のび太「もしもぼくが糸使いになったら」
のび太「川!」バッ
のび太「はしご!」ババッ
のび太「東京タワー!」バババッ
ドラえもん「君も相変わらずあやとりが好きだね」
ドラえもん「その才能がもっと勉強や運動といった方面にあればねえ……」
のび太「うるさいな! ほっといてよ!」ブチッ
のび太「あ、あやとりの糸が切れちゃった!」
のび太「どうしてくれるんだよ!」
ドラえもん「しょうがないなぁ……」モゾモゾ…
ドラえもん「未来のあやとりの糸~!」
ドラえもん「この糸はとても丈夫で、長さも自由自在なんだ」シュルルッ
ドラえもん「これを使えば、君ならすごいあやとりができるかもしれない」
のび太「へぇ~、貸して貸して!」
のび太「よっ、ほっ」バッババッ
のび太「わっ、ホントだ! すっごぉ~い!」
ドラえもん「ま、頑張りなよ」スタスタ
ドラえもん「うわっ、なんだそれ!?」
ジャン!!!
のび太「ぼくが独自に編み出したあやとり“スカイツリー”さ!」
ドラえもん「す、すごい!」
ドラえもん(まさか、こんな短時間でこんなに糸を自在に操れるようになるなんて!)
のび太「川を進化させた“大河”!」バッ
のび太「はしごを進化させた“はしご車”!!」ババッ
ドラえもん「こりゃ大したもんだ」
ドラえもん「さっきはバカにしちゃったけど、ここまでくると立派な才能だよ」
のび太「へへへ、だろう?」
ドラえもん「ほら、どら焼き」
のび太「ああ、いいよ。ぼくの分はそこに置いといてくれれば」
ドラえもん「えっ?」
のび太「この糸で取るから」シュルンッ
ドラえもん(糸でどら焼きを取った!? まるで釣りみたいに!)
のび太「うん、おいし~!」ムシャムシャ
のび太「ほら、宿題もこの通り」サササッ
ドラえもん「むむむ、すごい! 答えは間違いだらけだけど!」
のび太「だろう?」
のび太(ひょっとしてこれ、もっと練習すればもっとすごい技ができるようになるんじゃ……)
のび太(よぉ~し……)
………………
…………
……
― 空き地 ―
ジャイアン「なんだと!? のび太のくせに俺たちに逆らう気か!?」
のび太「そうだよ、ぼくはもう君たちのいうことなんか聞かないよ」
ジャイアン「この野郎~!」ムカッ
スネ夫「やっちゃってよ、ジャイアン!」
のび太「やっちゃえるものならね」クイッ
ジャイアン「う!?」
スネ夫「どうしたの、ジャイアン!?」
スネ夫「はうっ!」ビクッ
スネ夫「ぼくも……動けない……」
のび太「君らの体の自由はぼくの糸で奪わせてもらったよ」
ジャイアン「な、なんだとぉ~!?」
ジャイアン「こんな糸! こんな糸ぉっ!」グッグッ…
のび太「ムリムリ、この糸は絶対切れないよ」
ジャイアン「わわっ!」グルンッ
スネ夫「体が勝手に!」グルンッ
ジャイアン「うわわぁぁぁっ!」グオオオッ
スネ夫「やめろぉぉぉっ!」グオオオッ
ドカボカバキッ! ボカドカバカッ! バキドカボコッ!
のび太「アッハッハ、いい気味だ!」
玉子「のび太、草むしりをしてちょうだい」
のび太「えぇ~、めんどくさいなぁ」
玉子「いつも昼寝ばかりしてるんだから、たまには家の手伝いをしなさい!」
のび太「やだよ。どうしてもっていうんなら、自分でやりなよ」クイッ
玉子「あうっ!?」ビクッ
玉子「体が動かない……!」
玉子「なんなのこれ!? どういうことなの!?」ブチッ
玉子「体が勝手に草むしりを……!」ブチチッ
のび太「草むしりってのは、草が伸びてるのに気づいた人が自分でやらなきゃ」
ドラえもん(のび太君、まさか……!)
のび太「お帰りなさい」
のび太「さっそくだけどパパ、欲しいマンガがあるからお小遣いちょうだい!」
のび助「なにをいってるんだ。今月の分はもうあげただろう。来月までガマンしなさい」
のび太「どうしても欲しいんだよ」ヒュルッ
のび助「むむ!?」ビシッ
のび助「体が勝手に財布を開いて、のび太に小遣いを……!」
のび太「えぇっ、こんなにくれるの!? どうもありがとう、パパ!」
ドラえもん(やっぱり……!)
ドラえもん(のび太君は“未来のあやとりの糸”を悪用している……!)
のび太「どうしたの、ドラえもん?」
ドラえもん「パパやママを糸で操るなんて、とんでもないことだ! 未来のあやとり糸を返せ!」
のび太「いやだよ。こんなにぼくと相性がいい道具、他にないもの」
ドラえもん「ぐぬぬ……だったら――」モゾモゾ…
のび太「おっと、そうはいかないよ」シュルンッ
ドラえもん「あっ、四次元ポケットが!」
のび太「念のためスペアポケットもいただいておこうかな」シュルルッ
ドラえもん(糸をぐるぐる巻いて、なにかを作っている……!?)
シュルルルルルルッ
ドラえもん(これは……まさか!?)
ジャーンッ!
ドラえもん「ネズミ!?」
ドラえもん「ギャーッ!!!」タタタタタッ
のび太「アッハッハッハ、大正解!」
ドラえもん「……というわけなんだ」
ドラえもん「頼む、のび太君を止めてくれ!」
ジャイアン「未来のあやとりの糸を使ってやがったのか、なんかおかしいと思ったぜ!」
スネ夫「任せといてよ! タネさえ分かればあんな奴!」
しずか「あやとりが得意なのび太さんが糸を悪用したら大変なことになっちゃうわ!」
ドラえもん「のび太君はあやとり技を披露しに空き地に来るはずだ。頼んだよ!」
ジャイアン「よく来たな、のび太!」
スネ夫「よくもやってくれたな!」
ジャイアン「糸を使うって分かってりゃもう怖くねえ! このバットでブン殴ってやる!」
スネ夫「このラジコンカーで追い回してやる!」
のび太「ん? ぼくに挑むつもり?」
ジャイアン「どういう意味――」
のび太「ほいっ」クイッ
スパパパパパパッ!!!
ジャイアン&スネ夫「!?」パラパラ…
ジャイアン「わわっ、俺らの服が……!?」
スネ夫「うわわ、裸になっちゃった!」
のび太「君らの姿を見かけた瞬間、糸を張り巡らせておいたのさ」
ジャイアン「なんだとぉ~!?」
スネ夫「こ、こんなのインチキだ!」
スネ夫「ママァ~!」タタタタタッ
のび太「アッハッハッハッハ! どんなもんだい!」
しずか「のび太さん!」
のび太「し、しずかちゃん!」
のび太「しずかちゃん……」
のび太「残念だけど、そうはいかない」シュルッ
しずか(のび太さんの糸が、私の小指に……!?)ギュッ…
のび太「ほら、これでぼくたちは糸と糸でつながった」
しずか「…………!」ビビビッ
しずか「のび太さん、ステキ!」
ドラえもん(のび太君の糸の技は、とうとう心を操るレベルにまでなったのか……)
ドラえもん(こうなったら頼れるのは彼しかいない!)
出木杉「野比君があやとりの糸を悪用してる?」
ドラえもん「うん、すでにぼくとジャイアン、スネ夫はやられちゃって」
ドラえもん「しずかちゃんものび太君のとりこになっちゃった」
ドラえもん「今は糸のバリアーを張って、空き地に陣取って王様気取りになってる」
出木杉「つまり糸の弱点を突かなきゃならないわけか……」
出木杉「う~ん……だったらあれしかないな」
ジャイアン「おう、分かったぜ!」
ジャイアン「ボエ~~~~~~~~~~~!!!!!」
出木杉「ぐうう……っ!」
ドラえもん「オエーッ!」
スネ夫「し、死ぬ……!」
ドラえもん(出木杉君は録音したテープをどうするつもりなんだ?)
出木杉「この空き地中に張り巡らされた、野比君の糸……これは弱点にもなりえる」
出木杉「この一部にコップをつけて、録音した歌を流せば――」
出木杉「歌が糸をたどって持ち主に伝わり、野比君を倒せるはずだ!」
ドラえもん「なるほど、糸電話の要領か! さすが出木杉君!」
出木杉「じゃあ、やるよ」カチッ
『ボエ~~~~~~~~~~!!!!!』
ボエェェェェェェ!!!!!
のび太(な、なんだ、糸をつたってくるこの不快な音は!? ジャイアンの歌か!?)
ボエェェェェェェェェ!!!!!
のび太「ぐう、ううう……!」
ボエェェェェェェェェェェ!!!!!
のび太「お、おええっ……!」
のび太(こんなアイディアを思いつくのは……たぶん出木杉だな! さすが出木杉!)
のび太(だけどなんのこれしき……! 今のぼくは無敵なんだ……!)
のび太(このエネルギーを跳ね返してやる!)クイッ
ドラえもん「どうしたの!?」
出木杉「ま、まずい! 野比君に歌のエネルギーが跳ね返されて――」
ボエ~~~~~~~~~~!!!!!
出木杉「ぐうううう……っ!」ビリビリッ…
ドラえもん「うわぁぁぁぁぁっ!」ビリビリッ…
出木杉「糸使いとしての野比君の実力は、ぼくの想定をはるかに超えている……!」
ドラえもん(あの出木杉君にここまでいわせるなんて……)
ドラえもん(どうやら、ぼくはとんでもない怪物を生み出しちゃったみたいだ)
ドラえもん(とりあえず、今日のところは引き上げるしかないか……)
のび太「そりゃそうさ! 今のぼくは無敵さ!」
のび太「だって、どんな人も操れるし、どんな武器も取り上げられるんだから!」
のび太「さぁて、邪魔者がいなくなったところで、あやとりしようかな」
のび太「ねえ、しずかちゃん?」
しずか「はい……のび太さん」
のび太「糸を使えば、女の子の心だってこの通りさ」
のび太「はしご!」ババッ
のび太「東京タワー!」バババッ
しずか「キャーッ、のび太さんステキー!」
のび太「アハハ、あやとりは楽しいなぁ! アッハッハ……」
のび太「…………」
しずか「のび太さん?」
のび太(こうやって、普通にあやとりしてるだけで楽しかったのに……)
のび太(道具を悪用して、ジャイアンたちをやっつけて、しずかちゃんを自分のものにして……)
のび太(こんなことして、ぼくの大好きなあやとりは喜んでくれるのか!?)
のび太(いや、きっと悲しんでるにちがいない)
のび太(ぼくは……ぼくは……ッ!!!)
のび太「しずかちゃん」
しずか「――! あら、のび太さん!」
のび太「君の心を縛ってた小指の糸は外したよ。もう帰っていいよ」
のび太「ごめんね、しずかちゃん」
しずか「のび太さん……」
のび太「ただいま、ドラえもん」
ドラえもん「のび太君!?」
のび太「迷惑かけたみんなに謝ってきた。未来の糸も返すよ。ぼくは普通の糸であやとりできればいいや」
ドラえもん「……そりゃどうも」
ドラえもん「でもどうして、急に心変わりしたの?」
のび太「うん、あやとりをやってたら、なんだか急に自分のやってることがバカバカしく思えてきてね」
のび太「だから、もういいんだ」
のび太「今日はごめんね、ドラえもん」
ドラえもん「分かってくれたらいいんだよ」
のび太「おやすみ」
のび太「ぐぅ……ぐぅ……」
ドラえもん「あやとりの“綾”には模様って意味の他に、“入り組んだもの”っていう意味もあるけど」
ドラえもん「もしかしたらあやとりが――」
ドラえもん「そんな複雑に入り組んだのび太君の心を解きほぐしてくれたのかもしれないな」
おわり
元スレ
のび太「もしもぼくが糸使いになったら」
http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1502897970/
のび太「もしもぼくが糸使いになったら」
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コメント一覧 (24)
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- 2017年08月17日 04:33
- どらえもののび太は糸を使ったな
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- 2017年08月17日 04:41
- どこぞのアメリカン蜘蛛男やイトイトの実の能力者も真っ青の能力の持ち主だった…
これに銃と昼寝の才能を併用すれば…
話は変わるけど、前にネットのどこかで見たが、のび太に銃の才能があるのは、平和な日本では役に立たない、未来永劫その才能が戦争とかで役に立って欲しくないという作者の藤子F先生の願望からっていう、読者の考察(あくまで妄想)があるらしいね
正直、見たときはちょっと納得した
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- 2017年08月17日 04:42
- 眼鏡の糸使い…
分の悪い賭けにBETしたウォルター君が真っ先に浮かんだわ
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- 2017年08月17日 05:07
- へへへ、こんなところか糸引いてるじゃないか
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- 2017年08月17日 05:13
- あやとりするようになったのは消去法なんよね。本人いわく「別に特別好きというわけじゃないけど、腹も減らずくたびれず金もかからない遊びとなるとこれしかないもの」
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- 2017年08月17日 05:20
- U19を思い出したのは俺だけでいい
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- 2017年08月17日 06:52
- 俺はアラクニド思い出した
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- 2017年08月17日 07:02
- その昔、どらえも、という二次漫画があってだな…
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- 2017年08月17日 07:24
- 突然賢者モードになるのびあるある~
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- 2017年08月17日 08:15
- あやとり以上に下着を抜くのが得意なイケメンのび太なんていなかった
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- 2017年08月17日 08:34
- 何年か前の映画でものび太はあやとりのヒーロー能力持ってたな。終盤でしか役に立たなかったけど
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- 2017年08月17日 08:39
- どらえもで通り過ぎた場所
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- 2017年08月17日 09:24
- のび太くんはこんなヒデェ事しねぇよ
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- 2017年08月17日 16:15
- なんで赤屍さんとかウォルターは強キャラなのに伊賀の若造はすぐ殺されてしまうん?
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- 2017年08月17日 16:53
- ※14 終盤で反省するまでがテンプレだけど道具の悪用は原作にも結構あるし、多少はね?
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- 2017年08月18日 01:08
- 糸を張り巡らせておいたのくだりでアラクニド思い出した
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- 2017年08月18日 03:27
- いまじゃ胡散臭いけど初期のブギーさんはカッコイイ糸使いだった
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- 2017年08月18日 06:50
- 糸キャラ特徴
不幸な過去
利便性から主役サイドか強ボスサイドの重要ポスト
死に際は報われない
女にモテるが惚れた女と結ばれない
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- 2017年08月31日 05:39
- この>>1は原作読んでるな
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- 2017年09月10日 04:09
- のび太ってバトル漫画だと強キャラ要素強いよな
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- 2018年06月07日 17:01
- てっきりドフラミンゴにでも
なるつもりかと…
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- 2018年08月19日 09:48
- 甲賀のオッサン「フッフッフッ、コレでは綾取りごっこも出来まい!」
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- 2020年07月29日 22:52
- 遠距離は熱線銃、中近距離は綾取りで、戦えばかなり強い
ドラえもんとかイジメ多いから子供にみせたくないアニメだけど