前回 【ラブライブ】穂乃果「テニスをしよう!」

3: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 20:44:27.98 ID:2KhD4MJ7O
――――――



穂乃果「というわけで! 始まりました!」

穂乃果「第2回チーム対抗! μ'sテニス大会!!」



希「いぇーい!!」

穂乃果「第1回からは随分空いちゃったけど!」

希「そうやねぇ……でも、今回は前回よりパワーアップしてるんやろ?」

穂乃果「その通り! 今回はね、なんとスペシャルゲストを呼んでます!」ドヤッ

希「えぇ!? 誰やろなぁ?」

穂乃果「ふっふっふっ……それはね! この人たちだ!!」



ツバサ「綺羅ツバサ!!」ドヤッ

あんじゅ「優木あんじゅよ♪」フフフ

英玲奈「……統堂英玲奈だ」ハァ



穂乃果「なんと! A-RISEの3人が来てくれました!!」

希「いぇーい!」

ツバサ「こうやってμ'sとまた対決できるの、とても楽しみにしてたのよ?」

穂乃果「あ、わ、私もです!」

ツバサ「今度は負けないから、覚悟してね?」

穂乃果「っ、私たちも負けませんっ!」

ツバサ「そうこなくちゃね♪」

穂乃果「おっと、さらに、さらに!!」

希「なんと!!」

穂乃果「穂乃果たちにも知らされてないゲストがいるんだって!」

希「うーん? 誰が来るんやろね?」

あんじゅ「ふふふ♪ それは来てからのおたのしみよぉ?」

穂乃果「ますます楽しくなってきたね!」

希「そやねぇ、っと、それじゃあ穂乃果ちゃん?」

穂乃果「うん!!」



穂乃果「そんなわけで! 第2回チーム対抗! μ'sテニス大会を始めるよー!!」



――――――

引用元: 【ラブライブ】穂乃果「テニスをしよう!」ツバサ「おもしろそうね」 


 

 
4: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 20:53:17.19 ID:2KhD4MJ7O
――――――



穂乃果「こんな感じでどうかな!!」

海未「……いや、完全においてけぼりです」


絵里「えぇ、動画を見ている人は今に至るまでの出来事なんて分からないのよ?」ノゾミモノラナイノ

希「まぁ、そうやねぇ」ツイツイナァ

英玲奈「まったくだ……」ヤレヤレ

穂乃果「えー! じゃあ、どうしたらいいのさ!」

海未「せめて、経緯を話す必要があるでしよう?」

穂乃果「いき、さつ……?」ウムム

ことり「あ、いままでの流れって意味だよ」コソッ

穂乃果「な、なるほど」ボソッ

穂乃果「……それじゃ、えっとねぇ――」

5: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 21:04:26.54 ID:2KhD4MJ7O
―― 回想 ――



にこ「動画を配信するわよ!!」



「「動画配信??」」


にこ「そう!」

海未「えぇと……PVですか?」

ことり「それならこの間撮ったのが……」



にこ「いいえ! それじゃダメ!」



真姫「はぁ? なんでよ?」イミワカンナイ

にこ「いい? 確かに、私たちがライブPVを配信すれば再生数を稼げるわ」

希「うん。ウチらは、あのA-RISEを破ったわけやし」

真姫「なら、やっぱり注目が集まっているうちにまたライブをした方が――」

にこ「……甘いわね」フッ



にこ「マンネリ、という言葉を知っているかしら?」


6: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 21:12:16.94 ID:2KhD4MJ7O

真姫「いや、それくらい知ってるけど……」

凛「むしろ、にこちゃんが知ってる方が意外にゃ」プププ

にこ「うっさいわ!!」ゲシッ

凛「にゃ!?」イタイニャァァ

ことり「……えっと、それで……?」

にこ「……コホン、いい?」



にこ「にこたちはスクールアイドル! だから、ライブを配信するのは当然なの! けど、それだけでは飽きられてしまうのよ!」



花陽「た、たしかに! あまり短期間でライブ配信をするとファンも過剰な供給に飽きてしまうこともあります!」

希「そういうものなん?」

にこ「そういうものなのよ!」

海未「ふむ……?」

ことり「えっと……つまり……?」

絵里「……なるほどね」



絵里「つまり、ライブ以外の手段で私たちに注目を集めたい、と……」

にこ「その通りにこ♪」


7: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 21:28:38.36 ID:2KhD4MJ7O
真姫「まぁ……」

海未「にこの言いたいことは分かったような気がしますが……」

希「うん。問題は、何を配信するか、やない?」

絵里「そうね。にこ? それに関してはなにか案はあるのかしら?」

にこ「ふっふっふっ」

花陽「不敵なほほえみ……もしかして、にこちゃんもう……?」

にこ「えぇ! その通りよ、花陽! にこにはもうそのビジョンが見えているわ!!」

花陽「っ!?!?」

にこ「そのビジョンとは――」

花陽「……ゴクリ」ドキドキ

にこ「――これよっ!!」ドヤッ



『ドキッ♪ にこにーのラブリーお――

真姫「却下」

にこ「ぬぅわんでよっ!?」



希「まぁ、ここまではお約束やね」

凛「いつも通りの漫才だにゃ」

絵里「……とにかく動画を配信するのはいいけれど……」

ことり「う、うん。内容、どうしよっかぁ……」


「…………」ポチポチ


海未「って、そういえばさっきから妙に静かだったのですが……穂乃果は……?」チラッ

ことり「えっとぉ、さっきからなんだかスマホをさわって――」チラッ


―― バンッ ――


ことり「ぴいっ!?」

花陽「ピャァァァっ!?」

穂乃果「ふっふっふっ……」

絵里「ほ、穂乃果……? いきなりどうしたの……?」

穂乃果「思いついた、思いついたよっ!!」

希「……えぇと? 思い付いたって、配信する内容のこと?」

穂乃果「うん!」


ことり「穂乃果ちゃん、なにをするの?」

8: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 21:29:17.92 ID:2KhD4MJ7O
――――――



穂乃果「テニスをしよう!」



――――――

9: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 21:37:25.47 ID:2KhD4MJ7O
海未「テニス、ですか?」

凛「またこの間みたいにやるの?」

穂乃果「うん! だって、楽しかったし、前のも評判よかったんだよね?」

希「まぁ、評判はよかったね」

花陽「うん。再生数もすごくおおかったよ」

凛「それに、楽しかったにゃ~!!」ギュッ

花陽「うんっ、そうだね♪」クスグッタイヨォ


穂乃果「だよね! なら!」

絵里「……けど、穂乃果? よく考えてみて?」

穂乃果「??」

絵里「それこそ、にこの言っていたマンネリになってしまうんじゃないかしら? 組み合わせを変えても、あくまでも私たちだけの試合なわけだし……」

にこ「ま、そうね。メンバーが代わり映えしないんじゃあ、マンネリもマンネリよ」



穂乃果「……ふっふっふっ」



海未「……穂乃果?」

穂乃果「それに関しては安心していいよ……だって――」



―― 回想終了 ――

10: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 21:47:25.42 ID:2KhD4MJ7O

真姫「それでA-RISEを呼ぶあたり、恐ろしい行動力よね」

絵里「ほんとにね」

穂乃果「えへへぇ」テレテレ



ツバサ「こちらとしてもありがたいわ。貴女たちに破れて、私たちも新しいことをしたいと思っていたから」

あんじゅ「渡りに船って感じね♪」フフフ

英玲奈「……それにしたって時期というものがあると思うのだが……μ'sも大事な時期だろうに……」

希「まぁ、ウチらはいつもこんな感じやからねぇ」

海未「穂乃果は言い出したら止まらないのです……」ハァ

英玲奈「そちらも苦労しているのだな……」

海未「昔からこうですから、まぁ、慣れてしまいました」

11: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 21:58:31.84 ID:2KhD4MJ7O

あんじゅ「それで……ほんとにいいのかしらぁ?」チラリ

海未「あぁ、人数のことならば心配には及びません。そちらも足りないのでしょうから」

英玲奈「それは確かに。シングルス3試合にダブルス2試合だと、ゲストを含めたとしても必然的にこちらの人数が二人ほど足りないのは事実だが……」チラッ

真姫「え? あぁ」チラッ



凛「…………ふーん!」ツーン

花陽「うぅぅぅ」シュン



真姫「……むしろ引き受けてもらって助かったわ。あのままじゃダブルスなんて組めないもの」

海未「かといって、二人ともシングルスできるわけではありませんからね」

英玲奈「……なるほどな」

あんじゅ「それでこのチームわけってことなのね」

希「そういうことやね。あ、それじゃあ、チームも発表しておこうかな」

12: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 22:02:13.79 ID:2KhD4MJ7O
―― μ'sチーム ――


穂乃果「えへへ! もっと褒めて!」

絵里「はいはい」ナデナデ

花陽「うぅぅぅ……凛ちゃん……」シュン

ことり「元気だしてぇ、はなよちゃん」ナデナデ

真姫「なにかしらね、この統率のなさ……」ハァ

海未「えぇ、激しく不安です」

希「……まぁ、こっちはこんな7人やね」

13: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 22:05:01.85 ID:2KhD4MJ7O
――A-RISE連合チーム ――



ツバサ「ふふふ……可愛いわね、穂乃果さん」

英玲奈「……おい、ツバサ、自重しろよ」

あんじゅ「うふふっ♪」ニコニコ


凛「……むぅ、かよちん、ことりちゃんと仲良くしてる」ボソボソ

にこ「はぁぁぁ、めんどくさいわね、あんたも」ポンポン

14: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 22:15:39.44 ID:2KhD4MJ7O
真姫「そっちはあと二人ゲストが来るのよね?」

ツバサ「えぇ、穂乃果さんの驚く顔が目に浮かぶわ♪」

海未「…………」ジッ



凛「……むぅぅぅ」

にこ「はぁ、まったく……」

凛「……知らないもん」



花陽「……はぁぁぁ」ズゥゥゥン

ことり「……げ、元気だして、ね?」ナデナデ

花陽「…………ぐすっ」

ことり「あわわわわっ」



穂乃果「絵里ちゃんのなでなで、さいこーだよぉぉ」ボヘェ

絵里「ふふっ、よしよし」



英玲奈「……とにかく始めようか」

希「……そうやね」

あんじゅ「ふふっ、楽しみねぇ♪」



――――――



それぞれが様々な想いを抱えながらッ!
今、戦いの火蓋は切って落とされたッ!!!



――――――

15: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 22:25:18.87 ID:2KhD4MJ7O
――――――


真姫「さて、今回はシングルス3試合にダブルス2試合の計5試合を行う予定よ」

真姫「もちろん、この動画を撮影する前には2週間の練習期間があって、どちらのチームも練習はしてあるわ」

真姫「前回同様、両チームのオーダーは各々決めてもらっているから私はわからないわよ? まぁ、今回は私も試合に出るから当然だけど」

真姫「それで、今回も各チームから一人ずつ解説役をお願いしてるわ。シングルス3は……」



ツバサ「A-RISE連合からは私、綺羅ツバサよ!」ニカッ

海未「μ'sチームからは私です。園田海未と申します」ペコリ



ツバサ「よろしくね、園田さん?」ニコリ

海未「はい。よろしくお願いしますね」ニコリ

真姫「…………なんだか不穏な空気を感じるんだけど……」

海未「気のせいでしょう」

ツバサ「えぇ、気のせいね」

真姫「…………えぇ、まぁ、信じましょう」

真姫「まず、最初に対戦するのはこの2人よ」

16: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 22:34:15.20 ID:2KhD4MJ7O
「うーん? なんだかウチ斬り込み隊長みたいなポジションになってる気がするなぁ」

「ふむ、確かにこの間もシングルス2だったな」

「ありゃ、もう動画見られてるみたいやね」

「勿論だ。テニスをするのは想定外だったが、対戦するからには全力を尽くすのが私のポリシーだからな」

「それは怖いなぁ♪」

「……その割りには楽しそうだな」

「そう見えるん?」

「あぁ」

「楽しそう、かは分からんけど、気合は十分よ。だって――」



希「――ウチはμ'sの斬り込み隊長やからね!」バンッ



「東條希……。ふっ、相手にとって不足はない。だが――」



英玲奈「――私も負けられないからな」バンッ



17: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/07(土) 22:36:19.98 ID:2KhD4MJ7O
――――――



シングルス3



東條希 vs 統堂英玲奈



試合開始



――――――

21: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 09:15:59.07 ID:UAdWRnHMO
『1セットマッチ』
『サービス 希』



希「……さて、どう攻めようかな」ターンターン

英玲奈「……来い」

希「それじゃあ――」スッ



希「――ほっ!」ポーン



英玲奈「下からのサーブ……これはっ!」ダッ


―― コツンッ ――


英玲奈「イレギュラーかっ!!」ブンッ

希「よし、まずは1本やね」ニシシ



『希 15 - 0 英玲奈』



――――――


真姫「出たわね、希の『イレギュラー』」

ツバサ「へぇ、すごいのね、彼女」

海未「はい。サーブといえども、小さな石に当てるそのコントロールはまさに神業です」

ツバサ「技巧派って感じね」

真姫「えぇ……っていうか、前の動画見てなかったわけ……ですか?」

ツバサ「敬語じゃなくていいわよ?」フフッ

真姫「……分かったわ」

ツバサ「そうね。前の動画は、穂乃果さんの試合しか見ていないわ!」ニコリ

海未「…………」

真姫「…………そ、そう」

ツバサ「あ、英玲奈はしっかり見ていたみたいだけど」

22: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 09:30:59.77 ID:UAdWRnHMO
希「さ、次行うか」ターンターン

英玲奈「…………」

希「……っ!」スッ



希「よっ!」ポーン



英玲奈「今度は――」ダッ


―― コツンッ ――


英玲奈「――返す!!」パァァン


「返された!!」
「大丈夫よ。希にはまだ『あれ』があるわ」

希「強烈、やけど!!」ダッ

希「でも、まだ終わりやないよ? 次は……」グッ



希「これや!」ペチッ



―― ベチッ ――



「『コードボール』だ!」
「や、やっぱりすごいですっ」

「ふふっ、すごいことするのね♪ でも――」



英玲奈「あぁ、予測済みだ」ポンッ

―― トンットンッ ――



希「!?」

英玲奈「確かに、このコントロールは恐るべきものだな」

希「……なんで」

英玲奈「…………」

英玲奈「初見で見破られた、そう思っているのか?」

希「…………」


英玲奈「初見ならば確かに返せなかっただろう。だが――」



英玲奈「もう何度も『観て』いるからな」



『希 15 - 15 英玲奈』

23: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 09:41:50.66 ID:UAdWRnHMO
――――――


真姫「確かに、前回の試合でプレイスタイルは見せていたけど……」

海未「ああもあっさりと『イレギュラー』や『コードボール』を返すとは……」

真姫「絵里ですら苦戦していたのに、ね」

海未「……それだけ研究されているということでしょう」

真姫「えぇ。でも……」


――――――



英玲奈「ふっ!!」バシッ

希「うっ……」



『希 0 - ① 英玲奈』



希「はぁ……はぁ……」

英玲奈「まずは先取させてもらったぞ」



――――――


真姫「希がこんなあっさりと、なんて……」

海未「……研究されているとしても、なにかが……」


ツバサ「英玲奈、強いわね♪」フフッ


海未「……なにか秘密があるのではないですか?」

ツバサ「さぁ?」

海未「は、はぁ?」

ツバサ「私、よく知らないもの」

海未「え゛?」

真姫「……なんで、解説役になったのよ」ハァ


ツバサ「ふふっ、私も早く試合したいわ♪」


――――――

24: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 09:54:59.97 ID:UAdWRnHMO
『チェンジサービス』
『サービス 英玲奈』


英玲奈「…………」ターンターン

希「はぁっ……」スッ

英玲奈「……大丈夫か?」

希「はぁっ、ふふっ、心配してくれてるん? 優しいなぁ」ハァハァ



英玲奈「…………いや、もう打ち終わっているんだが」



希「え?」


―― トンットンッ ――



『希 0 - 15 英玲奈』



――――――


海未「統堂さんのサーブは、普通のサーブでしたよね?」

真姫「えぇ、絵里のような強いサーブでもなかったわ。平凡なサーブ、なのに……なんで?」


あんじゅ「それにはわたしが答えるわね♪」


海未真姫「「!?」」

ツバサ「あんじゅ? どうしたの? あんじゅはまだ」

あんじゅ「ふふっ、ツバサがすこし心配でねぇ」

ツバサ「???」

海未「……助かります」

あんじゅ「ふふふっ、ごめんなさいね~? うちのリーダー、こうなのよぉ」


真姫「……とにかく解説をしてほしいわね。絵里のサーブですら返した希があっさりとサービスエースを許すとは思えないわ」

海未「統堂さんは一体何をしているのですか?」

あんじゅ「英玲奈はね――」



あんじゅ「――『死角』を突いてるの」



――――――

25: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 10:00:11.26 ID:UAdWRnHMO

英玲奈「…………」ターンターン

希「……っ」



希(いったい、なにをされてるんやろ……)

希(集中はしてた)

希(でも、ボールが一瞬認識できないようになってた)

希(いったい……)



英玲奈「ふっ」スッ

希「っ!!」グッ



英玲奈「はあっ!!」パァァン



希「……っ」

英玲奈「…………ふぅ」

希「っ、またっ!?」キョロキョロ

英玲奈「……そこだ」ユビサシ

希「っ!?」


―― トンットンッ ――



『希 0 - 30 英玲奈』



希(いったい何が起きてるん……?)

26: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/08(日) 10:09:52.19 ID:UAdWRnHMO
――――――


真姫「『死角』を突く、ですって?」

あんじゅ「そうよぉ」


あんじゅ「元々、英玲奈の観察力は秀でていたの」

あんじゅ「だれよりも周りを冷静に見て、だれよりも状況を分析するのがうまかったわ」

海未「観察と分析、ですか」

あんじゅ「えぇ」

真姫「でも、だからといって、他人の『死角』を突くなんてこと簡単には――」



あんじゅ「英玲奈にはできるの」

あんじゅ「いえ、できるようになったって言ったほうが正しいかしらぁ?」チラッ



ツバサ「ん?」

海未「…………彼女がなにか?」

あんじゅ「ツバサが英玲奈のそれを引き上げた、ってこと」

海未「!?」

あんじゅ「いまの英玲奈は……」


――――――





英玲奈「はぁっ!!」パァァン



希「…………っ」

英玲奈「……どうした? 君の正面に打ったのだが?」

希「っ、反応も……」ガクッ



『希 0 - ② 英玲奈』



英玲奈「さて、あと2ゲームか」

英玲奈「思ったよりも早く終わりそうだな」

31: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/12(木) 18:25:21.75 ID:6dGUkoUAO
――――――


真姫「サーブ権が移って、希のサーブ」

真姫「けれど……」


――――――



―― パァァァン ――



「ま、またリターンエース」
「もう『イレギュラー』は通じないみたい……」
「希ちゃーーんっ!! がんばれぇ!」
「…………希」



『希 0 - 30 英玲奈』



希「…………はぁ、はぁ……」

英玲奈「……流石の君も『死角』を突かれては反応できないようだな」

希「……っ、ふふっ、まだまだよ」ニヤッ

英玲奈「…………」

希「はぁ……っ、ふぅ……」

32: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/12(木) 18:33:28.03 ID:6dGUkoUAO

希「…………ふうっ!」ターンターン

英玲奈「…………さて」グッ

希「っ!」スッ



希「やぁっ!」パァァン



英玲奈「上からのサーブ……『イレギュラー』では通じないと分かったようだな」ダッ

英玲奈「だが……」グッ



英玲奈「無駄だよ」



「また『死角』だ!?」
「希ちゃんっ」

希「……っ」キョロキョロ



―― パァァァン ――



「決まっちゃいました……」
「うぅぅぅ……」

英玲奈「ふっ」

英玲奈「…………さて、次――」クルッ



希「――やぁぁぁっ!!」ダッ



英玲奈「なっ」バッ

希「っ!!」ガクッ



『希 0 - 40 英玲奈』

33: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/12(木) 18:40:14.91 ID:6dGUkoUAO
――――――


あれ?
ウチ、なにしてるんだっけ?

…………。

あぁ、そっか。
『死角』突かれて……。
もう2ゲームも取られちゃったなぁ。
しかも、今のゲームだってあと一点で取られちゃうしなぁ。

アハハ……。
ウチ、やっぱりダメやね……。
これじゃあ、みんなに――


「――――み」


え?
いま……?


「……ぞみ」



「希ッ!!!」



――――――

34: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/12(木) 18:45:13.47 ID:6dGUkoUAO



「希ッ!!!」



希「っ、はっ!?」

絵里「希……大丈夫なのっ!?」

希「え? あ、うん……」

絵里「よかったっ」



―― ギュッ ――



希「あっ……えりち」

絵里「……っ、よかった……ほんとう……」ギュゥゥゥ

希「…………試合」

絵里「もうっ、そんなのどうだっていいわよっ」

希「…………」

絵里「……無理しないで」

希「……う――



「希」



35: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/12(木) 19:03:03.33 ID:6dGUkoUAO
希「え?」

にこ「…………」

希「にこっち?」

にこ「…………」ジッ

希「……にこっちも心配してくれるん? アハハ、なんだか照れるなぁ」

にこ「…………」

希「……にこっち?」

にこ「あんた――」



にこ「――本気でやんなさいよ」



希「え?」

絵里「っ、にこ! 希はもう!!」

にこ「もう? にこはそうは思わないけど」

絵里「えっ? でも?」

希「…………」

にこ「前回もそうよ。あんたのテニスにはどこか違和感があるわ」

絵里「違和感……?」

希「…………っ」ビクッ

にこ「……あんた、なんか隠してない?」

希「……そんな、ウチは別に」メソラシ

にこ「ほんとに?」

希「…………」ウツムキ

絵里「……希?」

にこ「なにを考えてるのかは知らないけど……」

にこ「全力を出さずに負けたら、あいつらに胸張れる?」ユビサシ


花陽「……うぅぅぅ」
穂乃果「大丈夫だよっ! 花陽ちゃん!」
ことり「うん、そうだよぉ」

凛「……希ちゃん」ボソッ

海未「希、無理をしないといいのですが……」ウウム
真姫「……そう、ね」クルクル


希「…………みんな」



希「…………うん」スッ



絵里「のぞみ?」

にこ「……はぁ、まったくやっと気合が入ったみたいね」ヤレヤレ

希「……ごめん、えりち。みんな」

希「もうちょっとだけ心配かけ――ううん」



希「すぐ終わらせてくる」ニヤッ



――――――

36: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/12(木) 19:22:58.49 ID:6dGUkoUAO

英玲奈「話は終わったようだな」

希「そうやね。待ってもらって悪いなぁ」

英玲奈「いや、気にしなくてもいい」

希「……ふふっ、優しいんやね」ターンターン

英玲奈「……いや」

希「……っ」スッ

英玲奈「すぐに終わらせるからな」ニッ



希「ほっ!」パァァン



「上からのサーブだ!」

英玲奈「球威は若干上がった、か」ダッ


英玲奈「ふっ」パァァァン


希「…………」

英玲奈「だが、関係ない。人は『死角』を突かれれば動くことすら出来ない」クルッ

「ふふふっ、さすが英玲奈ね。ようしゃないわぁ」
「えぇ、残念だけど、東條さんももう諦めて――え?」



希「ふふっ」

―― ザワッ ――



英玲奈「なっ、『死角』が消え――」



希「やっ!」パァァァン



37: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/12(木) 19:27:34.23 ID:6dGUkoUAO
英玲奈「なにっ!?」

「返した!!」
「すごいよぉ! 希ちゃんっ」

「『死角』を突いた英玲奈の球を? そんなのって……」

英玲奈「くっ!?」ダッ


英玲奈「はっ!」パァァン


英玲奈(あんじゅやツバサでさえ、『死角』は存在する)

英玲奈(それは人間ならば仕方のないことだ)

英玲奈(だが、その『死角』が消える?)

英玲奈(そんなことは――)



希「集中せな、ダメやで?」



英玲奈「っ」ゾワッ

希「その意識を――」ユラユラ



希「――――断ち切る」



英玲奈「しまっ――」ダッ



―― ギュォォォォ ――



英玲奈「『ツバメ返し』……か」

希「ふぅ!」

英玲奈「…………東條希。君は一体?」



『希 15 - 40 英玲奈』



希「さ、反撃開始やね♪」



38: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/12(木) 19:36:00.39 ID:6dGUkoUAO
――――――


海未「『死角』が消える。そう言っていましたね」

真姫「えぇ」

海未「そんなこと有り得るのですか?」

あんじゅ「…………そうねぇ」


あんじゅ「どんな相手でも『死角』は存在する」

あんじゅ「『死角』を突かれれば、相手は動くことすら出来ない」


あんじゅ「英玲奈はそう言ってたわ」

海未「ですが、実際に……」

真姫「えぇ、希は動けて、しかも、弾まない打球『ツバメ返し』でポイントを決めた」

ツバサ「…………」

海未「…………」

真姫「…………」

あんじゅ「もし、英玲奈が本当に東條さんの『死角』を突けていたなら……」



真姫「希はその『死角』を克服したってこと?」



――――――

39: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/12(木) 19:42:38.55 ID:6dGUkoUAO

英玲奈(『死角』を克服? そんなこと出来るわけがない)

英玲奈(だが、これはなんだ)



希「ふっ!」パァァァン

―― ギュォォォォ ――



英玲奈「くっ、また『ツバメ返し』か」

希「さて、あと一点やな♪」



『希 Ad - 40 英玲奈』



英玲奈「…………」



英玲奈(試合の中でも観察し、分析し、東條希の『死角』は明らかだ)

英玲奈(その上、それは突けている)

英玲奈(だが、彼女は反応する)

英玲奈(反応して返してくる)

英玲奈(…………ならば)

40: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/12(木) 20:01:59.40 ID:6dGUkoUAO
希「それじゃ次、行くな~」ターンターン

英玲奈「……あぁ、来い」グッ

希「……よっ」スッ



希「ほっ!」ポーン



「おぉ!! ここで希ちゃんの必殺技だ!!」
「不意打ち! さすが希ちゃんですっ」

「さすがね。でも、英玲奈は読んでるわ!」

英玲奈「っ」ダッ


英玲奈「はっ!!」パァァァン


「強烈なトップスピン!! 希!」

希「わかってるよ、えりち!」ユラユラ

英玲奈「…………」グッ



英玲奈(さぁ、来い)

英玲奈(それは誘い球だ。来る技さえ分かっていれば返すことは容易い)



希「ふっ!」パァァァン



英玲奈「っ、やはり来たな!」ダッ

英玲奈「これで――」グッ



―― キュゥゥゥ ――



「ああっ!?」
「ボールがホップしちゃいました!?」

「アウト、ね」

41: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/12(木) 20:03:53.45 ID:6dGUkoUAO

英玲奈「回転をかけすぎたようだな」

英玲奈「アウト。これで振り出しだ」

希「それは、どうやろね?」ニッ

英玲奈「なにを……?」



―― スッ ――
―― トンッ ――



「っ!? 英玲奈!! 後ろよっ!!」

英玲奈「――は?」



―― キュルキュルキュルキュル ――

―― パァァァン ――



英玲奈「なっ!?」バッ

英玲奈「ボールが、戻って……」



希「…………」パシッ

英玲奈「それは一体……なんなんだ……」



希「『三種の返し球』」

希「『白鯨』」

希「ウチのホントの必殺技よ♪」ニッ



『希 ① - ② 英玲奈』

45: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/13(金) 21:22:15.16 ID:QqPv3stdO
――――――


昔のお話。
ウチがまだ音乃木坂に来る前のお話。

転校ばかりを繰り返していたウチは、ある少女に出会った。

テニスが好きな女の子。

その子は、幼いながらも負けず嫌いで。
そうやね。
真姫ちゃんみたいな雰囲気かな?

とにかく、彼女とはそれなりに仲も良くなって、たまに遊ぶ程度の仲にはなっていた。
ただ、その関係は終わりを急に告げた。


その原因。
それは、ウチが彼女とテニスをしたから。


テニス経験者である彼女は、どうやらウチにテニスの腕を自慢したかったみたいで、自分と試合をしてみないかと提案してきた。
たぶん……嬉しかったんやろね。
ウチはそれに何も考えず頷いた。



結果は惨敗。
…………ウチじゃなくて、彼女の、ね。



何回やっても結果は同じ。
圧倒的だった。
ウチは彼女を圧倒してしまった。

初めてラケットを握るウチに負けた彼女。
彼女は涙を流しながらこう言ったんよ。



「化け物っ」



ってね。

46: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/13(金) 21:28:26.80 ID:QqPv3stdO

今でも思い出すよ。
彼女がウチを化け物だって言ったときの目。


恐怖、やった。


…………。

そのとき悟ったんよ。


ウチのテニスは相手に恐怖を植え付けるものなんだって。
ウチはテニスをしちゃダメなんだって。


…………。
だから、ウチはテニスなんてする気もなかった。
なにかの間違いでテニスをしたとしても、テキトーに流すつもりやったんよ。

前回だって、えりちには悪いけど、手を抜いていたし。
でも、えりちが倒れて……ウチは怖くなった……。

…………。

…………けれど。



けれど、今は――



――――――

47: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/13(金) 21:47:25.61 ID:QqPv3stdO
――――――


英玲奈「…………」ターンターン

希「…………」

英玲奈「…………大丈夫か?」

希「え? あぁ、大丈夫よ」ニッ

英玲奈「……そうか」スッ


英玲奈「ふっ!」パァァァン


希「……やっ!」パァァン

英玲奈「くっ、いいコースにっ!!」ダッ

英玲奈「だが、まだだ」グッ

英玲奈「はあっ!!」パァァァン

希「…………」スッ

希「――ほっ!」パァァン


―― キュゥゥゥ ――


英玲奈「っ、来たな、『白鯨』」ダッ

英玲奈「だが、何度もやられるわけないだろう」グッ


「英玲奈さんが飛びましたっ!!」

「上手いわ!! さすが英玲奈、ホップしきる前にスマッシュで叩くわけね」
「これなら東條さんも――」


英玲奈「はぁぁぁぁっ!!」バシィィィン


希「ふふっ」

英玲奈「っ、またっ」ゾワッ

希「ウチにスマッシュは効かんよ?」ダッ



希「――――」ポーーーン



英玲奈「スマッシュに直接――!?」



―― フワッ ――

―― トンッ ――



48: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/13(金) 21:59:30.29 ID:QqPv3stdO

希「――よし、上出来やね」ニッ


英玲奈「…………なっ」

英玲奈「スマッシュをダイレクトに返した、だと……」ボーゼン

希「だから、言ったやん? 『三種の返し球』だって」

英玲奈「……なるほどな。三種、か」クッ

希「そ。 これが三種類目。スマッシュを無効にして相手の真後ろにロブで返す技」



希「『羆落とし』」



「すごいよ! 希ちゃーーんっ!!」ピョンピョン
「す、すごいです! 希ちゃんっ! 英玲奈さんに勝っちゃうなんて!!」キラキラ
「うん♪ ことり、信じてました♪」

「……す、すごいにゃ、希ちゃん」チラッ

「ふふっ、さすが希。頼りになりますね」
「えぇ……ほんとにね」フフッ

「希っ……」ウルウル
「……ま、上出来じゃないの? 今は敵だけど」



希「…………」

英玲奈「……すごいな、君は」

希「ううん。ウチは別に」フルフル

英玲奈「……そうか。君達はと言った方が正解だろうな」

希「ふふふっ」



――――――


うん。
もう、大丈夫。

ウチは『本当』を見せてもいいんだ。

本当の自分を。
本当の気持ちを。
やりたいことを全部、見せてもいいんだ。


だって、みんな受け止めてくれるから。

私は、もう――


――――――



希「ひとりじゃない」ニコッ




 

50:   2016/05/13(金) 22:02:35.16 ID:QqPv3stdO
――――――



『希 ④ - ② 英玲奈』


『勝者 東條希』



――――――

51: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/13(金) 22:12:33.18 ID:QqPv3stdO
――――――



穂乃果「ほへぇ……」

希「えぇと、穂乃果ちゃん?」

穂乃果「はっ!!」

希「どうかしたん?」

穂乃果「ううん! ただ、すごい試合だったな~、って思っただけ!」

希「えっ、あ、そっかぁ」

穂乃果「うんっ!! すごかった! 希ちゃん、すごかったよっ!!」ズイッ

希「えっ、わっ!? ちょっと、穂乃果ちゃんっ!?///」アセアセ

穂乃果「あんな! 『三種の返し球』なんて、とにかくすごいよっ!!」ズイズイッ

希「なっ/// ち、ちかいってほのかちゃん……///」

穂乃果「だって! だってさっ!!」ズイズイズイッ



英玲奈「そこまでだ」グイッ



穂乃果「うわっ!? あ、英玲奈さん?」

英玲奈「彼女、困っているだろう?」

穂乃果「え? そうですか?」キョトン

希「え、あっ、うぅぅぅ///」

穂乃果「?」

英玲奈「なんというか……すごいな、彼女」

希「そ、そうやね、ほんと……///」

穂乃果「?」ンン?



英玲奈「とにかくだ。次はダブルス2だな」

希「そ、そうやね! 解説はこの3人でやっていくからよろしくなぁ」アセアセ

穂乃果「うん!」

希「えぇと、それで、次はこの2ペアに試合してもらうみたいやね」

52: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/13(金) 22:21:13.01 ID:QqPv3stdO
「いこっか♪」

「は、はいっ!」

「う~ん? そんなに固くなっちゃだめです!」

「…………う、うん」

「…………だいじょうぶ」

「え?」

「きっとわかってくれるよ」

「……っ、うん!」

「それじゃあ、いこっか♪ ね?」



ことり「花陽ちゃんっ♪」

花陽「がんばろうねっ、ことりちゃんっ」



「…………むぅ」

「あらあら♪ かわいいわねぇ」

「っ、かわいくなんか……ことりちゃんの方がかわいいにゃ……だから――」

「フフフ」

「っ、なにがおかしいっ、んですか……」

「ふふっ、いつもどおりでいいわよ?」

「っ、なにがおかしいのっ?」

「なんだか、ヤキモチ妬いてるみたいだったから♪」

「そんなことないにゃっ!!」

「あら? そう?」

「うんっ!」



あんじゅ「それじゃ、わたしとちゃんと仲よくしてね~?」

凛「っ、わかってるよっ!」



53: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/13(金) 22:22:31.64 ID:QqPv3stdO
――――――



ダブルス2



南ことり     星空凛
小泉花陽  vs  優木あんじゅ



試合開始



――――――

59: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/27(金) 20:25:33.54 ID:NszImNGMO
――――――



花陽「……はぁっ……」ガクッ

ことり「はなよちゃんっ!?」


「っ、はなよっ!!」

「真姫! だめよっ! 今、助けに行ったら花陽の努力が無駄になるわ」

「っ、じゃあ、どうしたらいいのよっ!!」

「…………今は耐えるしか」

「……っ」ギリッ



花陽「大丈夫、大丈夫だよ、ことりちゃん」

ことり「……でもぉ」チラッ



『いい調子だよ、凛ちゃん♪』



凛「うん!」

『このまま一気に終わらせよう♪』

凛「りょーかいにゃ!」

『……でも、本当に大丈夫?』

凛「うん! だって――」



凛「――凛とかよちんのペアは無敵だもん!」

花陽『うん。そうだね、凛ちゃん』ニコリ



――――――

60: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/27(金) 20:36:19.11 ID:NszImNGMO
―― 回想 ――

『1セットマッチ』
『サービス 花陽』



花陽「……すぅ、はぁぁ……」ターンターン

凛「…………」ジッ

あんじゅ「ふふっ、気楽にいきましょう♪」ニコリ

凛「……っ、わかってるにゃ」

花陽「っ」スッ



花陽「やっ」パァァン



あんじゅ「ふふっ」パァァン


「甘い球です!」
「ことりちゃ~~ん!」

ことり「うんっ」ダッ



ことり「えいっ」パァァン



凛「っ!?」



『ことぱな 15 - 0 りんあん』



花陽「ナイスボレーですっ」

ことり「うん♪」


凛「…………」ジッ

あんじゅ「あら、ごめんなさい?」

凛「……ううん、大丈夫」

61: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/27(金) 21:05:12.69 ID:NszImNGMO

ことり「花陽ちゃん、落ち着いてね?」

花陽「……うん」ターンターン

花陽「……」スッ



花陽「はあっ」パァァン



凛「っ」スッ

凛「にゃっ!!」パァァン


ことり「花陽ちゃんっ、おねがい」

花陽「うんっ」ダッ


花陽「あ、あれっ!?」ポーーーン


「花陽があんなに浅いロブを!?」
「らしくないミスね」
「……とにかく向こうのチャンスボールね」


凛「っ!!」ダッ

あんじゅ「まかせて?」ダッ

凛「え、うん?」

あんじゅ「っ」スッ


―― スカッ ――


凛「え……?」

あんじゅ「……あ、えぇと……ごめんなさい?」

凛「え、えっと……」



『ことぱな 30 - 0 りんあん』

62: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/27(金) 21:14:42.09 ID:NszImNGMO
――――――


希「えぇと、もしかして、優木さんって……?」

英玲奈「……あぁ、見ての通りだ」ハァ

穂乃果「? どういうこと?」

英玲奈「あんじゅはな――」



英玲奈「――運動が出来ないんだ」



穂乃果「ええっ!?」

希「えっと、でも、ダンスはあんなに上手かったやん?」

英玲奈「まぁ、あれは……相当練習を積んでいるからな。それに…………いや」

希「ん?」

英玲奈「いや、なんでもないさ」

希「なにか引っかかる感じやけど……?」

英玲奈「いや。本当に気にしなくてもいい。それに、たかが2週間で、あんじゅにそれなりを求めるのは酷と言うものだろう」

希「…………」

穂乃果「へぇぇ、そうなんだぁ。あんなに上手かったのになぁ……」ホェェ



英玲奈「…………」



――――――

63: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/27(金) 21:26:25.28 ID:NszImNGMO
花陽「……」スッ


花陽「やっ!」パァァン


あんじゅ「えいっ」ポーーーン

凛「にゃにゃ!? なんでロブぅぅ!?」

花陽「ことりちゃんっ!」

ことり「うんっ♪」ダッ



ことり「やぁぁぁぁ」フワッ



凛「あっ!?」ダッ

「凛が前に出ました!」
「ことりの『ダウンドロップ』をよんだのね」

ことり「ふふっ♪」



―― ポーーーン ――



凛「しまっ――!?」

あんじゅ「……あっ」



―― ピタッ ――



花陽「『ダウンロブ』! さすがことりちゃんですっ!」

ことり「えへへ♪」



『ことぱな 40 - 0 りんあん』

64: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/27(金) 21:37:18.08 ID:NszImNGMO
――――――


英玲奈「ふむ。あれが南ことりの『ダウンロブ』か」

穂乃果「うん! ふわっと飛んでふわっと打つって感じ!」

希「穂乃果ちゃん、それじゃ抽象的すぎん?」

穂乃果「?」

英玲奈「通常であれば、ロブに対してはスマッシュを打つものだが」



英玲奈「空中から打つドロップショット『ダウンドロップ』」

英玲奈「それと同じフォームから繰り出すロブ『ダウンロブ』」



英玲奈「どちらもボールが地面に着いた後、ほぼ静止する」

英玲奈「長い滞空時間と柔らかいタッチをもつ彼女ならではの技だな」


希「さ、さすがの分析力やね」

穂乃果「そういえば、ことりちゃんの技は凛ちゃんじゃ止められないよね?」

希「……あぁ、この間の試合もそうやったね。花陽ちゃんがいたから……」

穂乃果「うん」

英玲奈「だが、今は小泉花陽はいない。むしろ敵チームだからな」

穂乃果「!! じゃあ、この試合は――」



――――――

65: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/27(金) 21:46:31.18 ID:NszImNGMO



―― ピタッ ――



『ことぱな ① - 0 りんあん』



ことり「やったぁ♪」

花陽「う、うんっ! さすが、ことりちゃんですっ」

ことり「ううん! 花陽ちゃんが繋いでくれたから♪」

花陽「え、えっと……///」



凛「……ぅ」

あんじゅ「……凛さん?」

凛「え、あっ……」

あんじゅ「ごめんなさい……足を引っ張っちゃって……」シュン

凛「え? あ、ううんっ! 大丈夫にゃ!」

あんじゅ「……本当に?」

凛「うん! 凛に任せて!!」

あんじゅ「うん、ありがとう」ニコッ



あんじゅ「――凛、ちゃん♪』



凛「え?」

あんじゅ『どうかした?」

凛「え、ううん……なんでも……ないけど」

あんじゅ「…………』



あんじゅ「ふふふっ♪』



――――――

71: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 21:30:35.35 ID:JLsU9hNOO
『チェンジサービス』
『サービス あんじゅ』


あんじゅ「……いくわよぉ」ターンターン

花陽「……」スッ

あんじゅ「――」スッ



あんじゅ「えいっ」ペシッ



花陽「っ!」

ことり「花陽ちゃん!」

花陽「うんっ」ダッ


花陽(花陽のリターンはそこまで強くない。けど、この遅いサーブになら!)



花陽「やっ!」パァァン



凛「にゃ!?」ビクッ

あんじゅ「あ、あら……」



『ことぱな 15 - 0 りんあん』



「ストレートへ強打……ですか」

「へぇ、上手いわね。サイドの甘い星空さんの脇を抜いたわけね」
「凛! 油断するんじゃないわよっ!!」

「さすが花陽ちゃんやね。いいところを突く」
「うん! 頑張れぇ! 花陽ちゃん、ことりちゃーん!」



花陽「…………よしっ」グッ

凛「…………」ジッ


72: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 21:39:48.90 ID:JLsU9hNOO

あんじゅ「…………なるほど。そう来るのね」ターンターン

花陽「え?」

あんじゅ「ふふっ、なんでも――」スッ



あんじゅ「ないわ♪」ペシッ



花陽「っ、ことりちゃん」チラッ

ことり「うん♪ おそい、ですっ」グッ


ことり「えいっ!」パァァン


凛「またっ!?」

あんじゅ『――凛ちゃん!」

凛「うんっ、わかってる――」クルリン



凛「――にゃっ!!」パァァン



「出たわね。凛の『背面ボレー』」
「前回は最後まで温存していたようだけれど……」
「今回はそうも言ってられなくなったのでしょう。それに、ほら、見てください」



―― ポーーーン ――



ことり「っ、ごめん。花陽ちゃんっ」

花陽「ううん、でも、下がって!」グッ

凛「にゃぁぁぁぁぁ!!!」ピョーン

花陽「来ますっ!」



凛「『ダンクスマッシュ』!!」



―― バシィィィィィン ――



『ことぱな 15 - 15 りんあん』

73: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 21:56:23.87 ID:JLsU9hNOO
花陽「や、やっぱり、すごい……」

ことり「花陽ちゃんっ、切り替えよう?」

花陽「う、うんっ」チラッ


あんじゅ「ふふっ」ターンターン

凛「……かよちん」チラッ

あんじゅ「まだ……足りないみたい♪」スッ


花陽「……え?」



あんじゅ「ふふふっ♪」ペシッ



ことり「花陽ちゃん!」

花陽「っ、は、はいっ!」グッ



花陽「ぴゃあっ!」トンッ



凛「今度はドロップ!?」ダッ

あんじゅ「……ふふっ、まかせてぇ」スッ

凛「え!? ここは、凛でも――」


あんじゅ「やっ」ポーーーン


凛「ろ、ろぶ!? そんなことしたら!!」

ことり「……っ」フワッ

凛「や、やっぱり!! くるよっ!」


ことり(……なにか、引っかかります)

ことり(たしかに、花陽ちゃんのドロップは巧かったです。でも、凛ちゃんの運動神経なら拾えたはず、なのに……)

ことり(誘い球? …………でもっ)


ことり「――――っ」スッ



―― ポーーーン ――



凛「また『ダウンロブ』!? 取れないにゃ!!」

ことり(二人とも、前に出てきてるからこれで決まっちゃい――)



『凛ちゃん! そこから1歩で届くよ!』



74: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 22:04:53.90 ID:JLsU9hNOO



ことり「え?」



凛「っ、うんっ」ピョーン

凛「にゃぁぁぁ!!」



―― バシィィィィィン ――



『ことぱな 15 - 30 りんあん』



凛「お、おぉ!? 届いたよっ! やったにゃ!!」


ことり「え、さっきのって……?」クルッ

花陽「ううんっ! 花陽じゃない、です……」

ことり「……じゃ、じゃあ――」



『やっぱりすごいね、凛ちゃん♪』



凛「……え? あ、あれ?」

『どうかした?』

凛「えっと、凛……?」

『??』

凛「…………んんんん?」ゴシゴシ



あんじゅ「そんなに目を擦っちゃダメよぉ?」



凛「あ、あれ? 今、一瞬……?」

あんじゅ「……どうかしたのぉ?」

凛「ううん……」ナンデモナイニャ

あんじゅ「そう? ふふっ、ナイススマッシュだったわね♪」ナデナデ

凛「あ、うん……///」



あんじゅ「かわいい……』ニコリ




75: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 22:21:57.66 ID:JLsU9hNOO
あんじゅ「…………」ターンターン

ことり「…………」グッ


ことり(なんだろう……。イヤな感じ……)

ことり(それがなにかはわからないんだけど……)

ことり(でも――)



あんじゅ「えいっ」ペシッ



ことり(今、決めなきゃだめな気がするからっ)ダッ



ことり「えいっ!」パァァン



凛「にゃ!?」



「また凛の横を抜きました!」

「さすがことりね。花陽もそうだけど二人とも周りがよく見えているわ」


「……そうかな?」


「穂乃果?」

「何となくだけど、ことりちゃん……なにか焦ってるみたい……」



凛「うっ」



『凛ちゃん! 後ろに!』



凛「え?」

『はやくっ!!』

凛「っ、うんっ!」ダッ


ことり「え? 凛ちゃんが後ろに……」

花陽「――っ!?」



『ぴゃぁぁっ!!』パァァン



ことり「ああっ!?」



『ことぱな 15 - 40 りんあん』

76: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 22:26:18.10 ID:JLsU9hNOO

花陽「…………」ボーッ

ことり「……花陽、ちゃん?」

花陽「…………そ……」ボソッ

ことり「っ、花陽ちゃん」

花陽「…………うそだよ」

ことり「は、花陽ちゃん!」ユサユサ

花陽「っ!!」ハッ

ことり「……だいじょぶ……?」

花陽「あ、ごめんなさいっ」フルフル

ことり「……ね、ねぇ、花陽ちゃん、さっきのって、もしかして……」

花陽「あの動き……う、ううん……そんなの……ありえないよ……」



凛「すごいにゃ!!」

あんじゅ「ううん、凛ちゃんのおかげよ♪』

凛「っ! そんなことないよっ!」

あんじゅ『……ふふっ」

凛「? どうしたの?」

あんじゅ「ううん。ねぇ、凛ちゃん?』



『あと一点、二人でとろうね?』

凛「うん! がんばるにゃぁぁ!!」



77: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 22:43:07.03 ID:JLsU9hNOO

あんじゅ「……すぅ、ふぅ』ターンターン

ことり「花陽ちゃん、きりかえようっ」

花陽「…………」

ことり「花陽ちゃん?」

花陽「…………」


花陽(……ありえない。ありえないよ)

花陽(…………)

花陽(でも、あの動き。それに、あの指示は……)

花陽(……ううんっ! そんなの絶対――)



ことり「花陽ちゃん!!」

花陽「っ!」ハッ



あんじゅ「やっ!』パァァン



花陽「っ、やっ!」パァァン

ことり「花陽ちゃん、集中だよっ」

花陽「ご、ごめんっ」


花陽(そうです。ことりちゃんの言うとおり。今は目の前の試合に集中しなきゃ!)

花陽(大丈夫! 凛ちゃんの一番のペアは花陽だか――――)



『凛ちゃん!』ダッ

凛「うんっ!」ダッ



ことり「入れ替わって!?」


凛「にゃぁぁ!!」パァァァン


花陽「っ」グッ

ことり「花陽ちゃん!?」

花陽「大丈夫っ……ですっ!」パァァン


花陽(そう。大丈夫)

花陽(だって、花陽は――――)



『凛ちゃん、その打球アウトだよ』



凛「うん、わかったにゃ」


『アウト』


花陽「っ、あっ、え?」ゾクッ



『ことぱな ① - ① りんあん』

78: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 22:45:39.50 ID:JLsU9hNOO
花陽「…………あっ、え?」

ことり「え? なんで? あれ?」ゴシゴシ

花陽「……そんなっ、こんなことって……」ガクッ

ことり「っ、花陽ちゃんっ」ダキカカエ

花陽「っ、そんなぁ……」ガクガク



凛「えへへ! やっぱり凛たち無敵だね!」

『えへへ、そう……だといいな///』

凛「いいな、じゃなくて、そうに決まってるのっ!!」

『そ、そっかぁ///』

凛「よし! このちょーしで! ドンドン行くにゃぁぁぁ!!」

『う、うん! がんばろうね、凛ちゃん♪』

凛「もちろんにゃ――」




凛「――かよちんっ!!」

花陽『えへへ♪』




――――――

79: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/05/29(日) 23:07:21.63 ID:JLsU9hNOO
――――――


穂乃果「え? あれ?」ゴシゴシ

穂乃果「な、なんで花陽ちゃんが二人いるの?」

希「……あれは、いったい?」

英玲奈「…………」

希「説明してもらえる?」

英玲奈「…………」



英玲奈「たまに、人を真似るのが上手い人間がいるだろう?」

英玲奈「あんじゅはまさにそんな人間なんだ」



穂乃果「モノマネってこと?」

英玲奈「まぁ、平たく言えばそういうことになるな。ダンスの件もそうだが、あんじゅはツバサや私のダンスを見て、上達していったらしい」

希「でも、それだけじゃあ……」

英玲奈「あぁ、説明はつかないだろうな」

希「なら、どうやって?」

英玲奈「申し訳ないが、私も詳しいことは分からない」

英玲奈「ただ言えるのは、あんじゅの『それ』は私の観察と似ているということだ」

希「…………」

英玲奈「相手を観察し、分析する」

英玲奈「あんじゅの運動神経が悪いのは事実だが、最初の1ゲーム目は観察していたのもあったんだろう」

英玲奈「とにかく、それを利用して『死角』を突くのが私のテニスだが、あんじゅはそれを『真似る』」



英玲奈「癖や仕草、雰囲気や話し方。プレイスタイルや技。挙げ句には歩き方まで」

英玲奈「真似る」

英玲奈「その結果、姿すら変えたように見せることが出来る」



穂乃果「それで、あんな風に見えるんだ……」

希「今の花陽ちゃんの前で姿を真似て、凛ちゃんと組むなんて…………酷なことするんやね」

英玲奈「……本当にな」



英玲奈「『イリュージョン』」



英玲奈「あんじゅはそう呼んでいたが」

英玲奈「私に言わせれば、あれは性質の悪い『詐欺』だ」



――――――

87: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/09(木) 19:58:28.87 ID:5FkAkJ2bO
『チェンジサービス』
『サービス ことり』



ことり「…………」ターンターン



凛「一本集中にゃ! かよちん!」

花陽『うん! 凛ちゃん』



花陽「っ」

ことり「花陽ちゃん……」

花陽「……だ、だいじょうぶだよ」

ことり「…………うん」


ことり(『イリュージョン』)

ことり(たしかに見た目は花陽ちゃんに見えちゃってます)

ことり(……でもっ)


ことり「……っ、えいっ!」パァァァン


ことり(花陽ちゃんをコピーするなんて、そんなこと――)


花陽『えいっ!』パァァァン


凛「かよちん!」ダッ

花陽『うん』ダッ


ことり「っ、また凛ちゃんが後衛に――」

花陽「……あっ」フラッ

ことり「花陽ちゃん!?」


―― ポーン ――



花陽『凛ちゃん!』

凛「りょーかい!!」ピョーーーン



凛「『ダーーーンクスマッシュ』!!」バシィィィィン



『ことぱな 0 - 15 りんあん』

88: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/09(木) 20:04:41.86 ID:5FkAkJ2bO

花陽「ご、ごめんね、ことりちゃん……」シュン

ことり「ううん、次取り返そ?」

花陽「うん……」コクッ

ことり「…………」



ことり(……『イリュージョン』)

ことり(花陽ちゃんをコピーするなんて……ううん、それだけじゃない)

ことり(凛ちゃんの力を全部引き出してる感じ)

ことり(……まるで凛ちゃんと花陽ちゃんを相手にしてるみたい)



花陽『凛ちゃん♪』

凛「うん!」

花陽『えへへ』

凛「よーしっ! 次にゃ!!」

89: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/09(木) 20:13:43.17 ID:5FkAkJ2bO

ことり「……」ターンターン

凛「来るにゃ!!」グッ

花陽『うん!』

ことり「えいっ」スッ


ことり「やあっ」パァァァン


凛「っ、にゃ!!」パァァン


「上手いわね、凛さん」

「ことりと花陽のちょうど真ん中にリターン……本来ならば、フォア側が返すものだけれど」

ことり(ことりたちの間に!?)

ことり「花陽ちゃんっ」

花陽「う、うん」ダッ


花陽「え、えい!」パァァン


「ふふふっ』ダッ

ことり「前に!?」



花陽『やっ』ポンッ

―― トントン ――



ことり「!?」

花陽「…………っ」


ことり(ことりも花陽ちゃんも凛ちゃんのリターンに対応が遅れたところを狙われて……)

ことり(この視野の広さ……本当に花陽ちゃんみたい……)



『ことぱな 0 - 30 りんあん』

90: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/09(木) 20:17:53.40 ID:5FkAkJ2bO

凛「次はよろしく、かよちん」

花陽『任せて、凛ちゃん』


ことり「……」ターンターン

花陽「…………」

ことり「花陽ちゃ――」

花陽「――だいじょぶ、ですっ」

ことり「っ、うん……」スッ



ことり「えい!」パァァン



花陽『やっ』ポンッ



ことり「え……?」

花陽「……ドロップショット?」



―― トンットンッ ――



『ことぱな 0 - 40 りんあん』

91: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/09(木) 20:25:10.70 ID:5FkAkJ2bO
――――――



希「……完全に凛ちゃんたちのペースやね」

英玲奈「あぁ」

穂乃果「むむむ」

希「……穂乃果ちゃん?」

穂乃果「なんだか、変な感じ……モヤモヤするぅぅ!」ジタバタ

希「ちょっ!? 暴れんといてっ」アセアセ

穂乃果「だって! ~~っ、だってだよ!!」バンッ



穂乃果「凛ちゃんと花陽ちゃんのダブルスじゃないのに凛ちゃんと花陽ちゃんのダブルスみたいなんだもん!」



希「うん、まぁ……」

英玲奈「つまり、どういうことだ?」

穂乃果「なんかイヤだ!!」

英玲奈「なるほど……」

希「それは……たぶん花陽ちゃんが一番思ってるやろね」

英玲奈「だが、イヤだと言うだけではなにも変わらない。現に押しているのはあんじゅたちで、小泉花陽の精神はそのプレイの影響で……」

希「そう、やね」

穂乃果「…………」



――――――

92: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/09(木) 20:35:13.47 ID:5FkAkJ2bO
ことり「…………」ターンターン



ことり(どうすればいいんだろう?)

ことり(今のままじゃ負けちゃう)

ことり(ううん、それだけじゃなくて……なんだかもっと大切なものがなくなっちゃうような……)

ことり(……ことりはなにをすれば……なにをしたら……)チラッ


花陽「…………」


ことり(花陽ちゃん……あんなに暗いかおしてる……)

ことり(…………そうだ)

ことり(そう、です。ことりはあの娘の……あの娘たちの先輩なんだもん)

ことり(ことりが、しっかりしなきゃ!)


ことり「っ」スッ



ことり「えいっ!!」パァァン



凛「甘い、よっ!!」パァァン

凛「って、ありゃ?」


「大振りすぎね、アウトだわ」

「って、花陽!!」
「避けてっ!!」


花陽「……え?」

ことり「っ、花陽ちゃ――」



―― パァァン ――




93: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/09(木) 20:47:11.75 ID:5FkAkJ2bO



花陽「っ!!」ギュッ



花陽「…………」

花陽「…………」

花陽「あ、あれ……?」



ことり「いたたた……腕ビリビリしてるよぉ」



花陽「ことり、ちゃん……?」

ことり「あはは……だいじょぶ? 花陽ちゃん?」

花陽「……え、え? なんで?」

ことり「……大丈夫そうだね。よかったぁぁ」

花陽「ことりちゃんこそ……」

ことり「えっと、ことりは大丈夫だよ? とっさだったけどラケットで受けたから。ちょっとだけ腕はしびれてるけどね」アハハ

花陽「っ、ごめ――」



ことり「謝っちゃ、ダメだよ?」



花陽「……っ」グッ

ことり「ことりは当たり前のことをしただけだもん」

花陽「当たり前のこと……?」

ことり「だって、ことりは――」



ことり「――花陽ちゃんのペアだから♪」ニコリ



花陽「あっ……」

94: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/09(木) 20:52:58.52 ID:5FkAkJ2bO

ことり「今だけのペアだけどね」エヘヘ

花陽「そんなことっ!!」

ことり「あるよ」

ことり「だって、花陽ちゃんが一番力を出せるのは凛ちゃんだって分かってるから」ニコリ

花陽「…………っ」

ことり「ふふふっ、二人はμ'sのゴールデンペアだもんね」

花陽「う、うんっ///」

ことり「ふふふっ……だからね?」



ことり「今だけは全力で花陽ちゃんを支えるよ」

ことり「支えて凛ちゃんと戦うよ」

ことり「二人の絆を取り戻すために」



花陽「…………」

ことり「それで、いい、かな?」



花陽「お願いっ、しますっ!!」



ことり「おまかせください♪」


ことり「あ、そうそう! それにね?」

花陽「え?」



ことり「凛ちゃんが本気を出せるのもやっぱり花陽ちゃんだけだと思うよ」フフッ



『ことぱな ① - ② りんあん』

95: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/09(木) 21:08:31.90 ID:5FkAkJ2bO
――――――



希「花陽ちゃんの目に光が戻ったね」

英玲奈「どうやらそのようだな。これは一筋縄にはいかなそうだ」フフ

穂乃果「さすが、ことりちゃん!! 頼りになるよっ!!」

希「うん。それに『支える』っていうのがことりちゃんらしいやん♪」

穂乃果「うんっ!! うぉぉぉぉ!! 頑張れ! ことりちゃん!! 花陽ちゃん!!」

英玲奈「…………」



英玲奈(あんじゅの『イリュージョン』)

英玲奈(先ほどの一件で少しだけ解れたようだが……)

英玲奈(どうにか誤魔化したようだな)

英玲奈(星空凛の精神状態も多少乱れたようだったが今は戻っている)

英玲奈(……水を差すようで悪いが、このままなら勝つのは星空凛とあんじゅのダブルスだろう)

英玲奈(南ことりも言っていたが、小泉花陽のポテンシャルを活かせるのは星空凛で、逆もまた然りだ)

英玲奈(ならば、南ことりたちが勝てる要素はほぼないと言っても過言ではない)

英玲奈(あんじゅの『イリュージョン』と小泉花陽)



英玲奈(偽物か本物か)



英玲奈(唯一の差異はそれだけで)

英玲奈(もし活路を見出だすとしたらそれしかないだろう)

英玲奈(偽物ではできなくて本物にしかできないこと。それは――)



英玲奈「ダブルスの奇跡、か」ボソッ



英玲奈(いや。二人が敵である今ではあり得ない話だ)フッ



――――――

99: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/13(月) 20:40:39.69 ID:K6EwvS51O
『チェンジサービス』
『サービス 凛』


花陽『切り替えていこう、凛ちゃん』

凛「う、うん……」ターンターン

花陽『凛ちゃん?』

凛「っ、ううん……大丈夫」

花陽『…………」

凛「……よっ!」スッ



凛「にゃぁっ!!」パァァン



ことり「花陽ちゃん!」

花陽「うんっ! 分かって――るっ!」パァァン

花陽『浅い! 凛ちゃん!』

凛「りょーかいにゃ!」ダッ



凛「えい!」パァァン

凛「――よしっ」ダッ



「凛がさらに前に出ました!」
「なるほど。凛を前に誘い出して、向こうにあのフォーメーション……『花陽の領域』を使わせないってわけね」

ことり「……」チラッ

花陽「!」コクリ



―― ポーン ――



花陽『……え?』

「ええ!? ここでロブ!?」
「しかも、あのロブ浅いわ!? 凛の絶好球よ!」

凛「っ!!」ピョーーーン



凛「『ダーーーンクスマッシュ』!!」バシィィィィン



『ことぱな 0 - 15 りんあん』

100: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/13(月) 20:49:44.77 ID:K6EwvS51O

花陽「…………」チラッ

ことり「…………」ニコッ

花陽「…………」コクリ

凛「よーしっ! どんどんいくにゃ!!」ターンターン

花陽『……うん。凛ちゃんがんばって!』

凛「うん!」スッ



凛「よっ!!」パァァァン



ことり「っ、えいっ」パァァン

花陽『……今度は、させませんっ!!』パァァン

花陽『――っ!!』ダッ

「今度は、花陽ちゃんが前に出た!!」
「穂乃果? あれは花陽じゃなくて……」


あんじゅ(さっきのプレイはたしかに変だったけれど……)

あんじゅ(とにかく流れはこっちに向いてるわぁ♪ このまま一気に――)



―― ポーン ――



花陽『……え?』

凛「にゃぁぁぁぁ!!!」ピョーーーーン



凛「やぁぁぁっ!!!!」バシィィィィン



『ことぱな 0 - 30 りんあん』



凛「ぜっこーちょーにゃぁ!!」ピョンピョン

花陽『ま、またロブ……?』

花陽「…………」



あんじゅ(いったいなにを……?)

101: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/13(月) 21:02:10.69 ID:K6EwvS51O

花陽『…………』


あんじゅ(なにかおかしいわぁ)

あんじゅ(ミスを誘ったショットでもないのに、ロブを打ってくるなんて)

あんじゅ(……わからない、けれど)


凛「~~♪」ターンターン

花陽『凛ちゃん、気を引きしめ――』

凛「ほっ」スッ



凛「やっ!!」パァァァン



花陽『……凛ちゃん?』

花陽「っ、重っ――」グッ

花陽「ピャァァ!!」ベシッ

花陽『当たり損ないっ!?』


あんじゅ(……いえ、でもこれはネット際に落ちる……ここはわたしが――)



凛「凛に任せて!!」ダッ

花陽『え!?』



凛「ぜっこぉ――」クルリン

凛「――ちょー!!!」パァァァン



「あの球に『背面ボレー』!?」
「なんて強引な……」

「流石にこれは予想外ね。星空さんのポテンシャルはおそろしいわ」

花陽『…………』


あんじゅ(たしかに、そうね)

あんじゅ(一瞬わたしの声を無視したのが気になった)

あんじゅ(けど、彼女の能力の高さなら問題は――)

102: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/13(月) 21:03:11.55 ID:K6EwvS51O



花陽「っ、えいっ」ポンッ



103: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/13(月) 21:14:43.65 ID:K6EwvS51O
花陽『な!?』

「凛の打った先に花陽がいます!」
「っ、花陽は凛のあのプレイを読んでいたっていうの!?」

花陽『っ』


あんじゅ(なんで!? 彼女の『背面ボレー』はペアであるわたしだって予測していなかったのに!)

あんじゅ(なんで、あなたが――)


花陽「っ、重っ」ヨロッ

ことり「花陽ちゃんっ」

花陽「だ、だいじょうぶ、ですっ」

花陽「それより――くるよ!!」グッ

花陽『っ、凛ちゃん! 一旦立て直そう!』



凛「~~っ!!」ニカッ



花陽『え……?』

凛「次いくにゃ!!」バッ

「なっ!? さっき前に出たばかりだと言うのに、今度は横に跳びました!」

「なるほど。あのバネ、さすが星空さんと言ったところかしら」



凛「えいにゃ!!」パァァァン



花陽『今度こそっ』

花陽「まだだよっ!!」グッ



花陽「ぴゃぁぁぁぁっっ!!!」パァァン

―― ベチッ ――



凛「っ、ふふっ」クルリン

凛「よっ!!」バシィィィィン



『ことぱな 0 - 40 りんあん』

104: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/13(月) 21:28:22.95 ID:K6EwvS51O
――――――


穂乃果「えっと? なにが起こったの?」ボヘー

英玲奈「……ふむ」



英玲奈「ネット際に落ちた小泉花陽のリターンに対して星空凛が『背面ボレー』を打った」

希「そのあと、それを読んでた花陽ちゃんがドロップで打ち返したんやね」

英玲奈「だが、星空は持ち前の反射神経で横へ跳びボレーで角度をつけて打ち返し……」

希「花陽ちゃんが返した球はコードボールになって」

英玲奈「最後は倒れ込みながらの『背面ボレー』で星空が決めた」



穂乃果「ほ、ほぇぇぇ……」アゼン

希「……まぁ、そうなる穂乃果ちゃんの気持ちもわからんではないよ」

英玲奈「あぁ。私も正直驚いている。あんなハイレベルなプレーは今の星空凛や小泉花陽に出来るわけがない」

希「まるで、次の打球を予想してたみたいやった……」

英玲奈「…………次の打球を予想、か」

穂乃果「? どうしたの? 英玲奈さん?」

英玲奈「…………まさか、あの二人……」

穂乃果「英玲奈さん?」



英玲奈「踏み込んでいるというのか……?」

英玲奈「……『――』に」



――――――

105: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/13(月) 21:35:43.27 ID:K6EwvS51O

花陽『……凛ちゃん』

凛「~~♪」

花陽『っ、凛ちゃん!!』

凛「っ、あっ、ご、ごめん……なに?」

花陽『ちょっとだけ勝手、すぎるよ……』

凛「あ、ごめんにゃ……なんだかね? すごく楽しくなっちゃって……」

花陽『楽しく……?』

凛「うん……。なんだろう? 凛が打ちたいときに打ちたいところにあるって感じで……」

花陽『…………』

凛「うん、ちゃんとかよちんの指示に従うね!」

花陽『……うん』


あんじゅ(凛さんのテンションがなんだかおかしいわ)

あんじゅ(ハイになりすぎてる?)

あんじゅ(いいえ、これはなにか……)

あんじゅ(…………)

あんじゅ(次で流れをかえましょう……それで……)

106: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/13(月) 21:43:34.42 ID:K6EwvS51O

花陽「ふぅ、はぁっ……」

ことり「……花陽ちゃん」

花陽「だいじょぶ、です……」

ことり「……うん」

花陽「っ、もうちょっと……もうちょっとでなにかつかめそうなの……」

ことり「わかった」コクリ

花陽「……たぶんあんじゅさんは次から動くと思います。だから、ことりちゃんもすごく負担かけちゃうかも……」

ことり「ことりは花陽ちゃんを支えるって決めたから♪ だから、だいじょうぶ、です♪」フフフ

花陽「ご、ごめんね、ことりちゃん。花陽のわがままに付き合ってくれて」

ことり「ううん。ことりにできるのはこれくらいだから。でも、ごめんじゃない方がいいなぁ?」

花陽「…………あっ」

ことり「…………ふふっ」



花陽「……ありがとう」エヘヘ

ことり「ううん。がんばって」ニコリ



107: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/13(月) 22:07:00.68 ID:K6EwvS51O
凛「……よし」ターンターン

花陽『凛ちゃん』

凛「うん! ……っ」スッ



凛「にゃっ!!」パァァン



ことり「っ、やぁっ」パァァン

「凛の球威、上がってない?」
「……えぇ。たしかに今までの凛のサーブとはなにかが……」

花陽『ぴゃっ!』パァァン


花陽『凛ちゃん!』ダッ

凛「うん!」ダッ


「凛がまた後ろに!」
「『花陽の領域』よ!」

花陽「っ、えいっ!!」パァァン



花陽『……これで!』ダッ

ことり「――させません」バッ



花陽『っ、ブラインドに!?』

ことり「…………」ジリッ

花陽『っ、なっ……」



凛「ん~~、にゃっ!!」パァァン


花陽「やあっ!」パァァン


凛「! ここにゃ!!」バシィィィィン


花陽「まだ、だもんっ!」ベシッ


凛「こっちもまだまだにゃ!!」パァァァン

108: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/13(月) 22:14:31.69 ID:K6EwvS51O

花陽『……っ』バッ

ことり「…………」バッ

花陽『…………』スッ

ことり「…………」ジリッ

花陽『いったい……」

ことり「…………」



あんじゅ「なんの真似、なのかしらぁ?」



ことり「なんの真似って……」

あんじゅ「……徹底的にマークしてわたしを自由にさせないつもり~?」

ことり「……う~ん、それもあるけどぉ……ちょっとだけ違います」

あんじゅ「じゃあ?」

ことり「……ただ、二人の邪魔をしてほしくないんです」

あんじゅ「じゃま? いったいなんの……?」

ことり「いま、花陽ちゃんは凛ちゃんを呼び戻してるところだから」

ことり「……だから」



―― バシィィィィン ――



あんじゅ「っ!!」バッ



『ことぱな ① - ③ りんあん』

109: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/13(月) 22:15:40.52 ID:K6EwvS51O

ことり「あと1ゲーム……」

あんじゅ「ふふっ、このゲームはわたしの勝ちだね』

ことり「……それはまだわからないです」

花陽『……でも、あと1ゲームで凛ちゃんと花陽に勝てるの? ほら、ことりちゃんのペアだってあんなに消耗してるよ?』

ことり「うん。でも、見て?」



花陽「はぁっ、はぁ……」

凛「はぁっ、はぁ……」



花陽『え? 凛ちゃんもあんなに疲れて……?』

ことり「うん。花陽ちゃんと同じくらい……ううん、たぶんだけど……」



凛「……はあっ、ふぅ」

花陽「……はあっ、ふぅ」

凛「…………すぅぅ」

花陽「…………すぅぅ」



りんぱな「「ふふっ」」ニコリ




―― ドクンッ ――




――――――

117: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 17:47:25.74 ID:rb6ayl1SO
『チェンジサービス』
『サービス 花陽』



花陽「――――」ターンターン

花陽『…………』


あんじゅ(……雰囲気が変わった?)

あんじゅ(『イリュージョン』で真似た彼女とはなにかがちがうわ……)

あんじゅ(それに、この娘からも彼女と同じようなかんじが……)チラッ


凛「――――」

花陽「――――」スッ

あんじゅ(いけない、今は集中して――)



花陽「――――」

―― パァァァァン ――



花陽『なっ!?」

花陽「……なんで……』

あんじゅ「球速が上がって……?」


花陽「――――」



『ことぱな 15 - 0 りんあん』

118: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 18:02:15.28 ID:rb6ayl1SO
花陽「――――」ターンターン

凛「――――」グッ


あんじゅ「…………」ボーゼン

あんじゅ(コースもスピードも違う、想像していたのとぜんぜん)

あんじゅ(彼女のことは『イリュージョン』のために観察していたはずだったのに)

あんじゅ(まるで、まるで、別人だわぁ……)


ことり「……『イリュージョン』、崩れてますよ?」


あんじゅ「っ」スッ

花陽「凛ちゃん! 気を付けて!』

凛「――――」

花陽『あれ? え? 凛ちゃん?』


花陽「――――」パァァァン


凛「――」パァァン

「コースギリギリのいいサーブです!」
「けど、凛も難なく返したわね」
「…………」

花陽「――――」グッ

凛「――――」ダッ

「凛が動いたわ!!」
「でも、花陽が打つ前よ!?」



花陽「――――」ポーーーン


「あぁ、やっぱり、ロブを打たれて――」

花陽『っ、凛ちゃん! 下がって!』

凛「――――」グッ

花陽『――え?』



―― ピョーーーーン ――



「なっ!? 凛が跳びました!!」
「届くわ!!」

「……あのタイミング……まさか、花陽さんのロブに合わせたの?」



凛「――――――――」バシィィィィン



花陽『決まっ――』

ことり「まだだよ♪」

花陽『え?』


花陽「――――」バッ

―― トンッ ――



『ことぱな 30 - 0 りんあん』

119: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 18:08:11.70 ID:rb6ayl1SO



花陽「――――」パァァァン

凛「――」パァァン



花陽「……いったい』

あんじゅ「……いったいなんなの?」


ことり「……『イリュージョン』また崩れてますよ?」


あんじゅ「っ」スッ

あんじゅ「………………え?」

あんじゅ「な、なんで?」

ことり「もうなれないみたいですね」

あんじゅ「っ、いったい彼女はなにをしたの? まさかわたしの『イリュージョン』を封じるなにかをしたっていうのかしら……?」

ことり「……花陽ちゃんはなにもしてません」

あんじゅ「けれど――」

ことり「ただ花陽ちゃんは――」



ことり「――凛ちゃんを『ゾーン』に入らせたんです♪」



――――――

120: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 18:24:53.68 ID:rb6ayl1SO
――――――



穂乃果「ぞーん……ってなに?」


希「『ゾーン』」

希「簡単に言えば120%の力が出せる状態のことやね」

希「いいプレイや最高のテンションで試合を進めるうちに、その試合に没頭して極度の集中状態になる」

希「それが『ゾーン』よ」


英玲奈「周りが遅く見えたり、視覚や聴覚が機敏になったりすることもあるようだな」

穂乃果「ほぇぇぇ? えっと、それって希ちゃんや英玲奈さんも入れるの?」

英玲奈「……いや、無理だな」

希「意識して入れたら苦労せんよ」アハハ

穂乃果「そ、そっか……でも……」チラッ



希「うん。花陽ちゃんは意識的に、しかも他人である凛ちゃんを『ゾーン』に入れた」



英玲奈「星空凛の打ちやすい場所、得意なコースへわざとボールを配球することで調子を上げていったのだろう」

穂乃果「す、すごい!!」

英玲奈「彼女が相手のことを熟知していなくては出来ない所業だ」

希「そやね。それに……凛ちゃんと花陽ちゃんが対戦してたから出来たこと、なんやろね」

穂乃果「……うん。すごいや」

121: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 18:33:41.88 ID:rb6ayl1SO
穂乃果「…………」

穂乃果「……ん? あれ?」

希「ん? どうかしたん?」

穂乃果「う、うん。凛ちゃんの動きがよくなったのは『ゾーン』なんだって分かったんだけど……」

穂乃果「じゃあ、花陽ちゃんは?」

穂乃果「花陽ちゃんも『ゾーン』に入ってるよね!?」

希「そうやね」

穂乃果「それに、なんか……うーん? うまく説明出来ないんだけど……」ウムム



英玲奈「二人ともお互いが打つ前に動いている」

英玲奈「そう言いたいのではないか?」



穂乃果「!! そう! そうだよ!!」

穂乃果「二人とも、お互いの動きが全部わかってるみたいだよ!!」

穂乃果「あれも『ゾーン』なの!?」

希「いや、あれはたぶん……」チラッ

英玲奈「あぁ」コクリ



英玲奈「絶体絶命の危機に陥ったダブルスが至ることができるという到達点」

英玲奈「お互いの心が繋がり、お互いの心を通わせるというダブルスの奇跡」



英玲奈「『同調』」シンクロ



――――――

122: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 18:43:16.31 ID:rb6ayl1SO

あんじゅ「『同調』」

あんじゅ「それで、自分も強制的に『ゾーン』に引き上げたっていうの……?」

ことり「うん」

あんじゅ「そんな……まるで、バクチね。まず『ゾーン』に入らせることができるかも、『同調』できるかもわからないのに……」

ことり「…………」

あんじゅ「貴女はそんなものに賭けたの?」

ことり「……ううん。ことりは信じてたから」

あんじゅ「……なにを」



ことり「花陽ちゃんと凛ちゃんの――」

ことり「――二人の絆を信じてました♪」ニコッ



花陽「――――」トンッ

凛「――――――」ダッ

―― ポーーーン ――



花陽「――――」バシィィン



『ことぱな 40 - 0 りんあん』

123: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 18:52:33.77 ID:rb6ayl1SO
――――――


凛「なんで!?」

花陽「……ごめんね、凛ちゃん」

凛「ごめんねじゃないよっ!! なんで、そんな……凛とダブルス組まないなんて言うの!?」

花陽「…………」

凛「っ、下向いてちゃわかんないよっ!!」

花陽「……ごめん」

凛「凛と、かよちんのダブルスはさいきょーなのにっ!!」

花陽「ごめんね、凛ちゃん……はなよ……」

凛「だからっ! ごめんね、じゃないにゃ!!」

花陽「……あ、あのね……凛ちゃん……」

凛「もう知らないっ!!」

花陽「え、え……?」

凛「ダブルスかいしょーだよ!! 凛はA-RISEチーム行く!!」

花陽「ま、まって、凛ちゃ――」


――――――

124: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 19:06:40.03 ID:rb6ayl1SO
――――――


「……ん、あ、あれ?」ムクッ

「あ、凛ちゃん、起きた?」

「かよちん? ……あれ? ここは? 凛たち、テニスの試合してたはずじゃ……?」

「えっと……花陽もよくわかんないや。気づいたらここにいたから」アハハ

「……そっか」

「……うん」

「…………」

「…………」

「…………ねぇ」

「…………」

「ねぇ、かよちん」

「なに? 凛ちゃん?」

「……なんで、凛とダブルスやらないなんていったの?」

「…………最初のとき?」

「うん。A-RISE相手に凛とかよちんのダブルスで戦いたかったのに……」

「…………」

「かよちん!!」

「……ほんとはね? 花陽も凛ちゃんとダブルスを組みたかったの」

「じゃあ!!」

「…………でもね」



「凛ちゃんに頼りきりじゃダメなんだって」

「今のままじゃ花陽たちは『さいきょー』になれないから」



125: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 19:10:54.48 ID:rb6ayl1SO

「そんなこと……」

「ううん。あるよ。きっと今のままの花陽じゃ足を引っ張っちゃう」

「でも!!」

「……凛ちゃん。花陽ね、自信がないんだ。ビビりんぼで運動だってそんなに得意じゃないから」

「……かよちん」

「けど、みんなが助けてくれたから。ことりちゃんからは勇気をもらって。にこちゃんは凛ちゃんと戦う機会を作ってくれた」

「にゃ!? じゃあ、にこちゃんがA-RISEチームに来たのって!?」

「うん。花陽と凛ちゃんが試合できるようにするため」

「『A-RISEと一緒にテニスしたいにこ♪』……てかんじかと思ってたにゃ……」

「あはは……」


「……すぅ、はぁ……よし」

「……だからね、凛ちゃん」



「花陽は証明するよ」

「花陽は凛ちゃんと対等なんだって。凛ちゃんとも互角に戦えるくらいに強いんだって」



――――――




凛「――――――」バシィィィィン


「今度こそ決まったわ!」
「っ、まだです! 花陽は凛の動きを読み切っています!」



花陽「――――――」ポンッ

―― トンッ ――



『ことぱな ② - ③ りんあん』

126: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 19:22:43.38 ID:rb6ayl1SO
『チェンジサービス』
『サービス あんじゅ』


あんじゅ「……はぁ」ターンターン

凛「――――」

あんじゅ「なかなかに悲しい気分ね」スッ


あんじゅ「蚊帳の外ってかんじっ」パァァン


花陽「――――」パァァン

凛「――――」パァァァン

花陽「――――」ポーーーン

凛「――――――」バシィィィィン



あんじゅ「完全にフルハウス……」ハァ

ことり「ですね♪」

あんじゅ「こうなること、予想していたの?」

ことり「なんとなく、かな」

あんじゅ「……すごいわね」

ことり「……ことりは誰かを支えることしかできませんから」フフッ

あんじゅ「それができたから十分ってかんじかしらぁ?」

ことり「はい♪」ニコッ

あんじゅ「……そう。でも、やっぱり悲しいわねぇ。蚊帳の外なうえに、こっちのチームも二連敗よぉ」

ことり「…………」

あんじゅ「? どうかしたの?」

ことり「二連敗、はないと思いますよ?」

あんじゅ「……え?」

ことり「たぶん、だけど――」



ことり「――この試合は、凛ちゃんの勝ちです」



――――――

127: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 19:37:59.66 ID:rb6ayl1SO
――――――



「~~っ」

「……凛ちゃん?」



「~~にゃぁぁぁぁぁっっ!!」



「ぴゃぁぁぁ!?」ビクッ

「あ、ごめんにゃ!」

「び、びっくりしたよぉ……」

「えへへぇ、ごめんね? つい嬉しくなっちゃって!」

「嬉しく……?」

「うん!」



「だって、初めてだから!」

「かよちんが凛に勝つなんて言ってくれたの!」



「かよちん、いっつも凛を大切にしてくれて。凛のこと第一に考えてくれて」

「かよちんが凛とぶつかることなんてなかった。ケンカしてもすぐに謝ってくれたし」

「でも、凛はね、かよちんともっとぶつかってみたかったの」


「凛はかよちんと親友で! パートナーで! ライバルになりたいの!!」



「親友で、パートナーで、ライバル……」

「うん! それ、ぜーーんぶ!」

「……ふふっ、欲張りだね?」

「うん! よくばりにゃ!」

「…………」

「…………」

「ねぇ、かよちん?」

「うん、なに? 凛ちゃん?」

「ぶつかるよ」

「うん」



「凛も本気でかよちんに勝つからね!」

「うん! 花陽も負けないよ!」



――――――

128: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 19:48:11.62 ID:rb6ayl1SO



―― パァァァァン ――



「!? 凛の球威が上がりました!」
「花陽も対応はしてるわ。来るところが分かっているから先回りも出来てる。でも……」


花陽「――――」グググッ

花陽「――――」パァァン


あんじゅ「……球威に押されてる?」

ことり「……うん。花陽ちゃんも『ゾーン』に入ってるけど、それは凛ちゃんだって同じ。むしろ凛ちゃんの方が先に入ってるから使い慣れるのも早いんです」

あんじゅ「……そう。なら――」



凛「――――――」パァァァァン



花陽「――」グググッ

―― カランッ ――


「ラケットを落としたわね」

「…………」
「これで、マッチポイント、ですか」



『ことぱな 15 - 40 りんあん』
『マッチポイント りんあん』

129: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 20:33:06.92 ID:rb6ayl1SO

あんじゅ「…………」ターンターン

凛「――――」

あんじゅ「最後、よろしくね、凛さん」スッ

凛「――――」コクリ



あんじゅ「っ、やっ!」パァァン



花陽「――――」グッ

―― パァァァァン ――



「ここで、凛への前衛アタック!?」
「意表を突いたのですね!」

「けれど、それも共有済みなのよね?」


凛「――――」クルリン

凛「――――――」パァァァァン


花陽「――――」ダッ

花陽「――」トンッ


「今度はドロップ!! さすが花陽だわ!」
「けど、凛も動いてるわ!」
「追い付いて――」


凛「――――」パァァン


花陽「――――」スッ

―― ポーーーン ――



「トップスピンをかけたロブ、これはいくら凛でも……」



凛「――――」グッ

―― ピョーーーーン ――



「凛が跳んだわ」
「あのロブに届くというのですか!!」

あんじゅ「っ、凛さんっ!!」

130: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 20:36:36.55 ID:rb6ayl1SO
――――――



「かよちん!!」

「凛ちゃん!」

「いくよっ!!」

「『ダンクスマッシュ』だよね」

「うん! 全力で行くにゃ!!!」

「うん。花陽も絶対返すよ」



「にゃぁぁぁぁっ!!!」

「っ!!!」



――――――

131: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 20:48:18.11 ID:rb6ayl1SO



凛「にゃ……」ベシッ


―― フワッ ――

―― トンッ ――



花陽「――――え、あれ?」

ことり「え、ここで、ドロップショット……?」

あんじゅ「あ、時間切れ?」



凛「う、にゃぁぁ……」フラッ

あんじゅ「!?」

ことり「凛ちゃんっ」

花陽「っ、凛ちゃん!?」ダッ


―― ダキッ ――


花陽「は、はぁぁ、よ、よかったぁ……倒れちゃうかと思ったよぉ……」

凛「あはは……ごめんにゃ、かよちん……」

花陽「ううん。凛ちゃんが無事ならそれで……」

凛「…………全力でぶつかりたかったのに……時間切れなんて……」ウウウ

花陽「仕方ないよ」

花陽「また今度、やろう?」

凛「…………」

花陽「……凛ちゃん?」

凛「……イヤだ」

花陽「ふぇっ!? り、りんちゃん!?」

凛「やっぱり、ぶつかるのもいいけど……次は……」

花陽「……あ」

凛「……ね、かよちん?」

凛「またいつか、凛と戦ってほしいにゃ。……でも、今度は――」

花陽「……うん」ニコッ



花陽「今度は、『一緒に』、ね♪」

凛「っ、うんっ!!」



132: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 20:54:23.93 ID:rb6ayl1SO
――――――



『ことぱな ② - ④ りんあん』


『勝者 星空凛・優木あんじゅ』



――――――

133: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 21:05:53.20 ID:rb6ayl1SO
――――――



凛「かよちん♪ か~~よちん♪」モギュモギュ

花陽「えへへぇ、凛ちゃん♪」モギュモギュ



あんじゅ「…………」

英玲奈「…………なんだこれは」

あんじゅ「解説席よぉ」

英玲奈「それは分かる。この状況がなんだ、という話だ」

あんじゅ「……幸せそうで、なんだか……」

英玲奈「あれを壊そうとしてたんだな、お前は」ボソッ

あんじゅ「うっ……」グサッ

英玲奈「冗談だ」

あんじゅ「冗談に聞こえないわぁ……」

英玲奈「さて、向こうは帰ってくるのに時間がかかりそうだからな。我々だけで次の試合の選手を紹介しよう」

あんじゅ「……えぇ、そうねぇ」

英玲奈「シングルス2はこの二人だ」

134: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 21:13:16.34 ID:rb6ayl1SO

「えー♪ わたしが試合するんですかぁ? うまくできるかわかりませんよぉ? でもぉ、やるからにはガンバります♪」ニコッ

「……キモチワルイ」

「ぬぅぁんでよっ!?」

「……はぁぁ、憂鬱ね」

「ふふん! それは負けるのが憂鬱って意味かしら?」

「はぁ!? 寝言は寝てから言ってもらえる?」

「はんっ! いいわっ!」



にこ「にこがこてんぱんにしてあげるわよっ!!」バンッ



「……ふんっ、あまり強い言葉を使わない方がいいわよ?」



真姫「弱く見えるわ」フフンッ



135: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/19(日) 21:18:02.45 ID:rb6ayl1SO
――――――



シングルス2



西木野真姫  vs  矢澤にこ



試合開始



――――――

141: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/23(木) 19:44:11.74 ID:vxBCPHt/O
『1セットマッチ』
『サービス にこ』


にこ「にこが弱く見えるですって……?」ターンターン

真姫「……えぇ」

にこ「むっ……ならっ!」スッ



―― ドクンッ ――



にこ『返してみなさいっ!!』

真姫「っ!?」ゾクッ



―― パァァァァン ――



真姫「っ、これは絵里の……ってことはっ!!」

にこ『そう。『無我の境地』よ』

真姫「まさか、もうコントロール出来るようになってるっていうの……?」

にこ『…………』



にこ『ニコ♪』



『真姫 0 - 15 にこ』

142: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/23(木) 19:53:55.99 ID:vxBCPHt/O
にこ『次、いくにこ♪』ターンターン

真姫「……うっ」

にこ『つーぎーはー』スッ


にこ『これよっ!』パァァン


真姫(さっきとまったく同じフォーム。普通なら絵里のサーブが来るはず……だけどっ!!)



―― グググッ パァァァン ――


「今度は『スライスサーブ』やね」
「……にこのあれには苦戦しました。まったく同じフォームから違うサーブを繰り出すことができるんですからね」
「それに加えて色々な技を出せる『無我の境地』もあるのだから、今のにこは――」


真姫「っ、このくらいならっ」ベシッ


―― ポーーーン ――

にこ『っ、ふっ!』ピョーーーーン



にこ『『ダンクスマッシュ』!!』バシィィィィン

真姫「っ」



『真姫 0 - 30 にこ』

143: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/23(木) 20:06:09.67 ID:vxBCPHt/O

真姫「……うぅぅ」グヌヌ

にこ『ふふ♪ 真姫ちゃん、どうしたのぉ?』ニヤニヤ

真姫「な、なによ!!」

にこ『え~っ、なんだかさっきまでの勢いがないっていうか~、弱く見えるにこぉ♪』

真姫「くぅぅ!! にこちゃんのくせにっ!!」ダンダン

にこ『ふふんっ、悔しかったら』ターンターン

にこ『にこを――』スッ



にこ『――倒してみなさい!!』パァァァン



真姫「言われなくても!!」ダッ


―― ギュルルルル パァァァン ――


真姫「ほらっ! 当たりよっ」パァァン

にこ『そう……ねっ!!』パァァン



―― ググググッ ――
―― パァァァン ――

144: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/23(木) 20:10:39.54 ID:vxBCPHt/O

真姫「今度は『スネイク』っ」ダッ

真姫「まだよっ!!」パァァン

真姫「次! どんな技だって返してあげるわ!!」



にこ『ううん、終わりにこ♪』スッ

―― トンッ ――



真姫「なっ!?」

真姫「ここ、で、ただのドロップ?」

真姫「……い、い」



真姫「イミワカンナイ!!」



『真姫 0 - 40 にこ』

145: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/23(木) 20:29:44.41 ID:vxBCPHt/O
にこ『…………』ターンターン

真姫「っ、来なさい!!」

にこ『……』スッ



にこ『ほっ!』ポーン


「下からのサーブだ!」
「ということは……」

「ウチの『イレギュラーサーブ』かな?」


真姫(希の『イレギュラー』……確かにどこに跳ねるか分からないから一見厄介だけど、対処は簡単よ)

真姫(まずは跳ね際に!!)ダッ


「真姫ちゃんが動いたよ!」
「なるほど。跳ね際を返すのね」
「確かにそれならば返せます!」



真姫「はっ!!」パァァン



真姫(返せた! この調子で――)

にこ『よっ!』パァァン



―― キュゥゥゥ ――


真姫「ボールが伸びた……アウト――」



―― スッ ――
―― トンッ ――



―― キュルキュルキュルキュル ――



真姫「――っ」ゾクッ

真姫「アウトじゃない!? まさか、この音は!?」クルッ



―― パァァァン ――



真姫「……これは、希の――」

にこ『『白鯨』……ニコ♪』

にこ『さ、どうかしら? これでもまだ真姫ちゃんは、にこのこと弱いとか言えるぅ?』ニヤニヤ

真姫「うぅぅぅ!!」



『真姫 0 - ① にこ』

146: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/06/23(木) 20:42:22.30 ID:vxBCPHt/O
――――――



英玲奈「絢瀬絵里の『高速サーブ』に『スネイク』」

英玲奈「星空凛の『ダンクスマッシュ』に東條希の『イレギュラー』や『白鯨』か」

英玲奈「まさに変幻自在、だな」

あんじゅ「ふふふっ、彼女が味方なんだもの心強いわねぇ」

英玲奈「あぁ。ところで……」チラッ



花陽「あ、うぅぅぅ、すみませんでした……/// 凛ちゃんとなかよくできるのがうれしくて、つい……///」

凛「かよちん分ほきゅーかんりょーにゃ!!」ツヤツヤ


あんじゅ「なかなおりしたみたいでほほえましいわねぇ」フフフ

英玲奈「……まぁ、気にするな。それよりも解説をお願いしたいのだが……」

花陽「え、あっ、はい!」


英玲奈「西木野真姫」

英玲奈「前回の試合にはまったく出ていなかったようだから我々は分からないのだが……」

あんじゅ「あの娘、強いのかしらぁ?」


花陽「え、あっ……」チラッ

あんじゅ「気は使わなくてもいいのよ? どうせここの話なんて試合してる当人たちには聞こえてないんだから♪」フフフ

花陽「えっと……」

英玲奈「あぁ、今回はそちらのチームは君しかいないんだ。単なる一情報として教えてくれ」

花陽「あ、は、はい」



花陽「真姫ちゃんは――」



――――――

152: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 22:12:13.56 ID:LqGqRYLnO
『チェンジサービス』
『サービス 真姫』



真姫「……ふぅ」ターンターン

にこ『さ、来なさい!』

真姫「言われ――」スッ



真姫「――なくても!!」パァァァン



にこ『なかなか、強烈ね』ダッ

にこ『こんなの返せな~~い』スッ



にこ『わけないわよ!!』パァァァン



真姫「っ、今度は……」

にこ『そ。穂乃果の『リターン』にこ♪』



『真姫 0 - 15 にこ』

153: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 22:21:52.87 ID:LqGqRYLnO
真姫「……ほんと、真似だけは上手いわね」ターンターン

にこ『はぁ? だけってなによ!』

真姫「事実でしょ?」スッ


真姫「はっ!!」パァァァン


にこ『……はんっ! 言ってなさい!』グッ

「!! あの構え……」
「あれは私の――」



にこ『『疾きこと風の如く!!』』パァァァン



真姫「はやっ……」キョロキョロ

にこ『……そこよ』


―― トンッ トンッ ――


真姫「~~っ!!」



『真姫 0 - 30 にこ』

154: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 22:37:07.51 ID:LqGqRYLnO
真姫「……ま、まだよ」ターンターン

にこ『ふふんっ、強がってるのバレバレよ』ニヤニヤ

真姫「~~っ、このっ!!」スッ


真姫「やっ!!」パァァァン


にこ『っと……』ポーーーン

「あ! ロブだよ!」
「真姫ちゃん! チャンスやよ!」

真姫「分かってるわよ!」ダッ



真姫「これで――」

―― バシィィィィン ――



「いいスマッシュです!」
「これなら、きっと決まるよ!」

にこ『……』

にこ『そうね。確かに』



にこ『これで終わりよ』

―― ポンッ ――



真姫「……」

「真姫ちゃん?」
「なぜ、打ち返さないのですか?」
「動きもしない、なんて……」

真姫「……は?」

真姫「え? ボールはどこに……?」キョロキョロ



―― トンッ ――



真姫「っ!?」

にこ『見えなかった、でしょ? 当然ね』

真姫「……これはまさか……」



にこ『真姫ちゃんの『死角』、丸見えにこ♪』



『真姫 0 - 40 にこ』

155: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 23:03:13.51 ID:LqGqRYLnO
――――――



英玲奈「私の『死角』まで使えるのか」

花陽「それに、穂乃果ちゃんの『リターン』に海未ちゃんの『風』も簡単には返せるものではありませんし……」

英玲奈「『無我の境地』か。なるほど、なかなかのものだな」

あんじゅ「……ところでさっきの話、真姫さんの話だけどぉ……」

花陽「あ、はい。えっと、さっきも言ったんですが……」チラッ



凛「真姫ちゃん、弱いにゃ」ズバリ



花陽「り、りんちゃん!?」アセアセ

英玲奈「ふむ」ジーッ

英玲奈「なるほどな」

英玲奈「矢澤にこは確かに強い。『無我の境地』も使いこなしている」



英玲奈「だが、決して対応できないほどではないはずだ」



英玲奈「よく観察してみれば、どの技もオリジナルには劣っているように見える」

凛「うん! 凛の『ダンクスマッシュ』だってもっと強いもん!」

花陽「……う、うん。それは、そうかも……」

英玲奈「身体能力に依存する技は特に、だな。さっきの『死角』も私に言わせればまだ甘い」


英玲奈「……つまり、あれはあくまでも『模倣』。園田海未が前の試合で見せたように『本物の技』ならば、打ち合うことはできる」


英玲奈「……だが」チラッ

あんじゅ「……ねぇ、もしかして、真姫さんって?」ワクワク

花陽「あ、はい」 コクリ

花陽「真姫ちゃんは――」



花陽「――『技』は使えません」



――――――

156: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 23:13:15.08 ID:LqGqRYLnO



―― パァァァァァァン ――



『真姫 0 - ② にこ』



――――――


希「『技』が使えない。まるで、どこかの誰かさんやね」フフフ

真姫「うるさい……」

絵里「真姫、ドリンクよ」ハイ

真姫「……ありがと」ボソッ

海未「…………真姫」

真姫「…………なによ」

海未「い、いえ……」

真姫「………………」


ことり(く、くうきがおもいよぉ……)チラッ

絵里(……仕方がないといえば仕方がないことだけど……)チラッ

海未(こういうときこそ……)チラッ

穂乃果「!!!」

穂乃果「…………」コクリ

穂乃果「よしっ!!」



穂乃果「ま、真姫ちゃん!」



真姫「……なに?」

穂乃果「えっと……ファ、ファイトだよ!!」グッ

真姫「…………いってくる」ハァ

穂乃果「!!!」



穂乃果(失敗したァァァァ)アワワワ



157: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 23:23:15.63 ID:LqGqRYLnO
真姫「…………」スタスタ

希「真姫ちゃん」

真姫「……なに? 今度は希?」

希「うん」

真姫「……占いでもしてくれるわけ? にこちゃんに勝てる方法」

希「…………」

真姫「……希?」

希「…………ねぇ、真姫ちゃん」



希「本当に勝てないの?」



真姫「は?」

希「……にこっちに勝つ方法、ほんとにないのかなぁって」

真姫「…………」



真姫「はぁぁぁぁ」

真姫「私、みんなが使うような『技』使えないのよ?」

真姫「これで、分かるでしょ?」



希「…………ほんとに?」

真姫「ほんとよ! にこちゃんに勝てないのは癪だけど……」プイッ

希「…………ねぇ」

希「ねぇ、真姫ちゃん?」



希「左目、『充血』しとるよ」

真姫「っ!?」バッ




158: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 23:29:25.39 ID:LqGqRYLnO
希「…………」

真姫「…………希」

希「なに?」

真姫「貴女まさか気づいて……」

希「……」

真姫「……」

希「ウチが、ウチが知ってるのは、真姫ちゃんが試合数日前に誰かに会いに行ったってことだけよ」

真姫「…………そう」

希「…………」

真姫「…………」



希「にこっちならきっと大丈夫」



真姫「っ」

希「真姫ちゃんがなにをしたとしても、きっと受け止めてくれるよ」

希「だからな?」



希「思いっきりやったらいいんじゃないかな?」

希「ウチみたいに♪」ニコッ



真姫「…………」

希「…………」

真姫「……いって、くる」

希「うん。行ってらっしゃい」



――――――

159: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 23:43:05.60 ID:LqGqRYLnO
――――――



ツバサ「はい、タオル」

にこ「あ! ありがとうござ――ありがと」

ツバサ「…………」

にこ「…………」

ツバサ「ね、にこさん?」

にこ「……なに?」



ツバサ「貴女、気づいてるのね」



にこ「気づいてるって……なにに……」

ツバサ「決まってるでしょ?」



ツバサ「彼女が隠してるもの」



にこ「…………」

ツバサ「ふふっ、じゃなかったら、あんなに煽ったりしないでしょう?」

にこ「……真姫ちゃんとはいっつもあんな感じで……」

ツバサ「別にいいのよ、隠さなくても」

にこ「…………」

ツバサ「凛さんのフォローに彼女の心を解放すること。大変ね、優しい先輩は」フフッ

にこ「べ、べつにそんなんじゃっ///」

ツバサ「まぁ、それはいいわ。ただひとつだけ。忠告よ」



ツバサ「この試合は早く決めた方がいいわ」



にこ「え?」

ツバサ「彼女の『アレ』を開花させたのは、確かに私。だからこそ、言えるわ」



ツバサ「彼女は危険よ」



――――――

160: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/02(土) 23:59:29.48 ID:LqGqRYLnO
『チェンジサービス』
『サービス にこ』



にこ「……すぅ」ターンターン

にこ『よし』

にこ『…………』チラッ


真姫「…………」ジッ


にこ(真姫ちゃんがなにかを隠してるのはわかってた)

にこ(たぶんそれがあまり見せたくないものだということも)

にこ(だから、前回は解説に徹したんでしょうね)

にこ(でも……)



にこ『っ、やっ!』

―― パァァァァァァン ――



真姫「っ、また……」



『真姫 0 - 15 にこ』



にこ(だからこそ、それを見せてほしい)

にこ(真姫ちゃんにはちゃんとそういうのも曝け出してもらわないと……。じゃないと、またあの時……μ'sを止めようとしたときみたいになるから)

にこ(はぁぁぁぁ、まったく面倒なやつよね)

にこ(でも、仕方ない。大事な後輩だもの。だから、こう言ってやるわ!)




にこ『ほら、早くにこを倒してみなさいよ』ニヤッ




にこ(悔しかったら倒してみなさい。真姫ちゃんの全部を曝け出して、ね)

168: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 21:10:33.22 ID:DDi2tIjBO
にこ『……さ、次も『高速サーブ』いくにこ♪』ターンターン

真姫「…………」



真姫(…………)

真姫(にこちゃんなら大丈夫、とか)

真姫(きっと受け止めてくれる、とか)

真姫(……馬鹿馬鹿しい。そんなのは妄想よ)

真姫(そんなの私のテニスを見たことがないから言えること。私がアレを使ったら……)

真姫(…………)

真姫(……なにを考えてるのよ、私はっ! 使ったら、なんて仮定がそもそもあり得ない。使えるわけが――)



―― パァァァァァァン ――



真姫「っ!?」



『真姫 0 - 30 にこ』



真姫「っ、危ないじゃないっ!!」

にこ『……それは真姫ちゃんが余所見してるからでしょ?』

真姫「そ、それは……」

にこ『…………』

169: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 21:21:11.62 ID:DDi2tIjBO

にこ『……次、行くわよ』ターンターン

真姫「…………」



真姫(余所見してる……?)

真姫(そんなこと、ない)

真姫(私はちゃんと見てるわよ……。今、ちゃんとにこちゃんを見てる)

真姫(だから)

真姫(見えちゃってるからこそ、傷つけたくなくて、使えないんじゃない!)

にこ『さ、次いく――』

にこ『――にこっ!!』パァァァン



―― ギュルルルル パァァァン ――



真姫「『ツイストサーブ』なんて、私には効かな――」グッ



―― カランッ ――



『真姫 0 - 40 にこ』

170: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 21:30:08.58 ID:DDi2tIjBO
真姫「……え?」

にこ『…………』

真姫「な、なんでよ……。さっきは普通に返したじゃない……」

にこ『…………』

真姫「技は使えなくても完璧に捉えて、それで返せたのに……」

真姫「まさか、にこちゃんの球威が上がって……?」



にこ『んなわけないでしょ』ハァ



真姫「なら、なんで……?」

にこ『…………』

真姫「っ、答えなさいよっ!!」

にこ『…………』


にこ『はぁぁぁぁ』


真姫「!! なにため息吐いてるの!!」

にこ『まだ気づかない? 真姫ちゃん?』

真姫「気づくって、なにを……」

にこ『…………』

171: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 21:55:18.63 ID:DDi2tIjBO

にこ『ねぇ、真姫ちゃん』

真姫「……なによ」

にこ『あんたの試合の相手は誰?』

真姫「は、はぁ? そんなのにこちゃんに決まってるでしょ?」

にこ『そう。そうよ。真姫ちゃんの相手はにこよね』

真姫「そんな当たり前のこと――」




にこ『じゃあ、なんでにこを見てないのよ』




真姫「…………え?」

にこ『ちゃんと……にこを見なさい』

真姫「なにを……」

にこ『真姫ちゃんさ、なにか隠しながらプレイしてるわよね』

真姫「っ!?」

にこ『分かるわ。なにかを隠そうと、押さえ込もうとしてる奴が身近にいたから』

真姫「…………」

にこ『そういう奴って大体同じ。余所見してる』

にこ『『自分のせいで』どうにかなっちゃうんじゃないか。『自分のせいで』傷つけてしまうんじゃないか』

にこ『そんな風に相手を直視しないで、自分のことだけ見てる。余所見してるのよ』

真姫「…………っ」

にこ『…………』

にこ『ねぇ、真姫ちゃん?』

にこ『……そいつに言われなかった? 』



にこ『思いっきりやれ、って』



真姫「……っ」

にこ『図星?』

真姫「…………」プイッ

にこ『みたいね』

172: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 21:58:29.78 ID:DDi2tIjBO
にこ『真姫ちゃん。もう気づいたわよね』

真姫「…………」



にこ『あんたの相手は自分じゃない。相手はにこよ』



にこ『だから、あんたはそのためにやれることをやりなさい』

にこ『自分を受け入れて、曝け出して』

にこ『そしてさ』



にこ『思いっきりぶつかってきなさい!!』



真姫「にこ、ちゃん……」

にこ『本気の真姫ちゃんがどんなテニスをするか知らない。けど、にこが全部叩き潰してあげるわ!』

にこ『どうせ勝つのはにこだし♪』ニヤッ

真姫「…………」スッ




―――――― ジワッ ――――――





173: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 22:02:02.27 ID:DDi2tIjBO
――――――



そう。
本当に希の言う通りだったわね。

にこちゃんは、きっと受け止めてくれる。

だから、私は使うわ。
思いっきりぶつかってやる。

ねぇ、にこちゃん。
先に言っておくわね?








「ごめんなさい」



――――――

174: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 22:10:13.06 ID:DDi2tIjBO
――――――




英玲奈「っ」ゾワリッ

英玲奈「なんだ……今の悪寒は」

あんじゅ「……あら、英玲奈もかんじたのね」

英玲奈「……あんじゅもか。どうやら思い違いではなかったようだな」

あんじゅ「えぇ。そして、たぶん原因は……」チラッ



花陽「真姫、ちゃん?」



凛「だよね……?」

花陽「う、うん。でも、雰囲気がいつもと全然……。それに、真姫ちゃんの目、真っ赤に充血してる」

凛「……なんたか、怖いにゃ……」ギュッ

花陽「……大丈夫」ギュッ

凛「うん」



花陽「大丈夫だよね、にこちゃん……」



――――――

175: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 22:35:02.39 ID:DDi2tIjBO
真姫「…………」

にこ『…………』ターンターン

にこ『…………』チラッ



にこ(目が真っ赤に充血してる)

にこ(それに、雰囲気が変わった……?)

にこ(なによ、これ。いつものあったかい真姫ちゃんとは全然違う……。冷たくてざらつくみたいな空気……)

にこ『……えっと、真姫ちゃん?』



真姫「………………フフッ」



にこ『……っ』ゾワリッ

にこ『っ!』スッ



―― パァァァァァァン ――



「また絵里ちゃんのサーブだよ!」
「このゲームを取りにいったのね」
「賢明ですね。これで――」




真姫「――アハッ♪」バッ




にこ「なっ!?」

にこ(絵里の『高速サーブ』に追い付いた!? スピードが上がってる!? この終盤で……?)

にこ(しかも――)



真姫「ふふッ!!」パァァァァァァン



「打ち返しました!!」
「まさか!! 私のサーブよ……?」

にこ『……っ』ダッ

にこ(……絵里のサーブは確かに速い。でも、それより脅威なのがその打球の重さ)

にこ(…………なるほど。あの『赤目モード』、スピードと、それにパワーも上がるのね)

にこ(確かに絵里のサーブを返されたのは想定外……だけど!!)



にこ『まだ――』クルリン

にこ『――まだよっ!!』パァァァン



「今度は凛ちゃんの『背面ボレー』やね」
「……角度もついてるわ 。これで――」


にこ『――終わりよ!!』


176: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 22:36:13.52 ID:DDi2tIjBO




真姫「ハァ? 終わらせるわけないデショ♪」グッ




「あの体勢……ボレーにスマッシュを!?」

「って、待ってください!! そこでスマッシュを打ったら、にこに当たってしまいますっ!!!」

「っ!?」



「にこっち!!!」



にこ『………………え?』




―― バシィィィィィン ――





177: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 22:36:54.78 ID:DDi2tIjBO
『アウト』
『真姫 0 - ③ にこ』

178: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/09(土) 22:45:14.89 ID:DDi2tIjBO
「あ、あうと……」ホッ
「さすがに強引すぎた、みたいね……」フゥ
「き、きっと手元が狂ってしまったのでしょう」
「…………」



にこ『…………』プルプル

にこ『っ』ガクッ

にこ『……はぁ、はぁ……』ガクガク



にこ(……震えが止まらない)

にこ(アウトとか、手元が狂ったとかそういうんじゃない)

にこ(あれはわざとだ)

にこ(避けなかったら、顔に当たってた……)

にこ(……ううん。あれはたぶんわざと外したのよね……)

にこ(だって、さっき、あの娘言ってたもの……)チラッ


――――――



真姫「フフフ、よかったわ、当たらなくて」

真姫「まだパーティーは終わらナイワ♪」アハッ



――――――

187: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 21:48:08.72 ID:TaSvQIIFO
真姫「……フフッ」ターンターン

にこ『…………』ブルッ



にこ(落ち着きなさい、にこ)

にこ(確かにさっきのは狙われたわ)

にこ(けど、あれは至近距離だったから。つまり、前に出さえしなければ……)


にこ『……大丈――』



――ギリギリギリギリ ――



にこ『っ!?』

真姫「いくワヨ?」スッ



真姫「フッ!!!」バァァァァァァン



「強烈なサーブです!」
「あの『赤目モード』はパワーが格段に上がるみたいやね」
「うん。でも、今のにこちゃんなら……」


にこ『そうよっ、関係ない!!』ダッ


にこ(パワーがあっても今のにこなら! 穂乃果の『リターン』で決めるわっ!)

真姫「フフッ」

にこ『――』ゾワリッ



―― ギュルルルル ――



にこ『っ、この回転っ!?』

真姫「いい忘れてたワ。その打球、どこに跳ねるか全くワカラナイわよ?」



真姫「私以外は……ネ♪」フフッ



―― パァァァン ――


にこ『っ!?』



―― バシィィン ――



「にこ!?」
「にこちゃん!!」
「にこっち!!!」



『真姫 15 - 0 にこ』

188: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 21:55:01.22 ID:TaSvQIIFO
にこ『……はあっ、はっ……』

真姫「……避けたのネ」

にこ『はんっ、あんなの余裕で避けられるわよ』ガクガク

真姫「フゥン……そのわりには、手、震えてるわヨ?」

にこ『っ』バッ

真姫「ま、いいワ。次は……フフッ♪」

にこ『――』ゾワッ



「に、にこちゃん、避けたんだね! よかったぁぁぁ」

「そう、みたいね。でも……」

「……えぇ。嫌な予感がします」

「ことりも……」



「…………」



189: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 22:06:02.92 ID:TaSvQIIFO
真姫「さ、次、行きまショ?」ターンターン

にこ『……』ブルッ


―― ギリギリギリギリ ――


真姫「あ、忘れてたわネ、このサーブの名前――」スッ



真姫「『ナックルサーブ』!!!」バァァァァン



にこ『またっ――』ダッ


―― ギュルルルル ――


にこ『はぁぁぁっ!!』グッ



―― パァァァン ――

―― バシンッ ――



にこ『――痛っ』

「あぁっ!?」
「あ、当たっちゃったっ……」
「にこ!!」

にこ『…………っ』

真姫「……フフッ、今度は当たったワ♪」

にこ『――』

真姫「やっぱりこれが相手に当たるといい気分ネ」フフフッ

にこ『っ、はっ、残念だけど……かすっただけよ」

真姫「……は?」



にこ「ほら、この通りにこっ♪」ブンブン



真姫「……そう」クルッ

にこ「…………」



にこ「……」ズキズキ



『真姫 30 - 0 にこ』

190: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 22:12:34.35 ID:TaSvQIIFO
真姫「今度は確実に決めるカラ……」ターンターン

にこ「きてみなさい!!」


―― ギリギリギリギリ ――


真姫「決めるッ!!」バァァァァン


にこ「なめるんじゃないわよ!! にこだって何度もやられはしない!」

にこ「返すわ!!」



―― ズキッ ――

にこ「痛っ」



―― ギュルルルル ――



にこ「しまっ――!?」



―― パァァァン ――




191: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 22:28:21.54 ID:TaSvQIIFO




にこ「あ――っ、がっ……~~~~っ」ウズクマリ




絵里「にこっ!!」ダッ

穂乃果「にこちゃんっ!!!」

海未「っ、ことり! 救急箱を!!」

ことり「あっ、えっ……?」

海未「はやくっ!!」

ことり「うんっ」ダッ


にこ「っ、はっ――――」


花陽「にこちゃんっ」

ことり「救急箱、それと氷! 持ってきましたっ」

絵里「ことり! それ、貸して!!」

ことり「うんっ!!」

絵里「っ、膝に当てるわよ…………」

にこ「っ、は……痛っ」

絵里「少しだけ、我慢して……」

にこ「……っ、ん、はっ」


海未「花陽、包帯の方をお願いします!」

花陽「は、はいっ」

海未「にこ、少々失礼します」バッ

にこ「っ、えぇっ……」

海未「……膝の外側がかなり赤く……」

にこ「……はっ、痛――」

海未「絵里、氷をそのまま当てておいてください。ことりと花陽は――」


192: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 22:35:28.91 ID:TaSvQIIFO



―― バンッ ――




真姫「……なにするノヨ」

凛「なにするって!!? それは真姫ちゃんのほうだよっ!!」ガシッ

真姫「つかまナイデ」

凛「っ!! 真姫ちゃんっ!!」

真姫「イミワカンナイ」

凛「にこちゃんにあんなひどいことしてっ!!」

真姫「…………ハァ、クダラナイ」

凛「なっ!?」

真姫「そもそも挑発してきたのはにこちゃんのホウヨ?」

凛「っ、でもっ!!」

真姫「でも、じゃないワヨ。わかる? つまり、自業自得……ってヤツ」フフッ

凛「っ、もう……許さない……許さないッ!!」バッ

193: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 22:36:40.19 ID:TaSvQIIFO
――――――



「そこまでや、凛ちゃん」



――――――

194: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 22:43:53.23 ID:TaSvQIIFO
凛「っ、なんで止めるのッ!!」



凛「希ちゃんっ!!」



希「…………」

凛「にこちゃんにひどいことしたんだよっ!! なのに、反省しないでっ!! こんなのッ!!」

真姫「フンッ」

希「…………たしかに」

希「たしかに、ゆるせない。ウチだって凛ちゃんと同じ気持ちよ」

凛「だったらっ!!」



希「でも、今の真姫ちゃんは正気じゃない。『ソレ』に人格も支配されてる、みたいやから」チラッ



真姫「……フフッ」ジワッ

凛「でもっ――じゃあ……」

希「…………」

凛「…………」シュン

希「……大丈夫」ボソッ

凛「のぞみ、ちゃん?」



希「真姫ちゃんはちゃんと正気に戻る」

希「ううん。戻してくれるから」スッ



凛「――え?」

195: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 22:45:15.25 ID:TaSvQIIFO
――――――



「邪魔よ」

「退きなさい、凛」



にこ「まだ試合は終わってないわ」



――――――

196: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 22:54:10.68 ID:TaSvQIIFO
凛「にこ、ちゃん……」

にこ「ったく。揃いも揃って……。試合も終わってないのに、コートに入るのはマナー違反よ」

凛「でもっ! だって!!」

にこ「……とにかく退いてなさい。あとはにこがやることよ」

凛「……うん」シュン

にこ「…………」チラッ

凛「…………」シュン

にこ「はぁぁぁ」

にこ「まぁ、でも……」



にこ「にこのために怒ってくれたのは……ありがと」ナデナデ



凛「っ、うんっ……」ウルッ

にこ「ほら、泣かないの!」

凛「っ、りょうかいにゃっ」ゴシゴシ

にこ「ん、ならよし。あっちでみんなと待ってなさい」

凛「……うん!」タッ

197: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 23:02:56.06 ID:TaSvQIIFO
希「…………にこっち」

にこ「……なによ?」

希「ごめん」

にこ「……いきなりね。なにがよ?」

希「……凛ちゃんの手前、ああは言ったけど……」



希「真姫ちゃんがこうなったのはウチのせい」



希「ウチが背中を押したから……そのせいで真姫ちゃんは……にこっちも……」ウツムキ

にこ「…………」

希「…………」

にこ「希」

希「……うん」

にこ「違うわよ、それ」

希「え…………違うって……」

にこ「あんたのせいじゃなくて――」



にこ「希。あんたのおかげ」

にこ「あんたのおかげで」

にこ「本気の真姫ちゃんと戦える」ニッ



希「……にこっち?」

にこ「だから、その無駄にデカイ胸を張りなさい!」ニヤッ

希「で、でも……このままじゃ……」

にこ「はっ! 安心しなさい!」



にこ「大丈夫! にこは負けないわ!!」




198: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 23:17:21.17 ID:TaSvQIIFO
『試合再開』
『真姫 40 - 0 にこ』


にこ「…………」

真姫「…………」

にこ「…………」

真姫「…………」

にこ「待たせたわね」

真姫「ううん、かまわないワ」

にこ「続きからやるわよ」

真姫「……大丈夫なの?」

にこ「……なんのこと?」

真姫「その左膝」ターンターン

にこ「…………」

真姫「見たところ、内出血してて、立ってるのも辛いはずダケド?」ターンターン

にこ「…………ハンデよ、ハンデ」フンッ

真姫「……ソ」ターンターン

真姫「なら――」ターンターン



―― ギリギリギリギリ ――

―― パァァァン ――



にこ「っ、あがっ――」



真姫「安心して痛めつけてあげらレル♪」



にこ「~~っ、はっ、効かないわ、よっ!!」ズキズキ

真姫「…………は?」

にこ「このっ……程度で!! 音を上げるわけないでしょ!!」

真姫「……なに、ソレ」イラッ

にこ「はんっ、何度も言ってるでしょ? 悔しかったらね……」



にこ「にこを倒してみなさいよ!!」ニカッ



真姫「イミワカンナイ……」キッ



『真姫 ① - ③ にこ』

199: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/15(金) 23:19:04.42 ID:TaSvQIIFO
――――――



矢澤にこの膝が壊れるまで
あと『 』球



――――――

205: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 21:28:36.61 ID:aLLrzAZfO
――――――



凛「…………」ゴシゴシ

花陽「凛ちゃん、大丈夫?」

凛「うん、凛は大丈夫」

花陽「そっか……」

あんじゅ「……矢澤さんはだいじょぶそうなの?」

花陽「わかりません。アイシングして少しはよくはなったみたいですけど」

凛「…………」ウツムキ

英玲奈「長くは保たないだろうな」



英玲奈「……ふむ」

英玲奈「『赤目モード』」

英玲奈「なにが原因かは分からないが、身体能力が格段に上がっているようだ」

英玲奈「さらに、攻撃性も上がる、と」



あんじゅ「相手にしたくはないわねぇ」

英玲奈「あぁ、私もごめんだ」

花陽「…………」

凛「でも、にこちゃんは戦ってるんだよね」

花陽「……うん。きっとにこちゃんなら――」



――――――

206: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 21:42:47.65 ID:aLLrzAZfO
『チェンジサービス』
『サービス にこ』



にこ「……はぁっ」ターンターン

真姫「息が上がってるワ」フフッ

にこ「……気のせいよ」ハァ

真姫「それにもう『無我の境地』も使えないジャナイ」

にこ「ふんっ、そんなのなくても」スッ



にこ「はっ!!」パァァァン



真姫「ホラ、ただのサーブ♪」グッ

真姫「自分の技も打てないヨウジャ――」



真姫「フフッ」パァァァン



にこ「それはそっちだって同じよ!」

にこ「『ナックルサーブ』じゃないならっ!!」



―― ズキッ ――

にこ「っ、痛っ」グラッ



―― パァァァン ――



にこ「…………っ」

真姫「にこちゃんを倒してみろッテ?」

真姫「フフッ♪ お望み通り倒してア・ゲ・ル♪」



『真姫 15 - 0 にこ』

207: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 21:53:01.26 ID:aLLrzAZfO
にこ「……っ、はぁっ」

真姫「フフッ、サーブしないノ?」

にこ「する、わよ」スッ



―― ズキッ ――

にこ「かっ……」ベシッ



真姫「あーあ♪ こんなサーブジャ……」グッ

真姫「狙われちゃうワヨ?」ニヤリ



―― パァァァン ――



「今度はダイレクトにっ」
「にこちゃん! よけてっ!!」

にこ「っ!?」



―― バシンッ ――



にこ「がっ――はっ……」



『真姫 30 - 0 にこ』

208: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 22:03:02.97 ID:aLLrzAZfO
――――――



―― バシンッ ――

にこ「っ、がぁっ――」



『真姫 40 - 0 にこ』



――――――



絵里「見て、られないわ……」

穂乃果「もういいよっ!!」

海未「っ、そうです……穂乃果の言う通り止めに入りましょう!!」

ことり「うんっ」



希「…………いや、まだ。にこっちなら――」



――――――



―― バシィンッ ――

にこ「いっ――は、はっ」



『真姫 ② - ③ にこ』



――――――



希「…………」

絵里「にこの意志は尊重したいけれど」

希「……うん。もうム――」



にこ「…………っ」ジッ



希「え? にこっち?」

にこ「…………」ニカッ



――――――

209: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 22:15:12.60 ID:aLLrzAZfO
『チェンジサービス』
『サービス 真姫』



真姫「…………」ターンターン

にこ「はっ、痛……」ズキズキ

真姫「…………」



―― ギリギリギリギリ ――


真姫「ハッ!!」パァァァン



―― ベシィィンッ ――



にこ「~~っ、あがっ」



『真姫 15 - 0 にこ』



にこ「は、ふっ……はぁ、はぁっ」

真姫「…………」

にこ「~~っ、ふっ…………はっ」スッ

真姫「……っ」

にこ「さ、次来なさい」ニカッ

真姫「っ、なんでまだ立てるノヨッ」

にこ「は? あんたこそなに言ってるのよ」



にこ「まだ試合は終わってないでしょ?」



真姫「ッ、あ~っ、モウッ!!」イライライライラ

真姫「イライラするイライラするイライラスルノヨッ!!!」

真姫「そんなにやられたいなら――」



―― ギリギリギリギリ ――


真姫「――終わらせてアゲルッ!!」パァァァン




210: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 22:16:59.16 ID:aLLrzAZfO
――――――



にこ「そう、来るわよね」ニヤッ

―― トンッ ――



――――――

211: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 22:22:57.24 ID:aLLrzAZfO



―― トンッ トンッ ――



「にこちゃん、返したよ……?」
「ど、ドロップショット」
「……にこっち」


真姫「ナ……」

真姫「私の『ナックルサーブ』を……」

にこ「はっ、はぁっ……」

真姫「なんで返せタノヨ」

にこ「……はぁっ、はんっ! こんなに執拗に膝狙われたらそりゃ返せるわよ」

真姫「っ」



にこ「まずは一点」ニカッ



『真姫 15 - 15 にこ』

212: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 22:27:37.43 ID:aLLrzAZfO
真姫「……」イライラ

にこ「…………ふふっ」

真姫「なにがおかしいノ……」イラッ

にこ「イライラしてる、わね」

真姫「っ」



―― ギリギリギリギリ ――


真姫「ハァァッ!!!」パァァァン



―― ギュルルルル ――

にこ「……次は」スッ



にこ「顔でしょ!!」パァァァン



真姫「ッ!?」



『真姫 15 - 30 にこ』

213: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 22:36:20.47 ID:aLLrzAZfO
真姫「また私の『ナックルサーブ』を返しタ? イミワカンナイ……」

にこ「はぁっ、はっ……ふぅ。そりゃイミワカンナイでしょうね」

真姫「…………」

にこ「今のあんたは、にこを痛めつけることしか考えられない、でしょ?」

真姫「ッ」

にこ「図星ね」フフンッ

真姫「…………」ギリッ

にこ「たしかに、バウンドする方向が分からない『ナックルサーブ』を返すのは難しいわ。でも、もう『あんた』のサーブは全部読めたわよ」

真姫「……」

にこ「だから、もし、にこを倒したいんだったら――」



にこ「早く戻ってきなさい!! 『真姫』!!」




―――――― ドクンッ ――――――




214: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 22:47:55.76 ID:aLLrzAZfO
――――――



「……だそうダケド」

「…………」

「…………ハァ、臆病者ね」

「…………っ、なにをッ!?」

「自分で戦うのが怖いンデショ?」

「…………」

「図星ネ。だから、ワタシを作り上げた……」

「私は……」

「…………」

「…………私」

「……ネェ」

「え?」

「にこちゃんが言ってたこと……オボエテル?」

「にこちゃんが言ってたこと…………」



『だから、あんたはそのためにやれることをやりなさい』

『自分を受け入れて、曝け出して』

『そしてさ』



『思いっきりぶつかってきなさい!!』



「………………」

「ワタシだけじゃ勝てないワヨ? 悔しいケド」

「…………」

「あなたもいないと勝てない」

「…………」

「……えぇ、分かってるわ」



「私はワタシ」

「そうヨ、ワタシは私」



「「だから」」



――――――

215: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 22:54:21.55 ID:aLLrzAZfO
――――――



花陽「あ、あれ?」

凛「真姫、ちゃん?」



英玲奈「どうしたんだ?」

花陽「あ、はい。なんだか、真姫ちゃんの雰囲気が変わったような気がして……」

あんじゅ「そうかしら?」

英玲奈「目の色も変わっていないようではあるが……」

凛「うん……」



凛「でも、やっぱり違う! あれは真姫ちゃんにゃ!」

花陽「うん! あれは真姫ちゃんです!」



――――――

216: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/18(月) 23:01:48.32 ID:aLLrzAZfO
真姫「…………」ターンターン

にこ「真姫ちゃん……?」

真姫「……なに?」

にこ「…………ふふっ」

真姫「なに、笑ってるのよ」

にこ「……別に?」

真姫「ふんっ、笑ってられるのも今のうち……」スッ



―― ギリギリギリギリ ――

真姫「はあっ!!」パァァァン



「また『ナックルサーブ』」
「でも、にこなら――」

にこ「……さっきまでならね」グッ



―― ギュルルルル ――

―― パァァァン ――



「ネット側に跳ねた!?」
「バックスピン!?」
「にこの体を狙わない……ってことは!!」


にこ「さすがにそれは返せないわね」フゥ

真姫「とうぜんよっ」フフンッ

にこ「…………ふふっ」

真姫「…………ふんっ」





にこ「おかえり、真姫」ニカッ

真姫「ただいま、にこちゃん」フフッ




『真姫 30 - 30 にこ』

224: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 21:17:25.52 ID:XeX2jsiBO
真姫「次、行くわよ」ターンターン

にこ「……来なさい」


―― ギリギリギリギリ ――


真姫「――」スッ



真姫「ハッ!!」パァァァン



にこ「『ナックルサーブ』……今度は……」


―― ギュルルルル ――

―― パァァァン ――


にこ「っ、真正面ならっ!!」グッ

にこ「やっ!」パァァァン


「!! にこちゃん、返したよ!」
「正面に来たサーブたからでしょう。ですが……」



―― トンッ ――



にこ「ドロップショット、ね」

真姫「……えぇ」

にこ「…………」

真姫「…………」

にこ「卑怯、なんて言わないわよ?」

真姫「……えぇ。私は全力でいく。それが――――でしょ?」

にこ「はんっ! 分かってるじゃない」



『真姫 40 - 30 にこ』

225: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 21:33:07.32 ID:XeX2jsiBO
真姫「…………」ターンターン

―― ギリギリギリギリ ――

真姫「次!」パァァァン


にこ「今度はっ――」グッ


―― ギュルルルル ――

―― パァァァン ――


「バウンドが低い。足元を狙ったってわけね」
「いままでは普通にバウンドしてたから、不意打ちやね」

「……でも、返せるわよね? にこさん?」


にこ「当然っ! まだよっ!!」グッ



―― ズキッ ――



にこ「痛っ!?」グラッ

にこ「っ」ポーーーーン


「にこが甘いロブをっ!」
「にこっち、やっぱり膝が……」

真姫「にこちゃんっ……」

にこ「……っ」ズキズキ


にこ(失敗、したわね)

にこ(完全に忘れてたわ……)

にこ(でも、ここで引くわけには――)



にこ「来いっ!!」キッ

真姫「っ、上等よッ!!!」バッ



にこ(真姫が本気でぶつかってきてる)

にこ(だから、引くわけにはいかないのよっ!!)



真姫「『ナパーム』ッ!!!」バシィィィィン




にこ「なっ!?」



―― カランッ ――



226: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 21:44:11.78 ID:XeX2jsiBO
――――――



花陽「にこちゃんのラケットがベースラインの後ろまで弾かれちゃった……」

凛「す、すごいスマッシュにゃ……」


英玲奈「『赤目モード』で上がったスピードでロブへと追いつき、渾身の力を込めて打ち込むスマッシュか」

英玲奈「相手のグリップに当たっただけであの威力……」



英玲奈「なるほど、まさに『ナパーム』だ」



あんじゅ「あれは『イリュージョン』でも真似できそうにないわねぇ」

英玲奈「……そうだろうな。しかし、これで――」



――――――

227: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 21:51:56.31 ID:XeX2jsiBO
にこ「なんてパワーよ……」ビリビリ

真姫「どう? これが私の『ナパーム』」フフンッ

にこ「…………まぁまぁにこ」

真姫「むっ」

にこ「…………」

真姫「まぁ、いいわ! どちらにせよこれで!」



『真姫 ③ - ③ にこ』



真姫「追いついた」フフンッ



228: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 22:05:11.50 ID:XeX2jsiBO
にこ「…………」



にこ(正直まいったわ)

にこ(真姫の『赤目モード』は予想以上に強い)

にこ(あの『ナパーム』なんて返せる気がしないわ)

にこ(膝はこれだし)

にこ(そのうえ、頼みの綱である『無我の境地』も使えない)

にこ(はぁぁぁぁ……)

にこ(残念だけど、この試合はここで…………)

にこ(………………)




にこ(…………あれ?)




にこ(『無我の境地』が頼みの綱?)

にこ(いやいやいやいや)

にこ(思い出すのよ、矢澤にこ!!)

にこ(そう。にこは元々技なんて使えない。使えなかった)

にこ(それであの海未と戦った。戦って勝ったの!)

にこ(…………そう!)

にこ(『無我の境地』? そんなのいらないわ!)

にこ(にこは戦う。にこの武器で!)

229: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 22:14:11.02 ID:XeX2jsiBO
にこ(さぁ、考えるのよ)


にこ(今の真姫はスピードもパワーも高い)

にこ(『ナックルサーブ』と『ナパーム』なんて技もある)

にこ(次はにこのサーブだから『ナックルサーブ』は考えなくていい)

にこ(ただ膝のコンディションは最悪)

にこ(強いサーブは打てないわ)

にこ(かといって弱いサーブを打ってサイドに振られたらアウト。第一動くことだって…………)



にこ(ああぁぁぁっ!!! もうっ!!!)



にこ(もうやめよ! やめ!)

にこ(考えても分からないわよっ!!)

にこ(威力の高いサーブも打てないし、弱いサーブも無理とかどうすりゃいいってのよっ!?)

にこ(そもそも走り回ることもできないのにッ!!)

230: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 22:16:58.55 ID:XeX2jsiBO

にこ(…………ん?)

にこ(いや、待って。逆よ、逆)

にこ(動けないなら――)


231: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 22:17:54.48 ID:XeX2jsiBO
――――――




にこ「動かなければいい……?」




――――――

232: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 22:21:23.69 ID:XeX2jsiBO

真姫「は? 動か……なに?」

にこ「あっ……いや、なんでもないわ」

真姫「……そう」

にこ「……えぇ」

真姫「……じゃあ、ほら、早くしなさいよ。にこちゃんのサーブからよ」

にこ「分かってるわよ」



にこ「……………………」

233: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 22:32:19.56 ID:XeX2jsiBO
『チェンジサービス』
『サービス にこ』


にこ「…………ふぅ」ターンターン

真姫「…………」グッ

にこ「っ」スッ



にこ「やっ!!」シャッ



真姫「……え?」

「下からのサーブ!?」
「まさか希の『イレギュラー』ですか?」
「いいえ! 違うわ! にこは『無我の境地』を使ってない」
「じゃあ……?」

「…………」


真姫「っ、ふっ!!」パァァァァン

真姫「なんのつもり! にこちゃんっ!」



――グッ ――



にこ「!!」

にこ「なんのつもりって……っ」ダッ



にこ「もちろん、勝つつもり、ニコッ♪」パァァァン



真姫「なら、なんで下からのサーブなんて」ダッ

真姫「諦めたなら言いなさい、よねっ!!」パァァァン



―― ググッ ――



にこ「はんっ! そんなわけ――」

―― ズキッ ――

にこ「っ」



―― パァァァン ――



『真姫 15 - 0 にこ』

234: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 22:48:33.32 ID:XeX2jsiBO
にこ「ったくついてないわ」サスサス

真姫「…………大丈夫?」

にこ「……ふぅ。えぇ、まぁどうにか」

真姫「そう」

にこ「……さ、とっととつぎ、いくわよ」

真姫「…………そう、ね」




真姫(本気でにこちゃんを倒す)

真姫(それが私を呼び戻してくれたにこちゃんへの礼儀)


真姫(そのためなら、私はにこちゃんの弱点を突くことを躊躇わない)

真姫(それに、さっきの諦めたとも思える下からのサーブで、私は少し気が立ってしまって……)

真姫(だから、さっきのショットだって、追いつけない位置に打った――はずだったのに)

真姫(たぶんだけど、あのままなら、ギリギリ届いていた)

真姫(そんなわけない、なんて――)




にこ「さ、構えなさい。真姫」ニカッ




真姫(――言えない)

真姫(きっと、にこちゃんは本気だわ)

真姫(体力は限界で、膝だって痛いはずなのに)

真姫(まだ諦めてない)

真姫(なら、私も――)




真姫「いつでもいいわよ、にこちゃん」ニッ




真姫(最後まで、全力で!)

235: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/07/24(日) 22:59:17.22 ID:XeX2jsiBO
――――――



花陽「にこちゃんはそのあとも下からのサーブを打ち続けました」

花陽「スピードもパワーもそこまで高くない普通のアンダーサーブでした」

花陽「けれど、真姫ちゃんはそれをコーナーへは返しません。きっとにこちゃんの膝のことを気にしてるんでしょう」

花陽「ただ、やっぱりにこちゃんは限界みたいで、このゲームは真姫ちゃんが決めました」

花陽「あと1ゲームを真姫ちゃんがとれば、試合は終わって……」



花陽「……って、凛ちゃん?」


凛「……んー」ゴシゴシ



花陽「どうかした?」

凛「かよちーん……目が疲れるにゃぁぁ」

花陽「うーんと? もしかして、眠くなっちゃった? 花陽のおひざで寝る?」

凛「……んー、それもいいけど……。でも、眠いわけじゃないにゃ。ただ……」グシグシ



凛「にこちゃんのボール、すごく回転かかってて見てるの疲れるんだぁ」

花陽「回転……?」



――――――



『真姫 ④ -③ にこ』

『ゲームセットまであと1ゲーム……?』



――――――

245: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 16:36:23.07 ID:SeQbnl3EO
『チェンジサービス』
『サービス 真姫』


真姫「……」ターンターン

にこ「……」ハァハァ


真姫(あと、1ゲーム)

真姫(けど、なにかがおかしいわ)

真姫(さっきのゲーム、にこちゃんのアンダーサーブに私は全力で返球した。コーナーを突こうとしてた)

真姫(なのに、私のリターンはコーナーには返ることはなかったわ)

真姫(これは、一体……)

真姫(…………)

真姫(いいえ。にこちゃんが何をしてるのかわからないけど!)



―― ギリギリギリギリ ――

真姫「っ」スッ



真姫「決めるッ!!」パァァァァァン



「『ナックルサーブ』!」
「真姫ちゃん、このゲームで決める気やね」


にこ「重っ! でも!!」グッ



にこ「まだよ!!」パァァァァァン



真姫「こっちだってまだ余裕、よっ」パァァァァァン

「真姫ちゃん巧い! コーナーギリギリに打った」
「あれは流石ににこでも無理だわ!」

真姫(今度こそコーナーよ! これで――)



―― グググッ ――



真姫「なっ!? またっ!?」

にこ「っ」ズキッ



にこ「――ふっ」フワッ

―― トンッ ――



真姫「……っ」

にこ「――しっ」グッ



『真姫 0 - 15 にこ』

246: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 16:53:31.60 ID:SeQbnl3EO
真姫(さっきのプレー)

真姫(私の打った打球がにこちゃんの方に引き寄せられたように見えたけれど……)

真姫(……ありえない。そうは思うけど)

真姫「……」ターンターン

にこ「……はっ、はぁっ……」

真姫「……」スッ



真姫「ハッ!!」パァァァァァン



にこ「重い……っての!」パァァァァァン

真姫「っ」ダッ


真姫(私の渾身の技で!!)ジワッ

真姫(見極めるッ!!)


真姫「返してみなさい!!」


―― ギュルルルルル ――



真姫「『ナックルショット』!」パァァァァァン




「あれは!?」
「私たちにはわからない……けど」チラッ
「そうやね」チラッ

「――ツバサさんなら知ってるんやない?」

「…………えぇ」
「打ち出す瞬間に体と手首にひねりを加えることで『ナックルサーブ』のように複雑な回転をするショット」
「『赤目』の真姫さんが使える最強の技よ」




真姫「これが私の全力よ!!」

真姫「これで終わり――」





―― ググググッ ――

247: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 17:07:49.02 ID:SeQbnl3EO

真姫「っ、やっぱり打球がにこちゃんに引き寄せられてる!?」

真姫「私の『ナックルショット』を引き寄せる、なんて……!?」



にこ「終わり?」

にこ「そんなわけないわ! やっと見つけたのよ?」

にこ「にこの『技』、にこだけの『武器』」グッ

にこ「真姫ちゃん、今答えるわ!」




にこ「これがにこの全力、ニコッ♪」トンッ




248: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 17:13:49.68 ID:SeQbnl3EO



―― トンッ ――


―― シュルルルルル ――


―― ポスンッ ――



249: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 17:18:49.47 ID:SeQbnl3EO
真姫「……ボールが跳ねずに、戻って――」

にこ「……そうね」




にこ「『にこ式ドロップ』」




にこ「にこの初めての『技』、そう呼ぶことにするわ」ニカッ



『真姫 0 - 30 にこ』

250: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 17:32:02.21 ID:SeQbnl3EO
――――――



あんじゅ「バックスピンのかかったドロップショット」

あんじゅ「わたしもできないことはないでしょうけど、まったく跳ねないのはすごいわねぇ」


英玲奈「そうだな。だが、それだけではない。星空には見えていたようだが……」チラッ

凛「うん! にこちゃんのボール、すごい回転がかかってたにゃ」

花陽「あ、さっき言ってたこと?」

凛「そう!」コクコク


英玲奈「相手の回転を予測した上で回転をかけることで、相手が打球を打ち返しても、その場を殆ど動く事無く、相手の球を打ち返し続ける技、か」

花陽「花陽には回転が見えないから、にこちゃんの周りにボールが勝手に集まってくるみたいに見えます」

花陽「にこちゃんのゾーン……名前をつけるとするなら『にこに――」



凛「『矢澤ゾーン』にゃ!!」ババンッ



花陽「……え、あ、うん」

251: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 17:36:29.17 ID:SeQbnl3EO
あんじゅ「まあ、ふつうに考えたらありえないわよねぇ」

英玲奈「あぁ。同じフォームから違う回転のサーブを繰り出せる技能と『無我の境地』で体験してきた様々な経験がなせる技、まさに神業だ」


花陽「…………凛ちゃん」

凛「……ん? なに、かよちん?」

花陽「……すごいね」

凛「うん、すごいにゃ」



花陽「これが部長、なんだね」



――――――

252: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 17:47:44.87 ID:SeQbnl3EO
――――――



花陽「にこちゃんの『矢澤ゾーン』と『にこ式ドロップ』」

花陽「真姫ちゃんも頑張りますが、ゲームを落としてしまいます」

花陽「そして、ゲームはタイブレークへ」



花陽「にこちゃんの『ツイストサーブ』」

花陽「新技『にこ式ドロップ』」

花陽「真姫ちゃんの『ナパーム』」

花陽「『矢澤ゾーン』からのコーナーを突いたショット」

花陽「『ナックルサーブ』と『ナックルショット』」

花陽「二人の技がぶつかって」

花陽「ゲームはついに終盤――」



――――――



『マッチポイント にこ』



――――――

253: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 17:59:33.33 ID:SeQbnl3EO
にこ「……ふぅ」

真姫「……疲れてるわね」

にこ「そういう真姫ちゃんこほ息上がってるわよ?」

真姫「はあ? 私は全然疲れてないけど?」

にこ「えー、にこはそれよりもっと疲れてないニコ♪」

真姫「…………」

にこ「…………」



にこまき「「ふふっ」」



にこ「じゃ、最後の一球、付き合いなさいよ」ニカッ

真姫「はあ? あと三球の間違いデショ?」フフンッ

にこ「じゃあ、まずは――」スッ



にこ「――これ!!」パァァァァァン



―― グググッ パァァァン ――



真姫「『スライスサーブ』は」ダッ



真姫「効かないわッ」パァァァァァン



254: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 18:07:16.66 ID:SeQbnl3EO
真姫「『赤目モード』なら不意打ちも怖くないわ。それに逆サイドにリターンすれば――」



―― ググググッ ――



真姫「って、まぁ、そうよね」スッ

にこ「当然! にこにーゾーンで――」

真姫「……『矢澤ゾーン』デショ?」ププッ



にこ「違うわよ!! それ、かわいくないッ!!」パァァァァン



真姫「ふふっ、じゃ、私が勝ったら『矢澤ゾーン』……ね」グッ

にこ「はんっ! 上等よ」スッ

真姫「じゃあ、これで決まり!」



―― ギュルルルルル ――

真姫「はぁぁぁっ!!」パァァァァァン




―― グググググッ ――

にこ「それはこっちの台詞、ニコ♪」トンッ


255: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 18:13:52.40 ID:SeQbnl3EO
真姫「『にこ式ドロップ』ッ!?」

にこ「間に合わない、わよね? これでホントに……」

真姫「っ!!」ゾワリ




真姫「終らせナイワヨ」ダッ



にこ「なっ!? 一瞬で前に!?」

真姫「これはまだ使いナレテナイカラネ」

にこ「あんたッ!」

真姫「ダイジョブよ」




真姫「これで、終わりだから」トンッ




にこ「なっ!?」

256: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 18:21:42.64 ID:SeQbnl3EO
にこ(やばいやばいやばいやばい)

にこ(完全に虚を突かれた!)

にこ(追いつけな――いや)



にこ「追いつくのよっ!!」ダッ



―― ズキンッ ――



にこ「痛ッ!!」グラッ



にこ(もうこれは……走れないわね……)


にこ(これが最後の一球ってことね)


にこ(『にこにーゾーン』で引き寄せる?)

にこ(……無理ね。足がこんなんじゃ次で決められて終わりよ)

にこ(じゃあ、『にこ式ドロップ』?)

にこ(いや、今の真姫ちゃんの位置じゃ決まらない。バウンド前にとられる)

にこ(……………………)

にこ(…………ふぅ)

にこ(…………笑えてくるわね)

にこ(最後の一球が――)




にこ「こんな博打になるなんて」ニカッ





257: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 18:22:38.00 ID:SeQbnl3EO



―― シャァァァァァァァァァァァァ ――



にこ「ニコッ!!」パァァァァァン



258: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2016/08/04(木) 19:11:31.83 ID:SeQbnl3EO
真姫「山なりの打球」

真姫「ロブまではいかない、けどッ」グッ



真姫「『ナパーム』ッ!!!」バシィィィィン



真姫「決まっ――」




―― グググググッ ――



―― パァァァァァァァン ――




『アウト』



真姫「え?」


次回 【ラブライブ】穂乃果「テニスをしよう!」ツバサ「おもしろそうね」 後編