まどか「希望は残っているんだよ。どんな時にもね」 前編

482: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:04:38.93 ID:hXlPwghg0



第14話:さやかさんのことを馬鹿にしすぎではありませんか?



483: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:09:12.36 ID:hXlPwghg0
杏子side

マミの家の修繕が終わってから今後の方針について話し合いが行われた
結果、あたしがにさやかを特訓して、ほむらとマミが魔女狩りをしてグリーフシードを集めるということを主軸とすることになった
無論さやかには実践が必要であり、その日出現が予測される魔女のレベルと相談してぶつけた方がいいときにはぶつける

まどかはさやかの特訓の付き添い
もちろん安全面を考慮してのことだが、あいつがいればあたしとさやかがヒートアップしてもほどほどで収まるという計算もあった

ちなみに、どうでもいいことだが、マミが衣食住を提供する際の条件として、使い魔も狩るというのが入っているので、そうしている
お人よしにもマミはそういう条件を出すのを忘れていたので、あたしが言い出したんだけど
しかしまあ、それを提案した時のさやかのにやついた顔と言ったら……

484: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:12:26.23 ID:hXlPwghg0
……いや、わかってる。もうかなり色々破綻してる
それでも、他人のために魔法を使わないというやり方はあたしの中で結構な部分を占めてるんだ
これを捨てたら、一人になってたから積み上げてきたものが全部吹っ飛んでしまいそうでとても怖いんだよ

……だけどもう逃げてもいられない
あいつらと一緒にいるなら、自分がしてきたことと向き合わないといけないから

ただ、本当に難儀なもので、今時分と向き合ったら多大なグリーフシードを消費しかねない。てか間違いないと思うんだ
それであいつらに迷惑をかけるわけにもいかないから、ワルプルギスを倒した後に、と後回しして自分を保ってる
 
大丈夫。今まで、あんなことがあっても耐えてきたんだ。後、数週間くらい保たせてみせる
……それで、そんなに引き延ばした後に、自分と向き合って、懺悔しても許されるか――それは後の別の問題だ
許す主体は何か、なんてことは知らないけど

485: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:14:52.77 ID:hXlPwghg0
そしてただいま河原であたしとさやかがその特訓中

さやか「うー…おかしい!不公平だ!」

杏子「なにが不公平だっての?あたしとさやかの素質は同程度、経験の差が実力差ってことだよ?公平じゃん?」

さやか「武器だよ、武器!槍は剣より強いって相場が決まってんの!」

杏子「へ?そうなの?」

まどか「……さやかちゃん、それ、ゲームの話じゃないの?」

マミ「まあゲームは置いておくにしても――――」

杏子「おー、マミ。もう交代か」

マミ「ええ。―――確かに普通なら、特に初撃に関していえば、リーチの差で槍は剣に強いと言えるかもしれないわね」

さやか「ほら見ろ!」

486: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:17:28.00 ID:hXlPwghg0
マミ「普通なら、ね」

さやか「はい?」

マミ「私たちは魔法少女なのよ?ちょっと貸してね」

マミはさやかの剣を一本借り、刃の部分を指で拭くように撫でた。そして、叫ぶ

「トランスフォーマジオーネ!」

瞬間、あたしの多節槍と同様に刃がいくつもの節を作り分断される。節と節をつなぐのは、やはりあたしのと同様に鎖だ
ひとしきり自在にその多節剣を操った後に元に戻し、切っ先を川に向けて再び叫ぶ

「トラジッカ・ボンバ・ディ・アモーレ!」

叫ぶと同時に刃が柄から発射されて、高速で直進したのち爆発した

487: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:20:31.76 ID:hXlPwghg0
さやか「ス、スゲー!」

杏子「……まだ技名叫ぶの卒業してなかったわけ?」

マミ「いいじゃない?まだ中学生なんだもの」

さやか「マ、マミさん!今のどうやるの!?」

マミ「柄の、このあたり、歪な魔力を感じる?ここから魔力を注入して、剣をどう変化させたいかイメージするの」

さやか「よーし。えいっ!………あれっ?」

杏子「さやかの場合は魔力の制御からだよ。あんなもん見ていきなりできてたまるか」

杏子「大体歪な魔力もそもそも感じ取れてないでしょ。つまり魔力探知もまだまだってこと」

さやか「先長いなぁ…。やっぱみんなこんなもんなの?」

杏子「大体そんなもんだ。一部例外はいるが」

さやか「どんな人?」

杏子『今痛い技名を連呼したやつとか』

488: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:24:17.48 ID:hXlPwghg0
さやか「マジ?やっぱすごい人なんだなぁ……」

杏子『……実際あたしたちのお師匠様はスゲーんだよ』

杏子『そもそもほかの魔法少女の出した武器を使おうなんて発想が無茶なんだ』

杏子『流す魔力の質そのものが違うんから、本来一振りでもしようものならすぐさま消え去るのが普通で』

杏子『あんな一瞬で流すべき魔力の量と質を見破って必要なだけ流すなんて、無茶にもほどがある話さ』

杏子『そんなわけでワルプルギスに負けたとかマジかって話だから』

杏子『……マミには言わないでよ?』

さやか「分かってるって!」

マミ「何の話してるの?」

さやか「それがですねー杏子がマミさんのこと――――」

杏子「コラー!」

489: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:27:09.41 ID:hXlPwghg0
それからしばらく経って

マミ「あら、もうお昼?あ、鹿目さんも委員会終わったんだ」

ほむら「ええ。休憩よ」

まどか「お弁当持ってきました!」

ほむら「……巴さん、やけにご機嫌ね」

ほむら「……そこの二人の『修行』も喧嘩に映るわ。特に杏子は冷静さを欠いてる。なにがあったの?」

マミ「ふふふ」

まどか「け、喧嘩はだめだよ!二人とも!」

490: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:34:44.80 ID:hXlPwghg0
それであたしたちが落ち着いた後にお昼になった
さやかはいつか殺す

杏子「このおにぎりうまいなー」

さやか「そうだね。まどかが作ったの?」

まどか「うん!」

ほむら「とてもおいしいわ」

まどか「えへへ。ありがとう。……あ」

さやか「ん?……あ…」

杏子「どうしたよ?」

ほむら「……あそこ、歩いている二人、上条恭介と志筑仁美よ」

杏子「……例の二人か…」

さやか「……ほんとだー。あの様子だとまだ告白はまだ見たいだねー。早くしちゃえばいいのに」

さやか「それはそうと、ほむらー、クラスメートをフルネームで呼ぶのやめなって」

ほむら「……あの二人に関しては絶対無理よ。そこまで私は出来てない」

さやか「まったくもー。仕方ないことでしょーが」

杏子「……」

さやか「しっかしもう退院か。早いなー。そういやこのくらいの時期に退院って言ってたっけ」

杏子「……本人に聞いたんだよな?」

さやか「ううん。前にほむらから聞いた」

杏子「……」

491: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:37:35.69 ID:hXlPwghg0
さやか「…どこ行こうとしてんの?」

杏子「用事思い出した」

さやか「どんな用事か言ってみなよ」

杏子「……毎日見舞いに来てた女に連絡一つ寄越さないで退院するバカに、どういう了見してるのか聞きに行くだけだよ」

さやか「恭介が忘れちゃうのは仕方ないんだって!バイオリン馬鹿だからさー」

さやか「バイオリン弾けるってなったらそれだけで頭いっぱいになっちゃったんだよ」

杏子「だから、ああして二人で歩いてて仕方ないって?」

さやか「そーそー。それにあたしだってまだ諦めてませんからねー?」

杏子「……諦めてるじゃないか。あたしの魔法なめるなよ?」

さやか「……え゛?……な、なに?魔法でそんなこともわかるわけ!?」

杏子「ばーか。さやかほどわかりやすいやつはいないよ」

まどか「……私もわかるよ」

ほむら「誘導尋問ね」

492: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:40:02.26 ID:hXlPwghg0
さやか「……あたしがネガティブだってだけだよ」

杏子「……本当か?」

さやか「うん」

ほむら「さやか、あなたはワルプルギスを倒したら上条恭介に気持ちを伝えるつもりだと言った。嘘じゃないわよね?」

さやか「うん」

杏子「どう?」

まどか「……嘘はついてない…と思う……」

マミ「……佐倉さん、いずれにせよこれは美樹さんたちの問題よ。気持ちはわかるけど、あなたや私が首を突っ込んだりしても悪化するだけ」

マミ「わかるでしょう?」

杏子「……チッ。」

493: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:43:13.26 ID:hXlPwghg0
ほむらside

巴さんと杏子が私とまどかに目を向ける
さやかと志筑仁美、その両方の親友であるまどかと、遡行により二人のことを少なからず知っている私にしか対処できないだろうということだ

しかし、さやかはワルプルギスを倒すまで上条恭介に告白するつもりはない
志筑仁美が先んじるリスクを考慮した上で、さやかが出した結論に文句を付けるというのも憚られる
それはまどかも同じなようで、結局さやかに現段階で告白を強制することなどできない

ともすれば、ワルプルギスを倒すまで志筑仁美が告白しないことを祈るばかりだが
彼女が今現在告白していないことはそもそも奇跡のような巡り合わせなのだ

さやかの話では、志筑仁美は病院で上条恭介のテンションに戸惑ったに過ぎず、いつまた告白してもおかしくなさそうなものなのだが
一旦覚悟を決めた後の肩すかしによほど堪えたのだろうか?

494: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:47:54.73 ID:hXlPwghg0
いずれにせよ、今の私たちにできることは、この奇跡のような現状を長引かせることだけ

最も「たち」と言っても、まどかはさやかと志筑仁美のどちらかを選ぶことはなかった
思えば当然のことで、まどかにとっては、さやかと志筑仁美、ともに優劣などない親友なのだ

まどかは悩みに悩んで、上条恭介と二人との関係を静観することに決めた
まどかがそう決断した理由は私にもよくわかる

志筑仁美の告白を裏で阻止することは、さやかへの侮辱に他ならない
さやかはすべてを知ったうえで決めた
だから私たち4人がすべきことは、本来さやかを信じ、支えることしかない



しかし、私はまどかの思いを無視して契約した――私があの後辿る運命を知っていれば絶対にまどかは止めただろうから――通りの即物的な人間であり

――――志筑仁美と二人で話し合うことにした



私に色恋沙汰などわからない。ノープランだ

495: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:51:20.44 ID:hXlPwghg0
仁美「―――つまり、告白を延期しろと仰っているのですね?」

ほむら「ええ」

仁美「……暁美さん、あなたがさやかさんのことを大切に思っていらっしゃることはよくわかります」

仁美「しかし、これは私たち三人の問題なのです。それがおわかりにならないあなたではないでしょう?」

ほむら「……本来、そうよね」

仁美「……本来、ですか。イレギュラーなケースだと?」

仁美「確かに奇跡が介在して腕が治ったところはイレギュラーとも言えましょうか」

仁美「それが本来の事柄から外れる要因となるのですか?」

ほむら「………ねぇ、あなたが告白することで、さやかが大変なことになるとしたら、どうする?」

仁美「……なにを言いたいんですか?」

仁美「……まさかとは思いますが、さやかさんが自殺するとでも仰りたいんですか?」

ほむら「あなたはどう思う?」

496: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:55:36.85 ID:hXlPwghg0
仁美「………随分昔からさやかさんが上条さんをお慕いしていることは知っています」

仁美「仮に私の告白が成功すればとても傷つくでしょう」

仁美「でも、さやかさんにはまどかさんがいる。あなたも、家族だっています」

仁美「ええ。私との関係が修復不可能になるかもしれないくらいです」

仁美「……よほどのことがない限り、とても致命的なことになるとは思えません」

仁美「それに、さやかさんは自分の気持ちに整理をつけているように見受けられました」

仁美「もっとも、その覚悟を自分の告白に回してほしいと思ったからこそ、初めに――――いえ、脱線ですわね」

仁美「とにかく、こう言ってはなんですが、さやかさんのことを馬鹿にしすぎではありませんか?」

仁美「わたくしが怒る筋合いのものではありませんが」

497: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 02:59:39.67 ID:hXlPwghg0
ほむら「自分でもさやかをバカにしてると思ってる」

ほむら「でも、これは、自殺とは少し違う、不可抗力みたいな話なの」

ほむら「あなたが告白すれば、さやかの意志や強さと、その、ほとんど関係なく、大変なことになってしまう……かもしれない」

ほむら「そうはならない、させないってまどかは考えてるけど、私は、万が一がとても怖い」

ほむら「だから、どうか延期してほしい」

仁美「……延期することでいったい何が好転すると仰るのですか?」

仁美「それに、どの程度延期しろと?私が身を引けということなら、いくらなんでもひどすぎる話だと思います」

ほむら「本当に、私が言った日まで延期してくれるだけでいい。それ以上のことを望めるはずがない」

ほむら「その期日まで待ってもらえたら、さやかは告白する」

ほむら「……どうしても解決しないといけない問題があるの。それを解決するまで、さやかは上条恭介のことを考えている余裕がない」

ほむら「さやかはそれで告白する資格がないと考えているけど、私にはそうは思えないの」

498: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 03:02:06.92 ID:hXlPwghg0
仁美「しかしですね、さやかさんがそうやって気持ちに向き合うことを後回しにしてきたからこそ、今の今まで告白がなされなかったんですよ?」

仁美「問題が解決され、気持ちに向き合っても、告白を後回しにするなら結局何も変わっていません」

仁美「待たされる側のことも考えてほしいものです」

ほむら「……そういう日常的な類の問題ではないのよ。万人が、それは後回しも仕方ないと思うような問題なの」

ほむら「……期日になったら、私がさやかの首根っこをつかんででも上条恭介に告白させる」

ほむら「……さやか自身はもう整理をつけてるから、私が出る幕もないかもしれない」

ほむら「いずれにせよ、その期日以降あなたを待たせることにはならないわ」

499: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 03:10:25.62 ID:hXlPwghg0
仁美「……ずいぶん抽象的で要領を得ない話ですわね。あなたらしくもない」

ほむら「……」

仁美「さやかさんが先に告白すれば、仮に失敗しても『不可抗力みたいな話』から逃れられる」

仁美「そして、さやかさんは期日までに、『日常的な類の問題ではない』なにかを解決するまで、告白するつもりはない、と仰りたいんですね?」

ほむら「正確に言えば、逃れられる可能性が上がる、ね。私は逃れられると信じてる」

ほむら「延期さえしてもらえれば、後は私たちでなんとかして見せる」

仁美「……」

仁美「……今の私たちの間にある黙示の取決めは、50-50でフェアーに、それだけです」

仁美「取り決めという言葉を使った通り、おそらくさやかさんも同じように考えているはずです」

仁美「そんな的を射ない話を考慮する余地などありません」

ほむら「……」

500: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 03:16:26.65 ID:hXlPwghg0
仁美「……しかし…いかにもさやかさんが考えそうなことですわね」

仁美「『日常的な類の問題ではない』何かをさやかさんが抱えているとしたら」

ほむら「!」

仁美「……私も、最初に告白するのはさやかさんであってほしいと思っています」

仁美「本当に、その問題は期日までに解決され、かつ、さやかさんが告白しない場合にはたきつけられるんですね?」

ほむら「ええ!必ずそれはかなえてみせるわ!」

仁美「……そう遠い話ではありませんし……私自身告白を今日明日にするつもりは元々ありませんでした」

仁美「本当にさやかさんのためになるというのなら、あなたが仰った期日までは待ちましょう」

仁美「それが最後の猶予です」

ほむら「それで…構わない」

ほむら「感謝するわ。本当に」

仁美「……お分かりでしょうが、このことがさやかさんに知られたら何の意味もありません」

仁美「何せ相手はさやかさんですから。私の告白が成功する以上に傷つくかもしれません」

仁美「こちらは大丈夫ですが、そちらはどうですか?」

ほむら「こちらも問題ないわ」

501: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 03:19:33.21 ID:hXlPwghg0
仁美side


もうこれは間違いない


問題は、日常的な類でない問題は何か、ということ。不可抗力みたいな話、即ち例のリスクとは別の問題らしい

もっと踏み込んで聞くべきだっただろうか……?
だけど、今の私にはもう認識できないじゃないか……
さやかさんが決断し、実行した以上、もはや私にできることなど何もない

リスクに関しては可能性はあったが、こうしてさやかさんとライバルとなった以上、彼女の性格からすれば私の励ましなんて……

もう致命的なことになってしまうかもしれない
どうして、暁美さんが転校してきて、さやかさんが不自然な行動を取ったあの時に気付けなかったのか……

あの時ならば、まだできることがあったはずなのに……
あの時に気付けなくても、時間はあったのに……

502: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/15(金) 03:21:43.15 ID:hXlPwghg0
ほむらside

志筑仁美が言うように、確かに話の拡散は防ぐべきだが、こちらには報告すべき人がいる

杏子はあの調子なら志筑仁美と上条恭介に何かしかねない
事実を報告する必要がある

杏子が巴さんに隠し通せるとは思えないので、巴さんにも私の口から直接説明する

まどかは、さやかに隠し通せるとは思えないので、断腸の思いで伝えないことにした

510: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/16(土) 02:05:52.80 ID:ja0nsQ1F0
杏子「それで、今までさやかには焚き付けるようなこ言ってきてなんだけどさ」

杏子「あいつが延期すれば本当にうまくいくもんなの?」

ほむら「さやから告白したことは今までない。もしかするともしかするかもしれないわ」

杏子「それ単にあのヤローが最初にコクった奴と付き合うサイテーヤローってことになるんじゃあ……」

杏子「そんな奴にさやかを――」

マミ「男の子ってそんなこと誰でもあるんじゃないかしら?美樹さんが告白するならそういう可能性込みでするってことじゃない?」

マミ「美樹さんがあれだけの覚悟で契約して告白するんだもの。私たちがとやかく言える話じゃないわ」

杏子「そりゃそうだろうけど…」

511: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/16(土) 02:08:18.24 ID:ja0nsQ1F0
マミ「それに、二人は幼馴染なんでしょう?そういう相手を異性として見てなかった、なんてよく聞く話じゃない?」

マミ「それに期待しましょう?」

ほむら「なるほど。考えもしなかったわ。さすが巴さんね」

杏子「映画や小説で聞くって枕詞が入るんだろうなあ……」

マミ「何か言った?」

杏子「いや、何も」

マミ「…ふふ」

杏子「なんだよ?」

マミ「いえ、佐倉さんに友達ができてとってもうれしいなって」

512: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/16(土) 02:09:49.38 ID:ja0nsQ1F0
杏子「はあ!?いやそんなんじゃ……」

杏子……それもあるのかな…。ただ、報われるべきやつは報われてほしいし、死ぬべきじゃないやつは死んでほしくないっていうか……」

杏子「なんでこんなこと考えてんだろ……」

杏子「……そのうち自分で気づけるのだから、私からは何も言わない方がいいんだろう」

マミ「ふふ」

杏子「だから何だよ!?」

513: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/16(土) 02:10:53.36 ID:ja0nsQ1F0



第15話;みんなが考えていることがわからないよ



514: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/16(土) 02:13:11.59 ID:ja0nsQ1F0
さやかside

最近あたしの戦闘は様になりつつある
魔女と一人で戦っても大概苦戦しないで倒せるようになった

時間停止を使わない自分は既に抜いていると、何故か遠い目をしたほむらから言われたくらい

……あのほむらがほめてくれるなんて大変珍しいことで、とてもうれしいんだけど…

ほむらの時間停止は、連続使用と長時間使用の制限に気をつければGSの消費量少なく隙をほとんど見せずに使える、ほぼノーリスクの技だ
それを使えない状況と言うのが思い浮かばないから、どうしてそういう言い方をしたのかがわからない

………うーん、いわゆるツンデレなのかな。それはそれで可愛げがあるけど

515: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/16(土) 02:16:43.92 ID:ja0nsQ1F0
遠い目と言えば、最近仁美はよく考え事をして、たまに話しかけても無反応だったりする

告白しに恭介の病室に行ってから、かな。順調すぎる恋に逆に不安を覚える、みたいなのならいいんだけど

実際問題恭介絡みならあたしがしゃしゃり出るのもあれだからなあ…
まあ、ほむらの話聞く限り、悩みも程々にうまくいってるみたいだし大丈夫かな



……あんまり大丈夫だとこっちが大丈夫じゃなくなるんだけど……



……勝手にばかやったんだから、大丈夫にしないとね

526: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/17(日) 03:07:16.98 ID:5QUz89IY0
さやか「ねぇ、まどか」

まどか「なに?」

さやか「3日後にさ、あたしたちが死んだら――――」

まどか「やめて」

さやか「やめられないんだな、これが。死ぬ可能性がとても高いんだから」

まどか「…」

527: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/17(日) 03:10:03.76 ID:5QUz89IY0
さやか「あたしたちが死んでも、そのために契約はしないでほしいんだ」

まどか「……やだ」

さやか「ほむらと約束したでしょ?契約しないって」

まどか「ほむらちゃんとの約束は大事だけど、みんなの命だって大事だもん……」

さやか「ほむらが今までどんな思いで戦ってきたか考えなよ」

まどか「ずるいよ……。さやかちゃんだって……勝手に……契約したじゃない。……なんで私の勝手は許されないの?」

さやか「そうだよ。あたしが勝手に契約したの」

さやか「その勝手にまどかを巻き込んじゃったら、生き返っても、たぶん耐えられない」

さやか「ほむらも杏子も、自分で選んで魔法少女になったんだよ」

さやか「マミさんだって、心底かわいそうだって思うけど、それでも後悔してないって言ってた」

528: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/17(日) 03:12:05.28 ID:5QUz89IY0
まどか「私だって、さやかちゃんが、みんなが死んだら耐えられないよ……」

さやか「耐えて」

まどか「……」

さやか「ちっぽけなプライドなんだよ」

さやか「いろんな雑念やら下心が混ざってたにしても、最後に残るのは、最初に湧き出た恭介への想いであってほしい」

さやか「恭介のために結末まで受け入れたんだっていう、さ」

さやか「それで、まどかの犠牲で結末変えられたら、あたしもうどうしていいかわからなくなる」

529: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/17(日) 03:14:34.77 ID:5QUz89IY0
まどか「わからない……さやかちゃんが、みんなが考えていることがわからないよ……自分の命より大事なものなんてあるの?」

さやか「今まさに自分の魂捨てて他人を救おうと考えてる人が何言ってんのさ」

まどか「……あ」

さやか「まぁ、あいにくあたしたちは受け入れてるからさ、まどかの出る幕はないんだよ」

まどか「……」

まどか「約束……して。みんな、生きるために闘うって」

さやか「……努力はする」

まどか「じゃあ、私も、努力はする」

530: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/17(日) 03:16:42.80 ID:5QUz89IY0
さやか「…じゃあ、さ、契約しようと思ったら、みんなの顔思い浮かべて」

さやか「特にほむらの顔。それで契約するなら、もう仕方ないかな」

まどか「……さやかちゃんも、約束して」

まどか「いよいよ死ぬかもしれないってなったら、みんなの顔、ママの顔を思い浮かべて」

まどか「自分の命をまず守って」

531: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/17(日) 03:19:02.21 ID:5QUz89IY0
結局あたしたちは結果について互いに保障できず、過程のみを約束した

……あたしが、生きるために闘う、という過程さえも努力目標にしようとしたのは
つまり、死ぬために戦うことになるだろうという漠然とした予測があったからで

その予測は、決戦前日、ほむらが用意したいくつかの戦闘プランの共通性を見つけたとき、確信に変わることになった

540: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 00:33:37.21 ID:0NloqfuY0



第16話:何を勝手に盛り上がっているの?



541: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 00:35:37.43 ID:0NloqfuY0
対ワルプルギス殲滅作戦前日の夜、最終打ち合わせのために4人でほむらの家にお邪魔した
相も変わらず魔法仕掛けのほむホームは奇妙奇天烈に資料を浮かべている
美樹ハウスもこんな感じにできるんだろうか、とも思うけど、お母さんになんていわれるか

現在まどかが買い出し中

ほむら「以上が、私が立てた主な作戦パターンの全てよ。何か意見はある?」

さやか「ある」

ほむら「何かしら?」

さやか「なんで、このプラン、全部あんたがとどめを刺すことになってるの?」

ほむら「たまたまよ。まぁ、私は能力的に特殊だし…それに、やつとの因縁も頭に入ってるかもしれないわね」

さやか「嘘だね」

542: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 00:38:03.42 ID:0NloqfuY0
マミ「美樹さん、今は……」

さやか「どの道キュゥべえから告げられることだよ」

杏子「……そうだな。受け入れてもらわなきゃだな」

ほむら「あなたたち、いったい何の話をしてるの?」

さやか「ねえ、ほむら、あんたワルプルギスをまどかが倒した時は、必ず魔女化してたって言ってたよね?」

ほむら「……言った、かもしれないわね」

さやか「言ったんだよ。それって今まで何回あった?」

ほむら「……2回」

さやか「必ずっていうからには複数回必要だからね。最小数できたか」

ほむら「なにか問題あるかしら?」

543: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 00:40:01.28 ID:0NloqfuY0
さやか「それどっちとも、いわゆる最強の魔法少女?」

ほむら「そうなるわね。まともに勝てたのは、まどかが最高の素質を持っていたときだけだから」

さやか「確か、まどか素質は遡行の度に高くなっていったんだっけ?」

ほむら「……え?…」

QB「それは僕から説明しようかな」

ほむら「インキュベーター……」

……マズ…ほむら自身は気づいてなかった?

544: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 00:42:06.00 ID:0NloqfuY0
QB「まどかの素質は君の素行の回数と比例して強くなっていった――見たところ三人ともそう解釈していたようだよ?」

QB[君がわからなかったわけがない。気づかないようにしていただけだ」

ほむら「……何の話を?」

QB「単なる時間遡行では素質が比例して上昇することの説明はつかない。平行世界を移動しているとするのが妥当だろうね」

ほむら「……は?」

QB「まどかを中心点として君が平行世界移動を繰り返したことで、まどかに因果が集まり素質が上昇したといっているんだよ」

ほむら「……待って…平行世界って…まさか……」

QB「ご想像の通りだよ。今現在も、まどかが死んで君が捨ててきた世界は存続しているんだ」

ほむら「……そ……んな……」

545: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 00:47:08.44 ID:0NloqfuY0
マミ「暁美さん、気をしっかり持って!最初の時間軸で既に、元々鹿目さんは死んでたのよ?」

マミ「暁美さんが平行世界を移動していたとしても、それは、今まで鹿目さんの生死には何の影響もしていないの」

ほむら「……だけど……!」

杏子「……割り切れることじゃないよな。……今の時間軸のまどかのこと考えなよ」

杏子「ほむらが諦めたら、あのまどかは間違いなく死ぬんだよ?」

杏子「ごまかしてでも、無理してでも戦わないと、さ」

杏子「後悔することがあるなら、全部終わった後でしなよ。……ひょっとしたらあの世でだって、後悔ならできるかもしれない」

ほむら「杏子……」

さやか「それに、さ、案外うまくいったら、今までの時間軸とうまい具合に統合されてハッピーエンド、なんてあるかもじゃん」

QB「確かにないとは言い切れないね。やり直しを実現するのに平行世界を提供するというのは少々遠大だ」

QB「それ以上のことを残していてもおかしくはない」

QB「まあ、契約を交わした僕しか知りようのないことだけどね」

546: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 00:49:20.36 ID:0NloqfuY0
さやか「……ほむら、大丈夫だよね?」

ほむら「……」

ほむら「……情けないわね、まったく……この時間軸ではこんなことばかり」

ほむら「もう大丈夫よ。元々私はまどかを助けるために戦うだけなんだから」

さやか「そっか。それでさ。本題はそこじゃないんだよ」

ほむら「……みんな、さっきから何の話をしてるの?」

さやか「ほむらの話を聞いたうえでの推測を話していい?」

ほむら「……別に、話すだけなら構わないわ」

547: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 00:53:46.11 ID:0NloqfuY0
さやか「まどかの莫大な素質により、キュゥべえからまどかはよく勧誘される。それに私も含まれることもよくある」

ほむら「ええ」

さやか「それで、いくら契約原因を排除してもまどかの前にキュゥべえが表れても意味がないと業を煮やしたほむらは」

さやか「キュゥべえとの接点をなくせばいいと考えてキュゥべえ排除を第一の方針としてきた」

ほむら「それは話したことだったわね」

さやか「だけど、キュゥべえ排除に動くとあたしたちとの関係があまりにうまくいかない」

さやか「そして、キュゥべえとまどかの接点を長期間排除するのが難しい」

さやか「だから、今回はキュゥべえ妨害を諦めてまどかに真っ先に忠告だけすることにした」

ほむら「そうだけど?」

548: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 00:55:52.27 ID:0NloqfuY0
さやか「あたしがいうのもなんだけど、ほむら、頑固でちょっと容量悪いからさ、結構それ思いつくのに時間かかったと思うんだよね。5周とか」

杏子「ほんとにさやかが言うとアレだな」

ほむら「19周」

一同「…!」

ほむら「19周かかって思いついた。笑っちゃうでしょ?」

さやか「……笑わない。笑うわけがない。笑うやつがいたら許さない」

ほむら「……」

さやか「それでさ、まどかがワルプルギスを一撃で倒せる、世界を滅ぼせる魔女になってから何周した?」

ほむら「……」

ほむら「……2周」

QB「それはありえないね」

ほむら「―――ッ」

549: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 00:59:39.92 ID:0NloqfuY0
QB「僕が察するに、鹿目まどかという少女には元々図抜けた素質はなかった」

QB「さやかや杏子と大して変わらなかっただろうね」

QB「これはあくまでまどかの性格、環境、性質を分析した上で、今までの経験則と照らし合わせた推論に過ぎない」

QB「しかし、人類の歴史すべてを俯瞰して得た経験則から導き出したものでもある。そこまで誤差はないだろうね」

QB「そして、そのような素質の少女が平行世界移動によって史上最強の魔法少女、」

QB「僕たちのノルマを一度に達成できるレベルの素質に昇華するのにかかる遡行回数、すなわち世界跳躍の回数は――」


「――4・5回だろうね」


キュゥべえがこっちの味方に、ね。やっぱあたしたちから話された方がまどかも信じやすいか

だけど、あたしたちがいない時にキュゥべえから話されていい方向にいくとは思えない
やっぱりあたしたちから話すしかないよね
マミさんと杏子もそう考えてるんだろうし

550: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 01:04:09.99 ID:0NloqfuY0
さやか「そして、ほむらが多く繰り返した直接の原因が重要になるんだ」

さやか「話を聞く限りだと、ほむらはワルプルギスの力自体はそんなに問題視していないようにみえた」

さやか「いや、それより前に生じる問題が大きくて、後に回さざるを得ないって感じかな」

ほむら「……」

さやか「それは何か……っていうまでもなくまどかの死、契約だよね」

さやか「で、未契約の状態で死んじゃうのかって言えば、それはかなり少ないと思うんだよ」

さやか「ほむらとマミさん、それに杏子、あたし、周りに大体一人か二人は魔法少女がいる」

さやか「中々これでは死なないでしょ?敵対しようが離れようが、みんなまどかに手を出すようなことはしないもん」

さやか「例のイレギュラーだって次の時間軸から何とかしてきたって言ってたし」

さやか「……あ…っと。あたしはちょっと危なっかしいかな?」

さやか「まどかの近くで魔女化しちゃったりとか、まどかといるときに杏子やほむらに喧嘩うっちゃったり?」

さやか「……迷惑じゃすまないかもね、これは」

ほむら「……あなたが直接の原因となってまどかが死んだことはないわ」

さやか「……ありがとね」

551: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 01:05:47.89 ID:0NloqfuY0
さやか「それで、残る可能性はワルプルギスくらいかな?」

さやか「だけど、仮にそこまでまどかが未契約でたくさん来てるなら、あたしたちとの関係のためにキュゥべえを襲わない、なんて考えるかな?」

さやか「考えないし、考えてたらだめだよね。あと一歩じゃん」

ほむら「……」

さやか「てことはだよ?ほむらが繰り返してる大部分の原因っていうのはつまり」



「まどかが契約しちゃうから」



552: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 01:09:05.30 ID:0NloqfuY0
ほむら「……」

さやか「じゃあ、契約したまどかはどんな運命をたどるのかな?」

さやか「ほむらのループで大部分を占める世界最強のまどかについて考えようか」

さやか「さて、このまどかは魔女・魔法少女との戦闘で死ぬ、ないし魔女化するか?」

さやか「中々死にはしないと思うんだよね。何せ最強だもん。問題は魔女化かな」

ほむら「……攻撃するときにね、魔力を使いすぎちゃうのよ。だからすぐに魔女になっちゃうの」

さやか「どう?マミさん、キュゥべえ?」

マミ「どう、と言われても、きちんと指導すればいいんじゃないかしら?」

マミ「鹿目さん、話を聞く限りでは、魔法少女としてのセンスがないわけじゃないんでしょう?むしろいい線言ってるみたいじゃない?」

マミ「魔力量の調節くらいすぐにできるようになりそうだけど」

QB「そうだろうね。ぶっつけ本番でもない限りは大丈夫だし――いや、ぶっつけ本番でも普通はないね」

ほむら「……私って、薄情だから、まどかが契約した時点で何も指導せずにやり過ごして、魔女化の前に繰り返しちゃうの」

さやか「下手で辛い嘘はやめなよ」

ほむら「……」

553: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 01:12:12.10 ID:0NloqfuY0
さやか「じゃあ、精神面、絶望で魔女化するかどうか」

QB「そうそうないだろうね」

QB「三周目、目の前でさやかが魔女化し、マミが杏子を殺し、そのマミをまどかが殺した」

QB「この状況でも魔女化しなかったんだから、およそほかの周で、一か月の間に心が壊れるなんて想像しがたい」

QB「ありえなくはないが、かなりのレアケースだろうね」

マミ「……」

杏子「……

ほむら「……」

さやか「……てなわけで、まどかは大部分の周で魔法少女としてワルプルギスと相対するところまで行く」

さやか「そして、ワルプルギスを倒したまどかはなぜか魔女化する」



「なぜ?ここまでくればさやかちゃんでも解ける」



554: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/18(月) 01:13:07.68 ID:0NloqfuY0




「ワルプルギスにとどめを刺した魔法少女は、魔女化するようにできてるからだよ」




567: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/19(火) 01:47:50.13 ID:yIOqF37B0
QB「魔女とは絶望を振りまく存在であり、普段君たちが魔女を倒したときその影響を受けている」

QB「君たちがそれを意識しないのは、もともと魔女を倒す際に魔力を使っているからなんだ」

QB「ワルプルギス級ともなれば受ける絶望も殊更で、それこそ倒す際の魔力消費と合わせれば即魔女化してもおかしくないね」

QB「魔力を使わなければ、といったレベルでもないだろう」

ほむら「その通りよ。まどかは必ずワルプルギスと戦うと魔女化してきた。たぶん誰が倒してもそう」

ほむら「だから私がとどめを刺す。それでいいじゃない」

マミ「納得すると思う?」

568: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/19(火) 01:50:46.27 ID:yIOqF37B0
ほむら「……私、ね、元々あの夜を越えても詰んでしまうの」

一同「……え?」

ほむら「私の時間停止、遡行は、あの夜を越えたら使えなくなる」

一同「……!」

ほむら「魔女一体もろくに倒せなくなるでしょうね。そもそも武器だって時間停止で盗んできたものだから」

QB「なるほどね。君の素質で時間停止と遡行は大それていると思っていたんだ」

QB「いくら専用武器に攻撃性がないにしても、ね」

QB「使用可能期間が定められているというのなら納得できるよ」

569: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/19(火) 01:55:30.29 ID:yIOqF37B0
さやか「それでもあたしたちと協力して魔女を倒したりグリーフシードを融通しあえば―――!」

ほむら「新人魔法少女がベテランと組むのとはわけが違う。私には改善できる見込みが全くない」

ほむら「他の魔法少女が出した武器を使う?100年かかるんじゃないかしら」

ほむら「私と協力してグリーフシードを融通しあうなんて、寿命を削る行為よ」

ほむら「融通しあうといえば聞こえはいいけど、私が一方的に貰うだけになる」

ほむら「そんなの絶対にできない」

杏子「……確かに、ワルプルギスを倒した後でほむらと組むことは、あたしたちの命を確実に縮めるね」

杏子「そこの二人はそれでもいいっていうだろうけど、あたしは絶対に反対する」

杏子「あたしとほむら、どっちかを選べって話だ。ましてほむらにその気がないんだからさ」

マミ「佐倉さん……」

さやか「杏子……!」

ほむらは微笑んだ

ほむら「やっぱりあなたならわかってくれるわね。信じてた。ありがとう、杏子」

570: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/19(火) 01:58:14.98 ID:yIOqF37B0
杏子「だけどさ」

杏子「例えほむらがワルプルギスを越えて、すぐに死ぬ運命にあるとしても」

杏子「それでも、明日死んでいいってことにはならないんだよ」

ほむら「……」

杏子「親父が言ってた。どんな奴にも命は平等だって」

ほむら「……訂正する。やっぱりあなたって面倒くさいわ。こうして深く接するまで気づかなかった」

ほむら「あなたたちもよ。みんなおかしいわ!」

ほむら「言ったでしょう?私はみんなを切り捨ててきた。そのことに何の後悔もない」

ほむら「そして、これからも。この時間軸で失敗したら、あなたたちを平気で切り捨てる」

ほむら「そんな人間が明日死ぬっていうだけじゃない?」

ほむら「何の問題があるっていうの?」

571: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/19(火) 02:08:45.73 ID:yIOqF37B0
マミ「そうよね……あなたは今回、私たちに情を持ちすぎた。それを切り捨てるって難しいと思う」

マミ「そして、うまい具合にことが運んでしまった。戦力までそろった」

マミ「今後もこういうやり方でやらざるを得ない」

マミ「この状況で切り捨てて繰り返すっていうのは、みんなと敵対するよりも、ある意味きついかもしれない」

マミ「……だけどね、それでもあなたなら耐えられると思う」

マミ「勝手な言い分かもしれないけど、今まで一人で血反吐を吐くほど頑張ってきたあなただから」

マミ「もちろん、今後もこう、うまくいくって保証はないんだけど」

ほむら「……かみ合わないわね。何の話をしているの?ああ、あなたコミュ障だから――」

マミ「暁美さん、簡単に、平気で人を切り捨てられる人間はね」


「そんな風に、人を思って泣かないのよ」


ほむら「―――ッ!」

慌ててグシグシとほむらは涙をぬぐった
結構前から、みんな、自分が黙って死ぬのを止めてるって、ほむらが気づいたあたりから泣いてたんだけどね
気づいてなかったのか

まったく……今さら悪ぶっても遅いんだっての

572: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/19(火) 02:11:11.20 ID:yIOqF37B0
さやか「ほむら、もうあたしたち知っちゃったし、決めちゃったからさ」

さやか「止めを刺す人は決めないで行こう?いろんなバリエーションのパターン作ってさ」

さやか「そっちのほうが勝てる確率も上がるでしょ?」

ほむら「……」

ほむら「……」

ほむら「……ワルプルギスを倒した後に、魔女ともう一戦やる力なんて残らない」

ほむら「……誰が倒すかわからないけど、私はそいつのソウルジェムを打ち抜くわ」

杏子「あたしもそのつもりだよ」

さやか「仕方ないもんね」

マミ「……できれば砕かれる側でありたいものね。逃げなんでしょうけど」

ほむら「……もう知らない。勝手になさい」

573: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/19(火) 02:12:45.32 ID:yIOqF37B0
さやか「まー、なんだかんだで新人魔法少女のさやかちゃんが、ベテラン陣みんな出し抜いて止め刺しちゃうんですよねー」

さやか「痛快でしょ?」

杏子「よちよち歩き卒業したばかりのひよっこが何言ってんだか。あたしがやるのが相場ってもんさ」

ほむら「……」

ほむら「私の能力の右にでる者はいないわ」

マミ「あらみんな、だれが一番強いか忘れちゃったの?」

574: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/19(火) 02:14:51.73 ID:yIOqF37B0
……うん。ほむらも何とか保ってる
あとはあたし一人死んでハッピーエンド。ま、最強の魔女相手なら上出来でしょ
みんなそう考えていることには目をつむろう。あとは運次第

そして今は――



「みんな、何を勝手に盛り上がっているの?」



575: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/19(火) 02:16:09.65 ID:yIOqF37B0
今まで見たことがないほど怒髪天の我らがお姫様をなだめないと



「盗み聞きとは人が悪いなー。いつから聞いてたの?」



「ワルプルギスを倒した魔法少女が魔女化するってあたりから」



597: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:18:33.89 ID:248t94SP0



第17話:私たちは、魔法少女だから



598: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:21:52.43 ID:248t94SP0
さやか「そっか、全部知られちゃったか」

まどか「……どうして自分の命を諦めちゃうの?」

さやか「だって他に方法がないし」

まどか「あるよ!」

さやか「言ってみなよ」

まどか「私が契約してワルプルギスを倒す。そして死ぬ。誰かが死ぬなら、それは私」

まどか「もう誰にも文句は言わせない。絶対に!」

さやか「まどか、あたしたちが倒した後でしくじっても、あたしたちが魔女に殺されるってだけなんだよ」

さやか「何人かが巻き添えになるかもしれなけど、一匹の魔女ができることなんてたかが知れてるし」

さやか「だけど、あんたが契約して戦って、みんながしくじったらさ、それこそ世界が終っちゃうんだよ?」

599: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:26:28.31 ID:248t94SP0
まどか「……私はしくじらない!」

言い終えると同時に杏子がまどかの胸倉を掴んで槍をまどかの首筋に突き付けた

さやか「杏子!?」

杏子「ひよっこ未満が調子に乗るな…!ソウルジェムが濁りきる寸前でうまく動けるわけないだろろうが!」

まどか「……」

杏子「あたしらに頼るか?あたしらだってあんたを殺す自信ないんだよ!」

杏子「相手のために相手を殺す、なんてことには途方もない覚悟がいるんだ。例え世界がかかってるとしてもさ」

杏子「経験なんて、あたしは、ないけどね」

杏子「マミ?例の三周目でさえ躊躇ってるよ?そうじゃなきゃ、このほむらはここにいない」

マミ「……」

杏子「確実にできるとしたら――今あたしのソウルジェムに銃で狙いをつけていて、あと1mmでも槍を首に近づけたら迷わず撃つ気でいる奴くらいだよ」

まどか「……!」

600: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:29:30.40 ID:248t94SP0
杏子「ほむらは何回もあんたを介錯してきた。その意味わかるか?」

杏子「まどか、あんた、またほむらの十字架を増やす気なの?」

まどか「……」

杏子「わかったみたいだね」

言い終えて杏子はまどかを離して槍を下した。ほむらも銃を下す

過激すぎるよ……せめてテレパスで打ち合わせとかさあ……

まあ、ほむらも信じてたから時間停止を使わなかったんだろうけど
マミさんも無反応だったし
はいはい。杏子が何考えてるか全然わからなかったさやかちゃんが悪いんですよーだ……

601: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:32:56.68 ID:248t94SP0
まどか「……」

まどか「ねえ、みんな」

まどか「逃げよう?」

まどか「ワルプルギスって言っても、大きな台風くらいなんでしょ?県外まで逃げれば大丈夫だよ!逃げようよ!」

ほむら「まどか、あなたはとても優しい。だから目の前にいる私たちに固執してしまう」

ほむら「考えて。ワルプルギスは確かに攻撃範囲は台風程度。見滝原全域くらい」

ほむら「だけど、威力は果てしない。見滝原は廃墟になってしまう」

ほむら「人もよ。本当に大勢死ぬわ。あなたの家族も、友達も、先生も」

まどか「……!」

ほむら「私たちが今から逃がそうにも、限度がある。それに、助かった人の親しい人も死ぬことになる」

ほむら「あなたは故郷を、この街を失って、本当に耐えられるの?」

ほむら「大切な人がたくさん死んで、生き残った人も廃墟と死体の群れの中で嘆き悲しむ光景に、あなたは本当に耐えれれるの?」

まどか「……」

602: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:37:05.90 ID:248t94SP0
さやか「ま、あたしたちもそれが嫌で戦うわけだしね」

杏子「あんたらがそれでいいってんなら、あたしとしては一緒に逃げてもいいかなって思ってるんだけどね」

さやか「……ごめんね。巻き込んじゃって」

杏子「……そういうのは無しだよ。あたしが自分で選んだんだから。あんたたちはこの街は命をかけるに値するって思ってるんだろ?」

さやか「うん」

杏子「それにあたしが勝手に付き合うってだけさ」

まどか「……」

マミ「ごめんなさい。鹿目さん。明日、この中の一人は確実に死んでしまう。もしかするともっと、下手したら全員」

マミ「辛いでしょうね……。ごめんなさい。残していくことになって」

マミ「だけど、私たちだって、みんな辛いのよ」

マミ「特に、私なんか、最初から死ぬつもりで、つい最近生きる決意をしたから、なおさらね」

マミ「でも仕方ないのよ」



「だって――」



603: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:38:01.58 ID:248t94SP0



「―――私たちは、魔法少女だから」



604: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:40:36.45 ID:248t94SP0
結局そのあと、まどかを隅において私たちの作戦会議――
――あたしたち全員それぞれがとどめを刺すパターンを作る作業が始まったんだけど

まどかが、あたしたちそれぞれが、とどめを刺して死ぬために話し合っている光景に耐えられるはずもなく



2分もしないで泣きながら出ていった



605: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:44:39.32 ID:248t94SP0
まどかside

みんなに何と言ってほむらちゃんの家を出て行ったか覚えていない
どうやってうちに帰ったか覚えていない
帰った後にどんな挨拶をしたか覚えていない
ママ、パパ、タツヤとなにを話したか覚えていない
なにを食べたか覚えていない
何のテレビを見たか覚えていない
いつ部屋に入ったか覚えていない

なにもかも覚えていなくて

私はベッドで震えていて、窓にはキュゥべえがいた

606: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:47:38.53 ID:248t94SP0
QB「ねえ、まどか」

まどか「帰って」

QB「酷いじゃないか。起死回生のアイディアを持ってきたっていうのに」

まどか「……」

この時私は、ぼんやりと、溺れる者は藁をもつかむってほんとだなと思った

QB「ワルプルギスを消すって願えばいいんだよ!そしたら万事解決さ」

QB「みんなは君の契約にショックを受けるだろうけど、決戦のために用意したグリーフシードと、時間がすべてを解決してくれる」

まどか「…」

まどか「……」

まどか「………」

607: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:49:49.92 ID:248t94SP0
まどか「ねえ、キュゥべえ、あなたはかつて別の時間軸で私にこう言った」

QB「僕は覚えてないけどね」



「どんな希望も、それが条理にそぐわないものである限り、必ず何らかの歪みを生み出すことになる」



まどか「この街を焦土にしてしまう、最強の魔女を消すことで生まれる歪みって、どのくらい?」

QB「…」

608: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:52:34.52 ID:248t94SP0
まどか「答えられないんだね…!?あなた、わかってるんだね…?」

まどか「その歪みで、とんでもない結果になるってわかってるんだね…!?」

QB「……」

まどか「私の大切な人が」

まどか「もしかしたら、今まさに願いで助けようとしてる、ほむらちゃんたちまで大変なことになるってわかってるんだね…!?」

QB「……」

まどか「……答えてよ!!インキュベーター!」

QB「……君が、あの4人のため、宇宙のために死ぬ気になったらまた来るよ」

まどか「……二度と来ないで!!」

609: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/20(水) 00:53:17.40 ID:248t94SP0
そのあと私は、泣き腫らして、寝て、泣き腫らして、また寝てを繰り返して

気づいた時には避難所だった
避難勧告が出ていたことにも気づかなかった

620: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:30:14.71 ID:QJat2gq80



第18話:決戦、未来都市見滝原



621: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:35:56.23 ID:QJat2gq80
ほむらside

決戦の地に魔法少女が4人
感慨深くはあるけど、やはりさやかは加わってほしくなかった
さらに言えば、ワルプルギスを倒した後のことまで知られては、もう私一人で戦いたいとさえ思う

だけど、私一人で戦って勝てる見込みなんかない
だから、私はこの4人を巻き込むしかない
利用するしかないんだ……

なんでみんなこんな私のことを――

622: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:41:40.57 ID:QJat2gq80
さやか「――なーんて考えてるんじゃないでしょうね?」

ほむら「……!?」

さやか「……え!?図星!?ちょっとちょっと!今からそんなネガティブじゃ勝てるもんも勝てないでしょうが!」

さやか「あたしら好きでやってるんだからね?この街がなくなっちゃ、まどかやほむらが死んじゃ困るからさ」

ほむら「……うるさいわね。見透かしたようなこと言わないでくれるかしら?」

ほむら「……あなたなんかにとどめは刺させないわ!いい気になるんじゃないわよ!美樹さやか!」

さやか「そーそー。ほむらはそうでなくちゃ!」

ほむら「……フン」

やっぱり、この娘には、加わってほしくなかったな……

623: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:44:03.17 ID:QJat2gq80
マミ「ねえ、美樹さん、あの後鹿目さんどうだった?」

さやか「電話してみたんだけど、繋がらなくて……」

さやか「多分、充電するのも忘れてるね……」

杏子「今から何か言ってきてもいいんだよ?何ならそのあと帰ってこなくてもいいんだ」

さやか「いいよ」

杏子「これで最後になるかもしれないんだぞ?」

さやか「まー、なんてか、どういう最後だったかってより、どういう風に生きたかってのが大事だと思うんだよね」

さやか「……いや、まどかがどう思うかの方が大事か…」

さやか「……わかんないや」

624: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:46:49.50 ID:QJat2gq80
ほむら「……あなたらしい見解ね」

さやか「と、言うと?」

ほむら「あなたっていつも、周りに当たり散らして無様な最期迎えるんだもの」

さやか「こりゃ手厳しい……」

ほむら「だけど、当たられた周りはあなたを放っておかないし、いなくなったら嘆き悲しむ」

ほむら「どういう風に生きたか、を周りの人がちゃんと見てきたからでしょうね」

さやか「……」

杏子「さやかって、褒められると無口になるのな」

さやか「……うっさい」

マミ「……もう話してる時間もなさそうね」

杏子「おいでなすったな。大丈夫なんだな?」

さやか「……うん」

625: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:48:49.57 ID:QJat2gq80


ワル「アハハハハハハハハハハハハハ!」



さやか「こりゃすっごい……」



杏子「あれの力がわかるってんなら、とりあえず上出来だね」



マミ「……勝てない相手じゃないわね」



ほむら「…………いくわよ」

626: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:50:43.17 ID:QJat2gq80
まどかside

私の命はみんなの命より軽い

そんなこと言ったらみんな烈火のごとく怒るだろうけど
今まさに死地に赴いているみんなを想像したら、そう考えずにいられない
みんなの命は遥かに重いんだ

……だけど、ほむらちゃんとの約束も重い
昨日は本当に破るつもりだったけど
それでも、あれは、絶対に破っちゃいけない約束だった

だけど、みんなのうち一人は今日確実に死ぬ
私が何かしないと確実に
だけど、私にできることなんて……もう

……

結局私には、何も――

627: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:52:19.09 ID:QJat2gq80
―――――……え?

そんな、あれは

でも、まさか

いや、確かに――



「――仁美ちゃん?」



628: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:53:23.74 ID:QJat2gq80
……仁美ちゃんは違うところに避難してる、ってほむらちゃんは言ってた
住んでるところからしてそうなる……はずなのに


「まどかさん、少しお話ししませんか?」


「……いいけど……?」


629: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:55:26.09 ID:QJat2gq80
私たちは、避難所出口前の階段の上に移動した
私としてはここまで来ることもないと思ってたんだけど、仁美ちゃんが誰にも聞かれたくないって言うから

仁美「ねえ、まどかさん」

まどか「何?」



「これって――本当にただの台風なんですか?」



「――!?」



630: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:56:42.95 ID:QJat2gq80
「さやかさんが暁美さんを転校初日に連れ出したのはなぜですか」

「そのころから、私との付き合いが悪くなったのはなぜですか?」

「そのころから3年の巴先輩と一緒にいることが増えましたよね?」

「私がかかった『集団催眠』、その本当の原因は何ですか?」

「上条君の、現代医学では治らないとされていた怪我が突然治ったのはなぜですか」

「なぜそのころから、あなたと暁美さんは悲しげな顔をするようになったんですか?」

「なぜそのころから、さやかさんは諦観したような顔をするようになったんですか?」

「なぜ暁美さんは、私の告白がさやかさんの死と結びつくと考えているんですか?」

632: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 00:58:46.52 ID:QJat2gq80
まどか「仁美ちゃん!?いったい何を――!?」

仁美「どうしてあなたは、今、そんなにも絶望しているんですか?」

まどか「!?」

仁美「突然のスーパーセルの出現にかかわらず避難勧告は適切、かつ迅速に出されました」

仁美「このスーパーセルでおそらく死者は出ませんよ?出たとしても」


「片手で足りる数でしょう」


仁美「本当にスーパーセルだと言うのなら」

633: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 01:00:12.77 ID:QJat2gq80



「違う……!」




そう、あの4人の命は片手で足りる



「命は数えていいものじゃない!」



634: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 01:03:41.49 ID:QJat2gq80
仁美「ええ。そうです。あなたはそういう考え方をするでしょうね」

仁美「例え死者数が1人に収まったとしてもひどく心を痛めるでしょう。意地悪言ってごめんなさい」

まどか「だから一人でも――!」

仁美「でも、あなたの顔は、確実に死者が出る、それも、自分の知っている人――友人が死ぬと言っています」

まどか「……」

仁美「いくらまどかさんでも、いえまどかさんだからこそ、私に怒るならば友人が死ぬ以外にありえないでしょう」

まどか「……」

仁美「……」

635: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 01:06:17.56 ID:QJat2gq80
仁美「ごめんなさい。溜まってたぶんが一気にはき出たみたいです」

まどか「ううん。私も、ここ最近仁美ちゃんをおざなりにしてきたかなって」

まどか「ごめんね」

仁美「いえ。あなたとさやかさんはできる限りで私に話しかけてくださいました」

仁美「私はそれが嬉しかった」

仁美「さやかさんは立場上、限度がかなり厳しかったですけどね」

まどか「……」

仁美「あの個別の質問すべてにこたえていただいても時間を無駄にするだけですわね」

仁美「次の質問にだけ答えていただけますか?」

まどか「うん。私も仁美ちゃんに聞きたいことがあるの」

仁美「では――」

まどか「じゃあ――」

636: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/21(木) 01:07:21.67 ID:QJat2gq80




「さやかさんは、どこまでわかった上で契約なさったんですか」




「仁美ちゃんはどこまで知っているの?」




647: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:27:35.30 ID:l0T32Y+B0


第19話



仁美、心の向こうに



Love is destructive.




648: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:31:04.92 ID:l0T32Y+B0
ほむらside

65%はうまくいっているといえるだろうか。しかし、すこぶる微妙だ

恐らくはここが勝敗分岐ライン。あいつに何度も敗北して得た経験がそう告げている
ここで大胆な手を打たないとジリ貧となってやがて詰む

しかし――現状は芳しくない

649: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:32:46.19 ID:l0T32Y+B0
やつの攻撃は激しさを極めており、私たちは、私とさやか、巴さんと杏子の二つに分断されている
倒壊した建物を盾に攻撃を行うのがやっとという情勢だ

セッティングした近代兵器の類はもうあらかた消費した
この状況で打てる大胆な手を、私は持ち合わせていない

巴さん側とテレパシーで打ち合わせて作戦を立て直せばあるいはといった状況
だが今はテレパシーを使うことができない
やつの妨害電波的な魔法で著しくテレパスが阻害されているからだ

この状況では、さやかと組むしかない
しかし、現在時間停止は例の制限に引っかかっている状況で、すぐには使えない

さやかと私の二人で今打てる気なんて―――

だけど、何か手を打たないと、このままじゃ、また……また……――

650: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:35:25.02 ID:l0T32Y+B0
この時私は気づくべきだったんだ

私の隣にいるさやかという少女は、思い込みが激しくて、優しくて、勘がいい

今まで、思い込みの激しさに随分手を焼かされてきた
今周、勘の良さと優しさに何度も助けられてきた

しかし、それは、今後も助けられるということを、必ずしも意味しないということに、気づくべきだった

651: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:36:47.87 ID:l0T32Y+B0
……いや、私は確かに今回も助けられた

だけど、こんな助けなんて、望んでなかった……



「ごめん、ほむら」



「え?」



652: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:37:26.44 ID:l0T32Y+B0



「犠牲は二人になる」



653: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:38:08.58 ID:l0T32Y+B0



言うや否やさやかはワルプルギスの夜に向かって駆け出して行った。一直線に



「さやか……?」



654: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:39:16.56 ID:l0T32Y+B0




「さやかああああああああああああああああああああああああ!!!!!!??????」




655: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:40:47.35 ID:l0T32Y+B0
仁美side

ずいぶん昔の話になる
さやかさん、まどかさんと出会った直後の話だ

私には、友達がいなくて、それを名家志筑家の娘ということで生まれる畏怖と習い事に時間を取られるせいにしていた

656: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:45:07.92 ID:l0T32Y+B0
クラス替えがあって、さやかさんは例によって一人でいる私を放っておくはずがなく
それには当然まどかさんも伴われた

初めて、それも二人もできたと友達が思った
それで、うれしさのあまり、私はうちに二人をお招きした

ところが、さやかさんが、私が席をはずしている間に何かをしでかしたみたいで

戻るとさやかさんは、あの歳で土下座で父に謝罪していて
まどかさんも巻き込まれて土下座していた

私は怖くて何が起こったか聞けず、また、だれも私に説明しなかった

(当時は、さやかさんが主犯、まどかさんは止めたとわからなかったが、今はわかる)

(別に聞いたわけではないがその後の付き合いから明らかだ)

二人が帰った後、父に、友達は選べと通告されて
また一人ぼっちだと落ち込んだ、そんな昔の話

657: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:46:14.45 ID:l0T32Y+B0
もう何もかも投げ出してやろうと思った、そんな時

QB「悩み事を抱えているようだね」

仁美「……何?」

QB「僕と契約して、魔法少女になってほしいんだ!」

仁美「魔法少女?」

658: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:47:31.35 ID:l0T32Y+B0
QB「僕と契約することで、魔法少女になれば、願い事を一つなんでも叶えてあげられるんだ」

仁美「契約……」

QB「その代わり、魔女と戦う運命を背負うことになる」

仁美「……」

QB「君がまさに今すべてを投げ出そうとしていたよね?悪い話じゃないと思うんだ」

仁美「……契約は、すべての条項を理解したうえで結ぶようにと父に厳命されてますの」

QB「……いいお父さんだね」

659: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:49:25.51 ID:l0T32Y+B0
仁美「魔女とは、いったい何なんですの?」

QB「絶望をまき散らす化け物だよ」

仁美「抽象的ですわね」

QB「でも、言葉でこれ以上の説明は難しいんだ」

仁美「実物を見せていただけますか?」

QB「それはあまりに危険すぎるよ」

仁美「構いません。魔女とは何かを知るまで、とても契約など無理です」

QB「……命の保証はないからね?危機に瀕したら契約するしかないよ?」

仁美「なら、お断りします」

QB「………なんだって?」

仁美「話はこれで終わりだといってるんです」

660: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:51:08.44 ID:l0T32Y+B0
QB「……仕方ない。君の頭にイメージ映像を流し込もう」

仁美「それができるなら、初めからそう仰ってくださいな」

QB「……」

仁美「それで、魔女というのには種類があるんですか?」

QB「あるよ。それこそ無数に」

仁美「500パターン」

QB「!?」

仁美「500パターンの、魔女対魔法少女を見せてください」

QB「……わかったよ」

仁美「半分は魔法少女が敗北した映像でお願いします」

QB「……」

仁美「敗北というのは、死、ということですよ?」

QB「」

661: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:52:50.19 ID:l0T32Y+B0
鑑賞後

仁美「すごい過酷な戦いなんですね」

QB「……奇跡の対価だからね」

QB(魔女化の映像はカットしてきたが……。大丈夫。魔女のおぞましい姿・過酷な戦いを見ても願望が消えることなどない!)

仁美「ねえ、キュゥべえさん」

QB「何かな?」

仁美「死ぬ映像のいくつか、3分の1、でしょうか?致命傷となる攻撃を受けた時、宝石みたいなものが砕けていたと思うんです」

QB「……そういうこともあるだろうね」

仁美「残りの3分の2は意図的に隠される形になっていました。あれは何なんですか?」

QB「……ソウルジェム。魔法少女の力の源さ」

仁美「まさか、文字通りの魂ではありませんよね?」

662: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:55:28.99 ID:l0T32Y+B0
QB「うん、魔法少女としての魂さ。これが濁り切ったり、砕けると魔法を行使できなくなる」

QB(濁り切った場合は、魔法の前に。自由に、って枕詞がつくけどね)

仁美「濁る原因は?」

QB「魔力の消費と絶望だよ。ちなみに回復する方法は――」

仁美「そんなことよるも、です。砕けたら命が終わる、死ぬという意味でも、魂でしょう?」

仁美「あの意図的な編集はそうだとしか思えません」

QB(なんだこの子)

QB「……そうだね。その通りだよ。魂なんだ」

QB「でもこれには利点もあって、いや利点しかない。というのは――」

仁美「大方予想はつきますわ」

仁美「要はソウルジェムを本体とすることで体を代替可能にする、いくら体が傷ついても問題なし、ということですわね?」

663: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:57:22.40 ID:l0T32Y+B0
QB「……その通りだよ!君みたいな合理主義なリアリストにはぴったりな話じゃないかな?」

仁美「ところで、なぜあなたは、あの化け物を魔女と呼称するんですか?」

QB「……魔法少女が魔女を倒す。自然な話だと思うよ?」

仁美「私はそうは思いません」

仁美「単に魔法少女の相手なら、魔なるものとして、単に魔物、悪魔、魔獣と呼べばいいんじゃないかと思うんです」

QB「……君はなかなかユニークな発想をしているね」

仁美「私の方が一般的な感覚をしていると思います」

仁美「あなたは人間について学ぶべきです」

664: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 00:59:11.25 ID:l0T32Y+B0
仁美「私の考えを言いましょうか」

仁美「魔法少女という存在があって、対比してとある化け物を魔女と呼ぶ場合、魔法少女と魔女は対になる存在ではないかと考えます」

仁美「少女は成長して女になるわけですからね」

QB「しかし考えても見てほしい、あれはなんか女っぽいような感じがしなかったかい?」

仁美「そうですわね。ああ、あれは魔女だ、と思うに足りる容姿ではありませんでしたが」

仁美「ところでそのソウルジェム、砕けたら死ぬのは明らかですが、濁りきっても魔法が使えなくなるということでしたわね」

QB「うん。そうなんだ。魔法が使えなくなる」

仁美「自由に使えなくなるという意味で解釈してよろしいですか?」

QB「……それは君次第かな」

665: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 01:00:52.94 ID:l0T32Y+B0
仁美「ほぼ肯定ですわね」

仁美「自由に使えなくなるとは、すなわち自由意志がなくなるということではないですか?」

QB「……僕にはわからない」

仁美「不毛ですわ。もう単刀直入に聞きましょう」

仁美魔法少女のなれの果てが魔女である。違いますか?」

QB「……君みたいな娘はなかなか見ないね」

仁美「肯定ですか……明らかに度が過ぎた対価だと思います。契約は、今はお断りしますわ」

666: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 01:02:08.69 ID:l0T32Y+B0
QB「……言っておくけど、素質はいつか消滅するものだ。特に君の素質の消滅は早い」

QB「一か月もすればなくなるだろう。気が変わったらいつでも――――」

仁美「一か月ですか。それはいいですね」

QB「……は?」

仁美「一か月は何かしでかしても保険があるということです」

仁美「なんだか視界が開けた気分ですわ」

667: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 01:02:58.79 ID:l0T32Y+B0
そして私は父に

「志筑の娘としてふさわしくなるべくいかなる研鑽も積みます」

「もう一切泣き言は吐きません」

「けれど、私の友人関係に口は出させません」

と通告した

私が父に逆らったのは初めてで、父は怒りと喜びが入り混じった表情をしたが、最終的に飲んでくれた

668: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 01:03:27.21 ID:l0T32Y+B0
そういうわけで、私はあの時から習い事を倍に増やされて

二人との関係は友達から親友になって今も続いている

669: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 01:05:17.08 ID:l0T32Y+B0
まあ、父は寡黙で、さやかさんとの関係をどういう理由で切れと言ったかはいまだに話してくれないが
理解できなくもないと、今は思う

さやかさんの無鉄砲さにはいつも手を焼かされた
よく、周りの大人からも「忠告」されたものだ

でも、そんなことは本当に私にとってはどうでもよかったんだから仕方ない

なんで無鉄砲な彼女に振り回されても構わず一緒にいるか?
楽しかったからに決まってるじゃない!

さやかさんが突っ走り、まどかさんが止めて、私が考える
中々いいトリオだったんじゃないかと思う

670: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 01:06:38.57 ID:l0T32Y+B0
ところで父の厳命は、先に言った通り一理はあると思っていたのでそのままフレーズは頭に残っていて
さやかさんが大暴れして限度を踏み越えて、まどかさんとともに孤立したときに引用させてもらった

「ねえ、志筑さん、なんであの二人と付き合ってるわけ?このままじゃ志筑さんもあの中に入っちゃうよ?」

「アハハ」

「ごめんあそばせ。友人は選ぶようにと、父から固く厳命されてますの」

「……どういう意味かな?」

「そのままの意味ですわ」

671: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 01:08:30.57 ID:l0T32Y+B0
さやかさんがただ暴れて孤立したのなら、頭を冷やさせるために放っておいたかもしれない
まどかさんのためだったってわかっていたから――

もちろん対象に私も入ったことは言うまでもないが、さして気に留めるようなことではなかった
さやかさん、まどかさんと一緒だったから

永遠にあの状態も続くはずもなかったから
友情は永遠のものだと思っていたから

672: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/22(金) 01:09:20.76 ID:l0T32Y+B0




――――私の中にあった、上条君に対する思いを自覚するまでは




698: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 00:44:44.08 ID:jHUuazng0
上条君に告白して、もし成功したらどうなるか

さやかさんとの関係を維持できるか

わからない

思い切り憎むのも、涙をのんで、流して祝福するのもさやかさんだと思う

わからないんだから、維持できる、なんて虫のいいことを考えるべきではない

699: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 00:46:40.99 ID:jHUuazng0
まどかさんはどうか

さやかさんと上条君の仲は言わば公然の秘密だった

私がまどかさんの立場ならどうだろう
今の関係を破壊してまで、そんなクラスメイト公認だったさやかさんを押しのけて告白することに怒りを覚えるんじゃないだろうか
まどかさんはさやかさんと上条君がうまくいけばいいと考えていたから

でも、まどかさんは私じゃない

まどかさんなら、私とさやかさんの間でただ悩み続けるんじゃないか
そして、私はそんな彼女を見たくはない
さやかさんの方に行ってひたすら慰めてほしい
その方がお互いのためだ

700: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 00:47:59.66 ID:jHUuazng0


告白したら、成功したら二人ともう友達でいられないかもしれない
不安を感じ始めれば、もう、そうだとしか思えなくなる

だから告白はやめた

……はずだった


701: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 00:49:58.59 ID:jHUuazng0


恋心は私のなかで膨れ上がり続け
宣戦布告という形で爆発した

最大限の義理を通した
だけど、それは、上条君とさやさんを引き裂こうというのに、二人との関係を維持したいという卑怯で偽善な考え方が発露したものだった


702: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 00:51:19.98 ID:jHUuazng0
そして告白しに行って
上条君の指がさやかさんの祈りで治ったことに気づいて



激しく後悔した



703: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 00:54:16.11 ID:jHUuazng0
結局そのあと告白なんてできるはずもなかった

だって、さやかさんが絶望したら、魔女になってしまうから

暁美さんには意地悪を言ってしまった
理屈では分かっていても、さやかさんのために告白を我慢しろ、と言われたら、ね

さやかさんには素晴らしい友人がまたできて
それが暁美さんで
私はさやかさんから離れることになると思っていたから

私が招いたことなのに、嫉妬してしまったんだ……

704: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 01:00:06.89 ID:jHUuazng0
そして、今日、スーパーセルを出現の一報を聞き、、『日常的な類の問題ではない』なにか、とはこれだと確信して
超強力な魔女なんだと予想し

暁美さんとさやかさんがしている指輪に契約の証だろうと当たりをつけて
まどかさんはしていないから未契約なんだろうと考え

避難所に来るはずだと思って、ここに来た

もし、まどかさんが戦いに参じないなら、それはみんなとの約束からだろう
だから、私は口を出すべきではない
ただ気になって、いてもたってもいられなくて、来ただけだった

だけど、私は、絶望に打ちひしがれている彼女をみて、一つの決意をした



――最低な決意を



705: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 01:02:57.49 ID:jHUuazng0



第20話



命の選択を



Quickening



706: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 01:04:41.57 ID:jHUuazng0
ほむらside

結果として、さやかは予想以上に善戦し、現状は打破できた
奴も、もう余裕がない。後5・6押しといったところ

だけど…

マミ「もう駄目ね、これは……」

杏子「……ソウルジェムの限界ってやつだな」

杏子「初めて見るけど……もう浄化とか治療って問題じゃ……」

707: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 01:09:18.63 ID:jHUuazng0
私たちは、巴さんの爆撃で隙を作り、さやかを引きずって陰に退避して治療を施した
……これと同じ状況を、私は見たことがある。ソウルジェムにひび割れが目立ち、もう浄化では濁りが取れない
当然に意識はない


……魔女になるのも時間の問題だろう


そして、今魔女が新たに現れたら、さやかの奮闘が無駄になってしまう
……さやかがそんなことを望むはずがない

だから、引き金を引く。それだけなのに

……涙で視界は悪く、引き金にかけた指は鉄のように固くて――

頭の中には、走馬灯のように、さやかの、よりにもよって1周、2周目、今周の映像ばかり流れて――

708: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 01:14:46.71 ID:jHUuazng0
私はこの周回、みんなと接して弱くなった
今、さやかを殺すことができない

怖いんだ。さやかが死んでこの時間軸で固定してしまうことが
もう、まどかのために犠牲を許容できなくなっていた

だけど、これではまどかを救えない

できるできないじゃない。やらなきゃいけない
だから、何としても撃ち抜かなきゃいけない
そのことで頭が一杯だった

多分あと10秒あれば撃てたと思う
だけどそれは、あまりに致命的な隙だった

戦闘面においてもその弱さは今、いかんなく発揮されようとしていたから

以前の私なら、杏子と巴さんが目配せして何かを決意したことに気付けたはずだ

709: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/23(土) 01:15:55.81 ID:jHUuazng0



その時の私にとっては唐突に、リボンと槍が二人から放たれた



「――え!?」



そのまま私はなすすべもなく拘束されて――



720: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/24(日) 00:56:24.45 ID:75JDjG4w0
まどか「そう、だったんだ」

仁美「さやかさんは、すべてを知っていたんですね……」


仁美「私が……私が、あなたたちが何か隠していると思ったときに、もっと踏み込むべきだったんですね……」

仁美「……自分が選ばれた素質を持った特別な人間なんだ、なんてくだらない選民思想に取り付かれていたばっかりに……」

まどか「ううん。私たちも同じだよ。クラスメイトに相談できる人がいる、なんて思いもしなかったんだから」

まどか「素質はいつか消えるもの……か。考えてみればあり得る話なのに」

721: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/24(日) 00:58:51.71 ID:75JDjG4w0
仁美「ねえ、まどかさん。これから酷く無責任なことを言いますね?」

まどか「?」

仁美「……あなたは、この事態において、自分にできることが何もないと考えていますね?」

まどか「……うん」

仁美「それは、さやかさんと契約しないと約束したから」

まどか「……うん(ほむらちゃんとの約束だけど、さやかちゃんとも約束してるようなもんだね)」

仁美「あなたは今とても絶望しています。このままでは、大切な人が死ぬと思ってるんですね?」

まどか「……」

仁美「そのことに責任を感じている」

まどか「……そう、だね」

仁美「素質自体は、あなたにもあるということですね?だから、本当は何かできなきゃおかしいのに、と思っていると」

まどか「……うん」

722: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/24(日) 01:01:13.76 ID:75JDjG4w0
仁美「……あなたはさやかさんみたいになりたいと思っていた」

まどか「……分かってたんだ」

仁美「さやかさんなら、こんな時どうするでしょうね?」

……!

仁美「私にこの事態においてできることなどありません」

仁美「まどかさんにしても、いつもならそうです」

仁美「私とまどかさんにできない以上、さやかさんがどうにかするしかない」

仁美「でも、今はさやかさんは奮戦なさっていて、まどかさんは、それでもだめだと思っています」

仁美「だから」

723: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/24(日) 01:02:25.92 ID:75JDjG4w0
……そうだ…
さやかちゃんんなら――――

まどか「―――こんなところで迷ってなんかない……!」

まどか「約束なんか守るわけがない……!!」

まどか「なにもできないからって、立ち止まってるわけがない……!!」

行けば私は死ぬかもしれない
……だから何だというんだ!
このままだと、だれか死ぬんだ!

まどか「仁美ちゃん、ありがとう!」

724: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/24(日) 01:03:13.33 ID:75JDjG4w0
さやかちゃんみたいに、厚かましく、おせっかいに、傲慢に――
なにができるかわからないけど
みんなを守って見せる

確かにあの時そう決意した

725: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/24(日) 01:04:08.01 ID:75JDjG4w0
あまりに絶望的な状況に、過去も未来も見えなくなっていた
だけど、だからこそ
かつての時間軸のママの言葉


「本当に他にどうしようもないほどどん詰まりになったら、いっそ、思い切って間違えちゃうのも手なんだよ」


ほむらちゃんからの伝達が頭に響く

あの時はうまく働かなかったアドバイスだけど
今は本当にどん詰まりだから
今こそ聞くべき言葉なんだ……!

726: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/24(日) 01:06:29.38 ID:75JDjG4w0
まどか「ママとパパに、お願い!」

仁美「……必ず帰ってくるなら、どういう言い訳でも通して見せます」

まどか「約束する!」

私が行って何ができるか――――
走りながら考えろ!
たとえ思いつかなくても
その場に行けば閃くかもしれない

まどか「キュゥべえ!案内して!」

QB「お安い御用さ」

走りながら湧き上がってきた高揚は
単なる胸の高鳴りではなく――――

明らかに未知の、だけど私は、私だからこそ、よく知っている――――

727: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/24(日) 01:06:58.87 ID:75JDjG4w0
仁美side

無責任な約束だったな

本当にさやかさんみたい

728: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/24(日) 01:08:14.21 ID:75JDjG4w0
だけどそれは私も同じ
この時私は、酷く無責任な考え方をして、彼女を送り出した

さやかさんが死にかけていて、まどかさんが助けられるなら、助ければいいじゃないかと
契約しないと約束したんだろうけど、さやかさんは同じ立場なら約束なんて無視するだろう
なら、あなたが無視してもしょうがないじゃないかと
絶望している彼女の背中を押したつもりだった

約束なんて忘れてしまえ、命のほうが大事だ
本当にさやかさんのために魂を捧げるつもりがあるのなら、捧げてしまえ
彼女の気持ちは助けた後で考えろ、と

729: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/24(日) 01:09:08.33 ID:75JDjG4w0
私はこの時、まどかさんの莫大な素質を知らず、まどかさんが現段階でも契約するつもりがないことを知らなかった
彼女はただ、さやかさんは、すべてを知っていた、と回答したに過ぎなかった



だから、私は、彼女と暁美さんとの約束の重さを知らなかった



730: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/24(日) 01:13:53.77 ID:75JDjG4w0
結局彼女は間違ったっていいという言葉を、違う形で聞きたかったに過ぎなかったのかもしれない
それを伝える人は、誰でも、何も知らない人でも良かったんだろう

私も私で、ただ、彼女が契約しても、今度は私も支える立場に立とう、という、漠然とした思いだけをもって
彼女を送り出した



全てを知っていたら、私はなんと彼女に言っていたか

考えても仕方ないことだと思う
結局、その時に知っている情報から判断するしかないのだから

743: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/25(月) 02:19:39.03 ID:XoTO3W420
杏子side

ほむら「―――――!!!!!!??????」

ほむら「―――――私はまだ戦えるわ!!」

杏子「わかってるよ。あんたは自分で思ってるより強い」

杏子「さやかを殺すことだってできるし、そのあと戦うことだってできるさ」

ほむら「じゃあ、なぜ!?」

マミ「ねえ、暁美さん、あれ、あとどれくらいで倒せると思う?」

ほむら「……5・6押し」

杏子「……ほむらが弱いとしたら、そこだ。さやかの奮闘を過大評価してる」

ほむら「……」

マミ「気持ちはわかるわ。美樹さんはよくやった。だけど、まだ足りないのよ」

ほむら「……それが、私を縛り上げてることにどう結び付くの?」

744: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/25(月) 02:23:00.51 ID:XoTO3W420
杏子「二人」

ほむら「!」

杏子「あと二人犠牲が出る」

杏子「マミの自爆で大ダメージ、そして、あたしのとどめの一撃で終わり。それも自爆で済ますべきだろうな」

マミ「困ったことに蓄積ダメージが増すと力が増す仕様だから、ここまで削った以上短期決戦で挑まないといけない」

マミ「これ以上長引けば、避難所もどうなるかわからないってこともある」

杏子「それに、後のこと考えればさやかの体もこれ以上傷つかずに残ったほうがいいに決まってるしさ」

745: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/25(月) 02:24:32.22 ID:XoTO3W420
ほむら「……やめて」

ほむら「―――卑怯よ!」

ほむら「打ち合わせでは、流れを見て誰がとどめをさしてもいいってことになった!」

ほむら「出し抜くことをみんな目指してたけど、こんな形で拘束するなんてアンフェアだわ!」

ほむら「私にやらせてよ!」

杏子「なんてかさ、死ぬべきじゃない人間は死ぬべきじゃないと思うんだよ」

ほむら「あなたたちは死んでいいっていうの!?そんなわけないじゃない!!」

杏子「いやさ、あんたには家族がいるだろ?」

ほむら「……!?」

746: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/25(月) 02:27:33.75 ID:XoTO3W420
杏子「それ言い出すと、マミは死んでいいってことになっちゃうからさ、言い出せなかったんだよ」

マミ「同じく、ね」

杏子「たださ、こうして、さやかが限界になって、あと二人死ななきゃいけないってなったらさ、もう四の五の言ってられないから」

杏子「犠牲はあたし一人でって欲張ったのがいけないな。さやかには申し訳立たないや……」

マミ「データをみて、こうなるんじゃないか、とは漠然と予想してたんだけどね」

マミ「この状況に陥るまで受け入れられなかった。本当に失態よ」

ほむら「家族がいないからって死んでいいってことにならないわ……」

マミ「それはそうだけど、やっぱりね、私たちからしたら、あなたは死ぬべきじゃないわ」

杏子「それにさ、あれ倒したら終わりってわけでもないんだよ?」

ほむら「……?」

747: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/25(月) 02:29:13.83 ID:XoTO3W420
杏子「まどかだよ。あいつに契約されたら全部おじゃんじゃないか。」

ほむら「……!?」

マミ「さすがに美樹さんを含めて3人の犠牲なんて、鹿目さんも覚悟してるか微妙だと思うのよ」

杏子「それで、まどかが契約に走るとしたら、止められるのはほむらしかいないよ」

杏子「自分の胸に問いかけてみな。あたしらのうちどっちかに任せて死ねるか?」

ほむら「……だけど―――!」

杏子「時間もそろそろあれだし、まあ、納得してくれなくてもいいよ」

マミ「浄化はしておくわ。どうか耐えて。暁美さんが魔女になったらそれこそ全部終わりだから」

ほむら「――――ッ」

748: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/25(月) 02:30:43.01 ID:XoTO3W420



「私はもう行くわ。美樹さんは―――」



「あたしが殺る。ただ、やっぱり、それなりに時間かかりそうだからさ、マミは始めててくれ」



「わかった」



757: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/26(火) 01:16:36.06 ID:N36x0FxH0



―――これは一体どういうことだろうな



758: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/26(火) 01:18:02.64 ID:N36x0FxH0
自分に気があるわけでもない片思いの相手に命を捧げた馬鹿がいる

時間遡行者に自分の運命を教えてもらったってのに
その運命から逃げもせず、逆に向かっていった

その姿、あり方は、あたしがかつて目指した正義の魔法少女そのものだった

そいつは自分の力をよく理解していて
戦況打破、ただそれだけのために命を捨てて見せた

759: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/26(火) 01:19:13.31 ID:N36x0FxH0
事故で自分一人が、願いで生き残ったことに罪悪感なんか覚えやがった馬鹿がいる

その償いのために今まで一人で街を守るために戦い続け
教えを乞うやつには自分が持つすべてのスキルを伝授し(高度過ぎるのは当然こっちが覚えられないが)
恩知らずの不肖の弟子にも許しを与えた

そいつは孤独の戦いの果てに仲間を見つけ―――
間もなく死ぬことになった


最後まで街を守りながら


760: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/26(火) 01:20:31.23 ID:N36x0FxH0
たった一人の友達のために、すべてを捨てた馬鹿がいる

一人永遠の迷路であがき続けたそいつは
自分は最後に死ぬしかないと決めつけていた

出口をようやく見つけたと思ったら、外は天国ではなく地獄だった

あたしらに持ってた情を思い出してしまったがために、よけい深く傷ついて

生き残ってその友達を慰めたあと、長く保たずに死んでいく

761: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/26(火) 01:22:00.91 ID:N36x0FxH0
その友達は、ただただ優しい、優しすぎる馬鹿だった

自分のことを軽く見すぎて、よくみんなに怒られていた

そいつはあたしたちに化け物じゃないと言い切った
その言葉はあたしの心にものすごく響いた
ああ、これは確かに人生を、命を賭けるに値するなと思えるほどに

そして、その優しさのために
さやかはおろか、出会って数週間のあたしの死にさえ心を痛めつけられる

結局あたしにはあいつの嘆きをどうにもできない
ほむらとあいつの親と友達に期待するばかりだ

762: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/26(火) 01:22:51.14 ID:N36x0FxH0



なぜあいつらは救われない
自分で選んだ道じゃないかとでも言うつもりか



―――神様



763: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/26(火) 01:23:39.44 ID:N36x0FxH0
あいつらのレールをずらしてやるのがあんたの仕事じゃないのか?

創造主は創った後のことは興味がないから知らないとでも言うのか?

度々介入しては人はただの操り人形だろうと?
加減も限度もわからないのか

あいつらよりも哀れなやつを救うので忙しいのか?
そうそういないだろうよ

世界に人があふれてあいつを見つけてやれない?
一か月もあって見つけられないのか?
マミに至っては何年も戦ってきたんだぞ?

あいつらがあんたのとこの教義を守ってないからか?
―――くたばれ

764: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/26(火) 01:24:28.81 ID:N36x0FxH0


まさか

―――あんた、「いない」んじゃないだろうな?



だったら、親父は何のために――――!



765: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/26(火) 01:26:09.41 ID:N36x0FxH0
―――なんてこと考えてられる時間もそう残されてない

マミは今、最大出力の攻撃を繰り出してる
まさに後先考えない怒涛の攻撃

あれでもくたばらないなんてゲンナリする

こんな時でも技名叫ぶんだなと苦笑しつつ、あたしも覚悟を決める
そろそろ加わる準備をしないと

766: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/26(火) 01:27:58.91 ID:N36x0FxH0
さやかもいい加減楽にしてやらないとな
まあ、よくやったよ

どういう風に生きたがが、大事なんだっけ?
―――よく生きたよ



―――すぐ行くから



767: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/26(火) 01:28:39.48 ID:N36x0FxH0



あたしは槍を思いっきり振りかぶったのちさやかのソウルジェムに狙いをつけて―――



775: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:19:42.94 ID:uw8B8XEy0



第21話



人の起こしし奇跡



She said, "I don't want to make my friend suffer for my selfishness."



776: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:21:16.62 ID:uw8B8XEy0
???side

そうなんだよね
どういうシステムなのか知らないけど、結局のところ神様は何もしてくれない

だからこそ人の手で奇跡を起こさないといけないんだよね
―――この手で

777: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:22:17.86 ID:uw8B8XEy0
杏子side

―――ガキィン!

「……は?」

光で弾かれた?
さやかのソウルジェムが光を放っていて、いつの間にやらジェムの傷も元に戻っていた
 

何だこれは


778: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:23:17.05 ID:uw8B8XEy0
マミside

いよいよ私の命が尽きると思った瞬間

『マミさん、待って!』

頭の中に声が響く。いよいよ自爆するはずだったソウルジェムの状態ももとに戻った

779: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:23:55.68 ID:uw8B8XEy0



――――鹿………目……さん…?



780: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:24:57.43 ID:uw8B8XEy0
ほむらside

気が付けばさやかのそばに一人の少女が立っていた

まどか……?――――じゃない!

そうだけどそうじゃない!


あれは―――!


781: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:26:20.01 ID:uw8B8XEy0
まどかside

走りながら頭に響く声に問いかける

「あなたは誰?」

『誰でもいいんじゃないかな?』

『大体わかってるんじゃないかな、とも思うんだけど』

「そうだね。助けてくれるんだよね?」

『うん』

『やっと助けられる』

「やっと?」

『うん――――』

782: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:30:08.30 ID:uw8B8XEy0
暁美ほむらが夢だと思った時間軸にて

QB「二つの願いと言うのは困る。叶えられない。どちらか一方じゃないとね」

まどか「……そうなんだ」

まどか「じゃあ」

まどか「全時間軸のほむらちゃんを救いたい」

QB「それには多大なる問題が潜んでいるね」

まどか「……問題?」

QB「まず君はこの時間軸を切り捨てる気になっていない」

QB「この世界には、君の家族や友達も残っているからね」

QB「ワルプルギスの被害は最小限に留まっている」

QB「この時間軸を切り捨てることは、ほむらと杏子の奮戦を否定する、裏切り行為と捉えているようだ」

QB「だからこの時間軸に留まったままで干渉することになるわけだが、君の素質をもってしても、そのような平行世界干渉は難しいんだ」

QB「各時間軸に1回くらいしか干渉できないだろう」

QB「それで本当に救えると思っているのかい?」

783: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:32:53.42 ID:uw8B8XEy0
まどか「……おかしいよ、キュゥべえ」

QB「何がだい?」

まどか「なんでそんなに丁寧に説明してくれるの?」

QB「君たちが求めてきたことじゃないか?」

まどか「言うこと聞く気なんかなかったくせに……!」

QB「……」

まどか「最初の願いだって適当に解釈すれば叶えられたはずだよ?

まどか「答えて」

まどか「あなたは何で今になって、ようやく私が契約しようというときに、腰を折ろうとしているの?」

QB「……結果がどうなるかわからないからさ」

まどか「どう、って?」

784: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:35:45.93 ID:uw8B8XEy0
QB「暁美ほむらが本願を叶えた結果が予想できないんだ」

まどか「どういうこと?」

QB「暁美ほむらが本願を叶えた結果、果たして平行世界がその時間軸を中心に統合されるのか、各個独立して存続できるかわからないんだ」

まどか「……平行世界……なんだねやっぱり」

QB「話を聞いただけの君でも理解できるのに、彼女が理解できないなんて滑稽だよね。まあ、気づかないふりなんだろうけど」

まどか「……あなたにも、世界がどうなるかわからないの?」

QB「契約した時間軸の僕はわかっていたはずだ」

QB「そして、彼女の話からすれば、その時間軸の僕は止めなかった」

785: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:38:34.48 ID:uw8B8XEy0
QB「理由としては二つ考えられる」

QB「一つは、各個独立して存続するから気にする必要がなかった」

QB「二つ目は、成功した場合統合される。ただしその僕は、彼女が本懐を遂げることはないだろうと判断した」

まどか「……辛辣だね」

QB「事実に近い推察だとも思うよ」

QB@彼女は何度も失敗し、ようやく叶えられたと思いきや、死後、君は契約しようとしているんだから」

まどか「……」

QB「世界が統合されているかしないか、されようとしているかは僕にもわからない……かもしれない」

QB「なにせ経験がないからね」

QB「ゆえに君が、暁美ほむらの手助けをしようとするならば、できれば阻止したいんだ」

QB「それをきっかけに世界が統合されれば契約した意味がなくなるからね」

QB「君がこの、目の前のほむらを生き返らせると言えばもろ手を挙げて賛成するんだけど」

まどか「私が押し通したら、どうなる?」

QB「僕は、君たちにとっては単なるシステムに過ぎない。ゆえに助言はできても強制はできないよ」

786: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:42:29.58 ID:uw8B8XEy0
QB「じゃあ、私は契約する。全時間軸のほむらちゃんを助けるために」

QB「仮に君がうまくやって彼女を助けられたとして、彼女に顔向けできるのかい?」

まどか「できるよ。胸を張って会える」

787: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:43:00.46 ID:uw8B8XEy0



「―――――ほむらちゃんは間違ってる!」



788: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:43:45.61 ID:uw8B8XEy0
まどか「私のためにすべてを捨てるなんて絶対に間違ってる!」

まどか「私はほむらちゃんを助ける。だけど何もあきらめない!」

まどか「ほむらちゃんが守ったこの街を、パパを、ママを、たっくんを、仁美ちゃんを、友達を、先生を」

まどか「みんな守る!」

まどか「この世界を、魔法少女の運命を背負って生き抜いて見せる!」

まどか「すべての世界のほむらちゃん、さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん、ついでに私を守って見せる!」

まどか「何もかもあきらめない!何もかも守って見せる!全部掴み取って見せる

789: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:44:54.61 ID:uw8B8XEy0
QB「……脳内麻薬の出しすぎじゃないかな。そんなことできっこないよ」

QB「君もわかっているんだよ。君のテンションがその証拠だ。強がりだよ」

まどか「……」

QB「とは言え、君の決意はもう動かせないようだ。仕方ない。僕はあくまでシステムだからね」



QB「さあ、受け取るといい。それが君の運命だ」



790: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:45:28.12 ID:uw8B8XEy0
その後、ほむらちゃんの遺体は消失した

私はこの時間軸を諦めてない。だから、この時間軸のほむらちゃんが救われるにはほかの時間軸に委ねるしかなかった

791: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:47:31.18 ID:uw8B8XEy0
まどかside

『――――というのが前の時間軸のほむらちゃん』

『ほむらちゃんはあなたを救うために繰り返してる。この一か月間は、世界の起点、キーはあなた』

『あなたが行動したとき、はじめて私はこの世界に力を流して干渉できる』

『それが私の能力』

「やっとっていうのは、この時間軸の終盤になってって意味?」

『違うんだよ。この時間軸に今まで私の力はいらなかったでしょ?』

「そうだね。今まではいらなかったはずだね」

「じゃあ―――」

「そう、私はほむらちゃんが辿ってきた、この時間軸以外の時間軸、すべてで失敗してきた」

「……どうして?」

792: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:50:21.27 ID:uw8B8XEy0
『結局私は、直接的には力しか流せないから』

『精神には副次的・間接的にしか影響を与えられないの』

『そして、干渉できるタイミングも限られてる』

『あなたが行動したとき、ただそれだけの条件だけど、そうは多く残されてないの』

『なにせ私だから』

『ほむらちゃんの話を振り返ってみて』

『あなたが行動したときに、力が流れて、その瞬間だけうまくいって、その時間軸がうまく運んでハッピーエンド、ってありそう?』

「なさそう……」

793: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:51:52.47 ID:uw8B8XEy0
『そして、今、ようやく』

『力でどうにかできそうなタイミングがやってきた』

『仁美ちゃんには大感謝だよ』

『あなたの絶望は本当に酷かったから』

『今生き残ってもそのうち死にたくなるんじゃないか』

『今希望を与えられれ場、結果的に死ぬことになってもむしろ本望なんじゃないかって、仁美ちゃんが考えたほどに』

『仁美ちゃんがそこまで論理を差し置いて動くなんてそうないから』

「そうだね。後でお礼改めて言わないと」

「―――言えるよね?」

「?」

794: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:52:24.18 ID:uw8B8XEy0
「よく考えたら、私にこの後何かあったら仁美ちゃんそれこそ死ぬほど後悔すると思うんだ」

「仁美ちゃんを苦しめたくない」

『大丈夫。みんなを信じて』

795: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:54:08.81 ID:uw8B8XEy0
ほむら・マミ・杏子side

別まど「というわけで、この時間軸の私を起点にしてここに、今実体化してるの。ワルプルギスを倒し終わるまでの期限で」

別まど「みんながここまで頑張ってきたから、やっと助けられる」

別まど「ちなみに時間軸は存続するんだ。キュゥべえの取り越し苦労だったね」

杏子「なんっつーか、あんたってやっぱり優しさがぶっ飛んでるよな……」

マミ「とんでもないわねえ……」

ほむら「夢じゃなかったのね……」

ほむら「……まどか、あなたは本当に胸を張って私に会えるの?」

別まど「会えるよ。ほむらちゃんが最初の私に胸を張って会えるように」

796: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:56:00.12 ID:uw8B8XEy0
ほむら「……幸せなの?」

別まど「あのワルプルギスの被害は、ほむらちゃんと杏子ちゃんのおかげで本当に最小限に留められた」

別まど「家族も、友達も、先生も、みんな無事」

別まど「これで不幸せなんて罰が当たるよ」

別まど「あの後の道のりも平坦じゃなかったし、よくくじけそうになったし」

別まど「たまに私の魔女化の果ての世界の行く末にどうしようもなく不安になるけど」

別まど「それでもみんながいるから生きていける」

別まど「隣町とかの魔法少女の友達もできたんだ」

別まど「苦しみを分かち合えるから、みんながいるから生きていける」

797: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:59:21.58 ID:uw8B8XEy0
別まど「ほかの時間軸にしてもそう」

別まど「干渉はできなくなっても鑑賞はできるんだ。ダジャレじゃないよ?」

別まど「残された人はみんな精一杯、泣きながら笑いながら生きている」

別まど「ほむらちゃんがちゃんと私を止めてくれたおかげでね」

ほむら「……」

別まど「それにさ、一つ、私が世界を滅ぼした時間軸だって」

別まど「生き残りはいるんだよ」

ほむら「……え?」

別まど「キュゥべえはもうその時間軸でエネルギーを完了したし、どの道すぐにいなくなると思ったみたいだけど」

別まど「それでも精一杯生きてる人たちがいる」

別まど「もうその人たちはキュゥべえには頼れない」

別まど「そして、キュゥべえは、もし自分が来なかったら人は洞穴暮らしだったって説くけど、それはキュゥべえが建てた仮説でしかない」

別まど「私は、あの人たちはうまくやれるとにらんでるんだ」

別まど「だからさ、何が言いたいかって言うと――――」

799: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 01:59:59.44 ID:uw8B8XEy0




「希望は残っているんだよ。どんな時にもね」




800: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 02:02:22.57 ID:uw8B8XEy0
ほむら「……魔女化、するようなときにはどうするつもり?」

別まど「私の友達の魔法少女は、みんな止める覚悟は持ってる。甘えちゃうことになるけど」

まどか「私も何とか頑張るつもり」

ほむら「……私、ね、あなががうそをついてるかはわかるつもりなの」

ほむら「もう一度言って。自分は幸せだって」

別まど「私は、幸せだよ」

ほむら「……そう」

ほむら「あなたが自分で選んだ道なら、仕方ないわね」

ほむら「私は、あの時間軸でできることを精いっぱいやった」

ほむら「犠牲を出してしまった自分の無力さを呪うけど」

ほむら「それでもあなたが自分で道を選び、今、幸せだと言うのなら、送る言葉はこれしかないわね」

801: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 02:03:08.39 ID:uw8B8XEy0



「頑張って」



「ほむらちゃんもね」



802: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 02:06:02.70 ID:uw8B8XEy0
別まど「それで今まさに猛威を振るってるあれなんだけど」

別まど「この結界もそろそろ持たないんだ」

別まど「今までの周回でもいろいろやってきたし、もう無茶はきかないの」

杏子「どうすればいいんだ?てかさやか大丈夫なの?」

別まど「それはね――あ、来た来た」

まどか「お待たせ!」

QB「まどか!?これは一体……!?」

別まど「あなたに説明する義務も義理もないですよーだ!」

別まど「ほむらちゃん、盾かして」

ほむら「ええ?」

杏子「まずさやかのこと聞きたいんだけど。ここまできてダメなんていくらなんでもないよね……!?」

杏子「まだ目を覚まさないけど」

別まど「たぶん大丈夫」

杏子「多分って……」

803: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 02:08:27.76 ID:uw8B8XEy0
さやかside

さやか「それでここはどこなのさ?」

別まど「想像ついてるんじゃない?」

さやか「大体ねえ。当たって欲しくなかったんだけど」

さやか「私の魔女結界の中?」

別まど「そうだよ。精神世界的なアレ。オクタヴィアを倒せば復活です!」

別まど「ありきたりだねえ……て言っても、やっぱりきついや。自分の負の感情を全部見せつけられてる感じでさ」

804: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/27(水) 02:10:57.80 ID:uw8B8XEy0
さやか「……ねえ、あれ倒したら魔女化克服なんてことは――」

別まど「ない。今回限り。さやかちゃんはいつか魔女になるかソウルジェムを砕いて死ぬ」

さやか「……モチベーション上がんないなあ」

別まど「そんなこと言ってるとみんな死んじゃうよ?さやかちゃんが加勢してギリギリ勝てるかどうかなんだから」

さやか「わかってるって。冗談冗談。早いとこ何とかして加勢しないとね」

別まど「それでこそさやかちゃんだよ」

別まど「あとさ、もうこれから先時間ないだろうし今しか言えないかもだからいうんだけど」

別まど「さやかちゃんと話せて、嬉しかった」

さやか「……やっぱりまどかだね。そんなこと照れもせずに言えるんだから」

817: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:21:28.29 ID:yiB0kctp0



第22話



死に至る病、そして



You can advance and cannot redo.



818: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:23:39.30 ID:yiB0kctp0
私の盾はこの世に一つしか存在せず、新たに生み出すことはできない

そして、私の盾をほかの魔法少女に貸したことはない
ゆえに、他の魔法少女の代替可能な武器と同様、使い方を誤れば消えるものか、私にはわからない

消えてしまえば、もう二度と私の能力は戻らない

だが、他ならぬまどかが何かしら考えがあって頼んでいる以上、私に迷う理由など全くない

ほむら「はい、どうぞ」

別まど「ありがとう。……えいっ!」

まどかが叫んだ瞬間、盾の形状が変化した。というか変形した

819: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:26:09.40 ID:yiB0kctp0
ほむら「これは……弓?」

盾の構成要素がそのまま弓に変わった感じ。システマティックな印象を受けた

別まど「うん。ほむらちゃん、そろそろ武器のストックなくなってきたみたいだから、もうこっちの方がいいかなって」

ほむら「そうね……ありがとう、まどか」

別まど「気づいてる?ほむらちゃん?」

ほむら「?」

別まど「これで、ワルプルギスを越えた後も、ほむらちゃん、戦えるんだよ?」

ほむら「!」

杏子「おー!」

マミ「そうね!これで大丈夫じゃない!」

820: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:29:39.11 ID:yiB0kctp0
ほむら「……だけど、私、素質が……」

マミ「そんなのいくらでも、どうとでもなるわよ」

杏子「まー、もう一回マミに弟子入りでもするこった」

杏子「いくら時間かかってもいいんだからさ。なんせ3人もの魔法少女が支えるんだから」

ほむら「でも、あなた、私とワルプルギスを倒した後組むの反対だって……」

杏子「へ?……いや、それはほむらが全く改善できないっていうから。みんなで共倒れするしかないってのは絶対嫌だと思ってさ」

杏子「あれでも結構きつかったんだよ?」

マミ「大丈夫。暁美さん以外はちゃんとわかってたから。みんなのことを考えたからこそ、よね」

ほむら「……え?」

マミ「……暁美さんはあの時、それどころじゃなかったわよね」

821: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:31:47.59 ID:yiB0kctp0
ほむら「でも、それじゃ杏子との約束が……」

杏子「約束?」

ほむら「私がいなくなった分の見滝原のグリーフシードを杏子が貰うっていう……」

杏子「……」

マミ「……(あれ、提案してたんだ……)」

杏子『なあ、マミ。あたし、ほむらと友達だと思ってたんだけど、そうでもなかったのかな?』

マミ『途方もなく要領が悪いのよ。友達との約束を破るなんて考えられない子なの。察してあげて』

杏子「……どうでもいいんだよ、そんなのは!あたしがいいって言ってんだから!」

ほむら「……じゃあ」

マミ「これからもよろしくね、ってことよ」

……どうしよう

うれしい……!

822: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:34:51.39 ID:yiB0kctp0
別まど「ゴホン」

別まど「それで作戦なんだけど、私はすることがあるからこれ以上みんなを助けられないの」

ほむら「することって?」

別まど「さやかちゃんが戻ってくるまで、さやかちゃんとこの子を守る小さ目な結界を保たせることと、この子の素質を魔力に転用すること」

マミ「……え?」

別まど「つまり、私のこの弓を、この子が撃てるようにするの。私は力を流すだけで、直接倒すことはできないから」

マミ「……どのくらいの威力なのかしら?」

別まど「今のワルプルギスなら一撃で倒せるくらい」

一同「!」

823: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:36:49.18 ID:yiB0kctp0
別まど「ただ、問題があって、今は一発しか撃てないの」

別まど「だから、撃てるようになるまでの15分で、みんなにワルプルギスの動きを止めてほしい」

杏子「……それ、倒すよりある意味きつくないか」

別まど「だけど、みんなのうちの誰かが倒したら魔女化しちゃうでしょ?」

まどか「そっか」

マミ「確かにそれしか選択肢はなさそうね……」

別まど「さやかちゃんもすぐ参戦するから、なんとか保たせて」

杏子「わーったよ。ここまで来たらやるっきゃないね」

マミ「暁美さん、弓の要領掴むまで、後方支援お願い。だけど、長くは私たちも保たない。できるだけ早く、ね」

マミ「弓の魔力の消費は、まだわかってないでしょうし、時間停止は控えたほうがいいわ」

ほむら「……わかった!」

824: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:38:31.66 ID:yiB0kctp0
さやかside

あー、もう!
攻撃受けたりしたりするたびにソウルジェム濁るんですけど!
私には身に覚えがないんだけど、いかにもあたしがやりそうなことしでかしてる場面が頭に入ってくる感じ!
過去の時間軸ってやつかな?

ていうか、ここで魔女化したらどうなんのよ!?

『さやかちゃん言い忘れてた。ここで魔女化したらもう取り返しつかないから』

「はああああああ!!!!!?????」

『グリーフシードは存在しないけど、絶望に堕ちない限りは大丈夫だから』

『頑張って』

「先に言ええええええ!!!」

825: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:39:26.07 ID:yiB0kctp0
QBside

成程ね。別の時間軸の僕も困ったことをしてくれたものだ
しかし――――

暁美ほむら、君は別の時間軸のまどかの言う通りに動いているけど、本当にそれでいいのかい?

彼女の、自分を軽く見る性質は変わっていない
改善はされているが、あくまで程度の問題だ

そして、その「自分」には――――

826: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:40:12.88 ID:yiB0kctp0




――――この時間軸のまどかも含まれているようだよ?




827: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:41:38.20 ID:yiB0kctp0
さやかside

「あんたの気持ちはよくわかる」

「あたしとあんたの違いは、運とかタイミングの差でしかない」

「突き詰めれば、ほむらが私に目を向けてくれたか、キュゥべえを襲うことをやめたか」

「多分その最初のきっかけだけなんだよね」

「だけどさ、だからこそ」

「ここであんたに負けるわけにはいかないんだ」

「ほむらのご期待に応えられないことの連続だったし、最後くらいはさ、びしっと決めないと」

「いつかあたしもあんたのとこに行くからさ」

「それまで待っててよ」

そう言って剣を振り下ろした瞬間、あいつが大人しくなった気がした
あるいはあたしがそう思いたいだけか

……長い付き合いになりそうだね

828: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:42:43.86 ID:yiB0kctp0
そして世界が反転して現実世界に

別まど「お帰り」

さやか「ただいま。やっぱりあんま良いもんじゃないや」

さやか「それで今何やってんの?ワルプルギスを倒すってことでいいの?」

別まど「そうだけど、さやかちゃんたちはあくまで足止め。みんなと協力して動きを止めて」

さやか「おっけー」

829: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:44:49.17 ID:yiB0kctp0
さやか「みんなーただいまー!」

杏子「おせーぞバカ!危うく全滅だ!」

さやか「うう……ごめんなさい」

マミ「フフ。あれ、ただの照れ隠しよ」

マミ「本当はうれしくて仕方ないの、誰よりもあなたのことを心配してたから」

杏子「うるせえ!せめて後にしろ!」

さやか「えへへ……それで、何やればいいの?」

杏子「あのでかいビルにワルプルギスを磔にする」

杏子「マミが爆撃で誘導して、あたしとさやかで串刺しにして動きを止める。ほむらは使い魔の殲滅」

さやか「了解!」

830: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:47:29.45 ID:yiB0kctp0
マミさんが爆撃で誘導して―――

マミ「ボンバルダメント・リミタート・アナラメント!」

さやか「いつにもましてすごいなあ……ねえ、あたしたちもああいう風にやらない?」

杏子「冗談じゃない。あたしの何かが崩壊する」

さやか「えー」

杏子「時間ねえし浮かれてもられないんだよ!こういう時に気を抜くと碌なことにならないんだ!」

さやか「はーい」

あたしと杏子がやつに接近する際に出された使い魔にほむらが応戦

そしてあたしたちが巨大な槍と剣を召喚し

ワルプルギスの腹と四肢のあたり(足どこにあるかよくわからないけど)に打ち込む

磔完了!

831: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:49:37.18 ID:yiB0kctp0
ほむらside

ほむら「即席の作戦にしてはよくできたわね」

マミ「時間にはなんとか間に合ったわ」

杏子「……おいさやか、何やってんだよ?」

さやか「え?何って戦闘態勢だけど?止め刺すのは早い者勝ちでしょ?」

杏子「いや、それ終わったんだよ」

さやか「へ?」

マミ「あの、魔法少女の鹿目さんが、この時間軸の鹿目さんの素質を魔力に転用したの」

マミ「鹿目さんも未契約で済むから、誰も魔女化せずに済むということよ」

さやか「……」

832: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:51:13.98 ID:yiB0kctp0
さやか「……あたしその話今聞いたし、的外れなこと言うかもだけど」

さやか「それ、やばくない?」

杏子「何がだよ?」

さやか「魔法少女が一発で魔女化するような絶望だよ?まどかが受けて本当に大丈夫なの?」

……!?

杏子「いや……大丈夫だろ、あいつの不思議パワーか何かで……」

ワルプルギスのテレパシー妨害魔法が消えてる……!

マミ「今呼びかけるから……!」

マミ『鹿目さん!ワルプルギスを倒した際の絶望に対処できるの!?』

……

833: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:52:21.66 ID:yiB0kctp0
杏子「どうなんだ!?」

マミ「……返って来ない!」

まどかのあの表情……覚悟してる!

なんであの子はいつもいつもいつも……!

この場所じゃ手を出せない!
いや……止めてもワルプルギスがいつか動き出すだけ……

どうすれば……!?

834: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:54:14.00 ID:yiB0kctp0
マミ「みんな、暁美さんにリボンをつなぐから、それにつかまって!」

さやか「マミさん!?」

マミ「時間停止とみんなの攻撃で、今のワルプルギスなら多分倒せるわ!まだ時間停止使えるわよね!?」

ほむら「……ええ。あれを倒し終わってからしばらく経つまでは使えるはず」

杏子「あのバカ共が攻撃する前に止めを刺せばいいんだな!?」

ほむら「……ごめんなさい、みんな……私だけじゃ、絶対無理だから……」

さやか「今更言いっこなしだよ!」

そうだ。今は迷ってる場合じゃない……

!?

835: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:54:52.02 ID:yiB0kctp0




……あれ?




836: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:56:45.35 ID:yiB0kctp0
マミ「……どうしたの?」

ほむら「……これ、時間停止するには、どうやるのかしら?」

杏子「……わかんないのか?」

ほむら「形状変わっちゃってるから……

ほむら「……どうしよう!?」

マミ「貸して!」

そうだ、巴さんなら……!

マミ「……!?これ――――」

837: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:57:14.72 ID:yiB0kctp0




「――――時間停止機能が無くなってる……!」




838: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:57:46.94 ID:yiB0kctp0


!?!?!?!?!?


まさか―――


―――このために……!?


839: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:59:07.39 ID:yiB0kctp0
そして、まどかが弓を放った

私たちはなす術もなかった

ワルプルギスが消失し
別の時間軸のまどかが消えて
絶望を受けたまどかと、それを見た私の絶叫が木霊した

840: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 01:59:45.88 ID:yiB0kctp0


私たちはあの夜を、地獄の一か月を越えた


しかし、越えた先が地獄でないとは限らない


841: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/28(木) 02:01:38.68 ID:yiB0kctp0
QBside

約束の時だ

いよいよ、今日をもって、我々の最大の使命、宇宙の永遠の存続が達せられる

魔法少女諸君、お別れだ

854: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:20:12.65 ID:aptOTp1q0



第22話



優しさの輪郭



Take care of yourself.



855: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:20:47.91 ID:aptOTp1q0
まどかはひとしきり叫び声をあげた後で意識を失った
ひどい悪夢を見ているようだった
あるいは見ているのだろう

856: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:21:36.41 ID:aptOTp1q0
その後、まどかをとあるビルの空き室に運んだ
ここにいられるのは避難勧告が解除されるまでの間のみ
長居はできない

巴さんとさやかが治療している間、私は泣いてばかりで使い物にならず
杏子にひたすら慰められていた

857: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:23:26.04 ID:aptOTp1q0
杏子「大丈夫だよ」

杏子「まどかは確かに自己犠牲精神の権化みたいなやつだけど」

杏子「少なくとも今のまどかは、自分がいなくなったらどうなるかわかってる」

杏子「何の相談もなしに二度と目が覚めないようなことするはずないんだ」

杏子「なにか手があるはずさ」

ほむら「……そう…よね……そうに………決まってる」

ほむら「そうじゃなかったら……」

ほむら「……許さない……いくら…まどかでも……」

杏子「……」

858: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:25:33.75 ID:aptOTp1q0
そうこう話しているうちに巴さんとさやかが治療をやめた

マミ「体には何の異常もない。私と美樹さんではどうしようもないわ」

ほむら「……なにが問題なの?」

さやか「心だろうね。絶望を受けたんだから、当然っちゃ当然だけど」

杏子「……体に異常がないなら、そのうち元に戻るんじゃないか?」

さやか「……かも…しれない」

マミ「だけど……私にはそうは思えない」

マミ「鹿目さんって、決して弱くはないけど、こんな規格外な絶望を受けて自力で復活できるとほどとは……」

杏子「……あのさ、ありきたりだけど、あたしたちでずっと声かけ続けるとか」

マミ「もちろんそれはするべきでしょうね」

859: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:27:37.78 ID:aptOTp1q0
マミ「けど、それとは別に打てる手を打たないと」

杏子「打てる手?」

マミ「精神系の魔法」

一同「!」

マミ「もちろんやってみないとわからないけど、グンと起きる確率が増すと思う」

ほむら「巴さんは……」

マミ「ちょっと見よう見まねでやってみたんだけど、まるで手ごたえがないわね」

マミ「やっぱり専門家じゃないと無理よ」

さやか「専門家……」

杏子「わりぃ……あたしがまともに使えてれば……」

ほむら「あなたは何も悪くないわ……」

860: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:29:32.03 ID:aptOTp1q0
さやか「マミさん、心当たりない?」

マミ「あるにはあるけど……かなり不安ね」

さやか「と、言うと?」

マミ「頭の中をいじくってもらうわけでしょう?相当信頼できる人じゃないと」

さやか「そっか」

ほむら「……困ってる人を放っておけない善人か、見返り次第で何でもするビジネスライクな人間……でしょうね」

マミ「……やっぱりそういう精神系使いは思い浮かばない。探さないと」

杏子「……あたしも…何とか取り戻す」

マミ「……無理はしないでね。かえって遅れることにもなるから」

861: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:30:36.37 ID:aptOTp1q0
……固有魔法を封じられる、とうのは魔法少女にとって致命的にもなり得ることだ
杏子は幻影魔法抜きで生き抜ける力を習得したが、それでも命の危機に瀕したことはいくらでもあったはず

ずっとトラウマを放っておいたはずがない
克服しようとしてきたはずだ。それでもできなかった

……やはり、できたとしても長い時間がかかるだろう
それでも、巴さんが言う通り、急かすことはできない

862: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:31:27.48 ID:aptOTp1q0
マミ「やっぱり早急には無理ね」

杏子「……家に帰すか?」

ほむら「……それしかないわ」

さやか「何をどう説明すれば……」

マミ「……」

863: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:34:24.90 ID:aptOTp1q0
一同途方に暮れていた時に

マミ「ねえ、キュゥべえ。何をやっているの」

気が付けばまどかのそばにインキュベーターがいた
……なんだろう、この違和感は。雰囲気?

QB「僕にもなにかできないかと思ってね」

そうか、インキュベーターもまどかがこのままじゃ困るか

マミ「何をやっているの?」

QB「僕が直接脳に語りかけることができるのは知っているだろう?それで呼びかけているんだよ」

そう言えばそうだ

……情報を隠しながらも、あくまで自由意志を尊重するこいつは、先のビジネスライクに当てはまるかもしれない
……任せてもいいかもしれない。
いや、任せるべき?

だけど何だろう、この違和感が形になっていく感覚は

864: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:35:33.92 ID:aptOTp1q0
マミ「具体的に、どう呼びかけているの?」

いま、違和感の正体がわかった。巴さんだ
でも……なんで

QB「……」

巴さんがインキュベーターに、かつて私に向けていた視線を向けているの?

QB「契約してくれと呼びかけている」

……

……!?

865: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:38:09.90 ID:aptOTp1q0
杏子「はあ!?どういうことだオイ!?」

QB「言ったとおりだよ」

QB「彼女の意識――夢というべきかな?――に契約してくれと呼びかけている。」

QB「それで同意したら契約成立だ」

杏子「何言ってんだテメエ!?そんなこと今までしたことねえだろうが!?」

そうだ……

そんなことできるなら……するなら……
―――なぜ今までやらなかった!?

866: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:40:19.51 ID:aptOTp1q0
マミ「進行状況はどう?」

QB「……あのまどかはこの状況を見越していたようだ」

QB「杏子以外をはねつける障壁を彼女の心に残していた」

QB「だが、突破できないものでもない」

QB「時間の問題だね」

マミ「鹿目さんの心に接触できたとして、鹿目さんは断れるかしら?」

QB「まず無理だね。人が寝ているときには理性が働かない、ないし極端に弱い」

QB「彼女の、君たちを助けたいという真心が前面に押しでる」

QB「二秒もかからず即決するだろう」

そんな……

867: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:47:40.31 ID:aptOTp1q0
さやか「なんで今になってそんなこと突然やりだすのさ!?」

QB「少女の希望と絶望の相転移によって僕たちはエネルギーを得ている。これは知っているよね?」

QB「そして、理性なき判断による契約では、生まれる希望が弱いんだよ」

QB「魔女と戦う運命を背負ってまで願いをかなえるべきか」

QB「この葛藤を乗り越えてこそ、強い、絶望との落差を生む大きな希望が生まれるんだ」

QB「願いにふさわしい対価を払った、という達成感がキーだね」

QB「もちろん死にかけていうるなどそれどころじゃない場合はそんな葛藤などないが、葛藤できるタイミングまで待てないのだからしょうがない」

QB「通常の状態の少女には、そのような葛藤を求めている」

QB「だからこそ、僕たちは理性が働く状態での、自由意志を尊重しているんだ」

ほむら「だから、なぜ今は尊重しないのかと―――!」

QB「必要がないからだよ。いや、必要がないと分かったから、だね」

ほむら「!?」

868: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:50:50.40 ID:aptOTp1q0
QB「鹿目まどかの素質を、目先の契約欲しさにつぶしてはならないと、当初は考えていた。しかし―――」

QB「―――ついさっき、彼女の素質の片鱗を、魔力変換という形で見た」

QB「あれでも、まだ片鱗なんだ。未だ莫大な素質が眠っている」

QB「一部だけしか見れなかったが、あのすさまじい魔力を目の当たりにして――――」

QB「―――鹿目まどかの理性、葛藤なくしても、僕たちのノルマ、宿願をかなえられると、母性の統率は判断した」

QB「あのまどかには感謝しないといけないね」

869: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:52:05.60 ID:aptOTp1q0
私は銃を構えた

マミ「魔法少女になったら、鹿目さんは目覚めるかしら」




QB「目覚めるよ」



!?



870: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:54:48.79 ID:aptOTp1q0
……さやかと杏子が恐る恐る私を見る
これが落としどころじゃないか?と目が言っていた

……かつての時間軸とのまどかとの約束
―――契約阻止
それは私のすべてだった

だけど、このやり直しができない状況では……

まどかが意識不明でも、契約していないと開き直れる神経など持ち合わせていないのも事実
そんなのなんの意味もない

……ワルプルギスのグリーフシードはまだまだ大量に使える状態
訳も分からず魔法少女になったまどかが落ち着くのを待てるほどに余裕はある

そして、まどかがいつ目を覚ますか、皆目見当もつかない

……私も、その落としどころに傾きつつあった

871: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:55:56.09 ID:aptOTp1q0
そんな中

マミ「魔法少女になったとして、彼女はどれくらい保つかしら」

インキュベーターの「友達」である、巴さんだけが、あいつを疑っていた

QB「保つか、と言われてもね」

872: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 01:58:33.85 ID:aptOTp1q0
QB「……そういう意味でないら、数舜も保たない」

ほむら「……なんですって?」

QB「彼女の絶望が一気にソウルジェムに流れ込むんだよ?すぐ魔女になるにきまってるじゃないか」

QB「まさに、一瞬だよ。君たちは何の手も打てないだろうね」

QB「彼女が、自分の絶望を取り除くようにと願ったそうはならないけど」

QB「彼女は間違いなく君たちのために祈る、と僕は確信しているんだ」

873: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 02:00:01.72 ID:aptOTp1q0
QB「……そういう意味でなら、まったく保たない」

ほむら「……なんですって?」

QB「彼女の絶望が一気にソウルジェムに流れ込むんだよ?すぐ魔女になるに決まってるじゃないか」

QB「まさに、一瞬だよ。君たちは何の手も打てないだろうね」

QB「彼女が、自分の絶望を取り除くようにと願ったそうはならないけど」

QB「彼女は間違いなく君たちのために祈る、と僕は確信しているんだ」

874: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 02:01:51.77 ID:aptOTp1q0
その瞬間

さやかと杏子は怒りに震え動けず
私は引き金にかけていた指を引こうとした

だが、この時間軸で身についた「習性」
―――まどかとさやかに勧誘するインキュベーターを衝動的に撃たないようにと自分を押さえつけて身についた「習性」が―――それを邪魔した

そして一つの考えが、今思えばひどく失礼で最低な考えが頭をよぎった

「はたして巴さんは許してくれるのか」

875: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 02:02:44.00 ID:aptOTp1q0
それは間違いなくこの時間軸での私の弱さだった

だけど、まどかの前でそんなことはやはり些事であり

まどかのためなら再び迷路に迷いこんでも構わない覚悟で引こうとした

引き金を引こうとしてから、1秒も経たなかったと思う

876: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 02:03:41.64 ID:aptOTp1q0



だがその1秒の躊躇いで

巴さんに「友達」を殺させてしまった



私の銃から弾が放たれる前に、別の銃から弾が放たれ、インキュベーターが肉塊と化したのだ



877: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 02:04:34.77 ID:aptOTp1q0





「あなたの好きにはさせないわ――――





 ―――――インキュベーター」





878: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/29(金) 02:05:43.42 ID:aptOTp1q0




後にさやかから聞いた話だが、彼女は打つ瞬間、「さよなら」と言うように、口を動かしたらしい




……その眼は潤んでいたらしい




890: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:06:04.90 ID:VZHpZK7g0
QB「やれやれ、まさか君に撃たれるとはね。僕たちは友達じゃなかったのかい?」

新しいインキュベーターの個体がやってきた。今までよく見てきた光景だ

マミ「友達だからと言って何をしても許されるわけじゃない」

マミ「それに、あなたは絶縁状をたたきつけられても文句を言えないようなことをしたのよ?」

QB「別に文句を言う気はないけどね」

891: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:08:50.31 ID:VZHpZK7g0
「まあ、それ一体を破壊されても無駄というものさ」

―――!?

気が付くと無数のインキュベーターが部屋の中にいた
……30?……50?……100?

QB「これをやると候補者に引かれちゃうから普通はやらないんだけどね」

QB「もはやそんなことは関係ない」

……どうする!?
インキュベーターの排除……?
―――1匹相手でもそれをしきれなかったというのに……!?

「「「「「「チェックメイトだ。暁美ほむら」」」」」」

……

………

…………

これはもう……

完全に打つ手が……

892: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:10:36.47 ID:VZHpZK7g0
マミ「みんな,、しっかしりて」

マミ「暁美さん、美樹さん、インキュベーターから鹿目さんを守って」

さやか「……もう終わりだよ」

さやか「今なんとかできても、もうあいつはまどかの素質の片鱗に触れちゃった……」

さやか「寝てる時にでも呼びかけられたら、防ぎようがないよ……」

マミ「……それはこれからの問題よ。今はただ鹿目さんを目覚めさせることだけ考えて」

マミ「彼女の絶望を取り除けずに契約されてしまったら、もうどうしようもない」

マミ「世界が終ってしまうのよ」

さやか「……!」

893: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:12:22.56 ID:VZHpZK7g0
ほむら「だけど、巴さん……!」

ほむら「私はインキュベーターの排除に成功したことがない……!」

ほむら「ましてこの数で、時間停止も使えないのに……!」

マミ「泣き言なら後で言いなさい」

マミ「それに、何も永遠に排除しろなんて言ってないわ」

ほむら「……?」

マミ「30分だけでいい」

ほむら「……え?」

マミ「その間に、佐倉さんの幻覚魔法と取り戻す」

杏子「……は?」

894: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:14:33.04 ID:VZHpZK7g0
杏子side

杏子「それで言われるままに河原まで来たわけだけどさ、30分でなんて絶対無理だよ?」

杏子「そりゃあ、それが出来るならなんだってするけどさ」

マミ「本当ね?」

杏子「ああ」

マミ「……佐倉さん、私もね、魔法を使えなくなったことがあるの」

杏子「……!?」

マミ「魔法少女になって一か月のことだったかな」

マミ「なんで自分だけ助かったんだろう、私も一緒に死ねればよかったのに、なんて考えたことがあるの」

マミ「それで、ね、リボンも回復魔法も使えなくなった」

……願いの否定、か

命をつなぐリボン、命を救う回復魔法
……確かに使えなくなるだろうな、そんなこと考えたら

あたしと一緒か

だけど、マミはあたしと出会った時にはそんなそぶりもなかった
……どうやって克服したんだ?

895: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:16:07.07 ID:VZHpZK7g0
マミ「だけど、魔女は私の都合なんて聞いてくれない」

杏子「……そりゃそうだな――――って、うん?」

杏子「……あのさ、それ、その状態で魔女と戦ったっていうわけ?」

マミ「うん」

銃もリボンから精製してるものだ。つまり―――

杏子「―――武器も回復魔法も使えないのに魔女に挑んだっての……?」

マミ「うん」

杏子「あんた、それでよく死ぬと思ったら逃げろとか人に言えるなあ!?」

マミ「それで案の定死にかけたのよ」

杏子「そりゃそうなるだろうよ……」

896: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:18:00.84 ID:VZHpZK7g0
マミ「それで、いよいよこれは死ぬなって瞬間、目の前が真っ暗になったの」

マミ「そして、気付いたら私は傷が回復してて、魔女がいなくなって、グリーフシードが落ちてた」

マミ「その後、何の問題もなく魔法を元のように使えるようになったのよ」

杏子「……?」

マミ「つまりね、トラウマやら願いの否定を、それを上回る恐怖で塗り変えてしまうの」

マミ「それで生存本能に訴えて魔法を引きづり出せばいいってわけ」

今まであたしにも教えなかったわけだ
生きるために魔法を取り戻す、そのために死にかけるなんて本末転倒だからな

897: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:19:57.38 ID:VZHpZK7g0
マミ「もちろん、たまたま私がそうだったってだけで、あなたもそうなるとは限らない」

マミ「むしろ、当てはまる人のほうが少ないでしょうね」

マミ「あなただって、今までだって死にかけたことはあるでしょうし、それでもあなたの魔法は戻らなかった」

マミ「あなたには合わない『治療法』である可能性の方が高いと思う」

マミ「だけど、今すぐに幻覚魔法を取り戻す方法が、私には他に浮かばない」

杏子「……あたしとしても案がない。時間もないし乗らせてもらうよ」

杏子「だけどさ、その日の魔女にマミが、その日のマミにあたしがなるわけだろ?」

杏子「あんたが私を殺しにかかるってわけだけど、本気でそんなことできるの?」

杏子「あの時だってできなかったじゃないか」

898: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:22:03.99 ID:VZHpZK7g0
マミ「……自信を持てなかったの」

杏子「自信?」

マミ「私は、あなたにとやかく言えるほど正しいのか、って」

杏子「……マミは絶対に正しかったよ」

マミ「だけど、あなただって間違ってるとは言い難かった」

マミ「固有魔法が使えない以上、使い魔も狩るやり方をすればすぐに限界は来る」

マミ「あの時は、あなたが魔法を取り戻すまで私が支えるつもりだったけど」

マミ「あなたが一生取り戻せなかったらお互いの命を縮めるだけ」

マミ「客観的に見れば、確かにあなたのやり方のほうが長生きする」

マミ「そして、トータルで私が救った人の数を上回るかもしれない」

マミ「それと、あなたとの数々の思い出」

マミ「……あなたを断罪なんてできなかった」

自分は正しいからぶっ飛ばすでいいだろ、そんなの

899: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:23:49.47 ID:VZHpZK7g0
杏子「それで、今は違うってわけ?」

マミ「……」

杏子「―――ッ!?」

今、あたしはさっきキュゥべえをマミが撃つ前時に感じた悪寒を覚えた
ほむらが妙にビクついてたのはこれか

マミ「……鹿目さんがあいつに出し抜かれて契約したら、もう何のために魔法少女をやってきたかわからない」

マミ「守るべき友達も救えずして、誰かを救ったからなんなのかって」

そしてあの殺気は――――

マミ「……私ね、鹿目さんを助けるために、あなたが間違って死んでしまっても仕方ないかなって思ってる」

マミ「もちろん死んだら元も子もないのも事実なんだけど」

マミ「魔法少女なんて人のために死んで上等じゃない?」

間違いなくあたしに向けられていた

900: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:25:59.55 ID:VZHpZK7g0
マミ「……死ぬのがあなただから、ってこともあるわ」

杏子「……そうだな。あの腐れまどかが出現するまでは、あたしとマミが死ぬって話だった」

杏子「最初からそれを選べなかったことをかなり後悔もした」

杏子「もう後悔なんてしたくないし、まどかをに救うために命を賭けるしかないってんなら、喜んで差し出すさ」

杏子「だけどさ、あんた気づいてる?」

杏子「生存本能に問いかけるってわけだけどさ、その生存本能は、殺そうと襲い掛かってきたやつを――――」

杏子「――――殺すように働くと思うんだけど」

杏子「自制なんてできないだろうし、できちゃ逆にいけないだろうけど」

杏子「殺される覚悟はあるわけ?」

マミ「馬鹿にしないでくれるかしら」

杏子「ハッ。さすがに愚問だったね」

901: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:28:16.32 ID:VZHpZK7g0
杏子「てかさ、こんな風に話してる時間、そもそもないんじゃないの?」

マミ「何もあなたが知らないままに、私の攻撃が通って死んじゃうなんてあっちゃいけないし」

マミ「……これから死んでいく友達に、理由くらい話してあげたいと思ってね」

マミ「……10分もかからずに決まるから、時間的にも余裕がある」

杏子「……そっちが勝つ気なのかよ」

マミ「99%私が勝ってあなたが死ぬわ。あなたには1%をつかみ取ってもらう」

杏子「なめられたもんだねぇ……」

杏子「まあ、いい機会だ。いつか白黒つけようかと思ってたんだよね」

杏子「本気のあんたとやれるってのも悪くない」

杏子「小器用さなんざ殺し合いに役に立たないってことを教えてやるよ」

マミ「……そろそろ始めましょうか」

902: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:29:02.80 ID:VZHpZK7g0




「――――さよなら、佐倉さん」




「――――じゃあな、師匠」




903: ◆WxX/Ywk/v6 2013/11/30(土) 00:29:46.84 ID:VZHpZK7g0



……あたしとマミじゃ最後に行き着く場所も違う



本当にお別れだな……



910: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/01(日) 00:46:03.13 ID:zcXRnjMu0
ほむらside

QB「やれやれ。理解に苦しむよ。君たちはもう詰んでいるというのに」

ほむら「黙れ……!」

そうだ……元々簡単な道じゃなかった
何度諦めかけたかわからない

ようやく未来が見えるところまで来たんだ……
あとは、掴み取るだけ!

たとえ前に茨が生い茂っていようが、火の海が燃え盛っていようが―――
―――1%でも可能性があるなら、諦めるなんてできない……!

……投了するまでは詰むことなんてない!
王を獲られるその瞬間まで戦い続ける!
巴さんを信じる!

今はただ、インキュベーターを薙ぎ払うことだけを……!

911: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/01(日) 00:49:13.24 ID:zcXRnjMu0
QB「マミが遺した言葉を信じてるんだね?杏子の幻覚魔法を30分で取り戻すという戯言を」

さやか「戯言かどうか――――」

さやかが剣を振りかぶる

さやか「――――あんたに決められてたまるかよ!」

剣を振ると同時に数多広範囲のインキュベーターが吹っ飛んだ

もうすでに私を超えた

これがあのさやかか…
巴さんと杏子に一か月教えこまれたさやかか…
ワルプルギスを越えたさやかか…

数多の時間軸で切り捨ててきた可能性か……

912: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/01(日) 00:52:00.74 ID:zcXRnjMu0
QB「君たちにとって巴マミは魔法少女として格上の存在でもある」

QB「この状況において、もはやその彼女の言葉にすがる他ないか」

QB「君たちには権威を説得力とする習慣があるよね」

QB「時には今の君たちのように、言葉そのものより重視する」

QB「おかしな生物だよ」

さやか「少しはその口を閉じたら!?」

 反論しつつも手は緩めない

QB「僕は口を開いているわけではないけどね」

ほむら「権威ではないわ。信頼よ」

913: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/01(日) 00:55:17.10 ID:zcXRnjMu0
QB「君たちもわかっているはずだよ。30分で確実に取り戻せる方法があるならすぐに提案していたはずだと」

さやか「……マミさんが抜けたんじゃないの!?」

QB「そう思いたければそう思っているといい」

QB「それより耳よりな情報だ。今、マミと杏子が殺し合いをしているよ?」

さやほむ「なっ!?」

QB「客観的に考えれば、取るべき方針で揉めたととるのが妥当だろうね」

QB「二人で、が無理でも、せめて君たちのうちどちらか一人が止めてきたほうがいいんじゃないかな?」

QB「今二人が方針で争っているならば、30分で終わらせる、なんて完全に夢物語だよ?」

914: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/01(日) 00:57:48.71 ID:zcXRnjMu0
さやか「……よく言うよ!」

さやか「あんたなら闘ってる原因を知ってるはずだ!」

さやか「あたしたちが止めに行くような理由で闘ってるなら、客観的に、とか、ならば、とか」

さやか「そんな奥歯に物が挟まったような言い方をするはずがない!」

さやか「もっと直接的に伝えるはずだ!」

QB「……確かに理由は知っている。しかし、さやか、君は自分の言っていることを理解しているのかい?」

さやか「何が言いたいのさ!?」

QB「君たちが止めに行かないような理由なら、きちんと行く前に説明するはずだろう?」

さやか「……!」

915: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/01(日) 00:59:38.73 ID:zcXRnjMu0
QB「『マミさんが何とかしてくれる』というあやふやで抽象的な根拠よりも」

QB「納得できて具体的な根拠の方がはるかに闘う上での原動力になるからね」

QB「本当に、マミが抜けていた、で済ませるつもりなのかい?」

さやほむ「……」

QB「――――彼女たちはまどかのために互いを殺そうとしているんだよ?」

QB「殺し合いという言葉は嘘じゃない」

さやほむ「!?」

916:  ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/01(日) 01:02:17.10 ID:zcXRnjMu0
QB「君たちは、まどかのためにあの二人が死んでいいと思ってるのかい?」

さやか「……そんなわけない!そんなわけないけど……!」

ほむら「さやか、いずれにせよ、二人でさえ手一杯なのに、一人が抜けたらもう防ぎようがないわ」

ほむら「そして、インキュベーターが障壁を破りまどかの意識に接触したらすべてが終わり」

ほむら「……私たちはもう、あの二人に託すしかないのよ」

ほむら「二人が命を懸けてるのなら、なおさら……ね」

さやか「……ままならないね、なかなか」

917: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/01(日) 01:05:25.22 ID:zcXRnjMu0
QB「やれやれ、君たちは本当に理解に苦しむ」

QB「もう終焉は避けられない。最後の時を祈りにでも捧げて穏やかに過ごしたらどうなんだい?」

ほむら「おあいにく様!あきらめの悪さだけには自信があるわ!」

さやか「ついさっき諦めてたじゃん!?」

ほむら「あなたに言われたくないわ!!!」

ほむら「そりゃあ、ようやく地獄の一か月が終わったと思ったら」

ほむら「まどかに出し抜かれてまどかが倒れて」

ほむら「目を覚まさせる方法もわからなくて」

ほむら「挙句こんな状況になったら弱音の一つくらい吐きたくなるわよ!」

918: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/01(日) 01:08:01.15 ID:zcXRnjMu0
さやか「そりゃそうだ!それでも立ち上がったあんたはすごい!尊敬する!」

さやか「あと、この時間軸、私を見限らないでくれてありがとう!」

ほむら「急にどうしたの!?」

さやか「最後かもしれないからさ!」

ほむら「縁起でもないこと言わないで!」

ほむら「…」

ほむら「……」

ほむら「………こちらこそ、よ」

さやか「え?何?」

ほむら「……何でもない!手を休めないで!」

927: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:29:21.72 ID:WHaXsLgg0
杏子side

今回はリボンに捕まったら即アウト
拘束→ソウルジェム破壊のコンボは魔法少女にとって致命的だ
ゆえにリボンは裂けつつ丁寧に丁寧に破壊しなければならないわけだが

回復魔法をろくに使えないあたしにとってはあいつの銃を体に食らうのだってかなりまずい
弾次第では、一発で腕が吹っ飛びかねない

そういうわけで銃・リボンそれぞれ単体でも相当やばい
あたしは防戦一方になることを迫られている

あの銃で超速度連射しつつリボン飛ばしてくるとかもう人間業じゃねえよ……
しかもご丁寧に先にリボンでトラップを仕掛けていて、そこに誘導するように攻撃してくるし……
槍一本でどうにかできる範疇を超えてるだろうが……

928: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:29:54.57 ID:WHaXsLgg0



―――とはいえあたしも槍を複数出せるわけなんだけどね



929: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:31:09.86 ID:WHaXsLgg0
銃とリボンをあそこまで同時に操れるやつはいない
だがそんなマミでさえ、移動しながらは若干厳しいようだ
普段よりもすさまじい処理だが、機動性を犠牲にしてるんだろう

突くならそこ。あいつの足元から槍を直接生やして串刺しにしてやる
5・6本生やせば完璧に戦闘不能ってもん――

――ああ!?

930: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:31:57.05 ID:WHaXsLgg0


……槍を生やすと同時に銃を乱射しつつリボンで行く手を遮りながら突っ込んできやがった


左腕がいかれた……


931: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:32:49.48 ID:WHaXsLgg0



「普段この速さで処理をしないのは、奇襲や新手を警戒してるからであって」



「手を知り尽くした相手と一対一でやる時には、そんな警戒いらないのよね」



932: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:35:20.46 ID:WHaXsLgg0
動かなかったのはフェイクかよ!?クソが……
挙句手を読まれてたとか最悪だな……

……とは言え実際あの処理はきついはずなんだ

……処理の速さのために警戒を犠牲にしているならば、マミの言う通り奇襲や新手を使えば崩せるはずだ
この状況では奇襲などできるわけもなく、使える新手は―――

933: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:36:08.40 ID:WHaXsLgg0
この時あたしは、急激に頭が冷え、ひどく冷静に次の一手を導き出し実行した
あたしの生存本能は、マミのと違って記憶を奪うタイプではなかったようだ

ゆえにあたしはすべてを覚えている
まるで幽体離脱でもしたような気分だった

934: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:38:13.93 ID:WHaXsLgg0
ほむらside

階段から足音が聞こえてきた。やっと――――!

ほむら「杏子!―――」

ほむら「―――……!?」

杏子は大量の血を浴びていた
……杏子自身はそこまでひどい怪我を負っているわけではない

ならば―――!

さやか「マミさんは!?」

杏子「浄化……だけしてきた……」

杏子はこんな返り血を浴びるような大怪我を治す術を持っていない……!
あたしにも治せない!
できるとしたら―――!

935: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:39:30.12 ID:WHaXsLgg0
杏子「……砕いて……やるべきだった……!」

……声を押し殺して泣いていた

さやか「杏子!マミさんはどこ!?」

杏子「……あたしは幻覚魔法にぜんっぜん慣れてない!!」

さやか「急になに!?」

杏子「やってる途中にこいつらに邪魔されたらどうなるかわからないって言ってんだ!!」

さやか「……!」

936: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:42:33.33 ID:WHaXsLgg0
ほむら「……私がインキュベーターにあたる」

杏子「……ほむらができるなら、マミは回復役にさやかを呼んでたはずだ」

ほむら「できるかできないかなんて問題視していない」

ほむら「やると言っているのよ」

杏子「できなきゃ同じことだろうが!」

ほむら「私だけの問題ではないわ」

杏子「ああ!?」

ほむら「あなたが手早く済ませればいい」

ほむら「さっき、一度は使ったんでしょう?できないとは言わせないわ」

杏子「この…!」

ほむら「さやか、行って」

さやか「任せたからね!」

杏子「おい!待て!」

937: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:43:45.56 ID:WHaXsLgg0



「……場所も聞かずにどこ行く気だ!?例の河原だ、バカ!」



「りょーかい」



938: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:45:39.90 ID:WHaXsLgg0
杏子side

杏子「馬鹿だよ…あんたは……ここまで来て切り捨てられないのかよ……!?」

ほむら「ここまで来たからこそ、よ」

ほむら「いや、もっと前から、そうだったわね」

ほむら「……とっくに気づいていたでしょうに」

ほむら「……あなたと巴さんのことを私は心底すごいと思う。だけど、もう私にはできない」

ほむら「ごめんなさい」

杏子「……謝って済む問題じゃないよ……自分の言葉には責任もってよね……!?」

杏子「……行くよ」

939: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:46:26.29 ID:WHaXsLgg0
素面で使ってみてわかったことだけど
固有魔法の基本的な使い方は自転車の乗り方と同じで、長い間使ってなかったとしても忘れるものではなかった

それに加え、あたしだけが侵入できる障壁というのは、あたしの侵入をサポートする機能もあったらしく、随分楽にやれた

それで、今まどかの意識の中

940: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:48:46.19 ID:WHaXsLgg0
別まど「……」

杏子「これはどういうあれなの?」

別窓「私の魔力に残った意識の残滓かな」

杏子「へえ」

別まど「……怒ってる……よね?」

杏子「当然でしょ」

杏子「あんたは、ほむらの信頼を、一番許されないやり方で裏切ったんだ」

別まど「……」

杏子「……あんたとしてはやることやっただけってのもわかってるけどさ」

別まど「……」

941: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:50:12.37 ID:WHaXsLgg0
杏子「ま、あんたが残りかすっていうのなら、ここでぶつけても無駄だね」

杏子「共犯の、このまどかが起きてからにするよ」

別まど「……ほどほどにね?」

杏子「さあてね。それで、あたしは何をすればいいの?」

別まど「……この障壁は、杏子ちゃんが来たら、絶望を取り込んで消失するようにできてるの」

杏子「なんだ、じゃあ、もうあたしいらないじゃん?」

別窓「ううん。インキュベーターが私の素質に触れちゃったから、障壁は必要なの」

杏子「あー……」

942: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:51:37.20 ID:WHaXsLgg0
別まど「今から魔法の術式を杏子ちゃんの頭に流し込むから、それを魔法でマミさんの頭にそのまま映して」

杏子「マミ……」

別まど「大丈夫。今のさやかちゃんなら間に合わせられるから」

杏子「……」

別まど「後は、それを再び私の頭にかけてもらえれば」

杏子「あいつ、破るのは時間の問題だって言ってたけど?」

別まど「うん。だからイタチごっこ」

別まど「魔法を改良して、私の素質がなくなるまで逃げ続けてほしい」

943: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:53:41.07 ID:WHaXsLgg0
杏子「あいつと知恵比べ?」

杏子「まあ、魔法改良はマミがするんだろうけどさあ、さすがに勝てる気がしないっていうか……」

別まど「それでもマミさんならやれると思う。魔力の使い方はマミさんの方が私よりはるかに上なの」

別まど「あいつは、私の単なる力押しで作った障壁でも破るのに苦労してたから」

別まど「マミさんが改良したらあいつにとっては相当固い障壁になるはず」

別まど「それに、インキュベーターは基本的に契約成立と魔法少女を長持ちさせるために、少女の精神についてよく知っているけど」

別まど「魔法自体の詳しい発動方法、解除方法にそこまで詳しいってわけでもないの」

別まど「今からそれに興味を持つにしても、たぶんタッチの差で振り切れる」

944: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:55:19.61 ID:WHaXsLgg0
杏子「どれくらい続ければいいのさ?」

別まど「それは正直よくわからないの」

別まど「小学校低学年で素質がなくなった人もいれば、成人の直前まで残った人もいるから」

杏子「あやふやだねえ。マミをそこまで保たせないといけない、か」

別まど「……マミさんが死ぬのはいやだけど、ほかのみんなも障壁をかけられるほうがいい」

別まど「マミさんなら噛み砕いてみんなに説明できると思う」

杏子「そうか」

杏子「ま、マミと要相談だけど、あんたの言った通りにするしかなさそうだね」

945: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:57:02.52 ID:WHaXsLgg0
別まど「……もうお別れだね」

杏子「……ま、さっきはああ言ったけど、やっぱ全員こうして無事に残りそうってことはうれしくもあるんだよね

杏子「そこはお礼言っとくよ」

杏子「いつまで続くかわかんないけどさ」

別まど「……さっきの障壁だけど、かけられる人はたくさん残った方が有利だから、そこは忘れないで」

別まど「重ね掛けとかもできるし、それとは別に誰か一人は常に生き残らないといけない」

杏子「……わかった」

946: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/03(火) 02:57:38.83 ID:WHaXsLgg0
QBside

やれやれ。ノルマ達成と思いきや、か
彼女の出現から掌でもてあそばれてばかりだった
数多の時間軸の失敗からえた経験値、なのかな

これから心理障壁魔法の調査、か
彼女たちとはそこそこ長い付き合いになりそうだ

954: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/05(木) 02:00:22.28 ID:pjk+WmDu0



エピローグ



955: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/05(木) 02:01:24.36 ID:pjk+WmDu0
ほむらside

さやか「ねえ、これ一体どういう状況?」

ほむら「……私に聞かれても」

杏子「……」

まどか「……」

マミ「……」

956: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/05(木) 02:02:40.75 ID:pjk+WmDu0
ほむら「……そのまま見れば、あなたが巴さんを回復し終えてここに帰って来たら、まどかと杏子が巴さんに土下座をした、ね」

ほむら「まどかはみんなに謝ってるみたいだけど」

さやか「……ねえ、二人とも?マミさんもあたしたちも困ってるから」

さやか「まず謝ってる理由から説明するべきじゃないかなあと思うんだけど」

957: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/05(木) 02:03:48.38 ID:pjk+WmDu0
杏子「……本当にどんでもないことをしたと思ってる」

杏子「申し訳ないです……」

杏子「もう他になんて言っていいか……」

マミ「……そう言われても、いまいち何のことかわからないのよ」

マミ「お互い様としか言いようがないんじゃないかな?」

確かに謝ってる理由は想像がつかないでもない

けど、例の「殺し合い」は幻覚魔法を取り戻すためのプロセスだった
だから杏子があそこまで深刻に謝っている理由が、私にもわからない
いくら面倒くさい子とはいえ、この場面ではむしろさらっと流す性格だと思うんだけど…

958: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/05(木) 02:05:45.47 ID:pjk+WmDu0
杏子「お互い様、で済ませられないことをしちまったと思ってる……」

マミ「―――ああ……そのこと」

巴さんは、ニコリとほほ笑んで言った

マミ「……久しぶりに会えてうれしかった。美樹さんがくるまでソウルジェムが保ったも、そのおかげかもね」

杏子「―――!」

そういうこと、か……

巴さんは幻覚魔法を使わざるを得ない状況に杏子を追い込んだ
だから当然それを使われることを予期していた
その相手に対し攻撃を通せる隙を作るほどの幻覚を、生存本能は選び取ったというわけだ

杏子「お人よしが過ぎるよ、あんた……」

マミ「だから、それもお互い様よ」

959: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/05(木) 02:06:57.64 ID:pjk+WmDu0
これで杏子が謝っていた理由は分かった
あとは……

さやか「で?まどかはなんで謝ってるの?」

まどか「……みんなに迷惑かけて」

まどか「杏子ちゃんとマミさんに大変な、ひどい目に合わせて……」

まどか「本当にごめんなさい」

960: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/05(木) 02:08:52.60 ID:pjk+WmDu0
杏子「あのさ、迷惑とかひどい目、とかに怒ってるやつはこの中にはいないんだけど」

マミ「ええ。むしろ望んでやったことよ」

さやか「ねえ、まどか、あたしたちがまどかに怒ってる理由はそこじゃないんだよ?わかるでしょ?」

まどか「そのことだったら―――」

まどかは顔を上げずに答えた

まどか「―――たとえみんなに絶交されても」

まどか「絶対に謝らない」

さやか「……暁美さん、どうしますか?反省の色なしですよ?」

ほむら「……絶交されるようなことをしたって認識してるのがたち悪いわね」

まどか「……」

961: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/05(木) 02:10:47.18 ID:pjk+WmDu0
マミ「まあ、今後は大丈夫じゃないかしら?契約なしでリスクさえ犯せばなにかできるって状況はもう来ないでしょうし」

杏子「それは……まあ、そうだな」

さやか「……」

さやか「ねえ、まどか、あんたがあたしたちが戦ってるとこに向かったのって、あのまどかが出現してからのことなの?」

まどか「……ううん」

杏子「……はあ?」

杏子「じゃあ、何?契約する気だったっての……!?」

まどか「契約する気はなかったんだ」

杏子「だったらなんで来たってのさ?」

まどか「みんなが死ぬってわかってたから、じっとしてらいれなかった」

まどか「なにもできないってわかってたけど、行かずにいられなかった」

962: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/05(木) 02:12:06.01 ID:pjk+WmDu0
杏子「……おい、どうすんだ、コイツ。またやらかすぞ?」

さやか「うーん。ここまで頑固なまどかは見たことないからなあ……」

ほむら「……さやかの場合、こうなるとほんと骨が折れるのよね」

杏子「こいつらホント似てるからなあ……」

マミ「……私たちも折れるつもりはないし、適当なところで妥協しましょうか」

さやか「適当なところ?」

マミ「私たちは、鹿目さんに心配かけないくらい強くなる」

マミ「自分の命を大切にする」

マミ「だから、鹿目さんも、私たちが危なくなっても危険なことをしない」

963: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/05(木) 02:13:53.98 ID:pjk+WmDu0
杏子「まず、マミが危険なことをしないと誓え」

マミ「……」

杏子「やっぱりできないのかよ……」

ほむら「まあ、ここで落とすしかないわ」

ほむら「ワルプルギスほどの絶望的状況も今後はそうないでしょうし」

さやか「そうだね」

さやか「まどか、あたしたちこれから頑張るからさ」

さやか「まどかもちょっとやそっとあたしたちが危ないってときは、信じてくれないかな?」

まどか「……うん。ちょっとやそっと危ないってときは信じる」

杏子「困ったやつだなあ……」

ほむら「……今はこれで仕方ないわね」

968: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/07(土) 02:49:19.12 ID:+3CXCmx90
杏子side

ワルプルギスを倒してその後の処理がすんだあと、まどかは母親にこっぴどく叱られることになった
あの「台風」の中娘が黙って外に飛び出したんだから当然だよな

まどかとしてはあたしたちのことは伏せておきたかったんだけど、まあ、あたしたちにも責任の一端はあるわけで
(無論、あたしたちはまどかに来るなといったわけで、それを破ったまどかが悪いってのは譲るわけにはいかないが)
まどか一人に背負わせるわけにはいかない

そういうわけで、まず、まどかの独断専行を許したらしい志筑仁美とまどかが怒られてて
それにあたしたち4人が加わった

969: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/07(土) 02:51:20.86 ID:+3CXCmx90
そして、誰一人として理由を語れないために
6人に分散すると思われた怒りは逆に6倍以上に膨れ上がった

そして、大体最近帰り遅いし何か隠してるだろうという至極ごもっともな指摘にもまどかは黙秘し
とうとうその怒りはみんなの両親にまで波及した

離れて暮らしてるほむらの両親はまだしも
超がつくほどの名門らしい志筑家当主や徹底した不干渉主義のマミの叔母まで招集したのだから凄まじい

マミが叔母を呼ばれた時なんか、人間あそこまで肌が青くなるもんなのかと驚いた

970: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/07(土) 02:52:33.07 ID:+3CXCmx90
それで、志筑仁美は舌先三寸でうまい具合に自分に全責任があるかのように信じ込ませかけていたのだが
あたしたちはそれぞれの理由で、あの女に責任をかぶせるつもりはさらさらなかった

そういうわけで後ろから銃を撃たれた志筑仁美も陥落して
まどかの母親以外は、これ終わらないんじゃないかな、何て午前三時辺りに考え出した

971: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/07(土) 02:55:53.91 ID:+3CXCmx90
長々と説教聞きながら、なんでこんな鬼みたいなのからまどかが育つのかと最初は思ったわけだけど

あの人は家族も保護者も身元保証人もいない施設にも入っていない中学生という
およそ日本にあたし以外に実在するか怪しい存在をあっさり受け入れて

怒り以外のいろんな感情をあたしに向けてきた

あたしとしては同情向けられるのなんて大嫌いなんだけど
それを察してか、あの人は自分の同情心を隠そうとしていた

そのお人よし振りをみて、ああ、やっぱりまどかの母親なんだなと思った

972: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/07(土) 02:58:39.38 ID:+3CXCmx90
それで翌日はマミ宅で打ち上げが行われた

まあ、最初思ってた通り、万事ハッピーエンドとはならなかったけど
ワルプルギス後もみんなが生きてて、こうして怒られたり笑ったりできるなんて想像もしなかったから

相当嬉しい

982: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/08(日) 02:32:31.02 ID:8Bf1WzKb0
さやかside

さやか「昨日は大変だったねー」

マミ「昨日、ていうか今日なのかしら?もう一生怒られ続けるのかと思ったわ……」

まどか「……本当にごめんなさい」

ほむら「まどかのせいじゃないわ」

ほむら「それより、昨日の今日で私たちといて大丈夫なの?怒られたりしない?」

まどか「大丈夫。みんなとお泊り会って言っても、楽しんで来いって言われただけだから」

983: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/08(日) 02:33:54.59 ID:8Bf1WzKb0
まどか「さやかちゃんだって来てるじゃない?」

さやか「そういうのごまかすのは慣れたもんなんだよ」

ほむら「……ごまかすのは慣れてるでしょうけど、腕は上達しているとは限らないわ」

さやか「……やっぱバレてるかな?」

ほむら「気づかない振りをしているだけでしょうね。感謝しておきなさい」

さやか「果たして返せるものでしょうか……」

ほむら「長生きすればいいのよ」

さやか「……やっぱそうなりますかー」

さやか「……ま、昨日生き残ったことで、まず第一関門クリアかな」

984: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/08(日) 02:35:24.86 ID:8Bf1WzKb0
さやか「しっかしまー、こうしてまた五人で集まれるとはねー」

マミ「……夢みたいだわ」

まどか「ほんとによかった……」

ほむら「感無量よ」

ほむら「……あのまどかのことは心残りだけど」

マミ「大丈夫だと思うわよ?あの鹿目さん図太そうだったから」

まどか「……色々あったんだろうね」

さやか「図太さって言ったらまどかもそうなってきた気がするね」

まどか「何それー?」

985: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/08(日) 02:36:42.70 ID:8Bf1WzKb0
さやか「てかさ、杏子どうしたの?なんか元気ない感じだけど」

杏子「ん?……ああ、悪いね。何でもないよ」

さやか「……なんかあるよね?今更隠し事なんてなしだよ?」

杏子「……今後のことについて、ちょっとさ」

まどか「今後のことって?」

杏子「魔法少女のこととか、生活のこととか」

さやか「魔法少女のことはともかく、生活のことって?マミさんと一緒に暮らしてくんじゃないの?」

杏子「そういうわけにいかなくなるんだよ」

986: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/08(日) 02:39:28.24 ID:8Bf1WzKb0
マミ「……私としては全く構わないのよ?むしろ―――」

杏子「そうじゃないんだよ。魔法少女四人でやってくわけだから、グリーフシードがそこそこいるじゃん?」

杏子「特にワルプルギスが来た後少しの間は、その地域で出現する魔女が極端に少なくなるらしいんだよ。聞いた話だと」

杏子「今日探ってみた感じそんな風だったから、ガセじゃないっぽい」

杏子「そういうわけで風見野での魔女狩りがしばらく重要になるんだ」

さやか「なにか問題あるの?」

杏子「風見野が他の魔法少女に奪われないように目を光らせとかなきゃいけない」

杏子「魔法少女ってのは隙あらば他人の縄張りを荒らす生き物だからさ」

マミ「ああ……」

ほむら「そういうこと……」

杏子「それで、風見野で目を光らせる役割って言ったら、やっぱあたしでしょ?」

さやか「……そうだね」

杏子「最近開け気味だったし、早く手を打たなきゃいけないんだよ」

987: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/08(日) 02:40:54.03 ID:8Bf1WzKb0
杏子「それで差しあたっては、まず拠点を風見野に移すことになるんだけど」

杏子「……どうしたもんかなって」

ほむら「先立つものはまとまったお金で、色々な手続きもやっぱり中学生だと色々面倒でしょうね……」

杏子「手続きは魔法でちょこまかやればいいと思うんだけどさ……」

だけど、お金の部分に関しては誤魔化さない
……杏子はもうあの暮らしに戻るつもりはないから

やむを得ない時にはやりかねないところは未だにあるけど
杏子はそれをやったらあたしたちの側からいなくなる
そんな気がする

だから、あたしたちは絶対にそんなことさせない
させないんだけど……

988: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/08(日) 02:44:22.46 ID:8Bf1WzKb0
マミ「……叔母からどうにか引き出す」

杏子「昨日の今日じゃないか。無理だよ」

マミ「何とかなるわ」

杏子「何とかなるようには見えなかった」

マミ「……お金を引き出す口実なんて、いくらでもあるわ」

杏子「厳しく追及されるよ。あたしのせいだけどさ、最近の生活費だってかなりもらってたわけじゃないか」

同じような理由で多分ほむらも厳しい

この一か月ワルプルギスのために結構無理なやりくりをしてたらしいし
マミさんと同じく親が非常招集かけられた後だから

989: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/08(日) 02:46:37.76 ID:8Bf1WzKb0
時間さえかければみんなそれぞれやりようがあるんだけど―――

さやか「それってやっぱり急がなきゃダメなの?」

杏子「周りに危ないのがうじゃうじゃいるんだよ。できれば明日からでも風見野に移らないと」

さやか「そっか……」

ほむら「杏子には何か考えがあるの?」

杏子「まー見切り発車的に始めて最初は今まで通り野宿とかでも何とかなるんじゃないかなー、って」

杏子「土地勘はあるし、魔法少女と違う危ない輩が来てもぶっ飛ばせるし」

さやか「女の子がやることじゃないよ……」

杏子「んなこと言ったってさー」

ほむら「今までと違って魔力での色々な誤魔化しがきかなくなるのよ?」

ほむら「……使い魔を放置しない限りは」

杏子「あー……」

杏子「考えてなかった……」

990: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/08(日) 02:48:13.30 ID:8Bf1WzKb0
まどか「……そういうことなら」

杏子「?」

まどか「ママがね、杏子ちゃんのこと気にかけてて、いつでも頼っていいって言ってたの」

杏子「……あのさ、まどか、そういうのはさ、社交辞令ってやつであって」

杏子「せいぜい気が向いたときにご飯を食べに来ていいですよって程度の―――」

991: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/08(日) 02:52:10.47 ID:8Bf1WzKb0
翌日早朝、まどか宅にて

詢子「―――別にかまわないよ」

杏子「」


杏子「あの……どういう……」

詢子「まどかの友達がお金がどうしても必要だから借りようってんでしょ?」

詢子「断る理由はないよ。事情があるみたいだし」

12: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/09(月) 00:37:02.40 ID:S10KOXr+0
杏子「いや、あの、普通じゃないよ、それ」

杏子「あたしがどういうこと今までしてきたか想像つくでしょ……?」

詢子「大体ついてるよ」

杏子「じゃあ、なんでそんなのに……?」

詢子「うちのまどかはさ、まあ、それなりにいい子に育ったと思うんだよ」

それなり、どころではないが

詢子「友達が悪いことしたらその子にダメだって言って、それでも聞かないときは、悩んだ末に大人に報告できるくらいには、さ」

詢子「ところがまどかはあなたに対しては、心配はすれどそういう悩みは全く見せてない」

詢子「よっぽどの事情があってやってたことだし、それを償うようなことも今はできないってことさ」

詢子「褒められたもんでもないだろうけどね。あなたも、それをよしとしたあたしも」

……やっぱりこの親にしてこの子ありだな

13: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/09(月) 00:41:55.35 ID:S10KOXr+0
詢子「まあ、しかし、短くて数か月、長くて三年かな?それくらい児童相談所なり性根人なりなんなりに厄介になればきちんと清算できることなのに」

詢子「あなたたちみたいな子がそろいもそろってそれをやらない、勧めないなんて普通じゃないね」

詢子「いったいどんな事情なのかな?」

一同「……」

詢子「言いたくないなら、まあ、仕方ないけどね」

詢子「……将来のこと、と言うか、今のことだけでも考えれば、施設なり里親を探すなりしたほうがいい」

詢子「それがわからないあなたたちじゃない。少なくともさやかちゃんとまどかはわかるよね」

詢子「……」

詢子「あ、ごめんなさいね、ほかの子のことはまだそれほど知らないっていうだけで―――」

ほむら「わかってます」

詢子「ありがとうね」

14: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/09(月) 00:43:45.56 ID:S10KOXr+0
詢子「それでさ、それも選択できないような事情なら、あたしが何とかするしかないじゃないか」

詢子「大人がそろいもそろってあなたのために何もできないなんて、いくらなんでもあんまりだからさ」

杏子「……」

詢子「ありがとう……ございます。必ず、返します」

詢子「今すぐじゃなくてもいいよ。どうせバイトとかするつもりなんだろうけど、そんな時間ないはずだ」

杏子「いや、そんなのいくらでも―――」

詢子「学校」

杏子「……」

杏子「!?」

15: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/09(月) 00:46:30.11 ID:S10KOXr+0
詢子「どうせ通ってないんでしょ?駄目だよ、そんなの」

詢子「通いたくない子にはそんなこと言わないけどさ、どうやらあなたはそうじゃない」

詢子「通いたくても通えなかったって言うべきかな、そんなにおいがする」

詢子「学校に、君が抱える何かに、バイト、全部両立できるのかい?」

詢子「慣れた後にバイトでもなんなりするのは否定しないけどさ、限度があるんでしょ?」

詢子「特に勉強、今から追いつくのには相当時間がかかるし、金もそれなりにかかる」

詢子「申請された額より上乗せしてるのはそのためだよ」

杏子「だけど……!学校卒業してからじゃこんな額……!」

詢子「返せるはずだ」

杏子「あたしはそもそもまともに卒業できるかどうか――――!」

16: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/09(月) 00:47:03.35 ID:S10KOXr+0
「できるはずだ」

「大人になれば返せる額だ」

「それができないなんて」

「そんなの絶対許さない」

28: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/11(水) 08:37:00.61 ID:ED1NGHci0
ほむらside inほむホーム

ほむら「……どうする?」

さやか「みんなで分担して働いたら返せないかな……?」

ほむら「そういう問題じゃないっていうのは、わかるわよね?」

さやか「……うん」

まどかのご母堂は杏子が全うに生き、大人になることにお金を出した

……杏子がまっとうに生きることはすでに決まっている

では、杏子は大人になれるのか
実際どれくらいの確率で大人になって完済できるものなのか……

マミ「インキュベーター、私たちってどれくらい生きられるものなのかしら?」

QB「そんなもの、時代、国、個人によるから答えようがないね」

QB「幸せな結末を迎えた魔法少女はいなかった、としか言えないよ」

一同「……」

29: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/11(水) 08:38:55.51 ID:ED1NGHci0
まあ、さやかが前に言ったように、結末が幸せか不幸せか、よりも過程が重要であり
私は今この瞬間みんなといれて最高に幸せだから
まどかを守れるならばどんな惨めな最期でも大した問題ではない

今は関係ないことだが

30: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/11(水) 08:40:12.83 ID:ED1NGHci0
まどか「大丈夫、だよね……?」

まどか「ワルプルギスほどの絶望的状況なんてそうはない、って、言ってたよね……?」

確かにそうだが

魔女との戦闘、グリーフシードの調達、他の街の魔法少女との抗争
それに見滝原・風見野に今後新たな魔法少女が現れるかもしれないことを考えれば……

楽観視はできない

さやか「当面は大丈夫だけどさ、まどかのお母さんの想像よりは危ないことに足突っ込んでるのも事実だからねえ」

まどか「……そっか」

31: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/11(水) 08:42:13.45 ID:ED1NGHci0
杏子「やっぱり無理だよ、あんな大金……」

マミ「……全部話すべきじゃないかしら?」

杏子「全部……?」

マミ「そう、全部」

マミ「同情でお金を引き出すみたいになるから言いたくなかったんでしょうけど、相手が出す気になっている以上、もうそれは無意味だわ」

マミ「事情を明かすのが礼儀でしょうし、魔法少女について分かってもらえれば学校の話は無しになるかもしれない」

マミ「鹿目さんのお母さんのとらえ方次第でしょうけど」

32: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/11(水) 08:45:43.06 ID:ED1NGHci0
杏子「……」

杏子は腕を組んでいろいろと考えているようだった
自分が魔法少女だと、父親に話した時のことを想起しているのかもしれない

やはり、問題があるとすれば、いつ理性を失って襲い掛かるかわからない化け物が娘の近くにいると知った時のご母堂の反応か
みんなもそれを不安視しているようだ
そこらへんに鈍い、というかそういう考えが及ぶわけもないまどか以外は、だが

ご母堂の意向により完全に会えなくなるとすれば、まどかに例の障壁をかける都合、困るが
実際のところ、いくらでも隙は作れるだろう

もちろんまどかになかなか会えなくなるのはみんな嫌だが
こちらの都合よりもあちらの都合が優先するのは当然

……話すべきだろう

みんなもその結論に至ったようだった
(まどかはまどかで、自分が今までやってきた「危ないこと」を知られる決心をした)

33: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/11(水) 08:51:12.09 ID:ED1NGHci0
……このとき私たちは、魔法少女であることを明かすこと自体に考えを巡らせていて
その先について全く考えていなかった

すなわち、見方を変えれば、私たちはまどかの命の恩人に当たり、これからもまどかを助けていく立場にあるということだ


学校に行かないということを納得してもらって、額を減らし返済期限を早めようという意図で
もう娘に金輪際近寄るなと言われる覚悟で事情を明かしたのに
逆に大感謝されて、額の増額やら、借金ではなく譲渡にするという話やら、いっそ養子になってくれやら

まあ、相当面倒くさいことになった

もう少し、あの人はまどかの母親だということに思いを巡らせるべきだった
……あの人と関わってから、ずっとそんな考えばかり抱いているような気がする
一見まどかと違うように見えても、やっぱりまどかの母親だった


杏子も杏子で必要以上に受け取る気は全くなかったために、話し合いは非常に難航した

34: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/11(水) 08:58:11.99 ID:ED1NGHci0
結果的に、ご母堂の意見に大体沿う形で
とにかくこれからは困ったことがあったらいつでも相談せよとの言いつけとともに、協定が成立した

立場を考えれば当然か
ご母堂も、父上に宥められてかなり譲歩はしたが


額は当初鹿目詢子・知久が提示した額通り
学校には通う(さぼりがちになってもやむなし)
借金という形にはするが、1銭も帰ってこなくてもまったく気にしない
何にもまして、自分が生き残ることを優先すること
以上

……中学卒業までしか想定されていないものであり、そのころになれば高校に行くか行かないかやらでまたもめそうだが
それは後の話だ

そのころまで生き残れればとりあえず御の字と考えるべきだろう

40: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:32:47.42 ID:+GaFnefM0
ほむら「ところであなた、ワルプルギスを越えたら上条恭介に気持ちを伝えると言っていたわよね?」

さやか「……言ってましたねえ」

ほむら「破るつもりはないわよね?」

さやか「そうだね。こうして生き残れたわけだし」

さやか「……いつ死ぬかもわからないし」

さやか「……さすがに逃げられないね」

……どうやら首根っこはつかまなくてもよさそうだ

41: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:34:46.13 ID:+GaFnefM0
さやかside

さやか「それで、次の日に仁美からの呼び出しねえ」

さやか「タイミング良すぎない?」

仁美「……」

さやか「いくらあたしでもわかっちゃうんだよね」

さやか「あんたたちがグルだったってこと」

さやか「仁美が今まで告白しなかったのは、ほむらに止められてたからだね?」

仁美「……ええ」

さやか「あたしがそういうの大嫌いだってこと、知ってるよね?」

仁美「……ええ」

42: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:37:00.91 ID:+GaFnefM0
さやか「じゃあ、なんでそんなことしたわけ!?」

仁美「……知ってしまったからです」

さやか「はあ?何を?」

仁美「あなたが魔法少女だということを」

……!?

……

……

さやか「ほむら……!?」

仁美「いえ。過去に一度勧誘を受けたことがあるというだけです。もう素質はありません」

仁美「……愚かなことに、上条君の怪我が治癒して初めて気づきました」

さやか「……魔法少女のなれの果てのことも知ってるの?」

仁美「……ええ」

さやか「……だから告白をやめたってわけだ」

仁美「……はい」

43: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:39:29.08 ID:+GaFnefM0
さやか「……許せることじゃない」

仁美「……わかってます」

さやか「……て言っても……私はどんな結果になっても受け止めるって言っても……そんなこと言える資格ないんだよね」

さやか「ほむらと魔女から重々教えられたし」

さやか「納得いく話じゃないけどさ」

仁美「……?」

さやか「……こっちの話」

さやか「まあ、そういうわけでさ、これは水に流すから」

さやか「だから仁美が先に告白して」

44: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:41:27.16 ID:+GaFnefM0
仁美「やはりそう来ますか」

さやか「当たり前じゃん。こんなお膳立てごめんだよ」

さやか「てかこうなることわかってたよね?」

さやか「わかんないな。先に告白したければすればよかったのに」

さやか「ほむらと協定結ぶ義理なんてないでしょうに」

さやか「なんでこんな回りくどいことしたの?」

仁美「さやかさんに先んじようという小細工ではありません」

仁美「……私は、さやかさんに恋の告白以上の告白を求めているんです」

さやか「……は?」

45: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:42:02.21 ID:+GaFnefM0



「魔法少女であることの、告白」



46: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:44:08.94 ID:+GaFnefM0
さやか「……なに、言ってんの?」

仁美「本当は私がとやかく言うことじゃないんだとわかっています」

仁美「だけど、上条君には知る義務がある」

さやか「ないよ!あたしが馬鹿やったってだけじゃん!」

さやか「なんで恭介を巻き込まないといけないの!?」

仁美「あなたは馬鹿なんてしていません!正しいことをしたんです!世界の誰よりも正しいことを!」

さやか「恭介に言えないことが正しいわけがない!」

仁美「だからこそ言えと言っているんです!」

さやか「あたしの勝手でしょうが!」

47: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:46:05.84 ID:+GaFnefM0
仁美「……言いますよ?」

さやか「……は?」

仁美「私が、上条さんに、告白する前に、魔法少女のことを」

さやか「……ハッ。言えばいいじゃん!」

さやか「そんなファンタジックなこと、告白する前に言えるもんなら言ってみなよ!」

さやか「あらかた誰が魔法少女か見当ついてるだろうけど、そのことであんたに協力する人なんかいないんだ!」

さやか「証明できるわけがない!」

仁美「それは問題になりませんよ?」

さやか「問題でしょうが!あんたが頭イカれたって思われるのがオチだよ!」

48: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:47:05.02 ID:+GaFnefM0
仁美「上条君も疑問に思っているんですよ?不治と言われていた怪我が事故前の状態に戻ったことに」

さやか「……!」

仁美「治ったと同時にお見舞いに行くのをやめましたね?」

仁美「これを結び付ければ、証明手段がなくても信じさせるのは困難ではありません」

……仁美が言う、ってこともあるか

……仁美がおかしくなったって考えるよりは―――

49: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:50:16.41 ID:+GaFnefM0
さやか「……ねえ、仁美、あんたわかってんの?」

さやか「あたしが魔法少女だって伝えることは、あたしが化け物だって伝えると同時に」

さやか「恩を押し売りするってことでもあるんだよ?」

仁美「わかってますよ」

仁美「さやかさんがその両方を恐れているということも」

さやか「……この頑固者め」

仁美「あなたに言われたくはありません」

仁美「……さやかさん、上条君を信じてくれませんか?」

仁美「あの方なら、全部受け入れてくれると思うんです」

さやか「……」

さやか「……信じる、か」

50: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:52:02.83 ID:+GaFnefM0
ほむらはあたしたちを信じてくれた
だから、あたしは、今、ここにいる

今度はそのバトンを恭介に預ける時なのかな……

51: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:53:41.48 ID:+GaFnefM0
さやか「……そうかもね」

さやか「全部黙ってるなんて、都合よすぎたかもね」

さやか「わかった。だからさ」

さやか「仁美も一緒に告白して」

仁美「……」

さやか「これだけは譲れない」

仁美「……」

さやか「信じてくれないかな、仁美も、あたしのこと」

仁美「……そんなこといいつつ、玉砕して私が成功したら大荒れになるのがさやかさんですわ」

さやか「……」

仁美「だけど、私が身を引いても荒れるのがさやかさんですからね」

仁美「ええ。信じるしかなさそうです」

52: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:57:45.03 ID:+GaFnefM0
そのあと約束した通り、あたしたちは恭介にすべて告白した

恭介は、あの時僕が荒れたせいだと言ったけど
あたしは、本心を打ち明けてくれてうれしかった、と答えた


恭介の答えは、保留だった
肩すかしみたいだけど、そりゃ、人間が処理できる情報じゃないもんね、あんなの

拒絶されなかったというだけであたしは有頂天だった
そう遠くないうちに答えをだすとは約束してくれたし
それまで、また仁美と競争だね

その後、仁美を含めたみんなは、早く答えをださないとさやかちゃんその前に死んじゃうかもですよ?なんて恭介に圧力をかけるようになった
……やめてほしい

53: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 17:59:03.21 ID:+GaFnefM0
あと、蛇足ついでにそれからの日々について少し

ほむらと杏子は再度マミさんに弟子入りした
ほむらは前に言った通り、杏子は先の一件で回復魔法の重要性を痛感したから
杏子がアルバイトをする余裕ができるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ
あたしは、忙しい三人の魔女狩りとまどかの障壁作りを担っている

正直みんなそれぞれ色々きついけど、なんといってもまどかを守るためにみんな無事できなきゃいけないわけだからね
張りが出るってもんですよ


さて、それでは、見滝原は今日、遠くまで見渡しても雲一つない快晴だという気象情報をお伝えして
この物語を終わらせようと思う

54: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 18:00:19.36 ID:+GaFnefM0
もちろん物語が終わっても、あたしたちは終わらない

これから先、この生活がいつまで続くかはわからない
近いうちに唐突にバッドエンドを迎えるかもしれないし、案外引き伸ばされた末にハッピーエンドで締められるかもしれない

だけどこれは、ほむらにとっては想像することも許されなかった生活だから
あのまどかがついに実現させた時間軸だから
あの魔女と、後悔しないと一方的に約束したから
あたしはできるだけながーく続ける気満々なのです

一度死んだ身だし最後にみんなを守って逝けたらまあオッケーかな、なんて考えてるわけだけど
こんなこと話したらみんなに怒られるから今は置いとく

みんなも同じ気持ち
この日々を長く続けるためならば
運命の一つや二つ、いくらでも捻じ曲げて見せる

なんて言っても―――

55: ◆WxX/Ywk/v6 2013/12/13(金) 18:00:54.70 ID:+GaFnefM0




――――あたしたちは魔法少女だから




引用元: まどか「希望は残っているんだよ。どんな時にもね」ほむら「2」