3 :鬼女日記 2014/04/24(木) 00:43:17 ID:TUbXYxCr9
両親は大学の同じ学科の同級生だった
普通より長いし閉鎖的な学科だったせいか、学科内カップルも毎年一定数いて、うちもそれに倣うように付き合いだしたと聞いた
自分が生まれたのは両親が大学の最終学年だった時
卒業ギリギリの、割と迷惑な時期に生まれた
4 :鬼女日記 2014/04/24(木) 00:46:25 ID:TUbXYxCr9
当時、お母さんには大学で知り合った親友がいた
知り合った経緯は部活だかサークルだかと聞いていた
大学で初めて会ったのに波長が合い、ホントに四六時中一緒にいたらしい
そんな人だったからこそ、妊娠が分かった時点で「女の子ならあなたの名前を一字もらいたい」と言っていた
6 :鬼女日記 2014/04/24(木) 00:51:00 ID:TUbXYxCr9
そんな中生まれた自分は、お母さんとその親友から一字ずつもらって名付けられた

ただ、自分自身はその親友に会ったことはなかった
毎年一度、彼女の誕生日にお墓参りに行くのが、唯一"彼女"と会う日だった
命日はずっと知らなかった
7 :鬼女日記 2014/04/24(木) 00:55:22 ID:TUbXYxCr9
流れ流れて高校時代、人生はじめての彼氏ができた
勢いとはいえ、人見知り半端なかった自分が自ら告白した人だった

毎日が本当に幸せで仕方なかった
一緒に見る景色は特別で、一緒にいる時間が幸せだった
8 :鬼女日記 2014/04/24(木) 00:57:33 ID:TUbXYxCr9
本当に毎日が幸せで、離れなくてはいけない夜が辛く切なかった
ただ隣にいてくれるだけで幸せの絶頂にいられた
だから他には何もいらなかった
なのに、ほんの些細な悪戯心でその幸せは終わりを告げた
10 :鬼女日記 2014/04/24(木) 01:12:57 ID:TUbXYxCr9
高校2年の誕生日前、彼に「何かプレゼントが欲しいなぁ」とわがままを言ってみた
本当はただ平穏に過ぎる毎日が幸せだったから、今更何もいらなかった
ただちょっと困らせたいとか、そんなつまらない理由から出た言葉だった

その日二人で街に降りた
いろんなお店を回るのは楽しかった
誕生日プレゼントも決まって帰ろうとした時だった
11 :鬼女日記 2014/04/24(木) 01:19:04 ID:TUbXYxCr9
突然彼に突き飛ばされた
一瞬何が起きたか分からなかった
ただ、振り返った自分の目の前には、あってはいけない場所に車があった

泣き叫んだ
すぐに救急車が呼ばれて病院に搬送されたけど、結局そのまま還らぬ人となった
12 :鬼女日記 2014/04/24(木) 01:23:50 ID:TUbXYxCr9
しばらくは呆然と暮らした
何が起きたのか理解してなかったのかもしれない
ただ日が経つにつれ、自責の念がどんどん強くなっていった
もう生きることを放棄しようと思った
食事は採らなくなり、見る見る痩せていった
両親の心配も耳には届かなかった
そしてある日、思い出の場所から飛び降りた
13 :鬼女日記 2014/04/24(木) 01:26:55 ID:TUbXYxCr9
気付いたら草木のない大地に立っていた
ここはどこだろうかと思っていたら、不意に手を引かれた
見ると小さな女の子がいた
「一緒に向こうに行こうよ」
そんな女の子の言葉に従って私は歩き出した
14 :鬼女日記 2014/04/24(木) 01:29:02 ID:TUbXYxCr9
女の子は知らない歌を歌っていた
何と表現したら良いのかわからない、不思議な歌だった
そしてその歌声は、徐々に増えていった
気づけば周りには見知らぬ子供たちがたくさんいて、彼らがその見知らぬ歌を合唱していた
15 :鬼女日記 2014/04/24(木) 01:29:27 ID:TUbXYxCr9
続きはまた明日で
すみません
19 :鬼女日記 2014/04/25(金) 00:42:42 ID:v59d3r8B5
遅くなりましたが続けます

子供たちに連れられどれだけ歩いたか分からないけど、体感では数時間が経った
不思議と疲れもなくて、途中で休もうとかも考えなかった
それでもどこに行こうとしているのか心配になってきて、何度か尋ねた
でも毎回「いいから行こうよ」と言われ、その都度手を強く握られた
21 :鬼女日記 2014/04/25(金) 00:46:16 ID:v59d3r8B5
若干戸惑いながらも歩き続けていると、不意に後ろから強く腕を引っ張られた
自然と子供と手が離れ、よろめきながら腕を引いた人を見上げた
髪の長い女忄生だった
立ち上がる間もなく女忄生は言った
「こんなところで何をしてるの!」
22 :鬼女日記 2014/04/25(金) 00:49:09 ID:v59d3r8B5
私はその女忄生を知っていた
正確には、知っている人のはずだった
初めて知ったのは確か小学校に上がる前
髪の長い女忄生が椅子に座り、その横では男忄生が立って微笑んでいた
顔はもやがかかったような感じで分からなかった
それでも男忄生がお父さんであることと、女忄生がお母さんでないことには確信的な物があった
23 :鬼女日記 2014/04/25(金) 00:51:51 ID:v59d3r8B5
よくよく見ると女忄生のおなかは大きかった
きっと子供がいるに違いなかった
この人はいったい誰なのか?
横の人は本当にお父さんなのか?
そんなことを考えていると目が覚めた
妙な夢だった
それでいて何かやわらかいような温かいようなものも感じていた

それ以降、何度も同じ夢を見た
でもついに二人の顔が分かることはなかった
24 :鬼女日記 2014/04/25(金) 00:54:19 ID:v59d3r8B5
その女忄生が目に前にいる
いや、その女忄生のはずだった
異常な状況で知っている人であってほしいと願っただけではなく、彼女が夢の人であるという確信めいたものがあった
「こんなところで何をしてるの!」
今度は両肩をゆすられ、そして我に返った
25 :鬼女日記 2014/04/25(金) 00:58:53 ID:v59d3r8B5
「ここはどこなんですか?あなたは誰なんですか?」
私の手を引きもと来た道を歩く女忄生は質問には答えず、ただ「ここじゃないの」と何度も繰り返した
気付けばあれだけたくさんいた子供たちも一人減り二人減り、最後には最初に出会った女の子だけになった
そしてその子も、いなくなった
およそ元の場所と思われる所に着いたとき、わが目を疑った
彼氏がいた
26 :鬼女日記 2014/04/25(金) 01:01:42 ID:v59d3r8B5
そんなはずはないとは思わなかった
女忄生の手を振りほどいて彼氏に駆け寄った
あなたに会いたかった
そんな言葉が彼に届くことはなかった
彼は「ここじゃない!」と叫んだかと思うと、私の腕を取り、そのまま前の方へ引き倒した
あ、地面にぶつかる
そう思ったときに目が覚めた
病室のベッドに寝かされていて、すぐそばには泣きはらした顔のお母さんがいた
28 :鬼女日記 2014/04/25(金) 01:04:26 ID:v59d3r8B5
「なんで相談してくれなかったの?私じゃダメなの?」
そんなことを言いながらもお母さんは抱きしめて泣いてくれた
言葉の意味は考えなかった

ある程度落ち着いた後、お母さんに夢の話をした
女忄生のことは大昔に話したことがあったから、ただ一言「彼女はあなたの守護霊なのかもね」とだけ言われた
29 :鬼女日記 2014/04/25(金) 01:11:05 ID:v59d3r8B5
自分の都合のよい解釈かもしれないけど、あれは多分タヒの境界だった
夢の女忄生も彼氏も自分に生きることを求めてくれた
それなら生きれるだけ生きてみよう

高校最後の一年は勉強していたことくらいしか記憶にない
おかげで、その学校ではおそらく初めての大学に受かった
正直なところ、学科しか決めてなかったから大学はどこでも良かった
それでも地元にいるのは辛くて、かと言ってすぐに帰ってこれないのも嫌だったから東京の大学を選んだ
そうして初めて親元を離れた生活が始まった
30 :鬼女日記 2014/04/25(金) 01:14:47 ID:v59d3r8B5
大学正確は暇だった
一応一般的には忙しい部類に入る大学なのだろうけど、それでも受験勉強を考えるとやっぱり暇だった
だからつい寂しくなっては実家に帰ったりしていた
当時はバイト代=帰省代だった気がする

そんな生活の中、初めて両親に帰って来いと言われた
20の誕生日の時だった
別に新しい彼氏がいるわけでもなく、試験の日程を縫うようにして実家に帰った
31 :鬼女日記 2014/04/25(金) 01:19:48 ID:v59d3r8B5
実家では両親と私だけのささやかなパーティーが開かれた
ちょっと豪勢な食事も終わったころ、お母さんから2冊の日記と1冊のアルバムを渡された
そのアルバムを開きながら、ある写真指さして言われた
「この子、知ってるよね?」

写真は両親の学生時代のものだった
指さされた写真には一人の男忄生と二人の女忄生が写っていた
お父さんとお母さんと、夢の女忄生だった
32 :鬼女日記 2014/04/25(金) 01:22:42 ID:v59d3r8B5
「え?なんで?」
なぜ彼女がいるのか
なぜお母さんは夢で見た人が彼女だと思ったのか
いろんな疑問が一気に出てきた

「落ち着いて聞きなさい。彼女は私の親友、そして、あなたの本当の母親なの」
33 :鬼女日記 2014/04/25(金) 01:27:45 ID:v59d3r8B5
話をまとめるとこんな感じだった
生みの親とお父さんは高校の同級生
母親はほとんど天涯孤独な人だったのもあって、大学入学と同時に結婚
卒業前に私を出産したものの、もともと体が弱かったのもあってその時に亡くなった

お母さんは母親の親友
生まれる前に「名前を一字欲しい」と言ったのはお母さんではなかった
むしろ言われた方
34 :鬼女日記 2014/04/25(金) 01:36:31 ID:v59d3r8B5
お父さんは卒業して働き出したものの、いきなり社会人と育児の両立なんかできるわけもなく、当時助けてくれたのがお母さんだった
2冊渡された日記のうちの片方は、その当時のお母さんの物だった

周囲には何度も私の面倒を見ることを止められたこと
当時付き合ってた彼氏にも私のことが原因で振られたこと
それでも私の面倒を見ることを止めなかったのは、自分の名前を冠しているから、立場が逆ならきっと同じことをしてくれたはずだから
そんな言葉が何度も出てきた

最後のページはお父さんとの結婚前日のものだった
周囲は私が○○ちゃんの面倒を見ることが理解できないと言った
私はずっと本当の母親でないと思いながら生きるかもしれない

私はずっと、本当の母親でないと思われながら生きるかもしれない
それでも、○○ちゃんの笑顔を見ていると、そんな不安も消えてなくなる
もし立場が逆ならきっと△△(母親)も同じ選択をしたと思う
偽りの家族かもしれない
でも愛情だけは本物でありたい
明日、私は○○ちゃんのお母さんになります
35 :鬼女日記 2014/04/25(金) 01:41:54 ID:v59d3r8B5
子供のころに夢の話をしたとき、やっぱり母親の代理でしかないのかと思ったこと
自杀殳未遂を起こした時、やっぱり母親として頼ってはもらえないのかと思ったこと
夢の話をしたとき、私が築いてきた関係はやっぱり仮初だったのかと思ったこと
そんな話を泣きながらされた
気付いたら私も泣いていた
36 :鬼女日記 2014/04/25(金) 01:51:44 ID:v59d3r8B5
あの日からそれなりの年月が過ぎたけど、今でも普通?な親子関係を続けてる
たまに実家に帰ると、ケーキの取り合いで喧嘩をしたりするけどw、それ以外は概ね普通なはず
自杀殳未遂を起こした時の後遺症で孫は見せられない感じだけど、幸いにしてこんな私をもらってくれる人とも出会えた

旦那の実家に結婚のあいさつに行く際「私は子供を作れません」と言った

それで婚約破棄になるなら仕方ないと思ってた
なのに予想外の言葉が返ってきた
「ずっと欲しかった娘ができるのに、孫なんか望んじゃ罰当たりでしょ」
挨拶とか関係なく号泣した
本当に良い人たちに囲まれていると思う

いつか子供ができたなら、"母親"から名前をもらいたいと思ってる
期待は薄いかもしれないけど、子供にお祖母ちゃんたちの話をしたいってのが、今の一つのモチベーションかもしれない


以上乱文にて失礼しました
37 :鬼女日記 2014/04/25(金) 02:04:46 ID:OFP6G1gg2
人それぞれにいろいろな幸せの形があると思うから、あまり気張らず、無理をせず、1も周りの方々も末永くお幸せに
体を大事にしてね
38 :鬼女日記 2014/04/25(金) 12:43:40 ID:gy22fo0Hm
いい人に囲まれて幸せだなー
1なら望めばきっと子供も出来るさ
だって1にはすでに奇跡が起きているんだから
39 :鬼女日記 2014/04/25(金) 17:53:09 ID:VcMt5zbyL
1は里親でもやってみれば?血の繋がりも大事だけど必ずとも必要ないてわかるだろ?育ての母からもらった愛情を里子に受け渡すのも良いかもね
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