1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 22:37:27.33 :pAViFCvW0
FF零式の公式ムービーを書き起こしたものです。懐かしい気持ちで、作品を知っている方は見ていってやってください。
2:age:2022/01/18(火) 22:38:27.53 :pAViFCvW0
午前十時五十一分。
戦争で巻き荒れた砂塵渦巻く街の中を、一人の若い朱雀兵が歩いていた。
白虎兵、朱雀兵。
彼の前には白や赤といった色を基調とした兵装を纏った死体が、いくつも転がっている。そしてまた、幾ばくも無いままに、彼も死体のうちの一つになることは、想像に難くない。
息も絶え絶えといった様子で、彼は上空を見上げる。見上げれば、巨大な白虎軍の空挺がいくつも浮かんでいる。
戦況は不利。すでに朱雀の領土のほとんどには、虎のマークの旗が鎮座していた。
「ポイントは……まだ先か」
彼は一人ふらふらと歩き続ける。眩暈をこらえながら、彼は重要な任務のために歩き続けた。
途中、何人か赤の兵が密集している場所を見つける。
「みんな……無事か?」
流れ込む安堵感が、彼を確かに弱くする。
こわばっていた両足からは力が抜け、彼は無様にその場に倒れこんだ。
目の前にいる朱雀の女兵と目が合う。
二人とも、力という力を失ったようなありさまだった。
「赤いマントの……若い兵を、みなかったか?」
「見てない」
吐き捨てるように、彼女はそう言った。
「そうか……」
「あんたはなに――」
午前十時五十一分。
戦争で巻き荒れた砂塵渦巻く街の中を、一人の若い朱雀兵が歩いていた。
白虎兵、朱雀兵。
彼の前には白や赤といった色を基調とした兵装を纏った死体が、いくつも転がっている。そしてまた、幾ばくも無いままに、彼も死体のうちの一つになることは、想像に難くない。
息も絶え絶えといった様子で、彼は上空を見上げる。見上げれば、巨大な白虎軍の空挺がいくつも浮かんでいる。
戦況は不利。すでに朱雀の領土のほとんどには、虎のマークの旗が鎮座していた。
「ポイントは……まだ先か」
彼は一人ふらふらと歩き続ける。眩暈をこらえながら、彼は重要な任務のために歩き続けた。
途中、何人か赤の兵が密集している場所を見つける。
「みんな……無事か?」
流れ込む安堵感が、彼を確かに弱くする。
こわばっていた両足からは力が抜け、彼は無様にその場に倒れこんだ。
目の前にいる朱雀の女兵と目が合う。
二人とも、力という力を失ったようなありさまだった。
「赤いマントの……若い兵を、みなかったか?」
「見てない」
吐き捨てるように、彼女はそう言った。
「そうか……」
「あんたはなに――」
【画像】主婦「マジで旦那ぶっ殺すぞおいこらクソオスが」
【速報】尾田っち、ワンピース最新話でやってしまうwwww
【東方】ルックス100点の文ちゃん
【日向坂46】ひなあい、大事件が勃発!?
韓国からポーランドに輸出されるはずだった戦車、軽戦闘機、自走砲などの「K防産」、すべて霧散して夢と終わる可能性も…
3:saga:2022/01/18(火) 22:39:17.53 :pAViFCvW0
突如、二人の間に爆発が起こる。
彼は吹き飛ばされ、戦渦で裸になった街の地面に投げ出された。
「いたぞ!」
――白虎兵が、集まってくる。
先ほどの爆発で、何人かの朱雀兵が火だるまになっている。
「殺せ!」
無慈悲な白虎兵たちは、そんな彼らをも残酷に殺していった。
傷ついた朱雀兵が傷に痛み、苦しむ声も、一瞬で聞こえなくなっていった。
彼は喉奥から搾り出すような悲鳴を上げながら、情けなく地面を這いつくばって逃走を試みる。
助かりたい一心で。
生き延びたい一心で。
しかし、二人の白虎兵が目ざとく彼を見つけた。
這って進む彼の傍に銃弾が着弾する。地面を抉る死の音を傍らに、彼は必死に進むも、二組の白虎兵は死神のようにゆっくりと彼に近づいてきた。
「ひっひっ。うっ。うう」
彼の目と鼻の先まで白虎兵は迫っている。
彼の眼には、銃のトリガーに指をかけた、死神達の姿がよく見えた。
――クェー!
つんざく獣の咆哮。
突如、二人の間に爆発が起こる。
彼は吹き飛ばされ、戦渦で裸になった街の地面に投げ出された。
「いたぞ!」
――白虎兵が、集まってくる。
先ほどの爆発で、何人かの朱雀兵が火だるまになっている。
「殺せ!」
無慈悲な白虎兵たちは、そんな彼らをも残酷に殺していった。
傷ついた朱雀兵が傷に痛み、苦しむ声も、一瞬で聞こえなくなっていった。
彼は喉奥から搾り出すような悲鳴を上げながら、情けなく地面を這いつくばって逃走を試みる。
助かりたい一心で。
生き延びたい一心で。
しかし、二人の白虎兵が目ざとく彼を見つけた。
這って進む彼の傍に銃弾が着弾する。地面を抉る死の音を傍らに、彼は必死に進むも、二組の白虎兵は死神のようにゆっくりと彼に近づいてきた。
「ひっひっ。うっ。うう」
彼の目と鼻の先まで白虎兵は迫っている。
彼の眼には、銃のトリガーに指をかけた、死神達の姿がよく見えた。
――クェー!
つんざく獣の咆哮。
4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 22:40:00.67 :pAViFCvW0
「なんだ?」と白虎兵。
次の瞬間、当の本人は宙に投げ飛ばされていた。
鎧を纏い、くちばしが赤く染めあがったチョコボが雄たけびを上げている。
素早くもう一人の白虎兵がチョコボに銃を向ける。
鋭い緊迫感の流れる中、若い朱雀兵は必死で地面に落ちている剣を拾い、咄嗟に白虎兵に突き出した。
「うああああ!」
必死だった。
もんどりうって倒れる白虎兵。それに跨り、トドメの一撃をくれてやる若い朱雀兵。
命のやり取りは、一瞬にして終わった。
――生き延びたのか。
彼は深く目を瞑り、疲れ果てたように後ろに倒れる。声にも似つかない声のようなものが喉奥から漏れ、ただ呻いた。
荒く荒く、彼は息を吐く。
そんな彼の様子を、鎧を纏ったチョコボは彼を心配そうに見下ろした。
いつもそうするように、チョコボは頭を彼の首元に近づける。
「チチリ」
「なんだ?」と白虎兵。
次の瞬間、当の本人は宙に投げ飛ばされていた。
鎧を纏い、くちばしが赤く染めあがったチョコボが雄たけびを上げている。
素早くもう一人の白虎兵がチョコボに銃を向ける。
鋭い緊迫感の流れる中、若い朱雀兵は必死で地面に落ちている剣を拾い、咄嗟に白虎兵に突き出した。
「うああああ!」
必死だった。
もんどりうって倒れる白虎兵。それに跨り、トドメの一撃をくれてやる若い朱雀兵。
命のやり取りは、一瞬にして終わった。
――生き延びたのか。
彼は深く目を瞑り、疲れ果てたように後ろに倒れる。声にも似つかない声のようなものが喉奥から漏れ、ただ呻いた。
荒く荒く、彼は息を吐く。
そんな彼の様子を、鎧を纏ったチョコボは彼を心配そうに見下ろした。
いつもそうするように、チョコボは頭を彼の首元に近づける。
「チチリ」
5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 22:40:28.31 :pAViFCvW0
彼は自分の戦友であるチョコボの名を呼ぶ。
弱り切った彼の腕は、チチリの顎を愛おしそうに撫であげ、「くぇくぇ」とチチリは嬉しそうに鳴いた。
彼はもう一度目を瞑る。
――俺は……立ち上がらなくてはならない。
体も心も疲弊して、おまけに今大勢の仲間が死んだ。
けれど、新しく仲間が来てくれた。ずっと一緒にいた、頼りになる相棒が。
だから彼は立ち上がる。
奥歯を噛みしめながら、チチリの体を支えに、彼はなんとか立ち上がった。
「よし――まだだ。エースに、これを」
彼はチチリに跨り、戦場を駆け出した。
◇
彼は自分の戦友であるチョコボの名を呼ぶ。
弱り切った彼の腕は、チチリの顎を愛おしそうに撫であげ、「くぇくぇ」とチチリは嬉しそうに鳴いた。
彼はもう一度目を瞑る。
――俺は……立ち上がらなくてはならない。
体も心も疲弊して、おまけに今大勢の仲間が死んだ。
けれど、新しく仲間が来てくれた。ずっと一緒にいた、頼りになる相棒が。
だから彼は立ち上がる。
奥歯を噛みしめながら、チチリの体を支えに、彼はなんとか立ち上がった。
「よし――まだだ。エースに、これを」
彼はチチリに跨り、戦場を駆け出した。
◇
6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 22:41:04.97 :pAViFCvW0
タン、タン、タン、タン。
チョコボのチチリの駆ける音が、規則正しく耳に聞こえてくる。
上下に揺れる視界は、戦渦でボロボロになった街並みを映し出す。
今、この瞬間にもどこかからする爆発音が聞こえてくる。行く手にも、いくつもの黒い煙が、亡者の手のように伸びている。
体中が痛い。
視界の揺れは、チチリの背にいる振動なのか、それとも自分がどうにかしてしまっているのか。
わけがわからない状況に陥りながらも、彼は必死に手綱を握りしめる。
タン、タン、タン、タン。
視界が揺れる。戦渦でボロボロになった街並み。
ずっと同じ光景を見ている気がする。一歩も進めていない気がする。
「うっ……あ……目が……」
彼は、滑り落ちるようにしてチチリから落馬した。
チチリの背から投げ出された彼は、何度も地面を転がる。
限界だった体が、増々に痛んだ。
タン、タン、タン、タン。
チョコボのチチリの駆ける音が、規則正しく耳に聞こえてくる。
上下に揺れる視界は、戦渦でボロボロになった街並みを映し出す。
今、この瞬間にもどこかからする爆発音が聞こえてくる。行く手にも、いくつもの黒い煙が、亡者の手のように伸びている。
体中が痛い。
視界の揺れは、チチリの背にいる振動なのか、それとも自分がどうにかしてしまっているのか。
わけがわからない状況に陥りながらも、彼は必死に手綱を握りしめる。
タン、タン、タン、タン。
視界が揺れる。戦渦でボロボロになった街並み。
ずっと同じ光景を見ている気がする。一歩も進めていない気がする。
「うっ……あ……目が……」
彼は、滑り落ちるようにしてチチリから落馬した。
チチリの背から投げ出された彼は、何度も地面を転がる。
限界だった体が、増々に痛んだ。
7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 22:41:50.72 :pAViFCvW0
「あいつは……エースは」
目の前が暗くなっていく。
彼がぼやける視界で最後に見たのは、懇願するように見つめる、チチリの大きな目だった。
◇
午前十一時三十七分。
――銃声。
「クィー」
真っ暗な視界の中、チチリの悲鳴が、彼の耳に届いた。
「チチリ」
彼はすぐに目を覚ます。
四つん這いになりながら、彼は愛チョコボに駆け寄った。
「あいつは……エースは」
目の前が暗くなっていく。
彼がぼやける視界で最後に見たのは、懇願するように見つめる、チチリの大きな目だった。
◇
午前十一時三十七分。
――銃声。
「クィー」
真っ暗な視界の中、チチリの悲鳴が、彼の耳に届いた。
「チチリ」
彼はすぐに目を覚ます。
四つん這いになりながら、彼は愛チョコボに駆け寄った。
8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 22:44:02.06 :pAViFCvW0
自分の背後では、足音が二つ聞こえる。兵隊の足音だ。
「チチリ!」
――足音が近づいてくる。
「――はっ」
彼はチチリに向けて、回復魔法を使った。
淡い光は眩く彼の手のひらを包み込み……集まった光は力なく消滅した。
クリスタルジャマー。
今、朱雀兵は誰も魔法が使えない。
白虎の協定違反の兵器によって、朱雀は一方的に白虎に追い詰められているのだ。
「く……そお!」
彼はそのことをわかっていても、何度も何度もチチリに回復魔法を使おうとする。
最後の力を振り絞って。ただ、必死に。
「くそ、チチリ、チチリ、頼む……」
背後から白虎兵共の足音が近づいてくる。
見なくても彼はわかった。
自分は、ここで――。
「エース……」
カシャン、と銃が二組構えられる音。
「エース……!」
カチリ、と引き金に指のかかる音。
「エースーーーーー!」
自分の背後では、足音が二つ聞こえる。兵隊の足音だ。
「チチリ!」
――足音が近づいてくる。
「――はっ」
彼はチチリに向けて、回復魔法を使った。
淡い光は眩く彼の手のひらを包み込み……集まった光は力なく消滅した。
クリスタルジャマー。
今、朱雀兵は誰も魔法が使えない。
白虎の協定違反の兵器によって、朱雀は一方的に白虎に追い詰められているのだ。
「く……そお!」
彼はそのことをわかっていても、何度も何度もチチリに回復魔法を使おうとする。
最後の力を振り絞って。ただ、必死に。
「くそ、チチリ、チチリ、頼む……」
背後から白虎兵共の足音が近づいてくる。
見なくても彼はわかった。
自分は、ここで――。
「エース……」
カシャン、と銃が二組構えられる音。
「エース……!」
カチリ、と引き金に指のかかる音。
「エースーーーーー!」
9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 22:45:06.84 :pAViFCvW0
だれか自分を見つけてくれ。
その一心で放った、泣き声のような雄たけびは、魔法の炎によって迎えられた。
瞬く間に広がる炎は、白虎兵のみを綺麗に焼き払う。
焼死していく白虎兵達を背景に、彼は確かに、【エース】の姿を見た。
特別な意味のある赤いマント。戦場にあって僅かに煤のついた白い肌。魔法のような明るい金髪に、意志の強い翡翠色の瞳。
「ここだ!」
エースは彼をしかと見つめる。
「僕は、ここだ」
彼は全身から力が抜けていくのを感じていた。
若い朱雀の兵――ただの一般兵である彼は、ここに任務を全うしたのだ。
うめき声をあげながら、彼はチチリの翼に頭を乗せる。息が苦しい。体中が痛む。
おまけにもう、なにも見えやしない。
彼は最後の力を振り絞って、エースに拳を向けた。
エースはすぐさま彼に駆け寄り、その拳を両手で包み込む。
「……イザナ」
だれか自分を見つけてくれ。
その一心で放った、泣き声のような雄たけびは、魔法の炎によって迎えられた。
瞬く間に広がる炎は、白虎兵のみを綺麗に焼き払う。
焼死していく白虎兵達を背景に、彼は確かに、【エース】の姿を見た。
特別な意味のある赤いマント。戦場にあって僅かに煤のついた白い肌。魔法のような明るい金髪に、意志の強い翡翠色の瞳。
「ここだ!」
エースは彼をしかと見つめる。
「僕は、ここだ」
彼は全身から力が抜けていくのを感じていた。
若い朱雀の兵――ただの一般兵である彼は、ここに任務を全うしたのだ。
うめき声をあげながら、彼はチチリの翼に頭を乗せる。息が苦しい。体中が痛む。
おまけにもう、なにも見えやしない。
彼は最後の力を振り絞って、エースに拳を向けた。
エースはすぐさま彼に駆け寄り、その拳を両手で包み込む。
「……イザナ」
10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 22:45:45.63 :pAViFCvW0
エースは彼に回復魔法を使った。
彼のものとは違い、魔法は途中で消滅せずに彼の体を包み込む。しかし、傷つきすぎた彼の体には、もはや効果はなかった。
エースの横を生真面目そうな眼付きの強い女が通り過ぎる。彼女もまた、赤いマントを羽織っていた。
「もう、無理ですね」
「わかってる」
悔しさを滲ませながら、エースは答えた。
エースはゆっくりと立ち上がる。
そうして、赤いマントの特待生は、次の戦場へと向かった。
若い朱雀兵は、薄れゆく視界の中、一組の男女を見つめる。
あとに残されたのは、若い朱雀兵と、彼の愛するチョコボ――チチリだけだった。
「来てくれて、ありがとな……チチリ」
「くえ」
チチリは彼の声に鳴き声で答える。銃弾に倒れ伏したチチリの鳴き声は、とてもか細く、小さかった。
「少し……休もう」
ぱちぱちと街の燃える音が聞こえる。
彼はあたたかなチチリの羽毛を感じながら、喋り始めた。
「お前の名前、さ」
彼は喋る、喋る。油断すると、泣き声のような声が混じってしまう。
それを抑えて、彼は笑いながらチチリに語り掛ける。
「やっぱり、変だよ、チチリ。ははっ」
弱り切った様子のチチリは、それでも愛情の籠った「くえ」という相槌返す。
彼はまた笑った。
エースは彼に回復魔法を使った。
彼のものとは違い、魔法は途中で消滅せずに彼の体を包み込む。しかし、傷つきすぎた彼の体には、もはや効果はなかった。
エースの横を生真面目そうな眼付きの強い女が通り過ぎる。彼女もまた、赤いマントを羽織っていた。
「もう、無理ですね」
「わかってる」
悔しさを滲ませながら、エースは答えた。
エースはゆっくりと立ち上がる。
そうして、赤いマントの特待生は、次の戦場へと向かった。
若い朱雀兵は、薄れゆく視界の中、一組の男女を見つめる。
あとに残されたのは、若い朱雀兵と、彼の愛するチョコボ――チチリだけだった。
「来てくれて、ありがとな……チチリ」
「くえ」
チチリは彼の声に鳴き声で答える。銃弾に倒れ伏したチチリの鳴き声は、とてもか細く、小さかった。
「少し……休もう」
ぱちぱちと街の燃える音が聞こえる。
彼はあたたかなチチリの羽毛を感じながら、喋り始めた。
「お前の名前、さ」
彼は喋る、喋る。油断すると、泣き声のような声が混じってしまう。
それを抑えて、彼は笑いながらチチリに語り掛ける。
「やっぱり、変だよ、チチリ。ははっ」
弱り切った様子のチチリは、それでも愛情の籠った「くえ」という相槌返す。
彼はまた笑った。
11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 22:46:13.63 :pAViFCvW0
「マキナの名づけは、わかんないなあ」
◇
午前十一時三十九分。
血だらけになったチョコボと、若い朱雀兵が一緒になって倒れ伏していた。
彼らを中心に、ゆっくりと血の池が広がっていく。
「俺もお前も、死ぬのかなあ」
彼は誰にともなく、呟く。
彼がしているのは、独白だった。
死ぬ前の清算だった。
彼は甘えるようにチチリの翼に頭を埋め、納得したようにいった。
「マキナ、元気でな」
「レム、もう一度、会いたいな」
「チチリ、お前が一緒でよかった」
「マキナの名づけは、わかんないなあ」
◇
午前十一時三十九分。
血だらけになったチョコボと、若い朱雀兵が一緒になって倒れ伏していた。
彼らを中心に、ゆっくりと血の池が広がっていく。
「俺もお前も、死ぬのかなあ」
彼は誰にともなく、呟く。
彼がしているのは、独白だった。
死ぬ前の清算だった。
彼は甘えるようにチチリの翼に頭を埋め、納得したようにいった。
「マキナ、元気でな」
「レム、もう一度、会いたいな」
「チチリ、お前が一緒でよかった」
12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 22:46:45.98 :pAViFCvW0
彼は清算を続ける。今までの自分の人生。してきたこと。大切な人たち。
思い出をぐるりぐるりと頭の中で回す。その滑車を回せば回すほど、自分が幸せになれると盲信しようとし続ける。
「うっ」
鋭い痛みが自分の体を駆け巡る。
信じられないほどの苦痛だった。
甘い思い出の逃避は、鋭い痛みによって引き戻される。
彼が再び目を開けば、ぼやけた視界に、清算な戦争の光景が映った。
「いやだあ」
――街が燃えている。
「こわい」
死体の焼ける臭いが鼻を衝く。
「嫌だ。死にたくない」
途切れ途切れに放たれる彼の声は、嗚咽交じりのものだった。
いやだいやだ、と彼は泣く。まだ死にたくないと、誰にも届かぬ懇願をする。
彼は耐えきれなくて泣き始めた。
プライドや、残してきた人のことや、その他のことなどはなにも頭になかった。
怖い、怖い。彼の頭の中にあるのは、ただ死への恐怖一色。それだけだった。
情けなく泣き続ける彼の声を聴いて、チチリが頭を持ち上げる。
そして彼の泣き声に共鳴するかのようにいなないた。
彼は清算を続ける。今までの自分の人生。してきたこと。大切な人たち。
思い出をぐるりぐるりと頭の中で回す。その滑車を回せば回すほど、自分が幸せになれると盲信しようとし続ける。
「うっ」
鋭い痛みが自分の体を駆け巡る。
信じられないほどの苦痛だった。
甘い思い出の逃避は、鋭い痛みによって引き戻される。
彼が再び目を開けば、ぼやけた視界に、清算な戦争の光景が映った。
「いやだあ」
――街が燃えている。
「こわい」
死体の焼ける臭いが鼻を衝く。
「嫌だ。死にたくない」
途切れ途切れに放たれる彼の声は、嗚咽交じりのものだった。
いやだいやだ、と彼は泣く。まだ死にたくないと、誰にも届かぬ懇願をする。
彼は耐えきれなくて泣き始めた。
プライドや、残してきた人のことや、その他のことなどはなにも頭になかった。
怖い、怖い。彼の頭の中にあるのは、ただ死への恐怖一色。それだけだった。
情けなく泣き続ける彼の声を聴いて、チチリが頭を持ち上げる。
そして彼の泣き声に共鳴するかのようにいなないた。
13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2022/01/18(火) 22:47:14.12 :pAViFCvW0
おしまい
コメント 0