成金娘「どぉう? 明るくなったでしょ?」男「金を粗末にするな」
- 2017年05月25日 00:10
- SS、神話・民話・不思議な話
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ワイワイ… ガヤガヤ…
成金娘「オーッホッホッホ!」
成金娘「皆さま、今日は私の誕生日パーティーにお集まりいただき、本当にありがとう!」
成金娘「天井のシャンデリアも私を祝福するように、美しく輝いておりますわ!」
フッ…
成金娘「あら? シャンデリアの明かりが消えてしまいましたわ!」
ドヨドヨ…
成金娘「私がすぐ明かりをつけてみせますわ!」
成金娘「この一万円札を燃やして……」シュボッ
メラメラ…
成金娘「どぉう? 明るくなったでしょ?」
成金娘「オーッホッホッホッホッホ!」
成金娘「もういいわよ、執事。明かりをつけてちょうだい」
客B「さ、さすがは今をときめく成金様のご令嬢だ!」
客C「とても明るくなりましたよぉ~」
成金娘「そうでしょう、そうでしょう? もっと褒めて下さってもよろしくてよ」
男「……」ツカツカ
男「……」
パシッ
成金娘「痛っ!」
男「金を粗末にするな」
男「あんた、今自分が何をしたのか分かってるのか?」
男「あんたが燃やした一万円札……それだけ稼ぐのがどれだけ大変か分かってるのか?」
成金娘「ハァ? そんなこと分かるわけないでしょ!?」
男「だろうな……」ハァ…
成金娘「な!」
男「気分が明るくなるどころか、すっかり暗くなってしまった」
男「俺は帰らせてもらう……」スタスタ
成金娘「ちょ、ちょっと! ちょっと待ちなさいよ!」
ドヨドヨ… ドヨドヨ…
客B「これだけ大きなパーティーですから、頭のおかしい奴も一人ぐらいいますって!」
客C「さ、パーティーを続けましょう! しかし、あの男どこかで見たような……」
成金娘「ぐぬぬ……!」
成金娘「執事!」
執事「は、はいっ!」
執事「それがその……よく分からんのです。出席者名簿にもデタラメな名前を書いてたようで……」
成金娘「なんでそんな人がこの会場に入れてしまうの!? たるんでるわ!」
執事「も、申し訳ありません……」
成金娘「とにかく……このままじゃ気が収まらないわ!」
成金娘「あの人の後をつけて、どこの誰だかを割り出すのよ!」
執事「分かりました! やってみましょう!」
執事「お嬢様、あの者の住居が分かりました!」
成金娘「どこに住んでるの?」
成金娘「パーティーに参加してたってことは、あの男もそれなりの富裕層なんでしょう?」
執事「それが……」
ボロッ…
成金娘「……なにここ」
執事「どうやらあの男はここに住んでいるようで……」
成金娘「こんなボロアパート暮らしの分際で、私をひっぱたいたっていうの!?」
成金娘「不愉快にも程があるわね!」
成金娘「案内ありがと、執事。あとは……私自らあの男に意見してやる!」
執事「ええっ!?」
成金娘「……」コンコン…
男「はい」ガチャッ
男「あんたは……」
成金娘「もう一度あなたとお話ししたくて、はるばるやってきたの」
成金娘「中に入れて下さる?」
男「……どうぞ」
成金娘「私のパーティーに参加した人間が、こんな貧相な暮らしをしてるとは思わなかったわ」
男「そっちこそ、俺みたいな奴の部屋に来て大丈夫なのか?」
成金娘「お金持ちというのは時折“お忍び”をするものよ。常識でしょ?」
男「まあたしかに……」
男「それより、なぜ俺の部屋に?」
成金娘「決まってるでしょ! 私を叩いたことを謝ってもらうためよ!」
男「……」
成金娘「なんですって!?」
男「金を稼ぐ大変さも知らない小娘に、頭なんか下げたくないからな」
成金娘「小娘ですってぇ~!?」
男「いいとも」
男「10回でも100回でも謝ってやろう」
成金娘「いったわね!」
成金娘「だったら……あなたが私にその大変さってもんを教えてみなさい!」
男「いいだろう」
男「明日から一週間ほど、そこで働いてもらおう」
男「もしきっちり勤め切ることができたら……給料は払うし、頭も下げよう」
成金娘「……分かりましたわ!」
成金娘(あら……? いつの間にか妙な流れに……)
―豪邸―
成金娘「執事、パパは?」
執事「成金様は、ダイキギョー社の重役との会合に出かけております」
執事「あの世界的大企業と繋がりができれば、成金様の立場はさらに盤石になりますからな」
成金娘「ふうん、パパも頑張ってるのね。だけど今日からは私も頑張るわ」
執事「と、おっしゃいますと?」
成金娘「私、今日からおバイトしますの!」
執事(おバイト!?)
成金娘「ごきげんよう」
男「すっぽかすことも考えてたが、ひとまずは逃げなかったようだな」
成金娘「まあご挨拶だこと。さあ、さっそくお掃除を始めましょう」
男「その前に……この制服に着替えてもらおう」
男「あんなヒラヒラしたドレスのままで掃除なんかできるわけないだろう」
男「さ、掃除用具を持って、売り場に出るぞ」
ワイワイ… ワイワイ…
成金娘(まったく……こんな庶民どもの中に放り込まれるなんて……)
成金娘「なにをすればよろしいの?」
男「スーパーの床にはこういう靴の汚れ(ヒールマーク)が大量にある」
男「これに洗剤をつけて、モップやスポンジで拭くんだ」シュッシュッ フキフキ…
成金娘「こんなの簡単ですわ!」シュッシュッ フキフキ…
成金娘「どぉう? キレイになったでしょ?」
男「一個消したぐらいで、いちいち騒ぐな」
男「汚れはまだまだ大量にあるんだからな」
ズラーッ
成金娘「げぇっ!?」
成金娘「見た目に反して結構な重労働ですわ!」フキフキ…
男「拭き方が甘い!」
男「洗剤を床に残すな! お客さんが滑って転んでしまうぞ!」
成金娘「は、はいっ!」フキフキ…
男「割れてるビンを回収してくれ」
男「ああっ、なにやってる! ガラスを素手で拾う奴があるか! ビニール袋も何重にしろ!」
男「コラコラ、お客さんの通り道を塞ぐな!」
成金娘「き、きついですわ……」
男「なにをいってる。まだ一時間しか経ってないよ」
成金娘「ええっ、ウソでしょ!?」
男「これで……900円ぐらい稼いだことになるな」
成金娘「これだけ頑張って、たったの……900円……!?」
成金娘「私帰ります!」
男「……尻尾を巻いて逃げるのか?」
成金娘「む」
男「お札は燃やせても……仕事に燃えることはできないようだな」
成金娘「むむぅ~……やってやりますわ! このスーパーを明るくしてみせますわぁっ!」
男「その意気だ」ニッ
成金娘「疲れ……ましたわ……」
男「……今日はこれぐらいでいいだろう」
男「ほら、お前さんが掃除したところを見てみろ」
キラキラ…
男「どうだ、明るくなったろう」
成金娘「本当ですわ……!」
男「また明日も来てくれるかな?」
成金娘「いいとも! ……ですわ!」
―スーパーマーケット―
成金娘「さぁ、今日もはりきって参りますわ!」
男「昨日よりもだいぶいい顔になったな」
成金娘「ホコリを取りますわ!」
男「ホコリってのははしっこに溜まるんだ。真ん中ばかりやっても意味ないぞ」
幼女「おかあしゃぁぁぁん! どこぉぉぉ!」
成金娘「ま、迷子ですわ!」オロオロ…
男「おろおろするな。ベテランの店員さんに預ければ、何とかしてくれる」
成金娘「はいっ!」
男「――ん?」
子供「あっ!」コロコロ…ボチャン
子供「うぇ~ん! 100円玉をドブに落としちゃったよ~!」
成金娘「坊や、私が100円をあげ――」
男「……いや」
男「ほら、取れた」ザバッ
男「キレイに洗って……これで使えるはずだ!」キラキラ…
子供「わぁ~、どうもありがとう!」
成金娘(すごい……たった100円のためにためらいなくドブに手を突っ込むなんて……)
成金娘「どうしてあなたはそんなにもお金を大切にするの? 大切にできるの?」
男「……そろそろ話してもいい頃か」
男「昔、俺は……若くして一財産を築いた」
成金娘「えっ……」
男「しかし、金儲けの才能はあっても、心が貧しすぎた……そして若すぎた」
男「それこそお前さんのことを笑えないようなバカもやったもんさ」
『札束でキャンプファイヤーだ! ギャハハハーッ!』
ボォォォォォ…
『間違えて、万札でケツ拭いちゃった! ま、いいや! 流しちゃお!』
ジャァァァァ…
『ほーら、金だ金だーっ! 拾え拾えーっ! お池の鯉みたいになーっ!』
アッハッハッハッハ…
男「札束でキャンプファイヤーなんてやらかすような男が、極貧生活に耐えられるわけがない」
男「絶望し、街をふらふらとさまよい、うなだれ、もう死のう……と思った」
男「――そんな時だった」
『お兄さん、どしたの?』
『話しかけんなよ……あっち行けよ、クソガキ』
『いいじゃない。ね、どうしたの?』
『金が……ないんだ』
『だったら……はい、100円あげる! あっちの店でコロッケ買えるわよ!』
『……ありがとう』
男「おかげで俺は……生きる気力を得ることができた。お金の重みを知った」
男「そして……再起することができたんだ」
男「あの頃の自分を反省して、今はあまり目立たないようにしている」
成金娘「そうだったんですのね……」
男「……」
成金娘「よぉーし、あなたに負けてられませんわ! 私もお金の重みを知れるよう、頑張りますわよ!」
男「一週間、お疲れさま」
男「ほら、給料だ。現金で払わせてもらう」サッ
成金娘「……!」ズシッ…
成金娘「お、重い……!」
男「だろう?」
男「額は微々たるもんだとしても、自分で稼いだ金ってのは、また格別なもんさ」
成金娘「ええ……ホント……重みが違いますわ」
成金娘「約束?」
男「いったろ? あんたが金を稼ぐ大変さを知ったら、謝るって」
男「誕生日パーティーではひっぱたいてしまって、すみま――」
成金娘「待って! 謝らないで!」
男「え……」
成金娘「改めて、こちらから謝りますわ」
成金娘「あの時はお金を粗末にしてしまって、本当にごめんなさい!」
成金娘「私、これからは心を入れ替えますわ!」
男「そういってもらえると……こっちとしても、これだけのことをしたかいがあったよ」
男「いや……それはやめといた方がいい」
男「実はもう俺はあのスーパーとの契約が切れる時期だし、アパートも引っ越す予定なんだ」
成金娘「そうでしたの……」
成金娘「また……会えますわよね?」
男「二人とも、明るい人生を送っていれば、いつか必ず会える」
成金娘「……分かりました」
男「またいつか」
成金娘「お会いしましょう!」
ブロロロロ… キキッ…
運転手「さ、どうぞ。お乗りください」ガチャッ
男「彼女がいなくなるのを見計らって来てくれたのか、どうもありがとう」
運転手「運営サイドに根回しして彼女の誕生日パーティーに身元不詳で潜り込み、彼女を挑発」
運転手「古いアパートを借りて、スーパーマーケットの清掃員にまでなって……」
男「アパートの大家さんやスーパーの店員さんたちには、十分謝礼を払っておいてくれ」
運転手「それはもちろんです。が、なぜ、そこまでしてあの娘を?」
運転手「こういってはなんですが、彼女の父である成金は経済界ではまだまだ小物です」
運転手「挫折からはい上がりダイキギョー社を創設・成長させたあなたが目をかけるほどの人物とはとても……」
男「彼女は覚えてなかったが、かつて私は彼女によって命を救われたからね……」
男「その命の恩人が、昔の私のようになってると知ったら、いてもたってもいられなくなったんだ」
男「彼女はもう……お金など燃やさずとも、人々を明るくできるだろう」
男「そうしたら……また会いたいものだ」
ブロロロロ…
~おわり~
元スレ
成金娘「どぉう? 明るくなったでしょ?」男「金を粗末にするな」
http://vipper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1495629964/
成金娘「どぉう? 明るくなったでしょ?」男「金を粗末にするな」
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コメント一覧 (24)
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- 2017年05月25日 00:20
- 娘さん成長して大分汚れたが、心を入れ替えられたようで良かったよ。
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- 2017年05月25日 00:38
- 政財界では?
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- 2017年05月25日 00:46
- 俺も太陽の光を反射して世の中を明るくしているはずなのに、どうして世の中の目線はこんなに冷たいのだろう
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- 2017年05月25日 00:47
- 普通に良い話だった
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- 2017年05月25日 01:08
- 話の作り方が上手いですなぁ
-
- 2017年05月25日 01:11
- 頼む、もっと続いてくれ
こういうの大好きなんだ
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- 2017年05月25日 01:22
- テンプレですなぁ
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- 2017年05月25日 01:28
- こういうまとまってるSS好き
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- 2017年05月25日 01:42
- 経済だと雑誌になるな。
※3
反射するからだろ
自らの意志で光らないと「太陽拳」でも習っとけ。
ソモソモアカルイトコロデヒカッテモイミガナイ
クルマハヒルマライトツケルカ?
ところどころ言葉がアレなのは成金だからなのか
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- 2017年05月25日 02:00
- ※9がキモすぎる件について
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- 2017年05月25日 02:12
- ジャングルポケットのコントでありそうなオチ、すこ
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- 2017年05月25日 08:56
- 男「どうだ明るくなったろう」
は笑った
-
- 2017年05月25日 12:32
- ※9
読みづらいし読んだら寒気がした
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- 2017年05月25日 15:13
- 一時間でこれだけこなせるって相当優秀じゃね?
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- 2017年05月25日 15:57
- ※9がキモすぎて☆1つ減らしたわ
-
- 2017年05月25日 15:58
- これは良いSS
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- 2017年05月25日 16:58
- 王道でそれが凄く良い
何より構成と文章が凄く読みやすかった
-
- 2017年05月25日 18:26
- イイネ・
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- 2017年05月25日 19:50
- 冒頭の段階で落ちが読める上に、その予想通りに軟着陸してるから驚きも感嘆もない。
王道じゃなくて陳腐。
-
- 2017年05月25日 22:07
- 思ってたのとちがくなかった
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- 2017年05月26日 18:50
- ※9がきもちわるい
背筋がゾッとした
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- 2017年05月26日 23:41
- いじりネタとかそういうの抜きで※9が気持ち悪すぎてやばい
異世界転生系のラノベばっか読んでそう(偏見)
あ、SSはとても良かったです
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- 2019年07月04日 00:06
- 輝くの意味が違う
-
- 2019年07月04日 00:08
- >>22
お前も9と同じくらい気持ち悪いぞ。
※とか使っちゃって。
人間として終わってるな