1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 19:45:58.98 ID:wxtuTL570
アナ「以前からそのような噂が流れていましたが、先日NASUが正式にその事実を認めました」

アナ「発表された内容によりますと地球に衝突するのは今日の夕方」

アナ「衝突地点は日本と予測されていますが、地球全土に壊滅的な被害が及ぶだろうとのことです」

6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 19:47:33.50 ID:wxtuTL570
アナ「米大統領の会見映像です」

米大統領『わたしはこのような事実を皆さんにお伝えしなければならないことを非常に残念に思っている』

米大統領『明日、巨大な小惑星が地球に衝突する。被害は甚大なものになるだろう』

米大統領『……専門家はわたしたちにできることはおそらくないだろうと報告している』

米大統領『……』

米大統領『わたしにできるのは奇跡を願うことくらいだが、皆さんはどうか落ちついて過ごされるようお願いしたい』

12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 19:50:09.90 ID:wxtuTL570
アナ「人々は比較的落ちついていますが、小さな暴動が起きている地域もあるとのことです」

アナ「皆様、落ちついて行動していただきますようお願いいたします」

アナ「新しい情報が入り次第 おってお伝えいたします」

14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 19:51:58.08 ID:wxtuTL570
父「おいおい……」

母「本当に、落ちてくるのね」

弟「ひぐっ……グスっ……」

少女「……」

20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 19:53:48.41 ID:wxtuTL570
弟「うわーん! 怖いよう!」

母「な、泣かないで」

父「そうだぞ。まだ死ぬと決まったわけじゃない」

少女「……」

25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 19:55:05.35 ID:wxtuTL570
弟「お姉ちゃん……怖いよ。怖いよう……」ギュッ

少女「……」ナデナデ

母「あなた……どうしましょう」

父「どうしようったって」

29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 19:56:40.53 ID:wxtuTL570
弟「お姉ちゃん……ぼくたち死んじゃうのかな……」

少女「……」

弟「ぼくまだ死にたくないよ」

少女「……」

弟「まだ生きていたいよう……!」

少女「……」

32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 19:59:03.04 ID:wxtuTL570
母「ほら、落ちつきなさい。お姉ちゃんを困らせちゃだめでしょ」

弟「グス……グス……」

少女「……」スク

父「? どうした」

少女「出かけてくる」

父「え? こんなときにどこに行くって言うんだ」

少女「すぐ戻るから」

父「お、おい」

 ギィ……バタン

37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:02:25.77 ID:wxtuTL570



少女「……」テクテク

「おい、ニュース見たか?」

「見た見た」

「マジで滅亡するの?」

「嘘。ヤバいじゃん」

少女「……」テクテク

39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:07:36.84 ID:wxtuTL570
靴屋


少女「ごめんください」

お姉さん「あら、何かしら」

少女「この靴が欲しいんです」

お姉さん「この靴? 登山用の靴だけど、いいの?」

少女「弟がそういうの好きで、この靴を前から欲しがってたんです」

お姉さん「へえ、そうなんだ」

少女「……今日、最後だから」

お姉さん「……なるほどね。分かったわ、今包んであげるわね」

少女「ありがとうございます」

お姉さん「弟思いのいいお姉ちゃんね」

40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:10:32.97 ID:wxtuTL570
鞄屋


少女「失礼します」

お兄さん「おや、こんなときに誰だい?」

少女「このナップザックが欲しいんですけど」

お兄さん「ん? 何に使うんだい?」

少女「弟が欲しがってたんです。プレゼントしようと思って。最後だから」

お兄さん「……そうか」

少女「はい」

お兄さん「うん、そうか! お兄さん感動しちゃった! タダで持っていっていいよ」

少女「ありがとうございます」

お兄さん「よい終末を」

41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:11:44.72 ID:wxtuTL570
スポーツ用品店


少女「すみません。誰かいませんか」

 シーン……

少女「あの。誰か」

店長「――ああ、はいはいすまないね」

少女「……」

店長「あんなニュースが流れただろう。仕事にくる奴がいなくてね、わたし一人なんだ。それで、何の用だい?」

少女「この店で一番いいバットが欲しいんです」

42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:13:03.17 ID:wxtuTL570
店長「バット? こんなときになんで」

少女「弟が野球、好きなんです。こんなときだからこそ、気を紛らわせてあげようと思って」

店長「ははあ、なるほど。いいお姉ちゃんだね」

少女「……」

店長「うん分かった。お代は要らないよ。持っていってくれ。最後だしね」

少女「ありがとうございます」

店長「弟さんによろしくね」

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:13:54.16 ID:wxtuTL570
弟「ムニャ……」

少女「ただいま」

弟「……あ、お姉ちゃん」

少女「寝てたの?」

弟「疲れちゃって……」

少女「そう。パパとママは?」

弟「出かけてる」

47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:15:24.78 ID:wxtuTL570
弟「お姉ちゃんはどこ行ってたの?」

少女「ちょっと買い物」

弟「あの……もうどこにも行かないで?」

少女「ごめんね、一人にしちゃって」

弟「ううん、大丈夫」

少女「もう少し寝てていいよ」

弟「うん……」

少女「……」ナデナデ

弟「……ムニャ」

少女「……」

少女「……ごめんね」スク

51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:16:58.26 ID:wxtuTL570



少女「……」テクテク

「終わりだ……もうすぐ終わりだ……」

「どうせ最後だ! 何やっても構うものか!」

「神に祈る時です」

「早く滅亡しないかな……」

少女「……」テクテク

53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:18:20.57 ID:wxtuTL570



少女「……」

少女「……ハァ」

少女「ハァ、ハァ……」


弟『怖いよう……』


少女「……」

54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:19:18.17 ID:wxtuTL570
山頂


少女「……」

少女「……あれね」

55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:20:50.10 ID:wxtuTL570
 見上げた遠い空に、それがあった。
 夕焼けの空に一際美しく輝いていて、あれが地球を滅ぼすなんて、到底信じられそうにない。
 少女はナップザックを下ろして、挿していたバットを引き抜いた。

 奇跡なんてこの世にはないと思う。
 あんまり長く生きているわけでもないけれど、それくらいはもう分かっている。
 だからこんな呆気ない最期を迎えるのだろうし、実際あっさり終わってしまうのだろう。

 それでも。
 弟が生まれた日に決めた。
 白い部屋で、母に抱かれる小さな赤ちゃんを見たときに決めたのだ。
 この子はわたしが守る。わたしはこの子のお姉ちゃんだから。
 そのためだったら奇跡でも何でも起こして見せる。

 空に向かい、バットを構えた。

56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/12/20(木) 20:21:59.45 ID:wxtuTL570
終わり 

引用元: アナウンサー「巨大な小惑星が地球に近づいています」