なに? 自分勝手?」
麗奈「いえ……羨ましいな、と」
あすか「え?」
麗奈「だって、そうして自分のためだけに練習をしていてもついて来てくれる人がいると、信頼している、ってことですよね」
あすか「…………」
麗奈「私はまだ、そういう風になれませんから……」
私は、私のためだけに音楽をやってきた。
そこに周りがついて来なくても良いと思っていた。
でも……この子に問いかけられたその時、脳裏を過ぎった二人。
香織と晴香の二人。
この二人なら、私が私のために頑張っていてもついてきてくれると、自分でも気付かぬ内に信じきっていたのだ。
低音パートの皆は、きっとこんな私について来てくれない。
ついて来られない。
だから、ついて来てほしいから、一緒に、必死に練習したい。
それなのに、それを止められたから……。
皆で一緒に吹きたいのに、会場で音を奏でたいのに……それに届かないかもしれないのに、届かせようとする努力に水を差されたから。
焦って、しまって……。
だからこんなにも、私は……。
その答えを抱いた瞬間、ストンと、何かが落ちる音が聞こえた。
そうだ。
それほどまでに私は、あの低音パートの皆のことが、好きだったのだ。
あすか「……訂正。高坂ちゃん」
麗奈「はい?」
黙って指の動きのおさらいをしていた彼女に、私は感謝の意が伝わるように、自然と浮かんだ満面の笑みを向けた。
あすか「私、今は低音パートの皆と一緒に吹きたいから、練習してるのっ」
もしかしたら、気付かぬ内に私の音の中にも、黄前ちゃんや高坂ちゃんみたいな音が混じっていたのかもしれない。
……確認したい! 今すぐにでもっ!
あすか「だからアデュー! 私も練習に戻ることにするよ! ありがとう! 高坂ちゃんっ!」
麗奈「?」
首を傾げるだけの彼女に手を降って、私はユーフォを担いで譜面台を手に持って、いつもの練習場所へと駆け出した。
その心は苛立ちの原因を知ったからか。
高坂ちゃんのトランペットの音のように、遠くまで透き通っていた。
終わり
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- 2017年09月25日 12:07
- 次の劇場版は9月末公開だよ!(ダイマ)
原作新作出したからかな