1: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)00:09:19 ID:B1f
腹ペコシスターに愛の施し……具体的には餌付けをするやつです。
このナポリタンはめちゃくちゃ美味いので是非お試しのほどを。もちろんお好きなようにアレンジしてください!
相変わらず趣味全開ですが、よろしくお願いします。

引用元: 【モバマスss】腹ペコシスターの今日の一品;ナポリタン 




2: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)00:09:42 ID:B1f
【オードブル:遅い目覚め】







「は……?」

「あ、あの……お、おはようございます……!」







 ──夢を見ていた。幸せな夢を。


3: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)00:09:56 ID:B1f
 具体的にいえばお賃金が上がる夢だ。それも時間給にして約五百円アップという素晴らしい上がり幅。一見「大したことないのでは」と思うかもしれないが驚くなかれ、月二百時間労働で一年働けばこの昇給額で単純計算約百二十万アップという素晴らしい結果になるのである。

 もちろん給料の実態はさまざま(意味深)であるし、さらに税金でさまざまに吸われていき、手にすることができないお給料もさまざま存在するわけだ。おお、額面よ。死んでしまうとは情けない。死んではいない。せいぜい骨折程度だ。重症じゃないか。さめざめ泣いてしまう。

 もとい。

 せめて夢の中でくらいそんなことは忘れさせて欲しかった。しかしそこは地に足ついた男と評判(最近担当になったショッキングピンクの髪色をしたアイドル曰くである)の俺だ、現実に根を張ったまま、あり得そうであり得ない、ギリギリの線を最大限攻めているのではないだろうか。

 ああ、お賃金アップ。こんなにいい響きがあるだろうか。声に出して読みたい日本語だ。俺の中では「完熟バナナ」にならぶ最高の音の並びである。個人差があるので異論はあろうが、概ね同意してくれるのではあるまいか。一人も仲間がいなくても構わない。俺はそう信じている。

 いい。寝ているだけで、座っているだけで、歩いているだけでお賃金アップの恩恵を受けられるとはなんとも良いことだ。ただ生きているだけで幸せになれる。大体ゲームとかだとディストピア扱いだが、一回実現してくれ頼むから。その上で判断させて欲しい。

 うう、愛しのお賃金アップよ。お前は夢と消えていくのか。もう少し粘らないのか。お前はいけるやつだ。世界中の誰もが願っている。世界中の人間の期待を背負っているのにそんなに簡単に泡沫と消えてはいけない。まだ夢を見ていたい。お前という夢を。

 ええ、出世? ……首が飛ぶことを覚悟しなければならない俺にとっては縁のない言葉だ。そんな諦めムードの俺だが、それでも大学時代からの同期が順調に出世する姿を見たら思わないことがないでもない。つまり少しある。

 しかしやはり「少し」しかないのは、さらに上の上司の姿を見ているからかもしれない。

「えらい人はふんぞり返って、威張っていれば高いお給料がもらえる」なんて本気で思っていたのは高校生までだったが、実際にえらい人の働きぶりを見ると、どんなに給料が良くても、あんなふうにはなれないなと恐怖するばかりである。部長はいつ寝てんのマジで? 

 ……おおっと、無駄話が過ぎたようだ。現実逃避とも呼ぶべき脳内会話だが、すぐにこの記憶も現実の衝撃に上書きされる。


4: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)00:10:11 ID:B1f


 一瞬を閉じ込めたかのような光景。

 暖かな春に似ながら、美しい冬を映した君の髪。

 薄く白い光が、瞬きよりも遅い速度でゆらめいた。


5: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)01:20:49 ID:q8y
「シス、ター……」

「その……ぁぅ」

 ぎゅうと、布団の中で左手の人差し指を握られる。人肌にしては、少し冷たい。

 頬に感じる季節は、それよりずっと寒くて。遠くて。だから、よくわからなくて。

 ただ、ただ。

 すぐそばで熱を帯びる君の姿だけが、染み入るように俺の心を満たしていた。


6: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)01:21:15 ID:q8y
「はいドーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!」



「はうっ!?」

「おわあ!?」



「基準値以上のセクシー・フレグランスを感知しました! 緊急調査ですぅ!」

「ムムっ!? セクシー濃度20000、15000、7200……バカな、まだ下がり続けていますよ!?」

「なら大丈夫ね! 失礼したわ! さて、それじゃあ……この世にセクシーの息吹がある限り!」

「何度負けても辛くても!」

「呼ばれた側から “はいからセクシー” ! そう! 我ら人呼んで!」



「「「セクシーギルティ!!!」」」



「ムムっ!? シャワールームあたりで何やらセクシー・フレグランスが強くなっているようです。早苗さん、雫ちゃん!」

「ええ、いくわよ! ついてらっしゃい!」

「モォ~レツにGo! Go! ですぅ!」



 …………去っていった。嵐のような一団だった。そういえば今週はセクシー強化週間でもありオーバーセクシー警戒週間でもあった。気をつけねばならぬ。


7: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)01:21:37 ID:q8y
 ……さて。



 嵐の後の静けさに残ったのは、同じかけ布団をかぶっている俺とシスターだけ。

 ブラインドの隙間から差し込む氷漏れ陽(こもれび)は、それが孕んでいる熱以上に暖かく感じた。



「え、と」



 それで、と。話を元に戻そう。始まっていなかった話に。


8: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)01:22:35 ID:q8y
「おはようございますシスター・クラリス。今何時ですか?」

「あ……えと、11時です」

「……マジで?」

 マジもマジ、大マジである。枕元のスマートフォンに映る時間は11:12。今日は月曜日である。

 ああ、無断遅刻はこれで何回目になるだろう。いよいよクビが飛ぶ日がやってきたか。すいませんシスター、あの日あの時あの場所で交わした約束を果たすことはできなくなってしまいました。そんな約束は微塵もないことだけが俺の後悔だ。



「え、でも……アレ……? 俺書置き残してなかったっけ……?」



 ぼんやりとしていた頭がようやく晴れてきて、昨日の自分の行動も少しずつ思い出してきた。

 そうだ。俺は部長の机に「仮眠室で寝てるんで8時になったら起こしてください」と書き置きを残してきたはずなのだ。もちろん文面はもう少しちゃんとしている。敬語は社会人の基本だからな。敬語よりも大事な何かがある? 気づかせてくれるな、そういうことは。

 三十も歳の離れた上司にモーニングコールを頼むとは正気の沙汰ではあるまいが、眠みMAX の人間に正常な判断ができるはずがない。むしろリスクマネジメントをしているだけ偉いまである。褒めてくれ部長。そして笑っていてくれ部長。俺は部長のなんなんだ。



「ん、じゃあ俺はもしかしてモーニングコールぶっちか……?」



 まさか罪を重ねてしまったのか俺は。寝てるだけで罪を増やすなんてどんなライフハックだよ。本当にライフがハックされそうで冗談では済まない。いや、あのおっさんなら電話でダメなら直接起こしに来るはずだ。そんな甘っちょろい人間ではないことは俺が一番よく知っている。



「シスター、おっさ……部長と会いました?」

「は、はい」

「……なんか言ってました?」

「………………………………」



 あれ?

 なんで何も言ってくれないんですかシスター。何か言ってくださいシスター。俯かないでくださいシスター。あっでもその少しアンニュイな感じはいいですねシスター。前のロリータファッションもなかなか評判が良かったので、今度はオトナな一面を押し出していくのもアリかな……

 ではなく。

 え、もしかして本当の本当に最後通牒? 今思いついたシスターの最高に可愛い瞬間を押し出していく機会も絵に描いた餅? いやいやまだだ。夢は夢で終われないってみんな歌ってるじゃんか。お願いディレクター。動き始めてるんだ、俺の中で……!



「あの」



 独り相撲で現実逃避していたところ、ようやくシスターがおずおずと、何かを決心したように口を開いた。小さく開いた口に、きれぎれと銀の空気が吸い込まれる音がする。まだ何か、迷っていることがあるのだろうか。それとも……そんなに、言い出しづらいことなのだろうか。



 ……そうだな。シスターは優しいし、「プロデューサーさんとはこれでさようならです、では」なんて言い出せないよな。自分の最後の瞬間を担当アイドルに任せっきりにするなんて、なんてダメなプロデューサーさんだ、俺は。

 ダメならダメでいい。でもその最後くらいは、ちゃんと俺が自分で受け止めなきゃ。彼女に任せてはいけない。……よし。

「大丈夫ですシスター…俺、自分で行ってきます」

「え?」

 シスターは本当に意外そうな声を出して、ガバリと立ち上がった俺をぽかんと眺めていた。

 彼女の左の髪先が、少し折れている。下敷きになっていたからだろう。もう、この綺麗な髪に触れる機会はないんだと思うと少し……すごく寂しい。

 だから、色んな感情と言葉をひっくるめて、何も言わず、俺はシスターの髪を手で梳いた。

 できるだけ優しく。できるだけゆっくりと。できるだけ愛を込めて。

 ───最後のひと撫で。人差し指と中指で君の髪を掴んだ。それを離すのが躊躇われる。でも、離さなきゃならない。



 覚悟を決めて、俺はまっすぐ前を見つめて仮眠室を出る。

 後ろでシスターが何か言っている。優しいあなたのことだから、きっとお別れを告げられなかったことに責任を感じてもいるのだろう。でも気にしないでください。本当に、大丈夫だから。……大丈夫だから。



 俺は、俺のこと、ちゃんとやりますから。


9: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)01:23:04 ID:q8y




「……部長!」

 事務所の扉の前に、身だしなみを整えている初老の男の姿があった。

 白く染まり切った頭髪。薄いレンズの丸メガネに、身に纏っているスーツはブランドものではないが質の良さが感じられる。恰幅の良い体型はどことなく親しみやすさを感じさせる。

 しかし一瞬の隙すらない、すらりと伸びた背筋に代表されるのが、この男の本性だ。

 くわばらくわばら。えろいむえっさいむ。うがふなぐるふたぐん。……最後だけ種類違うな。

「ああ」

 と、いつもの温かみのある声が聞こえる。その温かさはここでは重圧と同義だ。「ようやく起きたんだね」という部長の目は笑ってはいない。メガネがキランと光る。マジかよその現象自分で起こせるの? どんな物理法則だよ。スネルの法則か。自己解決、ハッピー。

「そんなんじゃなくて」

 ……いや本当にそんなんじゃなくて。ふざけている場合ではない。俺はこの魔物を腹に三体ほど飼っていそうなこの男に真正面からぶつかって行かねばならない。この男の言葉を直接聞かねばならない。それが、俺の責任だ。


10: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)07:53:14 ID:q8y
「……どこに行くんですか」

「や、帰るんだけど」

「……俺を世に還すってことですか」

「違うけど」

「……はっきり言ったらどうなんです」

「これ以上ないくらい言ったよ」

「……単刀直入に聞きます。……クビですか」

「どちらかと言うと腰かなあ」

「部門替え、ってことですか」

「まあ同時にクることもあるけどね」

「……二足の草鞋を履けと?」

「足ツボマッサージみたいなものの方が効きそうだよ」

「なるほど……山あり谷あり、痛みも伴うかもしれないが、それでもまだ俺は……アイドル部門にいて良いと?」

「えっ知らない……たぶんいいんじゃない」

「……もしかして、もっと上の指示ですか」

「指示したというか決めたのは僕の脳だけど」

「そうじゃなくて……専務とか、社長とかの指示なんですか?」

「紹介してくれたのは社長だけどねえ……好きにしていいって言ってくれたから」

「ならやっぱり、あなたが決めたのか!」

「そう言ってるじゃない」

「……俺はあなたに、感謝していいのか恨めばいいのかわからない」

「君は僕の腰のなんなの?」

「いえ……きっとクビになりかけていたところを、あなたが救ってくれたのでしょう。俺は、そう信じたい」

「僕気功とか使えないんだけど……」

「……ありがとうございましたっ!」

「ええ……どういたしまして」

「……でも、シスターに伝えさせようってのはずるいと思います。それは、あなたの仕事だ」

「君がそんなに僕からモーニングコールをされたいとは思わなかったよ」

「あなたの口から、聞きたかった」

「不覚にもキュンとした」

「……それで、俺はいつからどこに行けばいいんですか?」

「え、好きにしたら」

「好きにしていいの!?」

「そりゃ君の休日の予定を僕が決めたらアヤシイ関係になるだろう」

「ん?」

「ん、じゃなくて。今日はせっかくの休みなんだから、自分の好きにしなさいな」

「はい? ちょっと待ってください、今なんて?」

「自分の好きにしなさいな」

「その前」

「今日は休みなんだから」



「今日は休み?」



「今日は休み」



「月曜日だが?」



「勤労感謝の日」



「…………部長、今からどこに行くんです?」



「社長が教えてくれたマッサージ屋さん」

「何をしに」

「腰回りをほぐしに」

「……クビは」

「特に痛くない」

「……あれ、俺今日もしかして、遅刻してない?」

「業務がないからね、そもそも」

「じゃあなんで部長、会社にいるんですか?」

「部長だから」

「…………………………………………もしかして俺は」

「初めから気づいてたけどものすごい勘違いしてたよね君」

「…………………………………………マジで?」

「マジで」

「めっちゃ恥ずかしいやつじゃないすか」

「進行形で恥塗ってるなって思ってた。厚塗り。厚塗りジャクソン」

「微妙に全部違うし、そもそも気づいてたなら止めてよ」

「面白いじゃない。これでまた君をイジるネタ増えちゃった」

「鬼畜の所業」

「今までの上に報告してない不祥事、いくつあったっけ」

「ほんまもんの鬼畜の所業は良くない」

「僕にとっては問題起こして帰ってくる君の方が鬼畜の所業なんだけど」

「返す言葉がない」

「……『俺を世に還すってことですか』」

「や~~め~~ろ~~よ~~~~! 恥ずかしいやつほじくり返すのや~め~ろ~よ~!」

「さて、これで今週はイジっていこう。それでは失礼するよ」

「はぁ……飛んだ勘違いだ。お疲れ様です」

「お疲れ様……っと、ああそうだ。言い忘れてた」

「なんすか、本当にクビとか?」

「そんなどんでん返しはないよ。

 ……いい夢を見られたようで何より。眠る時はしっかり家に帰って眠りなよ。徹夜は作業効率を落とす。家に帰ってしっかり休みなさい」

「……はい」

「よろしい。では、ばいちゃ」

「六十すぎてそれはきつい」

「えー」


11: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)07:53:54 ID:q8y




 仮眠室へ戻ると、シスターが布団にくるまっていた。小さくため息をつく。掛け布団を剥がそうとしたがものすごい力で拒否られた。引っ張っても引っ張っても、力の向きや大きさを変えても一向に剥がれない。……実力行使は不可能か。



「シスター」

 ……ぴくりと、“まる” が揺れた。だって “まる” だもの。

「怒ってないから、出ておいで」

「…………」

 何も言いはしないが、顔だけ布団から出した。その頬は薄紅に染まっている。

「───ありがとうございます。モーニングコールの件、引き受けてくださったんですね」

「…………」

 シスターは布団に顔を押し付けている。それ呼吸できてるのか? まあ大丈夫か、シスターだし。

「……わざと、長く寝させてくれたんですよね。お気遣い、ありがとうございます」

 核心部分にはあえて触れず、行為の結果についてのみ、もつれた糸を解(ほぐ)すように言葉を連ねていく。

「おかげでたっぷり休むことができました。最近はあまり寝る時間もなかったものですから」

「…………」

「そういえば今日、休日なんですね。勤労感謝の日。感謝すれば休日になるなら、いくらでも感謝しますよ。神様にだってね」

「…………神はいつだって、私たちを見守っていらっしゃいます。安穏たる休日に、感謝を……」

 お。反応があった。さすがシスター。神様を出せば反応がいいな。

 ───でもやっぱりあなたには。これが一番効果覿面でしょう。

「……そんなこんなでシスター、もう12時です。俺は随分とお腹が空きました。何しろ朝ご飯だって食べていないんです。せっかくの休日の午後、素敵な気分で迎えたいですからとびきり美味しいものを作ろうかなと思うんですが……もし良ければ、一緒にどうですか?」

「…………! は──」



 グゥ~~~~~……………………



「…………はい、いいお返事でしたね」

 触れようか触れまいか迷った。でも触れた、敢えて。

 シスターはまたカタツムリみたいにまるまってしまった。

 顔も布団の中にしまい込んでしまって、声にならないうめき声のようなものだけが聞こえる。

 ───だから君は、今から俺が何をするかわからないでしょう。



 ……きっと、頭のあたりだろう。もし反対側だったら、随分とまずいことになる。

 そこは信じて、目を伏せて。軽く、布団の上から口付ける。

 唇に、少しだけ硬い感触がした。

 何をしたか、君はわかるだろうか。わからなくていい。ずっと。

 ただ、俺がそうしたかっただけなんだから。


12: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)07:54:14 ID:q8y
「はいドーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!」

「我ら人呼んで!」



「「「セクシーギルティ!!!」」」



「それはもういいっつーの」


13: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)07:54:29 ID:q8y
【メインディッシュ:ナポリタン】







 とぽとぽした足取りで給湯室までやってきた彼女は、まだ心ここに在らずと言った面持ちで椅子にちょこんと座っている。あんな状態でも「手伝います」と言ってくれるのだからありがたい。でも大丈夫。ちゃんと休んでてね。

 何しろ今回の料理は、あまりの美味しさにびっくりしてしまうこと請け合いなんでね。



 材料はシンプル。作り方もシンプル。ただ、ひと手間を加えるだけでこんなにも美味しくなるなんてと食べたら誰もが思うだろう。俺が作れるレシピ(つまり響子と葵から教わったものの中)でもトップレベルに美味しい料理。



 今日は、ナポリタンを作ろうか。


14: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)07:54:48 ID:q8y




 ────まず、材料。たっぷり2人前。

 ウインナー2パック。玉ねぎ(中くらい)を丸々2個。ピーマン2個。バター20g。味付け用のケチャップ……これが大さじ8。かなり入れる。それとパスタ2人前。今回は1.6mm のやつで作るがなんでも美味しい。それとコンソメ、塩・胡椒、うま味調味料。それとレモン汁があるといい。

 ケチャップの多さもさることながら、意外にびっくりするであろうことは、玉ねぎを丸々2個も使うことだろう。今回はこの玉ねぎの使い方がポイントになる。さて、それでは作っていこう。



────ウインナーは断面が大きくなるよう、斜めにカットする。ウインナー自体はやや小さめにカットした方が味が絡みやすい。



────玉ねぎ1個を薄くスライスする。……そしてここがポイント。もう1個の玉ねぎは、すりおろし器で全部をすりおろしてしまう。このすりおろした玉ねぎが最大のポイントだ。それ以外は実は、どこにでもある普通のナポリタンだからね。さらに、ピーマンを小さめに切っておく。



────たっぷりの水に、コンソメと塩を適当に入れ、少し薄めのコンソメスープ程度の塩加減に仕上げる。水を火にかけ沸騰したらパスタを入れ茹でていく。……大体表示時間通りに茹でればいい。慣れていないなら、この工程はもっと後でも構わない。



────フライパンに小さじ1くらいの(分量外の)サラダ油を敷き、フライパンが温まったらウインナーを炒める。火加減はこれ以降もずっと中火でいい。ここではウインナーに焦げ目をつけたいため、ウインナーをあまり動かさずに炒める方がいい。



────ウインナーの両面に焼き色がついたら、スライスした玉ねぎを塩胡椒して炒める。この時の塩胡椒は僅かでいい。玉ねぎが透明になるくらい炒めたら、今度はすりおろした玉ねぎを入れ、全体の色が僅かに飴色になるまで、さらに炒める。

 後半の玉ねぎを入れるのと入れないのでは、出来上がった後の甘みが随分と異なる。ナポリタンには少し砂糖を入れるレシピも多いが、ここでは甘味を玉ねぎとケチャップのみから抽出する。



────フライパンにケチャップを入れ、さらにうま味調味料を二振りして炒める。炒めていると、ケチャップの酸味が飛んでペースト状になってくる。全体にまとまりがついてきたら、さらにバターとピーマンを入れ少し火を通す。



 これでナポリタン・ソースの出来上がり。ちょうどこのタイミングでパスタが茹で上がるとベストだが、ナポリタン・ソースはフライパンに入れたまま数分放置していても再加熱すれば問題ない。慣れていない人は、このタイミングでパスタを茹でるといい。



────ナポリタン・ソースが十分に温まったフライパンにパスタを投入する。湯切りはしない、というより固くなってしまった場合のために少し茹で汁を加えてもいいくらいだ。どうせこの後焼いてしまうので水分は消えてしまう。



────パスタとソースを和えながら、パスタにも焼き色をつけていく。ただしそこまで神経質にならなくてもいい。この工程だけ強火にして、さっと炒めてしまっても構わない。皿に盛ったオレンジ色のナポリタンに、数滴レモン汁を垂らすとこれがアクセントになって美味しい。



────さあ。夕焼け色の「ナポリタン」の出来上がりだ。


15: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)08:04:27 ID:q8y




「さ、できましたよシスター……お、コーヒー入れてくれたんですか」

「はい……施しを受けてばかりではいけませんから」

「はは、気にしないでいいのに。好きでやってることなんですから……でも、ありがとうございます。ナポリタンにコーヒーなんて、少し喫茶店気分ですね」

「そう……なのでしょうか。申し訳ありません、私あまりそういった経験が少なく……」

「あれ、そうですか。じゃあ今度そういうお仕事入れましょう。ちょうど、いいオファーが来てるんですよ、実際に行ってみたらきっと気に入ってくれるはず……って、仕事の話は後にしましょうか。

 ……はい、ではどうぞ召し上がれ」

「ありがとうございますプロデューサーさん。それでは……ぁ、いい香り……っ!?!? お、美味しい!」

「はは、やったー」

「こ、これは……濃厚なバターの香りが少し焦げたケチャップとともに口の中で爆発して……! それに噛めば噛むほどに溢れる、玉ねぎのあまみ……! これが全体の味を優しくコーティングしてくれています!」

「そして、食感がのこるピーマンと野菜としての味が残る玉ねぎ。それにこのウインナーがたまらなく美味いんですよ。噛めば噛むほどジューシーで……とにかく最初から最後まで美味い! って料理なんですよね」

「なるほど……確かにこれは、コーヒーと合うかもしれません。力があり、とにかく濃厚なナポリタンをビターに流し込み、僅かな酸味を後に残す……皿にそこに二口、三口とナポリタンを運べば……あ、ああ! あああ! 美味しいです……!」

「作り方はシンプルなんですけどね。でもすりおろした玉ねぎの甘み本当によく効いてて、しかもそれが不必要に主張してこないんですよね。具材にも入ってる野菜の甘みだから、前に出てこないのにとにかく旨さを底上げする。そんな使い方をしてみました」

 と、いうか。考えたのは響子と葵だけど。

 ……でも、ああ。やっぱり、料理っていいな。こんなに美味しくてさ、こんなに満足できてさ。本当はもう、これで十分なんだ。十分なのに、それでも。

 君が、そうやって心の底から笑ってくれる。喜んでくれる。

 俺が、幸せにしてあげられる。……自惚れかな。良くないな。本当はそんなことないのかな。もし本当だとしても、長い人生の、ほんの僅かな瞬間。少しかもしれない。いつか、お互いが忘れてしまうかもしれない時間。大したことがない時間……かもしれない。



 ─────そんな時間だけど。俺は君を幸せにできているって、思っていいだろうか。



 誰に許可をとるでもない。ただ、俺の作った料理を美味しい、美味しいと言いながらぱくぱくと食べてくれる君の姿を見て、そう思ったんだ。そう、思いたかったんだ。





 だって、そう。俺は、この人のことが好きなんだから────。


16: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)08:04:48 ID:q8y
『──────悪い人』 


17: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)08:05:12 ID:q8y
 あれ?







 今、なんか……声がしたような、気が──。



 ……気の、せいか。うん。気のせいだ。ここには俺とシスターと、二人しかいなくて……二人、しか。



 ……二人。


18: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)08:05:31 ID:q8y
 ──────目の端に映った色も、やはり同じく金色をしていた。

 それは深く、深く。少し仄暗く、そして明るく輝く────闇。

 月夜に輝く、薔薇を従えた姫。こちらを真っ直ぐに見据える、従者の瞳。

 記憶は重なっていく。いつかの夜から、彼方の夜へ向けて。

 こつん、こつんと。階段を上がる音がした。

 一際高く音が鳴る──────。


19: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)08:05:50 ID:q8y
『見ぃつけた』


20: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)08:08:33 ID:q8y
 【デザート:早い眠り】







「もーにんぐこーる、ですか」

「ああ。私の机にこんなものが置いてあってね。8時に起こせだと。僕が今日たまたま会社に来なかったら彼はどうしてたんだろうねえ」

「……私たちのために、プロデューサーさんは身を粉にしてご尽力いただいております。本当に、ありがたきことです」

「はっはっは。そう言ってくれれば彼も元気100倍だろうね。プロデューサー冥利に尽きるってものだよ。……どうだろうクラリスくん、頼まれてくれないか」

「はい、承知いたしました……えと、でも今は」

「んー……9時だね。はっはっは、もうお寝坊さんだ。早いところ起こして、家でゆっくり休むよう言ってあげてくれ」

「はい。部長さま。それでは失礼します」

「ああ、いってらっしゃい。

 …………しかし、プロデューサーさん、か。

 ───君は彼女の特別だ。きっと、彼女も君の特別なんだろう……だから、ちゃんと守ってやるんだぞ。おおっぴらに明かされても、まあそれはそれで困るわけだが……迷わず、な」


21: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)08:08:55 ID:q8y




 彼女が扉を開けると、すう、すうと静かで規則正しい寝息が聞こえた。

 簡易的ではあるけれど、柔らかなベッド。一人が寝るには十分なほどの大きさを携えている。

 その、端の方。面積で言えば、四分の一ほどの面積だけを使って彼は眠りに落ちていた。

 何やら眉間に皺を寄せ。何やら大きく呼吸をし。───今にもずれ落ちそうな薄い毛布をぎゅうと握りしめて、子供のようにうずくまっている。

 ……ベッドの横にあるブラインドがかかった窓から、少しだけ遅い朝陽が差し込む。それは光の速度のことではないのだけれど、きっとそれだって同じことだろう。

 彼女は左手で胸のブローチを押さえながら、ゆっくりと彼に近づいていく。ベッドのそばに着くと、ちょうど彼が寝返りをうって彼女の方を向いた。その顔もやはりどこか苦しげだ。



 呼吸の音すらしなかった。

 代わりに、髪が流れていく音。

 そして彼女の「冷たい」という声だけが、その部屋に許された縦波の全てだった。



 ───意を決したようではなく。何か、思いついたようでもなく。自然のままに、彼女はベッドのもう一方の端へと腰を下ろす。……彼の頭を撫でているうちに、背中を、そして頭を雲へと投げ出していく。



「──────。」



 彼女の言葉は彼に届いただろうか。届かなくてもいい、と彼女は思った。それもずっと、と。



 ──────私が想ってさえいれば、それでいいと。



 彼女はそう思いながら、心を伏せていく。

 次に目覚めた時には、目の前に彼の姿がある。そんなあたり前のことに幸せを感じながら、眠りに落ちていく。



 こうして、二人の朝は深くなっていった──────。

 


22: 名無しさん@おーぷん 20/11/25(水)08:11:46 ID:q8y
以上です。

公式からクラリスさんの供給があったので燃える様に書きました。クラリスさん可愛いよクラリスさん。お腹いっぱい食べて健やかに寝てほしい。

これらも含め、過去作もぜひよろしくお願いします。







【モバマス短編集】Imprison your/my emotion in the summer 



【シャニマス短編集】手にとれなくて 



【ミリマス短編集】Before Birthday, 10 minutes.